2012年12月06日00時25分掲載
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人権/反差別/司法
これでいいのか!最高裁 〜埼玉弁護士会が「最高裁大改造シンポジウム」を開催〜 坂本正義
<2012年司法総行動>
司法制度改革が始まった1999(平成11)年以降、毎年秋に行われている「司法総行動」という取組がある。司法総行動とは、最高裁判所、東京高裁・地裁、法務省、警察庁、中央労働委員会、東京都労働委員会に対して、制度改正等の要望事項を列挙した「司法総行動共同要請書」を事前に提出し、その後、要請書提出先の職員と直接面談して回答を求めるという形式の取組である。
「2012年司法総行動実行委員会」事務局団体は、全労連、自由法曹団、日本国民救援会、全司法東京地連、東京地評、裁判所・労働委員会対策東京会議、金属反合闘争委員会、東京争議団共闘会議、賃金差別闘争連絡会の9団体である。回答日には、行動参加者が早朝から丸1日かけて、�ヾ愀絃閉A阿任痢崟訶噌堝亜廖↓�行動参加者が一堂に会した「意思統一集会」、��「東京地裁・高裁包囲行動」、�ご愀絃閉�の職員から回答を聞く「要請行動」、�ス堝飴臆端圓砲茲襦崛躋臀顕顱廚箸い辰森堝阿鯏験�する。
国民救援会中央本部の望月憲郎副会長は、11月1日に実施された今年の司法総行動における対最高裁宣伝行動の中で、過去の最高裁の対応について次のように語っていた。
「我々が予め要請書を提出しているのに、要請の場では責任ある部局の人が対応するのではなく、秘書課の人が出てくる。そして、秘書課の人は『事前に関係部局に回答を求めた』と言うものの、その結果は『私は担当でないので要請事項にお答えできません』『担当部局に伝えます』という回答を繰り返している」
筆者が対最高裁要請行動に同行したところ,最高裁の窓口担当である秘書課職員の応対ぶり正にそのとおりであった。秘書課職員と要請者とのやり取りを一部紹介しよう。
(要請者� 法�
「要請事項を是非、担当部局に伝えていただきたい。『回答しない』『回答することはない』という答えばかりで要請結果が見えてこない。最高裁の考えていることが見えてこないことに不信感を持ってしまう。最高裁には国民のための機関であり続けてもらいたいが、これについて対応等をお伺いしたい。また、国民救援会が昨年の司法総行動に関する情報公開請求を行ったが、回答文書を見ると『回答することはない』と書かれていた。要請事項が関係部署で回覧されたことは分かったが、その後どうなったかが分からない。最高裁には一定の見解なり方向性があるのだと思うのだが、それをこれからお示しいただけないか?他省庁では『予算上できません』とか『考えておりません』などと必ず答えている」
(最高裁秘書課職員)
「今年も要請書を事前に送っていただいたので、関係部署に対して『こういう要望が届いています。検討をお願いします』という内容の文書を配付したが、各部署での検討の結果、そのような回答となった。この場で直接回答することはないが、各部局で皆さんの要望を回覧していることは我々も確認しているし、『施策を検討する際に参考にさせていただく』との回答も受けている」
(要請者�◆法�
「あなたが各部署に発出した文章には『回答することがあれば、その内容を書面で提出するように』との記述があるが、本来なら『回答願いたい。回答できなければ、その理由を書いて』と伝えるのが窓口担当の役割ではないか?『回答することがあれば』という言い回しでは、最初から『回答しなくていいよ』と暗に促しているのと同じだ」
(最高裁秘書課職員)
「秘書課は、関係部署に対して『こうしなさい』と命じる立場にはないし、上下関係でないから命じることもできない。要望を関係部署に伝える役割しかない」
(要請者��)
「私たちは、請願法に基づいて要請している。あなたたちには誠実に答える義務がある。我々がきちんと文書を出しているのに、『お答えすることはない』だけで誠実な対応と言えるのか?裁判所の考えは、どこに行けば教えてくれるのか?」
(最高裁秘書課職員)
「この場は、要請書をお受けして、皆様のご要望を各部署に伝えるためのものである。他省庁の対応は承知していないし、何が当たり前の対応かどうかも分からないが、できる範囲のことはしている」
最高裁の存在意義は、憲法の番人と人権の砦としての役割にあると言われ、そう聞くと聞くと最高裁は正義の味方のように思えるが、自らに物申してくる人には冷たいようだ。
◆最高裁大改造シンポジウム「これでいいのか!最高裁〜自由と人権の確立をめざして」
