2012年05月01日14時27分掲載  無料記事
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国際

MINURSOミヌルソ 国連西サハラ住民投票監視団 文:平田伊都子、写真構成

 <MINURSOミヌルソ>という言葉は日本人にほとんど馴染みがない。 フルネームは<The United Nations Mission for the Referendum in Western Sahara>と呼ぶ国連の組織で、日本防衛省は国連西サハラ住民投票監視団と訳している。 
 正式名を見れば、この組織が国連による西サハラ住民投票のためのものだということが誰の目にも明らかだ。 にもかかわらずMINURSOは、いまだに投票作業をやらない。 
 国連にはこれと同様のPKO国連平和維持活動組織が、スーダン、リベリア、コンゴ民主共和国、チャド.中央アフリカ、コートジボワール、東ティモール、インド・パキスタン、コソボ、グルジア、キプロス、レバノン、ゴラン高原、などに展開している。 が、住民投票を明記する組織はMINURSOだけだ。 なぜ、投票業務を21年間もほっておくのか? 
 
*MINURSO MANDATE(ミヌルソ指令) 
 
MINURSOミヌルソ?何だそれ?日本と何の関係があるんだ? そんな反発が返ってきそうだ。 当然だ、、西サハラは日本から遠く地球の真裏にあるし、その西サハラのための国連投票監視団など、日本の庶民と関係ないように見える。 しかし、21年間も国連はMINURSOミヌルソに無駄飯を食わせてきた。 その国連が強制的に日本に課している多額の供出金は、日本庶民の税金から天引きされているのだ。 もし西サハラ住民投票実施ということになれば、日本は国連から命じられてMINURSOミヌルソに自衛隊や資金を出すことになる。 我々日本人庶民に何も知らさず、何の許しを乞うこともなく、日本の人や金が使われる。 遠い西サハラを通して、我々日本人庶民も国連の醜さや狡さを垣間見てみよう、、そのカラクリを知り日本庶民国際人として国連を考え直してみよう、、 
 
 MINURSOミヌルソとは何なのか? 国連が現在公表しているMINURSO MANDATE(ミヌルソ指令)を意訳してみる。 それによると、「国連西サハラ住民投票監視MINURSOミヌルソは1991年4月29日に安保理690によって創設された。それは1988年8月30日のモロッコVSポリサリオ戦線.停戦合意に基づくものである。安保理が承認した国連事務総長の行動計画とは、西サハラ住民投票に関するあらゆる作業をこなす事務総長特使に一定期間の権限を委託するというものである。その投票とは西サハラ住民が、独立かモロッコ帰属かを選ぶ二者択一の選挙である」とある。 
 国連ははっきり、西サハラ住民が独立か帰属を選択する投票のためにMINURSOミヌルソを設置したと謳っている。 
 さらに国連は、MINURSOミヌルソ指令項目まで記述している。 
その一、停戦監視。当該地でのモロッコによる軍備縮少を監視。 
その二、西サハラ人政治囚や西サハラ人拘束者の釈放。両軍による戦争捕虜の交換。 
その三、西サハラ難民(在アルジェリア)の祖国帰還。 
その四、投票人の認定と登録。 
その五、自由で公正な住民投票を断行し、その結果を尊重する。 
上記の三、四、五で、紛れもなくMINURSOミヌルソの使命は西サハラ住民投票にある事が、明確になっている。 それが21年後の今、なぜ不明確になっているのだろうか? 
 
