2012年10月29日01時08分掲載  無料記事
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コラム

故郷    鬼塚忠

  週末、故郷、鹿児島に帰り、友人(40代)の結婚式に参加した。40代も半ばを過ぎ、友人が結婚式だなんて、なんて面白いのだろうと思って、遠方にもかかわらず喜んで出席した。新婦はかなりの美女、うらやましくなるほど、だった。 
 
  さらにそれがすごい結婚式だった。氏は大学で音楽を教えながら、地元鹿児島で活動をする音楽家。新婦(30代)も大学で音楽を教えながら活動しているビブリオフォンの演奏家。結婚式は昼の12時半から始まるのだが、昔の仲間と顔を合わすために12時前から集まり、古い友達と話に花を咲かせる。しばらくして式が始まる。ふたりとも音楽家なので参列者はその関係者が多かった。祝福の言葉も、言葉ではなく歌や演奏が多い。ひっきりなしに誰かが出てきて歌を歌い、演奏をした。喜界島の民謡からクラシック、ロック、スコットランド民謡など。延々と歌い、演奏を続ける。途中で私も呼ばれた。私は演奏できるけど下手すぎるので腰が引けてできなかった。プロたちの前で恥ずかしい演奏はできない。そこはわきまえている。しかし新郎は私を気遣い、ピアノ奏者に拙著「Little DJ」が映画化された時のテーマ曲を演奏させた。そこで新郎との思い出などを語らせていただいた。 
 
  そんなことをしているうちに、参列者はみな<結婚式ハイ>になり、時間は延びに延び、やっと食事が出てきたのが14:45。それからも誰かが演奏したり歌ったりしている。もう興奮状態。結婚式が終わったのがなんと17:45。宴はほぼ六時間。こんな長い時間の結婚式など聞いたことがない。 
 
  しかしそれだけでは終わらない。今度は、さらに人を集めての二次会。休む暇もなく一時間後の18:30から。疲れてはいたが、結婚式参列者は二次会へ行くことが前提。 
  200人くらい集まっただろうか。場所はライブハウスで、多くのミュージシャンが集まる。新郎新婦はステージに上がり、皆は「キッス。キッス」とせがみ、それにふたりはこたえる。もう興奮状態。舞台はブレークダンス。演歌。島唄。ロック。それが延々と22:00まで。体力の限界をはるか超えているけど、誰もがそんなこと気にせず楽しんでいた。 
 
  さすがに40代の結婚式、これで終わるだろうと思ったら、それでもまだ終わらない。22時から26時まで3次会。ここでゆっくりと新郎や新婦と話ができた。その日一日興奮状態だったので、今になって何を話したか覚えていない。 
 
  結局結婚式に14時間費やした。 
  めちゃめちゃ疲れたけど、めちゃくちゃ楽しかった。 
  こんな楽しい結婚式は人生で最初で最後かもしれない。 
  故郷とか、故郷の友達ってやっぱりいい。そして音楽っていいなと心の底から思う。 
  もちろん活字もいいけど。 
  それがわが故郷、鹿児島。皆楽しんでいます。 
 
  だけどいつも思うのだけど、鹿児島県民の所得は東京よりずっと低いのに、あくせく働くわけでもなく、歌い、食べ、人生を謳歌している。俺って、東京で何してんだろうと思う。ただ、話しこむと鹿児島には鹿児島の悩みがあって、長く滞在すれば、ずしりとボディブロウのように響く問題だ。とはいえ、私もつかの間の故郷をおおいに楽しんだ。 
 
  ふたりの結婚を心より祝福します。 
  末永くお幸せに。 
 
鬼塚忠  (作家・出版エージェント) 
「アップルシード・エージェンシー」代表 
http://www.appleseed.co.jp/ 


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