2012年06月01日11時58分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】確実な安全性が確保されない限り、原発の再稼働を許さない  日弁連が定期総会で宣言(上)  海渡雄一(弁護士) 

 日弁連は2012年5月25日大分県において開催された定期総会において、「東日本大震災被災者及び福島第一原子力発電所事故被害者に対する支援活動を継続し,確実な安全性が確保されない限り停止中の原子力発電所の再稼働を許さない宣言」を採択しました。 
 
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/assembly_resolution/year/2012/2012_1.html 
 
 2011年3月11日に発生した東日本大震災と津波、福島第1原発事故に関 
して、日本弁護士連合会が行ってきた1年と2ヶ月あまりの諸活動を総括し、今後の課題を示したものです。二重ローン対策や災害後の街づくり、今後の災害対策法制の在り方についても重要な提言を行っており、ぜひ、全体をお目通し頂きたいと思います。 
 とはいえ、この宣言は議案書でも17ページにわたる長文ですので、この報告では、市民の関心がとりわけ高いと思われる原子力事故の被害に対する損害の賠償と被害者への国のあるべき支援、原子力発電所の再稼働について、この総会決議の内容を簡単にご説明したいと思います。 
 
◆損害賠償について 
 
 まず、損害賠償については、「福島第一原子力発電所事故は、東京電力株式会社が必要な地震・津波対策を怠ったために発生した災害であり、同社が事故の被害者に対して損害賠償を行うべきことは当然であり、当連合会は完全賠償の実現に引き続き取り組む。また、原子力損害賠償紛争解決センターについては、今後増加が予想される受付事件の迅速かつ十分な解決のため、組織態勢の充実・強化を求めるとともに、和解案に裁定機能を持たせるための新法の制定を要請していく。」としています。この活動は、現在日弁連が総力を挙げて取り組んでいる課題です。提案理由中では原子力損害賠償紛争解決センターの実情なども紹介しています。 
 
 続いて、被害者への国のあるべき支援については、「福島第一原子力発電所事故は、国の原子力政策の下で発生したことから、被害者に対する人道的援助の第一次的な責任は国にある。当連合会は、被害者の居住地選択等に関する自己決定権を尊重し、被害者への生活給付金の支給等の生活再建支援制度や福島県外在住の避難者等を含む被害者に対する健康診断の実施と医療の保障など、より実情に 
即した被害者援護立法の制定に全力で取り組む。」としています。この課題は、通常国会に提案された与野党の議員提案立法の一本化が図られ、政府サイドとのツメがなされている段階です。5月29日には日弁連はこの法案の早期成立を求める緊急院内集会を参議院会館で開催することを予定しています。 
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2012/120529_4.html 
 
◆再稼働について 
 
 そして、原子力発電所の再稼働については、「福島第一原子力発電所事故のような事故の再発やこれを更に上回る規模の新たな原子力発電所事故が起きれば、日本社会は崩壊しかねない。このような深刻な災害を二度と発生させてはならない。そのため、当連合会は、 
 
1 原子力発電所の新増設(計画中・建設中のものを全て含む。)を止め、再処理工場、高速増殖炉などの核燃料サイクル施設は直ちに廃止する、 
 
2 既設の原子力発電所のうち、(1)福島第一及び第二原子力発電所、(2)敷地付近で大地震が発生することが予見されるもの、(3)運転開始後30年を経過したものは、直ちに廃止する、 
 
3 前記以外の原子力発電所は、10年以内のできるだけ早い時期に全て廃止することとし、廃止するまでの間は安全基準について国民的議論を尽くし、その安全基準に適合しない限り運転(停止中の原子力発電所の再起動を含む。)は認められない、との意見を既に公表している(2011年7月15日付け「原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書」)。 
 
 しかるに、近時、福島第一原子力発電所事故の原因がいまだ明らかになっておらず、事故原因を踏まえた安全対策も確立できていないにもかかわらず、政府は対症療法的な津波対策・電源対策を講じただけで、福島第一原子力発電所事故の教訓を忘れ、電力不足の危機感を煽り、停止中の原子力発電所の再稼働を目指している。 
 
 深刻な原子力発電所事故被害の再発を未然に防止するため、現在停止中の原子力発電所については、福島第一原子力発電所事故の原因を解明し、その事故原因を踏まえた安全基準について、国民的議論を尽くし、それによる適正な審査によって確実な安全性が確保されない限り、再稼働しないことを求める。」と提案しています。(次号へ続きます) 


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