2012年11月07日08時57分掲載  無料記事
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検証・メディア

米大統領選のメディア戦略と閉鎖性 ー「調査情報」で

 TBSメディア総合研究所が発行する雑誌「調査情報」の最新号(509号)が、「民意のゆくえ −テレビとポピュラリズム」の特集をしている。(小林恭子) 
 
 以下はウェブサイトから、目次の紹介である。ロンドン五輪放送の評価ということで、私も原稿を寄稿している。http://www.tbs.co.jp/mri/info/info.html 
 
*** 
 
民意のゆくえ 
テレビとポピュリズム 
 
空気を読み解き、理を図る 
真の知性について思うこと 
内田 樹 
 
@Japan 
橋下新党 
ハイパー情報化時代の民主主義 
山口二郎 
 
総選挙でも勝てるのか? 
大阪人だからわかる「橋下現象」のなぜ 
澤田隆治 
 
@America 
米大統領選の「武器」 
メディア戦略が加速させるブームと分裂 
石澤靖治 
 
11月6日へのカウントダウン 
支持率拮抗で迎えたテレビ討論会 
津川卓史 
 
ロンドン五輪放送を総括 
 
@U.K. 
「デジタル元年」といわれるBBCほか 
現地放送の評価とは 
小林恭子 
 
@Japan 
オリンピック放送の通信簿 
鈴木健司 
 
『岩波映画の1億フレーム』 
記録映画アーカイブが迫る 
ドキュメンタリー史の見直し 
今野 勉 
 
連載 
 
ルポルタージュ 被災地再生への歩み 
 
気仙沼発 災害担当記者の独白 第3回 
福島隆史 
 
経験を未来につなぐために 
瀧川華織 
 
三陸彷徨 新たな魂との出会いを求めて 第8回 
龍崎 孝 
 
好評連載! 
同時代を生きる視点 
ありふれた格差社会を生きるということ 
--タナダユキ監督『ふがいない僕は空を見た』…川本三郎 
 
テレビ日記 
日本の家庭と家族の劇【8】 
ホームドラマという技法…鴨下信一 
 
メディア論の彼方へ 
中国行きのエンプティ・フライト…金平茂紀 
 
creator's voice 
時事放談  9年前の「原点」 
〜漂う政治の中で…石塚博久 
 
著作権AtoZ 
原作者はと脚本家との葛藤 
「やわらかい生活」事件…日向 央 
 
メディア漂流 
大学におけるジャーナリズム教育【10】 
「砂川闘争」--57年目の証言…松野良一 
 
ブヒ道 
勇敢マダム…小泉𠮷宏 
 
culture windows 
映画『シェフ!』…宮内鎮雄 
本 『日和下駄とスニーカー』…木原 毅 
 
視聴者から 
領土問題--感情と理性の間で…河野 晃 
 
Media NEWS 
2012年8月、9月…加藤節男 
 
データからみえる今日の世相 
車内で不快、世代で違い!? 
 
 
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 橋下現象にわく日本で、参考になるような論考が載っている「調査情報」を、どこかで手に取っていただければ、幸いである。 
 
 この中で、私がはっとした原稿の1つは、石澤靖治氏の米大統領選における論考「メディア戦略が加速させるブームと分裂」であった。 
 
 近年の米大統領選挙で大きな役割を果たすようになったインターネット。特に注目を集めているのが、ソーシャルメディアだ。 
 
 若干引用すると、 
 
 SNSは「自分の友人・知人サークル内での情報交換・交流であることから、交わされる情報に対する信頼性・親和性が高い。そのため、一般的なメールよりもメッセージの浸透度が高くなる。さらに、それが単なるメッセージとしてだけではなく、選挙活動に参加したり、投票したりといった、直接的な行動を起こさせるきっかけにもなりやすい」。 
 
 SNSは、「利用者とその知人・友人の情報を囲い込む」−そういう意味では、「情報の閉鎖性が高まる」。 
 
 筆者は、「情報量が無限になり情報へのアクセスが極めて容易になった中で、逆に情報の閉鎖性が生まれ、人々は分断される。それが米経済の不振によって相手への許容度が低くなったことと相まって、今回の分裂した世論の形成と分裂した選挙に発展しているのではないか」と見ている。 
 
 そして、「デジタル・メディアは情報の量が圧倒的であり、拡大のスピードも極めて速い」、「世論は急速な盛り上がりを見せる」、「SNSでは極めて濃く・速く排他的な『世論』が形成される環境を作れる」と指摘する。 
 
 「アラブの春」を具体例として出すとき、私は納得が行った気がした。独裁政治を倒すために、いかに世論が盛り上がり、人々を動員し、国際世論も味方についたあのときの興奮状態を、少し思い起こしていただきたい。あの時、慎重論もあったけれども、私たちの多くが、大きな期待を抱いたのではなかっただろうか。いわゆる「春」がやってくる、確固とした政治体制がしっかりと立ち上がる方向に進んでいくという、楽観論に満ちていたのではないだろうか? 
 
 今から考えれば、あのときの興奮と楽観論は、いささか早計だった感じがしないでもない。 
 
 石澤氏は、「デジタル空間で急速に形成された爆発的な『世論』」が、既存体制に「代わる具体的な制度や体制を形成しえていない」と書く。 
 
 ネットを通じて、わっと盛り上がる「世論」は、泡のようなものなのだろうかー? 
 
 私は日本の状況にかんする情報をふだんはネットでのみ収集している。もちろん、入念に情報収集をすれば、幅広く深い概観が得られるのだけれども、実際には、いくつかの情報のたまり場で出た意見や見方を拾い上げるのがせいぜいだ。 
 
 こうして浮かび上がってくる様々な「世論」と、日本に住む人が日常見聞きしながら感じる世論には、大分開きがあるのではないかーそんなことも再度思った。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より) 


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