埼玉弁護士会は10月中旬、さいたま市浦和区の埼玉会館小ホールにおいて、最高裁大改造シンポジウムと銘打った集会を開催している。 開会挨拶の中で「このような表題のシンポジウムは、多分日本で初めてではないか」と語った埼玉弁護士会の田島義久会長は、最高裁の現状について次のとおり説明した。
「日本国憲法は、基本的人権を守ること、そしてそれを守るための統治機構として三権分立の制度を持っています。しかし、日本の最高裁には違憲立法審査権が付与されているものの、今までに10件程度しか違憲判決を出しておらず、違憲立法審査権を十分に行使しているかというと非常に疑問です。また、大企業や国に対して市民が訴訟を起こしたときに、ほとんどのケースは大企業側や国側の主張を認めるような判決がたくさん出ています」
また田島会長は,埼玉弁護士会司法問題対策委員会が最高裁の問題点を1年かけて検討した結果として、�〆枷輯韻離�ャリアシステム,�∈嚢盧杠枷輯韻凌与瑤両�なさ,という2つの問題点があることを明らかにした。
「アメリカの裁判官は、弁護士を経て裁判官に採用されますが、日本の裁判官は研修を終えて法曹の資格を得ると、直ちに裁判官として採用され、定年で退官するまで専門の裁判官として生活していきます。こういったシステムに問題があるのではないでしょうか。人間なので裁判官も妻子を養わなければならないし、あるいは名誉欲もあるでしょうし、昇進を望む気持ちもあるでしょう。昇進したい、あるいはたくさんの給料をもらいたいなら、最高裁の意向を無視することはできないし、暗黙のうちに従ってしまうのではないでしょうか」
「最高裁にはたくさんの意見が上告されるわけですが、たった15人の裁判官しかいません。その15人が大量の意見を本当に真剣に審査して判断してるのかというと疑問なところがあります」
<パネルディスカッション>
「私たちは、日本国憲法が自由と人権の最後の守り手として設置した最高裁が、憲法が期待したとおりの職責・使命を果たしているのだろうかという問題意識を長年持っていて、議論の結果、『最高裁の機構を大改革する必要があるのではないか』という考えに到達した」
埼玉弁護士会副会長の立石雅彦弁護士がこのように挨拶して始まったパネルディスカッションは、�/慧淆臙和緝修領詭攴|妨欺葦ゝ聴�,��著名な凶悪事件や死刑が求刑された事件の刑事弁護を数多く担当した安田好弘弁護士,��裁判官として約40年間務め、1979(昭和54)年からの5年間は最高裁調査官として働いた木谷明弁護士,�じ戯覿綿杆郢硫餡馗垢両�川修弁護士,という最高裁と縁の深い4人のパネラーが、それぞれ最高裁の改革を訴えた。
その中で,鈴木宗男元衆院議員は、自らが受託・あっせん収賄など4つの罪に問われた事件を振り返りながら、三審制が形骸化していることを指摘した。
「日本の裁判は三審制なので、十分時間をかけて主張を聞いてくれるものだと思っていましたが、最高裁は審理を行わないところでした。最高裁調査官が書類を作り、それを渡された担当判事は読むだけというのが実態なのだそうです。これでは二審制であり、三審制は形骸化していると言わざるを得ません。この点にメスを入れなければ、真実は明らかにならないと考えています」
元埼玉弁護士会会長の小川修弁護士は、最高裁の重大な問題点は、最高裁事務総局が全国の下級裁判所の裁判官全員を統制していることだと指摘した。
「裁判官の給料をどのくらい上げるか、裁判官の勤務地をどこにするかなど、裁判官の処遇をほんのごく少数の者が密室で恣意的に決めています。裁判官も人の子です。給料が上がった方がいいでしょう。勤務地は、生活し易くて子育てに有利な方が良いでしょう。それを逆手にとって、給料や勤務地を密室で恣意的に決め、裁判官の支配を図っているのが最高裁事務総局なのです」
さらに小川弁護士は,最高裁事務総局の狙いがヒラメ裁判官を作ることにあると指摘する。
「昭和48年に四国電力伊方原子力発電所設置許可取消訴訟が提起されました。そして、最高裁は19年後の平成4年に住民の上告を棄却しました。しかし、その19年間の出来事を振り返ると、昭和54年には米国ベンシルベニア州のスリーマイル島で原発事故、昭和61年には旧ソ連のチェルノブイリで原発事故が発生しました。にもかかわらず、最高裁は緻密な検討を全く加えないで『専門技術的な判断を元にしてなされた行政庁の判断に、看過しがたい過誤や欠落が無ければ、許可は適法』と述べて、三権の一翼として行政をチェックし、国民・住民を守るという任務をほとんど放棄したかのような判決を下したのです。この時に、最高裁が国民の目線に立って緻密な検討を加え、設置許可を取り消していたならば、同様の基準で認められた福島原発は停止となり、今回の大事故は起きなかったという声は数多くあります」
