2012年07月12日12時47分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201207121247004

核・原子力

【たんぽぽ舎発】原子力ムラの犯罪を振り返る≪上≫ 規制の指針もない-組織もない-人材もない  山崎久隆

 総合エネルギー調査会は「エネルギーミックスの選択肢の原案」を何度かに分けて公表した。2030年の発電設備割合として原発を0%、15%、20〜25%、35%が提示されている。「35%は「選択肢」から外され「参考」とされた) 
 
◆総合エネルギー調査会のおかしなおかしな数字 
 
 いまさら「35%」とは一体何事かと思うのだが、もはや自民党さえも不可能としている「新規増設」が含まれた数字だ。 
 20〜25%というのも、新規立地こそしないものの、既に着工している原発などは稼働させ、現存する原発を機械的に40年間稼働させる前提で計算されたものであり、現実的にはあり得ない想定だ。 
 
 15%になるとようやく「脱原発依存」めいた割合になるが、その下がはすぐ0%になるので、全体で、あたかも0%が極端な例の印象を持たせる効果がある。なお15%とは、全50基の原発のうち、運転年数が30年に達しない原発を動かし続け徐々に減らすことを想定している。 
 
 原発を使い続ける前提であるとしても、本来ならばこの15%が最大で、0、5、10、15とした割合が妥当な並びだろう。実際には国民世論の動向や現在の安全性確保能力を考えても、0%以外の選択肢はあり得ない。2030年とは今から20年近くも先の未来だ。そんな時代でさえ原発が基幹電源であることなど不可能だ。 
 
◆現実を直視しよう 
 
 「原発が必要」と国がいくら主張しても、原発が危険であれば使えない。当たり前なのだが、国も地元も本当には分かっていない。あげくに原発の安全性は誰が責任を持って決定するのかさえ決まっていない。安全性は誰が検証できるのか。政治家ではないことは確かだ。信じる人はいない。まして責任を取ることができると思う人もいない。野田首相であろうと誰であろうと、首相を辞任したり議員を辞職したりしても追いつくわけがない。 
 
 では、原子力安全委員会だろうか。 
 この組織は、今年3月末で消滅したはずであり、その後を引き継ぐのは原子力規制委員会とされているが、それがまだ発足さえしていない現在では「死に体」だ。原子力安全・保安院も同様に規制庁に吸収されることになっており、本当は存在しない。その保安院などがストレステストにお墨付きを与えても、実際には何の保証にもならないことはみんな気づいている。 
 
 では、原子力規制庁ならば原発の安全性を保証できるというのか。 
 斑目春樹安全委委員長は「安全性を確認する指針に瑕疵があった」と国会事故調査委員会の場で認めている。原子力発電所が安全であるかを調査審議するためにある指針が間違っているのだから、新しくできる規制庁は、まず指針類の無効宣告をし、何をよりどころに審査するかを構築し直さねばならない。 
 現状では、組織もない、規制の指針もない、そして人材もない状態だ。これで原子力を使い続けるあてなど見いだせるはずがない。 
 
 これまで「原発の開発以前の能力」しか有しない現状だったことを正直に認めることからしか始まらない。 
(次号以降、≪中≫につづく) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。