2012年08月09日12時50分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】西と東をつなぐ重要な変電所が失火で停止 呆れ、そして怒り! 山崎久隆

 「新信濃変電所が火災」との一報を聞いて、飛び上がるほど驚いた。電力の安定供給にとって本来ならば最重要設備が、失火焼失かと、呆れ、そして怒りがこみ上げてきた。 
 
 実際に流れた東電の発表文を以下に貼り付ける。 
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(お知らせ)新信濃変電所構内の火災による周波数変換設備の停止について 
 
平成24年8月4日 
東京電力株式会社 
 
 平成24年8月3日17時37分頃、当社新信濃変電所(所在地:長野県東筑摩郡朝日村古見2896-1)1号変圧器に接続される電力用コンデンサ付近で火災が発生し、その影響により同変電所構内にある周波数変換設備(1号:30万kW、2号:30万kW)を停止いたしました。 
 火災については、17時40分、消防に連絡し、21時47分頃に消防から鎮火を確認いただきました。 
 現在、火災の原因について調査中であり、周波数変換設備の復旧見通しも現時点では不明であります。 
 なお、当社の供給力については、当社ホームページでもお知らせさせていただいておりますが、本日時点で、8月6日〜10日、13日の週においては、それぞれ予備率10%以上を確保しており、安定供給に直ちに影響はないものと考えております。 
以 上 
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 既に設備は復旧し、今現在変換所は稼働可能だそうだ。何事もなかったと言えばそうなるが、杜撰さは目に余る。 
 
 原発が止まっている現在、東電が設備不足になり広域連係で103万キロワットの供給を受ける可能性があると、多くの人は思っているのだろうが、実際は全くの逆である。 
 東電管内はもはや設備が余っている。上記プレスリリースの通り、10%の供給予備を常に有しているというわけだ。さらに東電、東北電に北海道電を加えた東日本は、連携をすれば80%台を維持している。西日本が広域連係をして90%を超えていることを考えれば、東日本のほうがずっと余力がある。 
 
 7月27日程度の気温だと、もし50万キロワットほどを東電から関電に送れば、どちらもちょうど90%ほどになった。さらに大飯原発を止めると仮定すると西日本は連携をしても93%を超えるだろう。103万キロワットの最大量を東電から西に送れれば、おおむね1%強に相当する融通が可能だ。つまり西日本の使用率を1%引き下げる効果がある。だから、今年の夏は東京電力が西日本に電気を融通する役割が期待されていたのだ。 
 
 ところが、新信濃変電所が火災で機能停止したために、その能力は半分以下の43万キロワットに下がってしまった。全く大事なときに肝心の装置が使えないということになりかねない状態だった。 
 まるで福島第一そのものではないか。 
 
 東電にとっては、ECCSが使えない、ベント装置が使えない、そして冷却材を押し込むポンプが使えないと、次々に安全装置が死んでいき、原子炉が破壊されていったあの恐怖の経験は、もう遙かに昔のことなのだろう。 
 
 こんな会社だから、解体すべきなのだ。 
 
 日本の国家リスクがあるとしたら、このような会社がとてつもない危険物である原発を未だに保有し続けていて、ほとんど不可能な事故収束を「しているつもり」になっていることだろう。 
 日本の電力システムを根底から変えない限り、今後も「東電リスク」は続き、本当に広域停電を引き起こすだろう。 
 
「安定供給に直ちに影響はないものと考えております。」もちろんこの安定供給は東電管内を指す。このプレスリリースの末尾の文章だ。ここには東電から西に融通して、バランスを取ろうという発想さえ最初からないことが分かる。まさしく「自分だけが大事」だ。西に電気が送れなくなったら大変だと考えた人間が、東電内部には居たのだろうか。 


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