2012年08月24日13時27分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】テレビ会議情報の「公開拒否」という犯罪 「東電の所有物」ではない、原発事故の重要な証拠だ  山崎久隆

 航空機事故が発生した場合、コックピット音声録音記録である「ボイスレコーダー」と航空機の飛行情報データである「フライトデータレコーダー」は、航空・鉄道事故調査委員会が「回収」して事故調査のために解析される。全体を公開するかどうかは、法的に決められているわけではないが、日本航空史上最悪の事故だった日本航空123便の墜落事故(1985年8月12日)については、その多くが公表された。一般に特に重大な事故の情報を公表するということは、(1)再発防止対策のために(2)遺族や関係者を含む人々の知る権利に応えるために(3)事故原因を世間の幅広い知見を集めて解明するために(4)被害を受けたり損失を被った人々の利益を守るために、積極的になされるべきだと考えられている。 
 
 この場合の情報公開は、できる限り一次情報を、収集されたままで行うのが望ましい。二次、三次加工データは加工に伴う改ざんや省略が伴い、真実のデータとは異なるからだ。もちろんいくら生データだからと言って、データや信号をそのままでは理解できないので、可視的に加工することは認められるだろう。例えば音声データの場合は文字に起こして、わかりやすくすることは何ら問題はない。もちろん加工の過程で言ってもいないことを加えたり、削除することは許されない。 
 
 画像データについても、いかなる理由があろうと映っているものを削除したりマスキングをすることはしてはならない。ただし、無関係の第三者が映り込むとか、公序良俗に反するなど正当な理由があるならば別だ。 
 
 このような前提のもとに東電のテレビ会議情報の公開を考え、どのような問題があるか検討する。 
 
 まず、東電が保有しているとされる全データのうち、わずか160時間分のみが公開対象とされた。特に3月17日以降はさしたる理由もなく非公開とされた。事故が起きた7日後以降の応答状況が無いわけで、特に2号機からの大量拡散があったとされる時期以降のデータが無いことになる。最大の放射能放出がテレビ電話会議などを通じてどのように認識をされていたかが分からない。一番隠したいところを隠したと言われても仕方が無いだろう。 
 
 さらに、視聴できる人間を報道関係者の一部に限定した上、各社2名の登録制などとふざけたことをしている。本当ならばプラントデータと共にインターネット上で誰でも視聴できるように全部を公表すべきだ。局限された人間しか見られなければ「公表」とは言わない。 
 
 「録音禁止・コピー禁止」という条件も公開の原則に反している。 
 
 報道は自らの記事が正確であることを示す目的で一次資料を引用する。報道にとって真実を報じていることを示すことは重要なポイントだが、東電は理由もなく妨害した。 
 
 この映像記録を「東電の所有物」であると考えているらしい。とんでもない見当違いだ。公開を約束された情報は、その段階で「公的な」ものになる。誰がどのように利用、引用しようと自由である。もちろんプライバシーを侵害した映像記録が公表された場合は全く別だが、東電の社員が会社の業務において行うことは「公務」に相当する。民間企業とは言え、電力会社とは相当程度の公共性があると言うだけではない。史上最悪の公害事件を引き起こした「加害企業」である。その行動は検証されなければならないし、そのために記録類は「公的な」ものとなる。航空機事故を起こした航空会社やチッソなどの公害企業と同じだ。 
 
 公開された映像は、既に映像も音声も加工されてしまい、実態は一次情報とは言えない。そのような状態であっても、録音やコピーを禁じる姿勢は認められない。 
 
 東電の経営は実質国営化された。経営陣も入れ替えられ、下河邉和彦新会長は原子力損害賠償支援機構から就任している。これまでの東電ではないはずだったが、情報隠蔽体質は何ら変化が見られない。 
 
 
 この映像情報は、国会事故調査委員会も見ている。つまり、事故調査委員会には「公開」をしている。国会事故調査委員会は国会の総意で設置された。委員も議会で承認された「同意人事」だ。他のどの事故調査委員会よりも国民に近い。 
 
 事故調査委員会に提示されている以上、国会に、そしてそれは国民に提示されたも同然だ。改めて隠す根拠などは無い。 
 
 さらに政府事故調などがデータを反訳させて提出させ、一般に公開する作業をすべきだ。日航機事故ではそうしている。映像そのものも政府あるいは国会事故調から公開すべきだろう。 
 
 繰り返して言おう。 
 
 福島第一震災は人災である。その相当部分は、事故収束過程において発生している。初動の誤り、判断ミス、地震や津波の損害確認不足、機能しない装置の回復失敗、見通しの立たないままの様々な回復作業、放射性物質を拡散させたベント操作、論点は無数に存在し、そのほとんどは未だに事実さえ分かっていない。 
 
 何をし、何をしなかったのかが事故調査報告などで一部明らかになってきたものの、そのような結果になった原因は、当時の行動を記録した資料や対策本部などの議事録を突き合わせていってようやく分かってくるのだが、議事録は存在しない、記録資料は公開しないでは、原因調査をする気がないと考えるほかはない。それだけでも犯罪行為である。 


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