2012年07月23日23時25分掲載  無料記事
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コラム

12期突入  鬼塚忠

  電子書籍が売れて、紙の書籍になった。 
 
 夏川賀央著「すごい会社のすごい考え方」という本が講談社から文庫として出版され、今週、全国の書店に並んだが、実はこの本、不思議な経緯で出版されることとなったのだ。 
  この本は、まず、日本、韓国、中国、台湾が共同出資して作ったユナイテッドブックスという出版社で、第一発目の紙の書籍として、期待を受けながら出版された。しかし、発行後の発売は振るわず、消えゆく運命となった。 
 
  しかし同版元が、ビジネス形態を紙の書籍から電子書籍に変更した。その勢いでこの書籍を今度は電子書籍にすることにした。するとなんとApp Storeで5万部も売れたのだ。ただそれが85円の売値だったので、そんなには商売としておいしくないが。ただ、それが次へつながる道を作った。 
  「これはいけるかも」と思い、その本を読み直し、魅力を再確認。そのエピソードとともに、版元へ営業を開始した。「この本は紙ではそこそこだったけど、電子書籍になり、有料で5万部も売れました。過去に例がないほどです。もう一度書籍として出しませんか?」と。すると、講談社から文庫として出版される運びとなった。 
 素直に嬉しかった。まるで何か敗者復活のドラマのよう。 
 知る限り、単行本、電子書籍、文庫というルートは今まで聞いたことがない。こうしてほとんど寿命を終えかけたコンテンツが生き返る。痛快だ。 
  さらに面白いのは、電子書籍の権利はユナイテッドブックス、文庫の権利は講談社ということになる。権利の多元展開となる。 
  今度はこの海外翻訳語権を、世界に売りたい。ひとつのコンテンツを多元展開して売るのが、私たちの得意とするところ。 
 
 出版不況とは言いつつ、今までないことが起こるようになった。面白い時代になったと思う。何でもありの時代になってきた。会社の大きさや歴史とはほとんど関係しない、アイデアとやる気のある会社が生き延びやすくなったと思う。そこは心の持ちようがすべての出発点になる。 
  安定した巨船でさえ揺れようとしている。流通を牛耳っていたトーハンと講談社が決裂しそうだ、というニュースも流れてきている。これなどいい例だ。 
 http://biz-journal.jp/2012/07/post_401.html 
  出版業界はどんどん変わっている。こうも業界が不安定だと小さい会社の方がメリットを感じる。 
  これから1年がとてもおもしろくなりそうだ。ますます出版業界にいるのが楽しくなった。 
 
  今月から弊社は12期へ入る。 
  まだまだ、私たちは面白いことをする。 
  乞うご期待! 
 
鬼塚忠  (作家・出版エージェント) 
「アップルシード・エージェンシー」代表 
http://www.appleseed.co.jp/ 


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