2013年03月05日10時19分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

ベアテ・ゴードンさんと日本国憲法

  昨年暮れ、ベアテ・ゴードンさん(89)が亡くなった。ゴードンさんは日本国憲法を起草した米国チームの唯一の女性スタッフだった。そして、戦後憲法を起草した最後の現存するスタッフでもあった。それは戦後レジームからの脱却を唱え、憲法改正を訴える安倍内閣の登場と期を一にしていた。 
 
  ベアテ・ゴードンさんが現存する最後の米国人スタッフだった理由は彼女が当時22歳という若さだったことにあった。ゴードンさんが起草したのは憲法14条と憲法24条である。 
 
  第十四条 
 
  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。 
 
  第二十四条 
 
  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 
 
  ゴードンさんがこれらの条文を起草したのは10数人の憲法起草スタッフの中に女性が一人もいなかったからだ。彼女の任務は女性の権利に関する条文を起草することだった。法律家でなかったゴードンさんが起草委員に任命されたのはタイム誌のリサーチャーの経験があったこと(当時、アメリカにおいても女性は基本的に記者になれなかった)と、英語、フランス語、ドイツ語、日本語、ロシア語、スペイン語の6か国語が話せてGHQに必要なスタッフだったからだとされる。 
 
  彼女はその驚異的な語学力を駆使して、東京で世界の憲法条文を手に入る限り手に入れて読みこなした。男女の平等という考え方は今でこそ常識に見えるが、当時は新しい思想だった。たとえば「人権の国」フランスにおいても女性に選挙権が与えられたのは1944年に過ぎない。若く、国際感覚に優れ、さらには女性だったからこそ法律界の常識(つまり男性の常識)にとらわれず、条文を起草することができたのだった。 
 
■フランスからの手紙19 フランスのウーマンリブ創設40周年〜70年以後のフランス女性の地位について〜 パスカル・バレジカ 
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