2012年05月19日11時22分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】関電は最初から火力発電を再稼働させる意思がなかった 永野勇  

 私は、東電の共同火力に26年間努めておりました。 関西電力の宮津火力と多奈川火力の詳細データは、持ちあわせておりませんが私は、テレビを見てあきれたのは、宮津火力と多奈川火力については、最初から再稼動させる意思が全く無かったと思います。再稼動させる為には、停止中に各機器の長期保管とその為の最小人数の配置が必要です。ボイラー、タービン、発電機、主要配管、その他の主要機器を内部の錆を防ぐ目的で保管する必要があります。 
 
 しかし関西電力は、宮津と多奈川については、長期保管作業もせず、運転員の配置もしていないようです。(外部からの侵入者を防ぐガードマンはいたようです)そうなってくると、はじめから再稼動させないということで進んでいたものを、途中から再稼動させるということになった場合、停止期間がどうだったのかということが大きなファクターになります。10年間位停止していたと聞いておりますので、そうなってくると機器の劣化も考えられ、相当な努力をしても1.5年から2年位はかかるかもしれません。各機器の点検からはじめて、使用不能機器の発注、材料調達、不良機器の製作、据付・試運転をする必要があるからです。 
 
 しかし、関西電力が本当に電気事業者としての自覚を持っていたなら、昨年の4月から準備が出来たのです。政府がなんと言おうと最終的には原発は再稼動出来ると考えていたのでそれをやらなかったということでしょう。 
 
 次に、ボイラー、タービン、発電機の長期保管方法についてふれます。 
ボイラー:窒素封入保管と満水保管(錆び止め剤であるヒドラジンを添加した純水を満水にして保管する)がありますが、満水保管が多いです。 
タービン:乾燥空気を送風する乾燥空気保管が主流です。 
発電機 :シリカゲル等を入れてコイルの劣化を防ぎます。 
 
 では、なぜ再稼動させない火力発電所を廃止しないかという問題ですが、廃止しないで認可出力を得ていれば、設備更新で発電設備を設置することが出来、地元対策からはじめなければならない新設よりずっと有利だからです。 
 
 以上ですが、端的に表現するならば、口先では「電力の安定供給に万全を期す」と言いながら、実際はそうではなく、電力企業の意のままに事を運ぶという電力企業の横暴さ以外のなにものでもないと思えてなりません。 


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