2012年05月26日00時03分掲載  無料記事
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検証・メディア

【七つ森書館 vs 読売新聞】読売新聞、なりふり構わぬ出版妨害、今度は「販売差し止め仮処分」申請

 『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』の出版をめぐって発行元の出版社七つ森書館に対する出版契約無効確認訴訟を起こしている読売新聞社は、続いて「販売差し止め仮処分」を申し立て、書店・取次会社に、当該出版物の販売をしないよう要請するというなりふり構わぬ攻勢に出ている。これに対して七つ森書館は、この行為は「正当な出版を妨害するための申し立てと評さざるを得ません」として、書店・取次会社に説明の文書を配ると同時に、読者に対し、書店の店頭で同書を手に取り、「図書館へリクエストしてください」と訴えている。(日刊ベリタ編集長 大野和興) 
 
 この間の経過について、七つ森書館の中里英章代表は次のように述べている。 
 
5月17日に日本外国特派員協会で記者会見をしました。 
翌 18日、東京地裁で開かれた口頭弁論で、小社は名誉を著しく傷つけられたので、200万円の損害賠償を求める反訴をしました。その後、司法記者クラブで記者会見をしました。この席上で、『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』(読売社会部清武班)が、本日、取次会社に搬入され、書店店頭に並ぶことを明らかにしました。 
 
すると、読売新聞社は、「販売差し止め仮処分」を申し立ててきました。そればかりでなく、書店・取次会社へ「七つ森書館に対する販売禁止の仮処分申し立てについて」という文書を配布し「司法の結論が出るまで販売しないよう強く要請します」と主張するに至りました。そこで、私たち七つ森書館は、下記の文書を書店・取次会社へ配布しました。(資料1参照)。 
 
 
 この文書の中で七つ森書館は「七つ森書館が本書を出版するにあたって、読売新聞社とは2010年12月以来、丁寧に丁寧に交渉を重ねてきました。その経緯は、下記(「読売新聞社との著作権交渉の経緯」)の通りです。審尋において、岡弁護士(小社がお願いしている弁護士さんで、著作権の権威です)が「これほど丁寧に著作権交渉をした例はまれである」 と述べたほどです。」と述べている。(その経過については資料2参照) 
 
 資料2をみると、同書の著者名「読売社会部清武班」は契約交渉の中で同意されていたにもかかわらず、昨年11月に「株式会社読売巨人軍」球団代表清武英利氏が同社取締役会長渡邉恒雄氏を読売ジャイアンツの人事問題に絡んで内部告発した後。読売側の対応に変化が出ているとことが読み取れる。問題の本は、七つ森が発行する「ノンフィクションシリーズ“人間”」のひとつで、すべての契約交渉は完了、出版契約書も交わし、ゲラの著者校正にまで入っていた段階での出来事だった。 
 
 
≪資料1≫ 
●読売新聞社の仮処分申し立てについての私たち七つ森書館の考え 
 
謹 啓   薫風の候、みなさまにおかれましてはご清栄のこととお慶び申し上げます。 
 去る4月11日、読売新聞社は七つ森書館が発行する『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』について出版契約無効確認訴訟を起こしました。そして、本書発行後の5月18日に販売差し止め仮処分を申し立てました。 
  読売新聞社は、当初、出版差し止めを求める自信がなかったのでしょう。「出版契約書」の無効確認を求めるという、差し止めの効力を伴わないばかりか、判決まで時間がかかる訴訟を提起するにとどまっていました。それなのに、本書を出版する時点で、突然、仮処分を申し立てたのですから、正当な出版を妨害するための申し立てと評さざるを得ません。私たち七つ森書館は、この申し立てが却下されるものと確信しております。 
 なお、一般論として、このような仮処分命令は、出版社に対して、本書を書店様・取次店様へ搬入する行為を禁止するだけで、店頭在庫品の回収を義務づけるものではありません。仮処分命令が出た場合でも、取次店様・小売店様にご迷惑がかかることはあり得ません。どうぞ、ご安心して販売を継続してください。 
          *   *   * 
  さて、5月18日に読売新聞東京本社広報部から「七つ森書館に対する仮処分申し立てについて」という文書が、「取次店・書店関係者各位」宛に配布されました。この文書には、事実誤認があったり、立証が不十分な内容がありますので、私たち七つ森書館の考えを述べさせていただきます。 
 昨21日に、仮処分申し立ての審尋があったのですが、そこでは、当然、著作権が問題になりました。読売新聞社が主張する「職務著作」は著作権法第15条の5条件を満たさなくてはならないのですが、5条件を満たしてることを明示していなかったために、書面で補充することになりました。 
 また、私たち七つ森書館が本書を出版するにあたって、読売新聞社とは2010年12月以来、丁寧に丁寧に交渉を重ねてきました。その経緯は、下記(「読売新聞社との著作権交渉の経緯」)の通りです。審尋において、岡弁護士(小社がお願いしている弁護士さんで、著作権の権威です)が「これほど丁寧に著作権交渉をした例はまれである」 と述べたほどです。ですので、この事実経過に沿って、反論する書面を読売新聞が提出することになりました。 
 そして、著者名に「読売社会部清武班」とした経緯も下記(「読売新聞社との著作権交渉の経緯」)の通りです。「ノンフィクションシリーズ“人間”」を刊行する前に作成した内容見本のパンフレットに収められたものにも、この名前で収録しています。書店様・取次店様へもお送りして、予約募集をさせていただきましたから、覚えている方もいらっしゃるかと思います。2月8日に読売社会部次長が了解したのは勿論ですし、パンフレットも読売新聞社へ届けております。決して、無断で用いたものではない ことがおわかりいただけると存じます。 
 私たち七つ森書館の考えは以上です。 
 仮処分の次回審尋は6月8日に開かれます。双方から準備書面が提出されますから、その検討がおこなわれ、次の準備書面が用意されることになります。 
 東京地方は美しい緑の季節です。朝夕は冷えることもございます。みなさまのご自愛といっそうのご発展を祈念申し上げます。                謹 白 
             2012年5月22日 
            株式会社 七つ森書館 
           代表取締役 中 里 英 章 
 
