2012年03月30日17時29分掲載  無料記事
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検証・メディア

英メディアとツイッター −それでもつぶやきは続く

 英メディアとツイッターの話で、「何をつぶやくか」の件である。組織に勤める記者で、会社から公式アカウントをもらってツイッターをやっている人の場合、組織人としての発言になるわけだから、つぶやく内容には一定の制限がかかる。(ロンドン=小林恭子) 
 
 まず、組織の側が記者のツイッターに期待するのは、 
 
 「組織の人間として、担当分野にかかわる様々な気づき、発見、最新の情報などを、なるべく多くの数の読み手に、発信する」ことだろう。目的は、広い意味の広報・宣伝活動である。 
 
 その結果、広い範囲の情報の受け取り手に対し、組織の名を広め、例えばニュースであれば報道機関としての優位性を示し、発行する新聞を買ってもらい、あるいは番組を視聴してもらい、ウェブサイトに1人でも多く来てもらうことを狙う。 
 
 何故フェイスブックだったり、ツイッターがその手段となるのかは、前々回のエントリーに書いたが、潜在的読者や視聴者がそこに生息しているからである。 
 
 新聞のウェブサイトに来て記事を読んだり、番組の視聴へといざなう際の、決め手となっているのが、こうしたソーシャルメディアの場である。マス向けの広告よりも、「BBCのxx記者がこう言っている」という、個人の顔を出した情報に、より付加価値がつく。 
 
 「読者あるいは視聴者と直接つながる」ことが業務の一部となっている状況を、前回紹介した、民放ITVテレビのローラ・クエンスバーグの例で見てみる(ガーディアン、1月29日付記事) 
 
 クエンスバーグはITVの夜のニュース番組の経済記者だ。まず、午前7時ごろから、新聞を読んだり、昨晩のニュースをチェックする。それからITVのウェブサイトにある、自分のブログに今日の見立てを書く。これが2-3時間。その後、英議会や金融街シティに出かけ、取材。午後4時にはスタジオに入って、6時放映のニュースの準備のための原稿作り。午後8時からは10時のニュースの準備。こうした作業の合間を縫って、現在の経済状況やその日のニュースに関してツイッターで情報発信。 
 
 「ツイッターは記者の仕事の一部になった」とクエンスバーグ。視聴者が「すぐにニュース情報を得たがっている。たくさんの視聴者がすでにツイッターやフェイスブックを使っているので、私たちもその中に入らないと、置いてけぼりにされる」。 
 
 2-3年前には、通信社から流れる情報をコンピューターで常にチェックしていた。今は、ツイッターを見ているほうが情報が早いという。「経済情報を出す人たちがツイッターを使って情報を出している。だから通信社電より早い」。 
 
―入ってきた情報をかたっぱしからツイート 
 
 では、一体、どんなことをツイートしているのだろう? 
 
 27日付のツイートでは、「これから2-3日は出ないけれど、ITVニュースを見ててね」というメッセージが。https://twitter.com/#!/ITVLaura 
 
Thanks for all your tweets as ever - I'm not around in next few days so keep up with @itvnews - see you! 
 
 1つ前が、 
 
 「切手の値上げで郵便制度の穴を埋められるだろうか?民営化への準備か?午後10時のニュースを見てね」である。(その少し前を見ると、利用者から郵便を利用するかどうかの問いがあった。) 
 
 Is rise in stamp price really just to fill a hole in Royal Mail's balance sheet? Or preparing for privatisation - watch @itvnews at 10 
 
 これの1つ前が 「キャメロン首相は地下鉄ジュビリー線が経済を活性化するといっているけど、おっと、キング英中銀総裁は経済が縮小するといっている」。 
 
 Cameron said the Jubilee would give us the chance to 'go for it' - but oops, Mervyn King says Jubilee impact will lead economy to shrink 
 
 フォロワーたちとの相互コミュニケーションや、番組視聴への誘い、キャメロンとキング総裁の発言の比較を通して、新たな視点を読者に提供している。 
 
 スカイテレビの制作プロデユーサーの1人、ニール・マンも著名なツイッター利用者の1人だ。「個人的な意見」という断り書きがプロフィールに付く。 
 
http://twitter.com/#!/fieldproducer 
 
 今見たら、例えば、@WyreDaviesの情報、「バグダッドの中心部で3つの爆弾が爆発」をリツイートしていた。自分がフォローする人から受けた情報を、自分の興味がおもむくままに、流しているわけである。 
 
RT @WyreDavies: At least 3 explosions heard in central #Baghdad. No idea what or where yet. 
 
 「両方の陣営でプロパガンダの戦争が起きていることを、とても多くの人が忘れているよね」と2人のフォロワーに向かって書く。 
 
@stuartdhughes @marklittlenews so many forget that there is a propaganda war on both sides. 
 
 彼が英国のメディア関係者の間で人気になったのは、情報が早く、重層的であったことだ。様々な情報源からの情報を、すばやく、コメントつきで流してゆく。やはりここでも、「双方向のコミュニケーション」がある。 
 
―スクープはどうするか? 
 