*MINURSOミヌルソの構成員 
 
安保理決議690によって設立したMINURSOミヌルソは、モロッコ占領地.西サハラに4か所の前線基地、ポリサリオ西サハラ難民政府解放区に5か所の前線基地を設けている。 
MINURSOミヌルソ本部は西サハラの首都ラユーンにある。 以下にその構成員を上げる。 
々駭∋務総長西サハラ個人特使クリストファー.ロス(2009年1月7日、就任) 
1943年にエクアドルで生まれたアメリカの外交官。アメリカ国務省事務官を経て、アルジェリアやシリアなどのアメリカ大使を歴任し、アメリカ国連代表部で中東と北アフリカ特別顧問を務めた。西サハラに関して、国連ではトップの調停者。 
国連事務総長特別代表ハニー.アブドル.アジス(2009年10月12日、就任) 
1946年にカイロで生まれ、1975年にカイロ大学で経済を学んだエジプト人。 1981年にジュネーヴで通訳として国連入りをし、世界各地で国連派遣要員として活躍した。 
PKF(平和維持軍)司令官アブドル.ハフィズ陸軍少将(2011年7月27日、就任) 
1957年にダッカで生まれ、国立大学で防衛を学んだバングラデシュ人。 1977年にバングラデシュ軍に従軍し、以降バングラデシュ軍歩兵部隊を統率。その一方で国連PKOに奉仕し、コートジボワール、イラク、クウェート、クロアチアなどで活躍した。 
で標要員:軍事監視要員、195名、部隊要員28名、文民警察要員6名(2007.08.31) 
 
要員派遣国は、アルゼンチン、オーストリア、バングラデシュ、中国、クロアチア、ジブチ、エジプト、エルサルバドル、フランス、ガーナ、ギニア、ホンジュラス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ケニア、マレーシア、モンゴル、ナイジェリア、パキスタン、ポーランド、ロシア、スリランカ、ウルグアイ、イエメンなど 
 
 さて、気になるお金だ。 MINURSOミヌルソは肝心の国連住民投票をほったらかして、一年間で一体いくらぐらい浪費しているのだろうか? 
 2012年4月5日、国連事務総長は国連安保理に、2012年7月1日から一年間のMINURSO予算として、58,700,000$(約4,696,000,000円)を計上している。 単純計算してもこの無益な21年間に、MINURSOミヌルソは1,232,700,000$(98、616,000,000円)も浪費していることになる。 さらに、西サハラ国連事務総長個人特使などの活動費はMINURUSOミヌルソ予算とは別枠だそうだ。 国連の西サハラ総経費は、一体どれぐらいに膨れ上がるのだろうか? 
 
*MINURSOミヌルソ代表の定例訪問 
 
 2012年4月24日、国連安保理は西サハラに関する決議2044を採決した。 2011年の決議1979とほとんど変わらない。 決議を受けて、ハニーMINURSOミヌルソ代表による恒例の関連地域巡りが始まった。 一年に1,2度、ハニーMINURSOミヌルソ代表とロス西サハラ国連事務総長個人特使が、アルジェリア、モロッコ、モーリタニアなどの関係諸国や西サハラ地域を訪問する。 
 4月28日、ハニーMINURSOミヌルソ代表がアルジェリアにある西サハラ難民キャンプに来た。 約20万人の西サハラ難民がこのキャンプでポリサリオ西サハラ難民政府を作り、1975年から国連や国際社会を舞台に西サハラ独立のため政治闘争を続けている。 彼らが解放を目指す祖国西サハラは、モロッコ軍が作った約2500kmにわたる地雷防御壁で縦断され、その大部分をモロッコに占領されている。 モロッコ占領地.西サハラには約10万人の西サハラ住民がモロッコ占領当局の迫害にさらされて、それでも難民政府と一緒に独立運動を戦っている。 ハニーMINURSOミヌルソ代表は西サハラ難民政府大統領に、「国連のMINURSOミヌルソは、サハラ人民に民族自決権をもたらすため、安保理決議の実現に一層の拍車をかける用意がある」と、約束したそうだ。 が、国連が約束した<国連西サハラ住民投票>という言葉は口にしない。 狡いよな、、詐欺だよな、、、結局ミヌルソ代表は、投票早期実現を迫る西サハラ難民の怒りを鎮めにきただけなのだ。 
 
