2012年02月11日20時55分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】「大飯原発」と「新幹線」と「福井県」  新幹線の延伸   ストレステスト後の地元「合意」への道具立て  山崎久隆

 大飯原発の再稼働強行に、いったいどんな手段を行使してくるだろうと、心配している人も多いと思う。その手口が毎日新聞の記事に出ていたので紹介する。1月29日の福井版に掲載された『北陸新幹線:延伸、県経団連・川田会長に聞く 「まず、福井まで開通を」 /福井』である。率直と言えば率直なんだろうけれど、これが全世界の命運をも左右してしまうほどの重大事だと、知ってか知らずか。それにしても古典的手法を今さら使うこの国の政府。もうどんな政権でも関係ないというわけだ。 
 
 冒頭、簡単に経緯が書かれている。 
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政府は昨年12月、北陸新幹線の金沢−敦賀間について、採算性などの条件を満たすことを前提に着工を認可する方針を決めた。12年度に着工した場合、完成予定は25年度と想定している。県内に大きな影響をもたらすとみられる北陸新幹線延伸について、県経団連の川田達男会長に今後の展望などを聞いた。 
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 北陸新幹線については、金沢まで路線が決まり、既に工事が進んでいるが、福井県内の路線は、全部は決まっておらず、ただ福井駅だけが作られている。 
これについて福井県は「もんじゅ」の運転再開を認める引き替えに、新幹線の延伸を求めていた経緯がある。そのことは次の発言でも裏付けられる。 
 「もんじゅの運転再開を認めたいきさつを頭に置いて(整備新幹線を)進めてもらわないと困る」(2010年11月3日の西川知事発言) 
 
 そして、財政破たんだ、消費税増税だというこの時期に、なんと地元も期待していなかった新幹線の敦賀延伸がきまる。記事ではどう書かれているか。 
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 ◆新幹線の延伸方針が決まりました。福井への影響と、これからすべきことをお聞かせください。 
 
 福井にとって大きなことだ。当面は、できるだけ早く開通させることが第一。前倒しで整備ということも、過去にはあった。 
 ただ、開通するという14年後は、なかなか想定できない。もしかしたら「もう新幹線はいらない」という時代になっているかもしれない。今から何をするかは、なかなか難しい問題だ。もう少し具体化しないと。 
 敦賀までいっぺんに完成するわけではなく、徐々にできてくるので、福井までできた時点で開通させてほしい。今は(敦賀まで)一括でしか考えていないと言っているが、それは無駄だ。福井までの早期開通を一つの区切りとして、次は敦賀までと早くやるよう強力に働きかけ、できるだけ早く開通するようにしないといけない。 
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 わかりやすく言えば、とにかく細切れでも何でも出来たところから走らせろ、ということだ。国は何度も口では新幹線の延伸について「約束」をしてきたが、財政危機などを口実に実際には路線もきまらず着工もしなかった。そこで、具体的に工事が進んでいない金沢から福井まででも、とにかく作って走らせることを求めている発言だ。そもそも国の約束など当てにならぬと言いたげだ。まあ確かにそのとおりではある。ただ、冷静に見ているところもあって、14年も先では少子高齢化社会で新幹線で旅行などという時代では無いかもしれないと感じているらしいところがある。 
 
 さて、問題なのはこの先だ 
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 ◆昨秋、「新幹線延伸は今年は駄目だ」とあきらめの発言をしていましたが、結局、認可されました。 
 
 なぜ認可されたか、詳しくはよくわからない。西川一誠知事が一番動いていた。細かく活動していた。原子力を含めて、しっかりと対応していることが、ある意味では評価されたのかもしれない。 
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 地元の経団連会長が「知らない」という実に奇妙な電撃認可だったというのだ。もうこうなると、福井県の原発がらみとしか考えようが無い。「これまでの功績に報いて」なんて話であるわけがない。 
 そして、当然ながらこうなってしまう。 
 
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 ◆国は、原発再稼働の前提として新幹線を認可しておくことにしたのでしょうか。 
 
 分からない。そういうことがあったかもしれないが、直接的な働きかけはない。 
 我々、経済界としては、新幹線が認可されないなら、原子力(への対応)も含めてきちっとやろうと。国との対立も、ある程度やむを得ないという考え方でいた。私は少なくとも、新幹線が認可されなかった場合には、原子力は少し今までみたいに国の言うとおりにしてはいかんなと思っていた。新幹線が認可されたということで、そういう問題はなくなりましたね。 
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 翻訳すればこういうこと。「経済界としては、新幹線が認可されないのだったら原発も「認可」してやるものか、という立場だったが、新幹線が認可されちゃったら、原発を認可しないわけにはいかんでしょ。」 
 
 いったいどこまでデタラメな世界なのか。 
 原発の安全性だの地元の合意だの、そんなのは新幹線の路線を地図上で引き回せばすぐに「解決する」のだといわんばかり。こういう連中に原発の安全性など一切語ってもらう必要なし。意思決定の場にも居てもらってはならないだろう。 
 福井県と福井県知事に、運転再開ノーの声を、再度、世界中からみんなで伝えていくほかは無い。原発の安全性が新幹線で担保されるわけが無い。そんな非科学的な話など何処の世界にもありはしない。新幹線などと間違ってもリンクさせてはならないと。 
 しかし、一体どれだけ悪用されるのか整備新幹線。だからこんなものは、はじめから作らなければ良かったのだ。 
 
 さらに国は次の手も準備している。それは、湖西線周りのフリーゲージ・トレイン導入だ。これもまた、福井県への揺さぶりなのだが、それはまた機会を改めて書くことにする。 
 
(たんぽぽ舎) 


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