2012年07月15日12時02分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】原子力ムラの犯罪を振り返る ≪下≫現在、原発は全て「違法状態」にある  山崎久隆

 原発の安全審査を担保してきた「原子力発電所立地審査指針」などの指針類。その一つが2006年に改定された「耐震設計審査指針」だが、この指針が改定された理由は、実際の地震に全く対応できなかったからだ。そのための審議会は公開ヒアリングを含めて2002年から行われていた。 
 
 多くの議論があったが2006年6月に指針案「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)」が作られてパブリックコメントに掛けられた。680項目の意見が集まったが、ほとんど反映されないままに原案通りの指針が公表されたのが9月だった。これに対して委員の一人、石橋克彦神戸大学教授は抗議の辞任をしている。 
 
 この指針には様々な欠陥があったが、その一つが津波対策を単に「考慮すべきこと」と、全く軽視したことだ。 
 耐震設計審査指針は「耐震」の名の通り、地震による揺ればかりがクローズアップされ、地震が起きれば、特に海溝型地震が起きれば、ほぼ確実に発生する津波に対しては「地震随伴事象」などとして、簡単に書かれているだけだった。 
 
 また、その当時は既に対策が取られていた「過酷事故対策」と地震や津波との関係もあいまいなままで、どのような地震、津波の災害を受けたら、過酷事故対策としての対応に移行するのかも示されなかった。そのため今回のようにベントや代替注水措置も実行不可能な原因となった。 
 
 現在、原発は全て「違法状態」にある 
 
 大飯原発が無理矢理起動しようと、東電が柏崎刈羽原発の再稼働を再建計画の柱に据えようと、原発の運転など出来ない。違法だからだ。基準が無くなってしまい、安全性も確認できない以上、原発は現在「原子炉等規制法違反」である。 
 
 原子炉等規制法では第24条の「許可の基準」において、「その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。」と定め、「各号」には「三 その者に原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。」および「四 原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(中略)又は原子炉による災害の防止上支障がないものであること。」に違反をしており、それを隠して許可を得たものであって許可そのものをさかのぼって無効とすべきだ。 
 
 これら法令に違反をしていないと証明すべき安全審査そのものが、瑕疵を持った指針に基づき行われ、さらに審査を行った者たちに「十分な知見」など全くなかったことが露呈している。 
 
 違法原発の運転阻止は正当な権利である。それは正当防衛である。 


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