2013年02月24日12時35分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】「活断層隠し」は許されない 下北半島全体の地体構造を解明すべきだ  山崎久隆

 東北電力東通原発敷地内で確認された「活断層」。しかしこれは「点と線」の問題ではない。「面」の問題だ。下北半島全体の地形は、地殻変動で形成された。断層は頻繁に繰り返し動いてきたことも今回の調査で明らかになってきた。これが意味するのは、この場所で見つかる「活断層」は、この地域の最大の断層である「大陸棚外縁断層」の派生または連動で形成された可能性があることだ。 
 
 仮に「東通断層」と、今回の断層を呼ぶとしたら、その南に位置する六ヶ所村には「出戸西方断層」があるが、これは大陸棚外縁断層の陸上延長断層とみられている。似た構造にあるわけだ。 
 大陸棚外縁断層もまた、この地域一帯の地体構造の一部を形成する。その中でも最大の構造は言うまでもなく下北半島沖のプレート境界である。 
 
 日本海溝から千島海溝へとつながる海溝軸は、ちょうど下北半島の沖、釧路の沖といっても良い場所で曲がっている。北海道側の千島海溝では十勝沖地震(1843、1952、2003など)や根室沖地震(1994や1969など)といったマグニチュード8級のプレート境界型地震が発生している。 
 
 これら地震が発生するとプレートが潜り込んでいる北海道沿岸部に大きな力が加わり、沿岸部や内陸部で断層運動による地震が発生したり、あるいは潜り込むプレートの内部で起きる「スラブ内地震」が発生する。つまり「海溝軸外縁部から潜り込み帯」が全て巨大地震の巣となる。海溝軸外縁部で起きる地震のことを「アウターライズ地震」というが、これは沖合遙か海の下だから、揺れの影響は少ない一方で、巨大津波を発生させる可能性が高い。また、海溝軸から陸地にかけては断層が多数存在し、地下の震源断層が活動する際に、その断層面が大きく変動することで、海ならば津波、陸上ならば地殻変動を起こす。その区間ではあわせて「スラブ内地震」も起き、これがまたマグニチュード8を超える可能性もある。 
 
 東通原発から六ヶ所再処理工場に至る地域一帯の地体構造は、以上のような千島海溝と北海道との関係とパラレルであろう。 
 
 そう考えれば、東通原発や再処理工場の下にある断層は、過去に発生した巨大地震の傷跡と考えるのが合理的であり、そんなところに原子力施設を立地した責任をこそ問われ、再稼働云々などと言っていられる次元の話ではない。 
 
 東北電力は東通断層を「地層が水を吸って膨らんだ」などと、未だに主張をしている。 
 彼らには謙虚さのかけらもない。ここで見えてくるのは「工学の高慢さと理学への偏見」である。すなわち、地震あるいは断層の評価はよほど明確でなければ「確率的」にしかわからない。一方工学的な「強度」や「耐性」は確定的に分かる。一定の厚みのある材料ならば、破壊に「閾値」がある。すなわち「想定の地震に耐えられる」強度で作れば良いことになる。 
 理学的立場ならば、常に確率的に起こり得る地震や津波の影響を、工学的には「一定の範囲ならば確定的に防衛可能」となる。そこに、大きな落とし穴が待ち受けている。 
 
 想定外の力が加わればいかなる強度設計も無効になるのは当然だ。従って、想定を超える応力が生ずる「かもしれない」といったことは「あってはならない」ので、その可能性のある断層は「活断層」であってはならない。理学は「確定的に活断層」などとは言えないことを逆手にとって「膨潤の可能性もあるだろう」と、工学の立場から難癖を付ける。これが今まで繰り返されてきた「活断層隠し」の正体だろう。 
 
 規制庁が真にまともな規制を行うつもりならば、言うべきことは一つだけ。「東通原発を含む下北半島地域は原子力施設の立地は不適当だ」と、これしかない。 


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