2012年10月31日12時40分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】リトアニア原発開発住民投票で反対派が勝った背景  山崎久隆

 リトアニアで10月14日、総選挙と同時に行われた原発の是非を問う国民投票は、65%の多数が原発反対票を投じた。リトアニアには1980年代に建設された原発が2基ある。イグナリナ原発 
は、旧ソ連時代に作られた、当時としては最新鋭のBMK1500型炉でチェルノブイリ原発と同型だ。出力は定格150万のところ、安全のために136万キロワットに抑えられていた。それが2基あり、当時のリトアニアは電力輸出国だった。 
 
 その後チェルノブイリ原発事故が発生し、RBMK型原発に対する懸念が高まり、安全対策を施されて稼働し続けていた。しかしリトアニアのEU加盟に際して欧州議会がつけた条件はイグナリナ原発の閉鎖であった。2004年に1基、2009年に2基目も廃炉になる。 
 
 この結果電力輸出国だったリトアニアは電力の大半をロシアから輸入することになる。 
 
 よく知られているとおり、旧ソ連が崩壊し各共和国が独立を目指していた時期、ロシアにとって死活的重要な地域が二つあった。一つは港を有するバルト三国、もう一つは資源の宝庫カスピ海に近いカフカス地方だ。 
 
 バルト三国は独立が出来たが、チェチェンは出来なかった。そのため未だにチェチェンでは独立を求める人々が武力闘争を続けている。リトアニアにある感情は、ロシアから名実ともに独立したいという思いだ。 
 
 しかし今は電力の8割を握られている。 
 ヴィサギナス原発は閉鎖されたイグナリナ原発のすぐ側に予定地がある。電力に関するロシアからの独立の手段として計画された。そのため福島第一原発の事故前は6割近くが新設を支持していた。しかし福島事故を受けてリトアニアでは多くの人々が脱原発へと意見を変えた。 
 
 残念ながら投票結果がそのまま脱原発を決定づけるわけではない。しかし原発に反対の立場に立つ社会民主党が選挙で政権を得たこともあり、大きな影響を与えることは確かだ。 
 
 なお、これを受注したのは日立である。 


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