2012年05月04日02時38分掲載  無料記事
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農と食

家畜のための環境改善に取り組むGlobal Animal Partnership

  アメリカで未だ農作物市場全体に占める割合こそ数%に満たないものの、オーガニック作物は急速に伸びている。スーパーマーケットの中にもホールフーズマーケット(Whole Foods Market)やニューシーズンズ(New Seasons Market)のようにオーガニックを売りにしたチェーン店が急成長を遂げている。アメリカ人の中にも、安全で美味しい野菜を食べたいと考える消費者が増えているのである。 
 
  北米最大の有機野菜の小売業者であるホールフーズマーケットが新しい試みを始めた。家畜を自然環境に近い状態で飼育し、できるだけ苦痛を取り去ろうと取り組んでいるアメリカの団体、グローバルアニマルパートナーシップ(Global Animal Partnership)に2年間協力して、家畜の生活環境改善に取り組むことになったのだ。 
http://www.globalanimalpartnership.org/about-us/ 
  グローバルアニマルパートナーシップは家畜の取り扱いについて、5段階の評価システムを導入すると説明している。http://www.globalanimalpartnership.org/the-5-step-program/ 
Step 1 prohibits cages and crates. 
(ステップ1、檻とカゴを禁止すること) 
Step 2 requires environmental enrichment for indoor production systems 
(ステップ2、室内の飼育環境システムを改善すること) 
Step 3, outdoor access 
(ステップ3、家畜が屋外に出ることができること) 
Step 4, pasture-based production 
(ステップ4、放牧を主とすること) 
Step 5, an animal-centered approach with all physical alterations prohibited 
(ステップ5、動物の体に変形を加えることを禁止することを含む動物のためのアプローチを行うこと) 
Step 5+, the entire life of the animal spent on an integrated farm. 
(ステップ5+、家畜が農場で生命を全うすること) 
 
  農場や関連産業の家畜の飼育状況がこれらのステップの各基準に達しているかどうかは独立した審査会社を設けるという。 
 
  グローバルアニマルパートナーシップのエグゼクティブディレクター、ミユン・パーク氏はプリンストン大学のピーター・シンガー教授と'The Globalization of Animal Welfare'(動物福祉のグローバル化)と題する一文をフォーリンアフェアーズ誌に寄稿している(今年3月・4月号)。 
 
  今、動物の苦痛を減らすことは世界的な潮流になりつつあるとされる。工業分野の国際基準を策定している国際標準化機構(ISO)も動物福祉を最近初めて射程に入れたという。基準には飼育、種つけ、繁殖、輸送、利用のすべての段階で家畜への配慮が求められることになったそうである。 
 
  パーク氏らによると、こうした動きが近年加速している背景には食のグローバル化が間違いなくあるという。最早、動物に対する福祉は国内基準だけで片付けられる問題ではなくなってきたのだ。というのも、家畜が国境を越えて輸出入され、世界各地の食材が食卓に並ぶ時代だからだ。家畜の悲惨な状況を撮影した映像がユーチューブなどで一般市民の目に留まるようになってきた。 
  たとえば昨年6月、オーストラリアで飼育した牛がインドネシアに輸出され、堵殺されるシーンがテレビ放送された後、キャンベラ市はインドネシアの堵殺の方法が改善されない限り、インドネシアに牛を輸出するのを中止するに至ったとされる。こうしたことを背景に、多少肉や卵の値段が高くなっても、家畜の福祉を向上させて欲しいと考える消費者が増えているという。2007年にアメリカで行われたアンケート調査ではすでに76%の人々がそう考えている結果が出ている(American Farm Bureau federationによる調査から)。 
 
  先述のフォーリンアフェアーズ誌への寄稿文によれば、人類は2009年だけで約600億の家畜を消費した。内訳は約520億が鶏、約13、4億が豚、約6億5600万が七面鳥、約5億2100万が羊、約4億が山羊、そして約3億が牛だという。 
 
■ホールフーズマーケットのウェブサイトから 
http://www.wholefoodsmarket.com/products/5step.php 
  ’We've chosen to partner with the Global Animal Partnership to encourage better animal welfare practices. In fact, we're leading the industry in animal welfare!’ 
 
  「私たちはグローバルアニマルパートナーシップとの提携を行う決定をしました。家畜の福祉向上のためです。事実上、私たちは動物福祉において業界のリーダーなのです」 
 
■ホールフーズマーケット 
 
  「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market、NASDAQ: WFMI)は、テキサス州・オースティンを本拠とする、アメリカ合衆国のグロサリー・ストア(食料品スーパーマーケット)チェーンである。アメリカ合衆国を中心に、カナダとイギリスを含めて、合計270店舗以上を展開(2007年9月現在)する。グルメ・フード、自然食品、オーガニック・フード、ベジタリアン・フード、輸入食品、各種ワイン、ユニークな冷凍食品も品揃えし、いわゆる「グルメ・スーパーマーケット」と呼ばれる比較的高級志向の食料品小売店に分類されている。」(ウィキペディアから) 
 
■豪州人哲学者が魚介類の乱獲と混獲による環境問題を指弾 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200610050036494 


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