「原発訴訟で原告勝訴の判決が出たのは、滋賀原発2号機建設差し
止め訴訟で金沢地裁が2006年に下した判決、たった1件しかありません。しかも、この原告勝訴の判決は、3年後の2009年に高裁で取り消され、さらに同年10月には最高裁が住民の上告を棄却しています。これでは下級審の裁判官は、たとえ最高裁の判断がおかしいと思っていても『もし行政に逆らった判断をすると、最高裁に意向に沿わないものとして出世に響く』と考えるでしょう」
小川弁護士の発言を受けて,元裁判官の木谷明弁護士は、ヒラメ裁判官の増加に懸念を示した。
「最高裁長官が『ヒラメ裁判官は良くない』と言ったということですが、ヒラメ裁判官にしている自分たちのことを棚に上げて言うのがそもそも間違っています。裁判官になった以上は、毅然として自分の態度を貫くという姿勢がなければならない。給与の問題や家庭の問題があって、なかなか綺麗事ばかりは言っていられないでしょうが、それを乗り越えて、きちんと刑事裁判に臨むべきです」
「私は浦和地裁にいたときに、たくさん無罪判決を出しましたが、それに影響を受けてか、これまであまり無罪判決を書いたことのない判事までが無罪判決を書くようになりました。私がその判事に理由を尋ねたら、『木谷さんが、所長代行という役職でありながら無罪判決を出しているので、我々も安心して無罪判決を出せます』という随分見識のないことを答えました。内心おかしいと思いながら、有罪に迎合していたという人が何人かいたのです。これまで有罪判決しか書いたことがない、どんな事件でも有罪判決にすればいいと思い込んでいる人も私の周りに何人かいました」
安田好弘弁護士は、自らが担当した光市母子殺害事件の弁護活動を振り返った後、最高裁に対してこれからどう闘っていくかを日々悩んでいると語った。
「『最高裁の暗闘・少数意見が時代を切り開く』(朝日新書)という本があります。その中で弁護士出身の裁判長が、取材した記者に後日談として語っています。『自分は死刑と無期、2通りの判決文を調査官に書かせる。そして、どちらが社会に説得力があるかを検討する。それで、死刑の方向に大きく動く判決を採用した』。法律に基づいて、あるいは過去の判例に基づいて、このケースは本当に死刑なのか無期なのかを考えたのではなくて、社会にどれだけ受け入れられるかで結論を出したというわけです。これが何を示しているかというと、最高裁という日本の司法の頂点に立つところが、世論の動向を見て判決を書くという方向に移行し始めたことを示しています。私は今まで、裁判官というのはどんなに人格的に酷くても、裁判官という矜持・誇りを持っていると思っていました。矜持とは、世間に左右されない、マスコミにも左右されない、法と自分の良心に従って結論を出すということであり、少なくとも最低限それが維持されていると思っていたのです」
◆中二階法案を参考にして最高裁を改革すべきだ!
小川修弁護士は、最高裁の現状を改善するための対策として、かつて岸信介内閣が1957(昭和32)年に国会へ提出した閣法「裁判所法等の一部を改正する法律案」(衆議院の解散により廃案)が参考になることを指摘した。
「この法案は、最高裁が発足してわずか10年という年に提出された、いわゆる中二階法案と呼ばれるもので、1階部分の高等裁判所、2階部分の最高裁の間、中2階に最高裁小法廷というものを作り、裁判官を全部で39人にして、大法廷に9人、中2階の小法廷に30人を配置するというものです。9人で構成する2階部分の最高裁は、憲法違反と判例違反に関する審理のみを行い、中2階の最高裁小法廷は、上告事件などその他の審理を行うという仕組みです。また、最高裁裁判官任命諮問審議会を作り、そこでの諮問を経て最高裁長官と最高裁裁判官を任命するとしています。実際、1947(昭和22)年に最高裁が発足した際には、現実に最高裁判官任命諮問審議会が30人の候補者を選び、その中から内閣が15人を選任しています。非常に透明性があったと言えるでしょう」
木谷明弁護士は、司法制度を健全なものにするには、ひとえに最高裁のあり方にかかっており、その意味で中二階法案は参考になると語った。
「1957年の法案は、なかなか良くできているというのが私の印象です。この法案が解散で廃案にならずに、もっと早い段階でそういう方向に移行していれば、もう少しまともな最高裁になっていたと思います」
筆者も最高裁に変革の波が訪れんことを願う次第である。
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