*MINURSOミヌルソのPKF 
 
「モロッコ占領地.西サハラの首都ラユーンにある本部の周りはモロッコ占領警察に囲まれている。そのうえ、モロッコ国旗を張り巡らせている。UNの車はUNナンバーをつけるのが世界の常識なのに、モロッコは拒否しモロッコ王国の外交ナンバーをつけさせる」と、2012年4月17日に国連事務総長自身が国連安保理に苦情を申し入れ、「モロッコの妨害でMINURSOミヌルソは業務を施行できない」と、総長は安保理に泣きついた。 が、本当に泣きたいのはモロッコ占領軍や警察に迫害されている西サハラ住民だ。 
 
2011年12月に筆者は、西サハラ本土にあるMINURSOミヌルソの前線基地を訪問した。と言ってもMINURSOミヌルソですら妨害を受けているモロッコ占領地.西サハラに入れるわけがない。 西サハラ難民政府が仕切る解放区のテイファリテイ基地を訪ねた。 
 「このテイファリテイMINURSOミヌルソ基地には現在15人の多国籍兵が任務に就いている。ロシア、クロアチア、パキスタン、アルゼンチン、ジブチ、パラグアイ、バングラデシュ、スリランカ、イタリア、エジプト、マレーシア、ブラジル、ギニア.コナクリの出身だ。6か月は地雷防御壁の西側モロッコ占領地.西サハラ側で、後の6か月は地雷防御壁の東側西サハラ難民政府解放区側で任務に就く。24時間、交代で停戦監視を続けている」と、パキスタン人アミール.ジャラール司令官は施設を案内してくれた。 
 「俺は1998年から2002年まで投票人認定作業に携わっていた」と、イタリア人のエンリコ.マンニャー二情報員からうれしい声が上がった。 ちょうどその頃、筆者も西サハラ難民の投票人認定作業を取材していたので、旧友に再会したかのように抱き合った。 が、「何故、MINURSOミヌルソは西サハラ住民投票をさっさとやらないのか?」という筆者の問いには表情を強ばらせ、口をつぐんだ。 
 
*モロッコの後見人フランス 
 
 MINURSOミヌルソは国連安保理決議のおかげで、2013年4月29日まで首がつながった。 が、西サハラ住民や西サハラ難民がハンガーストライキや座り込みや外交活動など、あらゆる平和的手段で西サハラ占領地でのモロッコの蛮行を訴えたにもかかわらず、国連安保理は人権侵害問題を決議案に取り上げなかった。 なぜなら、モロッコの後見人である旧宗主国フランスが拒否権をちらつかせて、モロッコに不利な提案が出てきたら削除したからだ。 モロッコは今も昔の旦那の世話になっている。 
 そのフランスで、大統領選挙の決選投票が5月6日に行われる。 2011年3月31日に東京にチラッと立ち寄って無能の原発事故処理技術を売りつけ、福島に行ったと嘘をついたあの人種偏見サルコジを、フランス国民が再選するとは思えない。 
もしサルコジが大統領に再選されたら、、、考えたくない悪夢だが、なきにしもあらず。そうなると、モロッコの西サハラ領有を支持するフランス外務大臣、国連PKOを総轄するハーベ.ラドス元フランス外交官、フランス国連大使などなど、、国連は人種偏見サルコジ大統領に操られることになる。 しかもモロッコは2013年末まで国連安保理非常任理事国の席についているのだ。 
「国連状況は西サハラにとってよくないね?」と、筆者は友人のマライニンに問いかけた。 
「確かによくない。世界一非民主的な国連安保理に民主的な国連西サハラ住民投票を委ねているのが問題なのかもしれない。しかし、その安保理が、国連西サハラ住民投票を約束した。なんとしてでもやらせようじゃないか!フランスにも故ミテラン大統領夫人の遺功を継ぐ<フランス.リベルテ>という人権団体があり、国連に圧力をかけている」と、マライニン西サハラ難民作家協会.ジャーナリスト協会会長はMINURSOミヌルソに挑む。 
 
西サハラ人民は国連安保理の勢力分布がどうなろうと国連住民投票を諦めない。 当たり前だ。 西サハラ人民の目標はその先にある祖国の独立なのだから、、 
 
文: 平田伊都子 ジャーナリスト 


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