2013年02月05日14時17分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】再処理工場を始め、危険なプール保管中の使用済み燃料を乾式貯蔵に移行するよう求める   山崎久隆

 「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」という不気味な題名のつけられた報告書が2011年3月25日に菅直人首相に提出された。作成者は近藤駿介原子力委員長。このシナリオに書かれていたことは、福島第一原発の事故が使用済燃料プール破壊にまで至ると東京を含む250キロ圏にまで避難区域が拡大し、3000万人が難民と化す恐怖の内容だった。これを「悪夢の連鎖」と呼んだのが枝野幸男官房長官だった。 
 
 しかしシナリオ自体は機密とされて、2012年1月30日まで公表されなかったため、悪魔の連鎖の元となった根拠が公表されず、当時、実際に迫りつつあった脅威は日本国内では、ほとんど認識されていなかった。 
 
 しかし、ほぼ正確に認識していた機関があった。それは米国の国防総省やNRCなど危機管理担当部署のメンバーだった。一部は公開の場でも議論されている。例えば当時も4号機の使用済燃料が破壊される危険性があると議会で証言したヤツコNRC委員長の発言だが、日本政府はこれを「誤解」とした。 
 
 だがプールゲートに隙間が出来て使用済燃料プールに大量の水が入るという偶然の重なりがなかったとしたら熱量計算上は16日に燃料の上部が露出し始め、19日頃には露天で燃料が破壊される事態となっていただろう。 
 このような事件が進行中だと、当時日本で明らかになっていたら、東京までも避難態勢を実施することになっていたが、結局政府はこれを「隠ぺい」してしまった。 
 
 結果的に東京などは避難をしなくても済むレベルの汚染であったかもしれないが(全域が避難の必要がなかったかは異論があるかもしれない)、情報を隠した事実は残り、さらに今後も同様の事態になれば、当然のこととして情報は隠ぺいされると見なければならない。 
 
 特に東京にとって深刻なのは、東海再処理工場などが立地する東海村であろう。高レベル放射性廃棄物の溶液が大量に保管されており、東海第二原発の使用済燃料も貯蔵されたままだ。 
 
 一方、大規模な破壊を起こせば北半球が放射能汚染される危険があるのは六ヶ所再処理工場だ。この真下に断層が走っていることが懸念されており、東通原発敷地内で「発見」された活断層と一連のものである可能性が高い。 
 そうなれば、太平洋上で起きるプレート境界型地震の連動または溜まっている歪みが開放される地殻内地震として、マグニチュード8級の地震が再処理工場で発生するかもしれない。 
 
 各地の原発の使用済燃料、特に倒壊が懸念されている福島第一原発の使用済燃料に関心が向いているようだが、貯蔵量としては原発30基分(およそ3000トン)にもなる六ヶ所再処理工場の使用済燃料プールの危険性は桁外れである。 
 
 再処理工場が再稼働することなど考えられないのだから、可及的速やかに、冷却不能になって破壊される前に、乾式貯蔵に移行するように日本原燃や政府に要求するべきだ。 


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