2012年03月22日18時54分掲載  無料記事
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検証・メディア

BBCの「プロジェクト・バルセロナ」と「ラジオ・プレイヤー」

 BBCの経営陣トップ(ディレクター・ジェネラル)、マーク・トンプソン氏が、14日、ロイヤル・テレビジョン・ソサエティーの会合で、スピーチを行った。私も聴衆の1人だった。もっとも刺激的だったのは、「プロジェクト・バルセロナ」(=バルセロナ計画)の話である。この話はその後、ニュース媒体でどんどん配信された。(ロンドン=小林恭子) 
 
 これは何かというと、利用者が、BBCの過去の番組(過去といっても、うんと昔というよりも、放送直後にという意味)=デジタルアーカイブを「少額で」買って(ダウンロードして)、永久に所有できるサービスだ。 
 
 トンプソン氏は「オープン・アップ」という言葉を使っていた。複数の販売網から販売する構図が思い浮かぶ。DVDを販売しているお店に足を運んで、BBCの過去の作品を買うのと同じように、デジタル・アーカイブ化した番組を、「デジタル・ショップ」でダウンロード販売する、というわけである。 
 
 ふと、楽曲や映画を販売するアイチューンズのBBC版が登場するかもしれないと思い、心がときめいた。 
 
 今でもアイチューンズでは、BBCの過去のテレビ番組などがダウンロード購入できる。しかし、BBCのアーカイブ番組は膨大である。これをそのまま、自局のシステムあるいはほかの業者による販売網を通じて売ることができれば、BBCにとっては、非常に大きな収入となることが想像できる。 
 
 前者の場合、つまり、もしBBCが新たな販売システムを作って、利用者が番組を直接買うようにすれば、アイチューンズに任せるより、もっと利益を得られるかもしれないーー例えば、フィナンシャル・タイムズが自社販売網でアプリを提供しているように。 
 
 今、デジタル時代の進展で「中抜き」現象がいろいろなところで発生している。そういう文脈の中では、一定のブランド力を持っている、デジタル・コンテンツ所有者の中に、「アイチューンズ抜き・はずし」?のようなことが起きているのかもしれない。――ただし、トンプソン氏がアイチューンズを使わないといったわけではない。ただ、その話し方によって、アイチューンズに依存しない可能性を大きく示唆したわけである。 
 
 いよいよ、英国のテレビがデジタル化してきたなあと思う。 
 
 BBCが新規のサービスを開始するとき、必ずBBCトラストという、日本のNHKの経営委員会にあたる組織におうかがいをたてなければならない。トラストは内部での議論のほかに、識者に聞いたり、国民から意見を募ったりして、結論を出す。これが今年中に開始され、もしOKとなれば、早ければ来年以降にサービス開始となりそうだ。 
 
 英テレビ界は今、BBCと民放の番組が参加する、ネット上のオンデマンド放送のサービス「ユービュー」の開始に向けて、歩を進めているところだ。「(参加しないテレビ局の)ビジネスを阻害する」などの理由で、実現が難しくなっていた。 
 
 スピーチの中で、ユービューについては7月末開催の「ロンドン・ オリンピックまでに開始したい」という箇所があったので、後でトンプソン氏に確認してみると、「そうなるように努力中」と話していた。 
 
 一方、英国のラジオ放送がネット上で一括して聴けるサービス、「ラジオプレイヤー」が人気だ。 
 
 BBC及び民間のラジオ局の番組が、同時放送及びオンデマンド、ポッドキャストでも聴けるサービス、「ラジオプレイヤー Radioplayer」http://www.radioplayer.co.uk/が、好調に成長を遂げているという。 
 
 日本でラジオというと、テレビの後ろに隠れた存在として受け止められているかもしれないが、英国では(というか、欧州では)若者の間でも、かつ知識層の間でも、一定の位置を占める堂々としたメディアだ。 
 
 例えば、BBCラジオの教養番組チャンネルといっていい「ラジオ4」では、毎週、数人の学者を呼んで様々なトピックに関して議論をする、かなりハイブラウな番組「イン・アワ・タイム」があるが、これを後にダウンロードして聞く人が非常に多い。 
 
 「ラジオプレイヤー」のサービスの運営自体は非営利になっており、この組織はBBCと商業放送が資金を出し合って成立している。現在までに、315局の放送が聴ける。 
 
 テレビ界がユービューを開始できずにごたごたしている間に、ラジオ界が先に「ここに行けば、(ほぼ)すべてがある」というサービスを一年前に始めてしまったわけである。しかし、ユービューのサービスにラジオプレイヤーも参加予定となっているそうなので(以下のテレグラフ紙記事参照)、ユービューはテレビもラジオもネットで視聴できるサービスとなりそうだ。 
 
 ラジオプレイヤーはPCやラップトップで使うことを前提に作られているが、5月あるいは6月ごろに、専用の携帯アプリができるという。 
 
 テレグラフ紙の記事によれば、ラジオプレイヤー側は、アップルやアンドロイド携帯の製造会社に対し、携帯がWI−FIや3Gにつながっていない状態でも、ラジオプレイヤーが使えるように、FMチップを入れてもらうなどの方法を工夫するよう、交渉中だという。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より) 


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