2013年02月07日13時59分掲載  無料記事
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核・原子力

《たんぽぽ舎発》「日本原子力発電」株(原電)をどうする? 「解体撤去」ではなく原発の廃炉「管理会社」に  山崎久隆   

 日本原子力発電(以下原電)の将来は、発電会社としては終わった。全電力会社と電源開発が株式の全てを保有する国策会社なので、市場で株価が暴落することもないし、直接消費者が「選択」出来る会社でもないので不買運動などとも無縁だから、一ワットも商品が売れない(生産できない)のに、存在そのものが問われることもない。しかし東電社員の給料の額を問題にするのならば(するなと言うのではない。あくまでもバランスの問題という意味だ)日本原電に支払っている年間あたり1000億円もの費用は、さらに問題にすべきことだ。 
 
 東電の経営再建計画では実に今年度から三年間にわたり合計3000億円を原電に 
支払うとしている。この間、電気は一キロワットアワーも送電されることはない。 
 この状態は東電だけではない。東電以外にも原電と電力供給契約を結んでいる 
関電、中部電、北陸電、中国電などが合わせて2011年度で1443億円も支出をする。2012年度も原電が1月に発表した上半期決算では「762億3500万円」もの「収入」がある。 
 
 おかげでこれら電力会社は全て「赤字」(ただし単年度/単独決算において)であるのに、原電は史上最大の「黒字決算」である。2012年度上半期の黒字額は実に「209億7300万円」ちなみに2010年度は一年間で「わずか」8億1200万円の黒字だったというから、焼け太りも甚だしい。 
 理由は電気など送電しなくても契約に定められた「料金」(それは料金とは言えないだろうに)を電力側は支払い続けなければならず、一方、原発が全部止まったおかげで検査や補修にかかる費用が減っているからだそうだ。 
 
 この会社に社外取締役として天下ったのが勝俣元東電会長である。直ちに破たん処理をしろと叫びたくなる会社だが、3つもの原発を抱える会社であり、一定の技術力もあることから、別の役割を持って存続させるのが良いだろう。 
 
 実際に、原電が生き残るには、次の三つの道が考えられる。 
 
 まず、運転不可能になった3原発の代わりに敦賀3,4号機を増設し、それで存続を図る方法。しかしこれでは「新増設はしない」という方針に逆らうことになる。今の内閣がどうであろうと、もはや新増設など認める人は少ない。敷地の整地も終わり建設するだけになっていようとも、建設が進むとは到底考えられない。また、当然ながら敦賀3、4号機の立地地点は浦底−敦賀断層や白木−丹生断層などの影響を受ける。断層調査、津波対策、防災体制など、計画は一から見直し。仮に建設強行をしても運転できるのは何年先になるか見当もつかない。これでは会社はとうに倒産している。つまり非現実的だ。 
 
 次の方法は、実質的に経営破綻をしている東電の柏崎刈羽原発などの原発を原電に譲渡し、そのいくつかを再稼働して発電会社として存続する方法だ。勝俣元東電会長が日本原電の社外取締役に就任した秘密がそこにある。などというとまるで三文小説だが、方法論としてはあり得る。しかし東電の原発にしても、再稼働などできるとは考えられない。まさしく自殺行為になる。 
 
 第三の方法は、日本各地にある電力会社所有の原発を所有権移転することだ。ただし運転を再開するためではない。安全に「廃炉」にするためだ。つまり原電は「にほんげんしりょくはつでんしょ『はいろ』かんりがいしゃ」になるのである。 
 
 福島第一原発を除き、48基ある原発を各電力会社ごとに所有したままで廃炉措置をすると、電力会社ごとの「体力」次第で安全性が左右される可能性がある。資金ショートした会社では安全に管理さえ出来ない危険性が常にある。特に事実上経営破綻をしている東電が一番危険だ。 
 
 そうならないためには、3基の原発を保有してきた原電に、各電力会社から原発の職員ごと「異動」するのが効率的だろう。合わせて人材の確保も可能になる。電力ごとに原発職員を養成しなくても良くなる。 
 この会社には電力会社はもちろんのこと、国も出資し、安全な管理を行うようにする。もちろん使用済燃料も原電で管理するが、当面は発電所敷地内での乾式貯蔵を進めるほかはないだろう。その後のことはみんなで話し合って決めるしかない。 
 
 少なくても原発の整理統合が図れることで、これまで定期検査などで従事してきた労働者のかなりは、継続雇用が出来る。徐々に減っていくことになるが、それは当然のことだろう。 
 
 当面、解体撤去しないで密封管理することで、二つのメリットが生まれる。 一つは直ちに巨額の費用を必要としないこと。使用済燃料の管理を最優先に、放射化した原発は密封管理をするので、費用は解体撤去に比べれば圧倒的に少なくて済む。 
 
 直ちに解体撤去しないので、被曝労働は大幅に低減できる。運転時の構内よりもきれいになるので、管理と補修では大きな被曝事故は起こらない。 
 圧力容器や主要配管など汚染のひどいものは密封して時間とともに減衰するのを待つ。放射性物質の最も安全で安価な管理法は「減衰を待つ」ことだ。それを実施すれば良い。 
 
いずれは解体するときが来るだろうが、その時にはコバルト60など放射化された物質はほとんど残っていない。つまり放射能は消えている。使用済燃料が破壊さえされなければ、原発そのものが持っている放射能は時間さえ経てば、さほど危険ではない。 
 
 これを原電を改組して出来る新会社で行えば良い。 
 それこそが原発の正しい「終わり方」だと思う。 


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