2012年04月25日09時03分掲載  無料記事
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中国

≪南京事件否定発言問題≫ 名古屋市長からの回答と追加質問書  池住義憲 

 去る4月2日、河村たかし名古屋市長の「南京事件」否定発言に関する公開質問書を提出しました。それに対する「回答」が4月12日に送られてきました。わずかA4サイズ紙1枚!です。両文書、添付ファイルで送りますのでご覧ください。 公開質問書は、名古屋市・南京市の友好関係修復のためには歴史事実を踏まえることが大前提であり欠かせないとの認識・理解から、名古屋市の基本姿勢を問うたものです。私たち名古屋市民のみならず南京市でも南京大虐殺記念館朱成山館長はじめ多くの関係者や市民が関心を持っており、名古屋市がどのように回答するかを注目していました。 
 
 残念ながら受領した回答内容は、誠意がまったく感じられないものでした。このままでは関係修復に繋がらないどころか、大きな障害となり続けます。先日(4月11日)南京市から「公金を使った交流は、河村市長が発言を撤回または謝罪しない限り中止する」と通告があったことは、市長発言の重大さ、深刻さを示しています。 
 
 今回の回答は、公開質問書に記したとおり南京市の朱成山館長や関係者にも伝えます。そして、河村名古屋市長に対しては、確認のため以下の2点を「追加質問書」として、本日(4月24日)、市長宛に提出してきました。4月27日までに、前回と同様に文書で「回答」してもらうようお願いしてあります。回答がきたらまた公開・報告します。 
 
 
【「南京事件」否定発言に関する公開質問書】 
 
2012年4月2日 
名古屋市長 河村たかし様 
 
「アジア太平洋・平和文化フォーラム」代表世話人 
天野鎮雄、池住義憲、長峯信彦、西本伸、水野磯子 
 
「アジア太平洋・平和文化フォーラム」(以下「フォーラム」)は、2011年7月、文化・芸術交流を通して相互理解と協力関係を深め、アジア太平洋地域の平和に貢献することを目的として設立された団体です。この度私たちフォーラムのメンバー5人は、3月26日より29日までの四日間南京を訪問し、南京市内にある南京大虐殺記念館(中国語表記『侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館』、以下記念館)の朱成山館長と会い、話し合いの時を持ちました。 
 
朱館長は、南京の姉妹都市である名古屋市の市長が、去る2月20日、南京市から名古屋市を表敬訪問した南京市共産党委員会常任委員ら訪日代表団に対して「南京事件」を否定する発言を行ったことについて、あらためて強い怒りと憤りを表明していました。私たちは、市長の「南京事件」否定発言がいかに中国国民とくに南京市民のこころを傷つけ、両市間の信頼と友好関係を壊している実情を改めて深く感じさせられました。 
 
朱館長との面談を通して私たちは、河村市長の「南京事件」否定発言の翌日(2月21日)、朱館長が記念館のホームページに河村市長宛の「公開抗議書」を発表し、中国国内のマスコミが転載および掲載したことを知りました。これは中国の公的機関の責任者からの抗議で、しかも広く公開されているものです。 
 
朱館長との話し合いを受けとめて、私たちは以下の5点、名古屋市民ならびにマスコミに公開したかたちで質問します。こうした内容の公開質問書を名古屋市長に提出することは朱館長との面談でもお伝えしてあり、本質問書に対する河村市長からの回答は朱館長にお伝えする予定です。回答は文書で4月13日(金)までに、フォーラム事務局宛(末尾に記載)へ郵送又はファックス送信ください。 
 
◆◆ 公開質問事項 ◆◆ 
 
1.去る2月21日発表された侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館朱成山館長からの河村たかし名古屋市長宛の「公開抗議書」をご存知ですか? すでに入手していて応答をされている場合は、そのやりとりの内容を私たち市民に公開する意志はありますか? 
 
