2012年06月05日00時04分掲載  無料記事
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核・原子力

≪たんぽぽ舎発≫確実な安全性が確保されない限り、原発の再稼働を許さない  日弁連が5月25日の定期総会で宣言文を採択(下)  弁護士 海渡雄一  

 総会では、確実な安全性が確保されることがあるのか、誰がそれを判断するのかというご意見もありました。日弁連はすべての弁護士が加入する強制加入団体であり、会員の合意の範囲で行動をしてきました。1976年・1983年には、日弁連は原子力開発の抜本的な見直しを提言し、2000年10月6日の人権擁護大会では「エネルギー政策の転換を求める決議−原子力偏重から脱原発へ−」を採択し、原子力発電所の新増設の停止と既存の原子力発電所の段階的な廃止 
を求めました。福島第一原子力発電所事故後には、このような事故を二度と起こさせないため、2011年7月15日に「原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書」を採択し、上記のような具体的な基準を示した脱原発政策プログラムを提案しています。今回の意見もその延長上にあります。 
 
 今回の意見においても、敷地付近で大地震が発生することが予見される原発と運転開始後30年を経過した原発は即時廃止を求め、「先に述べた意見によって直ちに廃止すべき原子力発電所以外であっても、福島第一原子力発電所事故の原因を解明し、その事故原因を踏まえて見直された安全基準による適正な審査によって確実な安全性が確保されない限り、現在停止中の原子力発電所を再稼働しないことを求め」(提案理由の結論部分)たものです。理由中では、ストレステストや政府の暫定基準についても具体的に批判していますので、ご参照下さい。 
 
 全ての原発について即時廃止を求めるものではありませんが、安全性確認のないままでの再稼働については,明確に反対するという姿勢を明らかにした点で大きな意義があると考えるものです。そして日弁連は、政府や規制機関が安全といっているからといってそれだけで確実な安全性が確保されているとは考えていません。 
 
 5月17日には保安院が新耐震設計審査指針が制定された後、旧指針で審査された原発の許可も有効であるとの見解を原子力安全委員会に無理強いし、原子力安全委員会はこのような圧力に屈して、同様の見解を示していた事実が発覚しました。規制機関が根本から生まれ変わるのでなければ、到底市民の信頼は得られないことでしょう。事故原因の正確な理解を踏まえ、確実な安全性が担保できる審査基準が設定され、公平な審査がなされることが必要であり、規制機関の判断だけでなく、司法判断が必要となることもあり得ると考えています。 
 
 日弁連の定期総会宣言を簡単にご紹介しました。この宣言が福島原発事故の被害に苦しむ多くの市民の法的な救済につながり、また二度と同様の事故を起こさせないために、脱原発政策を早期に実現するため、少しでも役立つことを祈念いたします。 


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