2012年07月24日13時33分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】東京電力に原発を動かす資格はない、実質は全面撤退だった  山崎久隆

 7月16日、真夏の太陽が容赦なく照りつける中、実に17万人の市民が東京の真ん中、代々木公園に集まりました。 あまりに広く、大勢集まる中ではメインステージの音など到底聞こえるわけが 
ないということで、会場には全部で4箇所のステージが設けられていて、そのうち最も原宿駅に近い場所に「第四ステージ」がありました。ここでは、槌田敦さんの電力料金を旧料金で支払う運動の提唱と、河合弘之弁護士(東電株主代表訴訟弁護団長・脱原発弁護団全国連絡会代表)による、株主訴訟と各地の原発訴訟の取り組み、そして東電取締役などの責任者を告発する取り組みを紹介、そして参加を呼びかける訴えがあり、その後に日本各地の現地の取り組み東の紹介が行われていました。 
 
 11時から始まる予定が、実際には警察の妨害が重なり大幅に遅れますが、12時過ぎに市民が車道を解放しそれ以降は熱心な聴衆に囲まれての報告集会になりました。 
 私が発言をしたのは、午後1時を大きく回ったあたり。最も日の高い、暑い時間帯になっていました。この日私は、東電株主代表訴訟への協力を呼びかけるために、人々に訴えました。その時の発言を簡単に再現します。 
 
 株主代表訴訟を提起した目的には大きく二つあります。そのうちの一つは東電取締役に責任を取ってもらうこと。当日第四ステージでの発言者は、何人もが、特に福島県から参加された方からは強く強く「だれも責任を取っていない」ことの指摘がありました。 
 
 福島原発震災は本来ならば強制捜査をして、とっくに立件されているはずの大犯罪です。私たちは刑事告発は出来ますが、強制捜査権があるわけではありません。 
 しかし株主は違います。株主にしか出来ない戦い方がある。それが株主代表訴訟です。少なくても5.5兆円を超える損害を東電歴代の取締役27名に、すべての資産を売却し会社に返却すること。返却されたお金はすべて福島の被災者の賠償金に充てること、を要求しています。 
 
 もう一つの目的は、大飯原発が再起動していますが、これから原発を再起動しようとする動きについて歯止めを掛けることです。 
 もし、これだけの大惨事を引き起こした福島第一原発震災を知りながら(もちろん日本中が知っていますが)原発を再起動して、再び事故を起こした場合、例え福島第一ほどではなくても、人を傷つけ、土地を汚染すれば同じ犯罪です。これを起こした場合は当然ながら取締役は責任を問われることになると警告することです。 
 
 日本中の電力会社には、原発を事故無く動かす能力はありません。安全性の高い原発を建てる技術もありません。なぜならば、福島第一原発でも事故後の対応がほとんど出来ていないことが明らかであり、それは他の電力も何ら変わらないからです。 
 
 ◆人為的な冷却材喪失事故を引き起こした 
 
  一例を挙げます。 少なくても福島第一原発の3基のうち2号機は原発は人為ミスにより破壊されました。時間があったにもかかわらず、原子炉に冷却材を戻すことに失敗し、みすみす空だき状態にし、その結果炉心損傷にいたり、原子炉を破壊し、格納容器も破損させています。これらは適切な対応が出来てれば止めることが可能でした。しかし現場では起きていることを把握することが出来ず、有効な手立てを取るどころか、間違った運転操作を行っています。 
 
 原子炉注水のためには圧力を下げなければならないと、逃がし安全弁を全開にし、そのために大量の冷却水を圧力容器から流出させ、炉心が露出してしまいます。これは、人為的なLOCA(冷却材喪失事故)でした。 
 
 冷却材を入れなければ炉心崩壊します。水を入れるにはポンプが必要ですが、ポンプは全電源喪失で全滅状態です。そこで消防車のポンプを使うことを考えました。 
 ここまでは良いでしょう。しかしこの消防用ポンプがどれほど水を入れる能力があるか分かっていませんでした。少なくても原子炉の圧力が高すぎて、減圧しないと入りません。そこで逃がし弁を開いて減圧するのですが、これを行えば冷却材があっというまに抜けることは常識です。その時直ちに消防用ポンプから水が入らないと炉心崩壊は免れないというのに、水は結局ほとんど入らなかったの 
です。 
 
 読み違いです。こんな読み違いをした原因は、こういう注水方法を実際に行った経験も無いし、設備側が対応もしていなかったし、消防車のポンプが能力不足だったことも知らなかったからです。冷却材を注水するための高圧注入ポンプの電源を外部から強制投入するような方法が無いこと、緊急で設備工事をする能力も無かったことが最後の原子炉を破壊し、それまで以上の大量の放射能を福島の 
空に拡散させました。 
 
 ◆結局東電は撤退していた 
 
 もう一つ例を挙げます。東電職員が3月15日当時、退避を計画していたことは事実であり、その退避計画は「最低限の人員を除き退避」でした。この「最低限」が約70名だったわけですが、通常原子炉を停止し、冷温停止状態に持って行くには原子炉一基あたり100名は必要です。さらに今回は、大破し汚染された原子炉建屋に立ち向かいながら、炉心崩壊を防ぎつつ、冷温停止させる必要があり、実質的には70名ではほとんど何も出来ない状況です。けっきょく、国会事故調査報告書にある現場の声を見ても、何度も死を覚悟し、家族に最後のメールを打ち、打つ手がほとんど役に立たない絶望感にうちひしがれながら数日間を過ごしたことがわかっています。 
 
 これでは全面撤退したのと実質的な差はありませんでした。 
 成功したのは電源が確保できていて、もともと運転していなかった5、6号機の冷温停止だけで、1〜4号機については有効な手段はほとんど打てないままに炉心崩壊を起こしています。4号機の使用済燃料プールが炉心溶融にまで至らなかったのは、のこされたメンバーの努力では無く、設備不良か作業行程上のミスでプールゲートに隙間が空いたからです。これがもし無かったならば、70名は 
本当に全員死亡したかも知れません。 
 
 それが福島第一原発の現実だったのですが、この責任は取締役と規制当局にあります。取締役は当然ながら現場の実態を知りつつ、このような原子炉を安全に止める、冷やすための設備投資を怠り、電力が最後の命綱であることを知りながら、あらゆる手段を講じて電源を供給するための対策を怠り、さらに事故直後に置いてさえ、電源の供給体制を可及的速やかに行うべきなのに、その能力も無か 
ったことを露呈させました。 
 
 これが原発を17基も建てて動かしてきた世界最大の電力会社の実態です。そのことを追求すれば、当然ながら他の9電力(日本原電を含む)の原発が安全と言いきれるはずが無いし、それを証明することは今現在、全く出来ていません。それがないままに大飯原発は再起動しています。今後も再起動する原発が増えるということは、福島第一の悲劇を繰り返すことになります。そんなことは断じて許されるはずが無いのです。 
 
 真夏の炎天下、このような趣旨の話をしていますが、熱心に聞いてくれる人がたくさんいました。本当に大きな力が、この第四ステージ周辺にあふれいてると感じました。原発を止める闘いは、まだ始まったばかりです。 


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