 ツイッターで、スクープ情報を流してもいいのだろうか?特に、組織の公式アカウントを持っている記者はどうするか?まずは組織のデスクに流してから? 
 
 BBCや衛星放送スカイテレビのスカイニュースは、規定では「編集部に連絡を入れる」「編集部に情報を先に流す」などの行為の後で、ツイッターで発信することを推奨している。 
 
 しかし、これはその時々で変わるのかもしれない。実際に、多くのスクープを出している、BBCのビジネス担当記者ロバート・ペストンの場合、http://twitter.com/#!/Peston  @Peston テレビのニュース番組でスクープを流す前に、ツイッターやブログで出したことが何度もあると言われている。 
 
 前に、デイリー・テレグラフ紙の編集室で話を聞いたことがあったが、翌日の紙媒体でスクープを出す前に、ウェブサイトで出すことをやるようになった(適宜)ということで、それは、「テレグラフが最初に報道した」ということさえ、周囲が理解すれば、「どんな形でもかまわない」ということであった。 
 
 これで行けば、例えば、午後10時のBBCのテレビのニュースに出るペストン記者の場合、視聴者がこの時間にテレビの前に座っていればいいが、多くの人がテレビを見ていなかったり、外出していたりする確立は高い。ブログやツイッターで流せば、特に後者の場合、瞬時に利用者の携帯電話などに流れるわけで、「最初の報道がBBCだった」ということにしたいのであれば、テレビの10時にこだわる必要はなくなる。速さを競う報道機関にとって、ツイッターは非常に便利な媒体である。 
 
−個人的な話は(あまり)書かない 
 
 「個」が見えるツイッターではあるが、英メディアでジャーナリストとして発言している人の場合、「お昼に何を食べた」などのプライベートな話はあまりしないのが、1つの特徴であるようだ。 
 
 例えば、前に紹介した、スカイニュースの記者はアカウントが記者としてのものであることを自覚し、ニュースがらみの話に徹底しているという。というのも、「ニュースには関係のない、プライベートなことを書いていたら、がくんとフォロワー数が落ちた」からだ(マーク・ストーン記者)。 
 
―個人裁量でつぶやく 
 
 記者が公式アカウントでつぶやくとき、英メディアの場合(ほかの国も同じとは思うが)、その内容については、原則、自分が決めている。流す前に上司などに相談するのは、特別な事情(スクープなど)を除き、ないようだ。 
 
 ただ、BBCの場合、つぶやき内容をソーシャルメディアの担当者が「監視」(モニター)しているという。ブログの場合、BBCでは書く本人とその上司という最小限のチェックで画面にでるようだ。かなりの個人裁量が発揮できる。 
 
―米国の例 
 
 2011年5月、The American Society of News Editors(全米ニュース編集者協会)がソーシャルメディアの利用についての各社の方針を文書化している。 
 
http://asne.org/Article_View/smid/370/ArticleID/1800.aspx 
 
 ブルームバーグからワシントンポスト、ウオールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズなど、主に米国のメディアを中心とした、ガイドラインの紹介である。 
 
 APのガイドラインは以下。 
 
http://www.mediabistro.com/10000words/ap-updates-social-media-guidelines-to-address-retweets_b8179 
 
 いずれも、ソーシャルメディアの利用を奨励しながらも、気をつけることを列記している。 
 
ー企業とソーシャルメディア 
 
 フィナンシャル・タイムズが3月8日付けで、従業員がソーシャルメディアをやることについて、企業側はどう考えるべきかを米ガートナー社アナリスト、キャロル・ローズウェルに聞いている。 
 
―何故、企業はソーシャルメディアに関する方針を持つべきなのか? 
 
 従業員がすでに使っているから。 
 
―どうやったら、意味のある方針を作成できるのか? 
 
 組織がすでにある内規に準じるものにする。ソーシャルメディアの利点を忘れないように。よい方針・ガイドラインには以下の要素が入っている。 
 
*従業員がソーシャルメディアで取るべき行動とその理由 
*1-2ページに収まる 
*組織の文化や価値と一致している 
*関連するガイドラインや教育用資料にリンクさせる 
 
 ローズウェル氏は、ソーシャルメディアを通じて、「企業は(企業が提供するサービスの)利用者とつながり、会話を交わす機会が持てる」、「まだこれがどんな意味を持つのかを、私たちは学んでいる最中だ」と述べている。 
 
―止められない動き 
 
 BBCのテクノロジー記者ローリー・ケアリン=ジョーンズは、ブログ(2月8日付)の中で、ソーシャルメディアは報道機関の編集室の「力関係を変えた」と書く。「新しい世界」を知っている若い記者たちが、自力でメディアの評判を作り上げることができるようになった、と。 
 
 「かつては、ニュースのデスクにすべての権力が集中していた。署名記事が書けるのは一部の記者だけだったし、新聞が出る前に情報を外部に出したら解雇された時代だ。そんな時代に時計の針を戻したい人はいるだろう」、しかし、「もう遅すぎる」と書いている。 
http://www.bbc.co.uk/news/technology-16946279 
(ブログ「英国メディア・ウオッチより) 


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