2013年04月02日23時54分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】アレバ社製MOXが仏から輸送間近  世界に危険をまき散らす日本の原発   山崎久隆

 NHKなどが一斉に「MOX燃料がフランスから日本へ」と報じている。関西電力高浜原発3号機の取替用MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)である。 
 
3月5日にはMOX燃料を製造しているアレバ社が、3月21日には関西電力が高浜3号のMOX燃料輸送を、それぞれプレス発表した。もっとも、グリーンピースは既に3月上旬に、フランスからの詳細なレポートを送っている。アレバ社からシェルブール港へのトレーラによる輸送準備に、テロ対策訓練など、フランスでは3月から輸送準備作業が行われていた。これを受けて日本では「何処の電力会社のMOXか」と話題になっていた。しかしこの段階では関電もどこもMOXの輸送を認めようとはしなかった。 
 
 シェルブール港で積み込まれるMOX燃料は、高浜原発3号機の取替用の燃料だが、この燃料はもともと2011年に運ばれる計画だった。福島原発震災の影響で輸送計画は凍結された。事故対応に手一杯で、輸送の警備などに対応できないとの政府の意向が働いたとされている。であれば、いまだって十二分に手一杯ではないのか。いつからMOX輸送の対応が出来る余裕が生じたのだろう。福島にと 
っては二重に、蔑ろにされた気分である。 
 
◆安全基準さえ出来ないままに 
 
 MOX燃料輸送は単純に比較をしても、ウラン燃料輸送よりも遙かに危険度が大きい。輸送を含む原子力防災指針や核燃料サイクルを含む原子力安全基準は、つい最近「案」が出来た段階であり、それをパブリックコメントにかけたら何千もの意見が集まる結果となった。その審議さえもしない(出来ない)状態であり、これに対しても多くの批判が集まっている。 
 
 原子力規制庁は7月までに基準を作ることにしているが、めどは立っていない。それにもかかわらず核燃料輸送の中でも最大級に危険なMOXの海上輸送をすること自体が、事故を教訓とせず、国際社会を裏切る行為である。このうえ輸送中の事故が発生し沿岸国に被害が及べば、もはや日本は世界から非難されるだけでは済まず、賠償請求や制裁発動にもつながるであろう。そのようなリスクを冒す価値がMOX輸送のどこにあるというのか。 
 
 高浜原発は再稼働の見通しもない。安全基準が決まっていない現状では、動かす法的根拠さえないからだ。関電が「MOX装荷時期は未定」とするのは当然なのだが、使う宛てすら無いMOX燃料を使用済燃料プールに置いておくだけで、原発の事故リスクは高くなる。無意味に高くなる。 
 
 使用済燃料プールの危険性は、福島第一原発の事故で明らかになった「新しい問題」である。それまでは認識されたことがなかった。何しろ「全電源喪失」「水素爆発」「域内高線量」「大津波警報により作業不能」などは一切想定外なのだから当然である。この場合、燃料プールにある燃料の属性だけがリスクの「基礎的大きさ」を決める。それに掛け合わされる「変数」は電源喪失などの事 
故のシナリオである。つまりMOX燃料があるだけで、その分確実にリスクは高くなる。 
 
◆「関電経営破綻」はどうなった 
 
 MOX燃料の製造コストは、一般のウラン燃料の数倍から十数倍程度に達する。(ウラン燃料価格の高低差が大きいのでこういう表現になる) 
 
 それが分かっていながら、「プルサーマルは国際的にプルトニウムをため込まないとした国際公約を守るために行う」と言われていた。すなわち「国策」である。 
 国策のために電力会社の経営を過度に圧迫してきたわけだから、ここにきて関電などプルサーマルを続ける電力会社の大幅な赤字計上には、このプルサーマル計画が大きな影を落としているのは間違いない事実だ。 
 
 であれば関電などは「経営が苦しい中でのプルサーマル計画続行は理屈に合わない」として、中止しなければならない。しかし電力会社から、そんな言葉は一向に出てこない。いったいどうしたわけだろう。 
 
 もちろん、造ってしまったMOX燃料は「使わなければ無駄」になるだけだ。しかし使うために運ぶ費用だって莫大なものであり、少しでも節約すべき時に、なんで緊急性の全くないこのようなことをしているのか、説明する責任がある。 
 
 謎を解くためには、関電などの経営が本当に「逼迫」しているのかを検証する必要があろう。実際には巨額の内部留保などで、当面問題は生じない可能性がある。そうでなければ、こんな無駄金を投じられないだろう。莫大な赤字で経営破綻するなどは、これだけでウソだと言わざるを得ない。従って値上げ申請も全て却下すべきである。 


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