2.1948年11月の極東国際軍事裁判(東京裁判)判決は、「日本軍が占領してから最初の六週間に、南京とその周辺で殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万以上であったことが示されている.これらの見積が誇張でないことは、埋葬隊とその他の団体が埋葬した死骸が、十五万五千に及んだ事実によって証明されている。これらの団体はまた死体の大多数がうしろ手に縛られていたことを報じている。これらの数字は、日本軍によって、死体を焼き棄てられたり、揚子江に投げこまれたり、またはその他の方法で処分されたりした人々を計算に入れていないのである」と記されてあります。また南京戦犯軍事法廷は「その犠牲者は合計30余万人である」と判決しています。 
地方自治体名古屋市の市長として、これらの連合軍の国際裁判判決という「歴史事実」をどのように受け止め、理解していますか? 肯定していますか、否定していますか? その理由は何ですか? 市長としての立場からお応えください。 
 
3.1951年に日本政府が締結調印した「サンフランシスコ講和条約」の第11条(戦争犯罪)には、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の判決を受諾し、且つ日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする」と記されてあります。 
地方自治体名古屋市の市長として、この「歴史事実」をどのように受け止め、理解していますか? 肯定していますか、否定していますか? その理由は何ですか? 市長としての立場からお応えください。 
 
4.2006年11月のAPEC閣僚会議の際の日中外相会談で合意され、2008年5月胡錦濤国家主席訪日時に両国首脳間で高く評価され研究活動継続で一致した「日中歴史共同研究委員会の報告書(2010年1月)を、地方自治体名古屋市の市長としてどのように受け止め、理解していますか(とくに日本語論文第2章並びに中国語論文第2部第2章)? 尊重していますか、尊重していませんか? その理由は何ですか? 市長としての立場からお応えください。 
 
5.去る2月20日、南京市から名古屋市を表敬訪問した南京市共産党委員会常任委員らによる公的な訪日代表団に対して行った「南京事件」を否定する発言を、地方自治体名古屋市の市長として撤回する意志はありますか、ありませんか? その理由は何ですか? また、両市間の壊れた信頼・友好関係を、今後どのように修復させていこうと考えていますか? 市長としての立場からお応えください。 
以上 
 
【送付先】〒456-0006名古屋市熱田区沢下町9-3 
     「アジア太平洋・平和文化フォーラム」事務局宛 
     (電話:052-883-6971 Fax:052-883-6972) 
 
 
【名古屋市長からの回答】 
平成24年4月10日 
 
「アジア太平洋・平和文化フォーラム」事務局御中 
 
「公開質問書」への回答について 
 
 平成24年4月2日に受領いたしました「南京事件」否定発言に関する公開質問書について、下記のとおり回答いたします。 
 
                    記 
 
1について 
 「公開抗議書」については、今回の公開質問書によって知りました。 
 
2について 
 歴史認識に関することについては、名古屋市としての見解はないので、名古屋市長としての立場からのコメントはいたしません。 
 
3について 
 2に同じ。 
 
4について 
 2に同じ。 
 
5について 
 「南京事件」に関する発言は、平成24年3月5日の名古屋市会本会議での答弁の 
とおり、名古屋市の公式見解ではありません。 
 南京市との交流については、今後も友好親善に努めてまいりたい。 
 
(参考)平成24年2月定例会(3月5日 本会議 個人質問) http://www.nagoya-city.stream.jfit.co.jp/vod_play.php?CNTID=10347&PREVPAGE=%CC%E1%A4%EB 
 
(担当課 名古屋市市長室国際交流課 電話 052ー972ー3063) 
 
 
【追加質問書】 
            記 
 
1.質問事項第2〜4項に対する回答で、名古屋市独自の歴史認識見解は持たない(持っていない)ことはわかりました。では重ねて質問しますが、名古屋市は「政府見解」(2006年6月22日政府答弁書)に同意しているのか同意していないのか、どちらですか? 
 
 また名古屋市は、政府がこれまで正式に締結調印した国際条約(1947年9月8日サンフランシスコ平和条約)を肯定するのか否定するのか、どちらですか? 確認のために追加質問します。 
 
2.質問事項第5項に対する回答で、去る2月20日、南京市から名古屋市を表敬訪問した南京市共産党委員会常任委員ら訪日代表団に対して市長が「南京事件」を否定する発言をしたのは名古屋市の公式見解ではないこと、名古屋市として南京市と「今後も友好親善に努めて」いく姿勢はわかりました。 
 
 質問のポイントは、公式な場での市長の「南京事件」を否定した発言を、市長は撤回する意志があるかどうかです。これほどまで悪化した名古屋・南京両市間の関係を修復するためには2月20日の市長発言を撤回し謝罪することが不可欠であることから、改めて質問します。 
 
以上 


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