2012年09月04日12時50分掲載  無料記事
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中国

深センで労働NGOに当局の嫌がらせが続く

 中国でもっとも改革開放が進んでいる広東省・深センで活動する労働NGOが、当局の嫌がらせを受けるという厳しい状況に立たされています。多 くの工場が立ち並ぶ深セン市宝安区で活動する労働NGO「小小草情報相談センター」は6月から事務所の立ち退きを迫られていましたが、先日8月30日に正 体不明の男たちに事務所が荒らされるという事件が発生しました。警察や消防などの行政機関が検査と称して連日のように嫌がらせ的検査を実施している最中の 出来事でした。これが「世界の工場」「調和ある社会」の現実のひとつです。(稲垣豊) 
 
 
 
以下は小小草情報相談センターによる8月31日付の声明です。 
原文のページにはその時の画像、別なサイトにはその時の映像もあります。 
 
原文と画像 
http://xxc200308.blog.163.com/blog/static/201929065201273142935793/ 
映像(30日午後:冒頭にCMが入ります) 
http://v.youku.com/v_show/id_XNDQ1NDUzMzE2.html 
 
以下、翻訳です。 
 
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暴力反対!法治の実現を! 
社会の発展と労働者公益組織の生存を! 
 
深セン石岩街道浪心村にある「小小草情報相談センター」(別名、小小草労働者の家)は、出稼ぎ労働者にサービスを提供する公益性の高い組織であり、結成から9年が経過しています。 
 
今 年の6月以来、小小草労働者の家は各方面からの圧力を受けており、現在の宝安区からの転出を迫られています。地元の鎮や区の複数の行政部門による立て続け の検査から始まり、その後、事務所の不動産オーナーから急に「出て行ってほしい」と言われ、石岩派出所と消防署からも狙い撃ち的に罰金刑が課され、活動停 止を迫られてきました。 
 
私たちが不動産オーナーと何度も交渉を重ねた結果、オーナーも外部からの圧力を受けていることを明らかにし、私たちのスタッフに身の周りに気をつけるようにアドバイスをいただきました。消防署によるヒアリングが続けられる中、私たちも何とか話し合いでの解決できるよう努力を重ねてきたところ、8月30日午前、突然、普段着や迷彩服を着た5〜6人の人間がやってきて事務所の入口に鍵をかけてしまいました。 
 
彼らはオーナーから委託を受けた不動産管理と称し、警察への通報も怖くないとうそぶき、「法律?あんたの家の法律か?」と大声で叫びました。私たちがオー ナーと交わした賃貸契約の期限までまだ一年以上あります。オーナーとの間には転出を巡り争いはありますが、現在も交渉中で、8月29日にも話し合いをした ところでした。 
 
事件の最中、このオーナーとは連絡が取れませんでした。この男たちはオーナーの代理人であるという証拠を何ら示さなかった ことから、委託を受けたということ自体が非常に疑わしいです。もし本当に物件回収の委託を受けていたとしても、法的順序に従うべきであり、暴力で迫った り、水道や電気の供給を停止したり、一方的に鍵をかけたり追い出すということは、法律を軽視する暴挙であると言わざるを得ません。 
 
警察に 通報したことで、石岩派出所から警官が来て、双方に対して聞き取りを行いました。警察は私たちのスタッフに対して事情聴取に応じるよう要求する一方、その場で行われた暴行については賃貸契約に関する紛争に過ぎず、弁護士を呼んで調停するように主張しました。しかし無理やり鍵をかけた人間はすでに姿を消して いました。 
 
私たちのスタッフ3人が派出所に連れていかれて弁護士による「調停」のために午後3時まで派出所で待機させられました。事務所 に帰りたいと何度も強く要求してやっと解放されました。しかし、事務所で留守番をしていたスタッフと仲間の出稼ぎ労働者たちによると、2時40分ごろに不 動産管理だという正体不明の男たち数十人が事務所を取り囲んでいることに気がつきました。 
 
スタッフはこの男たちに対して、不動産オーナー から委託を受けたとしても、無理やり事務所に押し入ったり、中のものを勝手に運びだしたりすることは違法行為であり、警察にも通報してあることを再三告げ ました。それでも無理やり事務所に侵入し、家具、書籍、資料その他を道路に放り出して破壊行為を行い、シャッターを溶接して開けないようにしてその場を 去っていきました。 
 
それ以上に恐ろしいことは、私たちのスタッフが何度も警察に電話をしたにもかかわらず、午前中にやってきた警察はかなりたってから悠々と現場に現れて、これらの暴力行為をリース契約に伴う争い(民事)だと言い張ったことです。夜遅くまで警察に対して事件として対応するように要求した結果、やっと証拠として現場の写真を撮りにきたのです。 
 
8月31日現在も暴力行為は続いています。 
 
30日午 後から31日にかけて、スタッフ2人の家に正体不明の人間がやってきて騒動を起こしています。30日夜、急きょ借りた倉庫に投げ出された荷物を運びこんだ ところ、31日の朝に(倉庫の?)オーナーから、今朝から石岩派出所、消防、住居管理、都市管理の行政部門による検査が行われ、私たちの荷物を運びこんだ 倉庫を使用しないよう通知されたと連絡がありました。 
 
さらに不当なことにこの倉庫を見つけてくれた友人の出稼ぎ労働者が、今日の午前中に 派出所と住居管理部門に呼び出され、家族全員が石岩地区から転出するように迫られ、部屋が封鎖されてしまったのです! そして派出所の責任者は、30日に 発生した移転を迫る暴力行為は立件しないと言ったのです! 
 
9年にわたり、小小草労働者の家は深センで順調に活動を展開してきました。そして深セン市の労働保障の発展と成熟を喜びをもって見つめてきました。しかるに、開放の誉れ高き文明都市、深センでこのような暴力行為が横行していることに想像も及びません! 
 
さらに、改革の最前線にある法治都市、深センの基礎自治体において公権力が濫用されていることに驚いてもいるのです!法治社会・進歩社会をめざす公益性団体であり、労働者の権利闘争を支援する草の根団体である私たちは、何とでたらめな事態に直面しているのでしょうか! 
 
私たちはこのような社会的後退に黙って耐え忍ぶわけにはいきません。暴力反対!法治の実現!社会の発展と労働者公益組織の生存!の訴えを声を大にして叫ばなければなりません! 
 
私たちは深センの法律執行機関に対して法治の実現を厳しく要求します。暴力によって移転を迫り破壊行為を行う犯罪行為を追及し、石岩派出所、消防、住居管 理、都市管理の各部門による公権力濫用問題を徹底して調査し、公益団体と一般市民に対するいやがらせをすぐに停止するよう強く求めます。 
 
わたしたちは市民の公益組織を支持するみなさんに対して、中国の社会は発展しなければならず、そのためには協力しなければならないこと、そして恐れを抱かず、抑圧を拒絶することを訴えます! 
 
わたしたちは、深セン市政府が開放政策の精神にそった社会組織の管理体制を実施し、小小草情報相談センターの法的身分問題を公平かつ合理的に解決し、市民の公益組織を容認し支持するよう訴えます! 
 
深セン市小小草情報相談センター 
2012年8月31日 


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