 
≪資料2≫ 
●読売新聞社との著作権交渉の経緯 
 
2010年 
12月17日 七つ森書館の編集担当者が、読売新聞社のHP経由で、「ノンフィクションシリーズ“人間”」に収録して復刻出版したい旨の問い合わせメールを送る。 
12月21日 読売新聞東京本社社会部次長(当時。現在・北海道支社編集部長。執筆者の一人。以下、読売社会部次長)からメール:知的財産部から連絡を受けた。 
12月28日 読売巨人軍事務所にての清武英利氏と出版についての打ち合わせ。手続き的な話もする。 
2011年 
1月29日 清武氏からメール:出版契約書の著者名、本に載せる著者名を「読売新聞社会部清武班」か「読売社会部清武班」にしてほしい。かつての部下らの同意も得ている。 
2月2日 読売社会部次長からメール:「読売社会部清武班」のほうが語呂が良い。出版契約の手続きについては、著作権管理の部署に相談するので、しばし時間がほしい。 
2月8日 読売社会部次長からメール:内容見本パンフレットの文面(著者名を「読売社会部清武班」とする。著者プロフィールは清武氏を掲載する。他)OK。出版契約に関して、社内的な手続きは、ほぼメドがつきつつある。 
2月14日 読売社会部次長からメール:出版契約書の記載事項について以下のようにしてほしい。 
1)清武英利氏はすでに退社しているので、著作権代表者は、社員である読売社会部次長名とさせてほしい。 
2)著作権者は「読売新聞東京本社」 
3)印税振込先は読売新聞東京本社に振り込んでから、従業員の分については、本社が給与口座に、清武氏の分は清武氏の個人口座に、それぞれ源泉徴収した形で振り込みたい。 
4)初版を各著者1人に2部ずつ、計18部ほしい。 
以上、了承であれば、正式に「社印」を押印した出版契約書を作成したい。 
3月10日 七つ森書館から読売新聞社会部次長へ、出版契約書を2通送付。 
5月8日 読売社会部次長が自署捺印した出版契約書が七つ森書館へ送られてくる。「本社の法務部門と協議の上、私個人の捺印と致しました」とメモした付箋つき。 
10月20日 読売社会部次長へ、著者校正ゲラを2部送付。 
11月5日 読売社会部次長からメール:校正は粛々と進めている。 
11月11日 清武氏、内部告発記者会見。 
11月23日 読売社会部次長と電話:「法務部へ預けた」とのこと。 
12月1日/12月26日 読売新聞グループ本社社長室法務部部長と同主任来社。 
 
 
≪資料3≫ 
●みなさまへお願い● 
どうぞ、『会長はなぜ自殺したか』を書店店頭でご覧になってください。できれば、図書館へリクエストしてください。大型書店の店頭にない場合は、販売を自粛していないかどうか訊ねてください。 
 
●裁判費用カンパのお願い● 
読売新聞側は、さらに仮処分などの訴訟を仕掛けてくると予想されます。多大な訴訟費用がかかります。ひとり七つ森書館の力で闘い抜けるものではありません。誠に恐縮ですが、裁判費用のカンパをお願いします。 
 
郵便振替口座 00170−1−37996 株式会社七つ森書館 
 
「裁判費用カンパ」と明記してください。今後の経過報告をお送りするとともに、報告集会などを企画し、ご案内を差し上げます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 


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