2012年04月10日15時58分掲載  無料記事
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ITフロント

「社内電話はないが、ロボットはある」とEvernote社長

 米ニューヨーク・タイムズを読んでいたら、何でもネット上に記録・保管できるサービスを提供するEvernoteの社長のインタビューが載っていた。普通の会社ではお目にかかれない、様々な斬新なビジネスアイデアを実行している様子を紹介したい。(ロンドン=小林恭子) 
 
 ニューヨーク・タイムズによるフィル・リビン社長のインタビュー記事は以下で読める。 
http://www.nytimes.com/2012/04/08/business/phil-libin-of-evernote-on-its-unusual-corporate-culture.html?_r=1&ref=adambryant 
 まず、もともとリビン氏はエンジニアであったので、当初、ある程度少人数でやる気いっぱいのエンジニアたちを統括するという意味ではうまく行っていたのだが、そのうち、会社が大きくなると、様々な人がいて、それぞれの動機付けを考えたり、調整のための政治力が必要とされるようになった。リビン氏は、自分がマネージャーとしては力が足りないことを知った。今は160人ぐらいスタッフがいるそうだが、管理スキルに長けたスタッフを持つことで、うまく行っているようだ。 
 
 社内の雰囲気は限りなくフラットだそうだ。例えば、それぞれの従業員には特定のオフィス・スペースがなくて(おそらく、固定デスクがないという意味だろう)、お給料は上下がもちろんあるのだけれども、上司だからと言ってよい椅子に座れるとかそういうのがない。いかに「効率的に、本来の仕事に取り組めるか」を意思決定や評価のベースにおいている。 
 
 その1つのやり方として驚くのが「社内の電話をなくした」こと。みんな携帯を持っているし(電話代の基本料金は会社が負担しているようだ)、営業の会社ではないので、電話を使って外部と長々と話をする必要はないからだ。電話で話す暇があったら、仕事に熱中するべきなのだ。電話をかけたかったら、机から離れて、会話をする人が多いという。 
 
 そして、長いメールも駄目。要点を書くことが奨励され、長いメールに書くような案件があるのだったら、歩いてその人のところまで行って話す方がいい、と社長はいう。 
 
 エバーノート内の業務をスタッフ全員が知ることを目的として、「エバーノート・オフィス・トレーニング」というのをやっている。これは、普段の自分の職場から離れ、ほかの部署に行って何をしているのかを学ぶ方法。そうすることで、社内の業務全体を知り、他部署の会議に出る中で、質問をしたり、新鮮なアドバイスが出せる。受け入れたほうの部署の人は、外からやってきた人からいい意味で刺激を受ける、と。 
 
 驚きはここで終わらない。まず、休暇が無期限なのだ。自分で判断して長さを決めなさい、と。仕事をこなすことが大事で、社員は「大人なのだから」、まるで罰のように会社にいさせるということはしない、と。 
 
 しかし、休暇の長さを自由裁量にすべてしてしまうと、かえって社員が休暇を取らないようになるのでは、と社長は心配した。そこで、休暇をとる際には、すくなくとも1週間は連続してとるようにしてもらい、そうした場合には(1週間以上の連続休暇をとる場合)、1000ドル(8万円ぐらい)のおこづかいをあげることにしたそうだ。それで非常にうまく行くようになった、と。 
 
 もう1つ、驚くことを挙げれば、自分が社内にいないとき、「エニーボット」というロボットを使っていること。この記事にはこのロボットの写真はついていないのだけれども、画面がついていて、2つの車輪付き、高さは6フィートというから、箱のようなものかもしれない。その画面を通じて、社員は社長の顔を見れるし、ロボットに付いたカメラや聴音装置で、社長は社内の様子を見たり、社員と会話を交わすことができるというのだ。 
 
 こういうロボットは、前にもテレビで見たことがあって(エバーノートの会社だったのかもしれないが)、珍しくはないのかもしれないが、なんだかなあ・・・と思う。これは、スカイプやテレビ電話の1つの形態とも考えられるけれどもー。(遠く離れた支社同士で働く社員に帰属感を持たせるために、社内に大きな「画面」を置いておく、という話もあった。私は小説「1984年」のビッグブラザーを想像してしまったが。) 
 
 ここまで説明してきて、テクノロジー関連の企業に働く人からすれば、何も驚くことがない・・・と感じる人もいるのかもしれないと思う。 
 
 経営スタイルも含め、すごいことになっているなあ、でも、これがーーグーグルも特別なめがねを発表したことだしーー、少なくともテクノロジー関係の会社では普通になっていくのかなあと漠然と思うわけである。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より) 


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