2012年07月17日17時04分掲載  無料記事
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コラム

【編集長妄言】16日午後、代々木公園 暑さの中で聞いた言葉  大野和興

 17万人が集まった7月16日の「さよなら原発集会」。うだるような代々木公園の午後、会場の一隅で聞いた、呼びかけ人の一人、大江健三郎の言葉が胸にしみ込んだ。 
 
 大江は、自身がもっとも尊敬する作家として中野重治を引用した。中野が警察にとらえられ、妻と生まれて間もない赤ん坊も同時に刑務所に送られる。赤ん坊は刑務所の過酷な環境に中で死んでいく。 
 
 刑務所から出た妻は獄中の夫に手紙を書く。その手紙の最後の1行を大江は紹介した。 
 
“私らは侮辱のなかに生きているのです” 
 
 脱・反原発とは、人間としての尊厳をかけたたたかいなのだと大江は語ったと思った。いや、「尊厳」なんてものではない、人間そのものをかけたたたかい、と言った方がよいかもしれない。ぼくよりやや年上の老作家の覚悟を聞いた気がする。 


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