2013年04月15日13時16分掲載  無料記事
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国際

【北沢洋子の世界の底流】キプロスの銀行のメルトダウン(下)金融危機を自力で克服したアイスランド

 今日、銀行は、犯罪捜査の対象になっている。最近のことだけを挙げると、スペインでは、92人の銀行の頭取たちが、「納税者から3、770万ユーロを騙し取った」という詐欺罪で裁判にかけられている。米国では、「SAC(Steven A. Cohen )」という「ヘッジファンド」が6億200万ドルを「証券取引委員会(SEC))」に罰金として支払った。 
 
6.銀行の犯罪 
 
 ヨーロッパでは、ドイッチェバンクが「Libor(ロンドン銀行間取引)」の利子率を不正操作したとして、6億ユーロの裁判費用を支払った。これは、金融業界に2兆ドル以上の損害を与えたという詐欺罪で訴えられたためである。ドイッチェバンクはラスベガスに巨大なコスモポリタンホテルとカジノの建設に49億ドルを投資したのだが、米国の経済不況でカジノも不振になったため、このプロジェクトは失敗した。これを米政府は納税者の税金から118億ドルのBail Outをした。 
 
 例は限りなく続く。今年3月1日、米政府は、巨大な保険会社「AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)」に、税金から300億ドルをBail Out費用として支払った。これに先立って昨年9月、AIGは米政府から150億ドルのBail Out を受けている。 
 
 これら、巨額な公的資金による助成金の効用は不明だ。しかし、Eric Holder 司法長官が上院で証言したように、「銀行を犯罪容疑で裁判にかけることは、米国経済だけでなく世界経済にネガティブな影響を与える」という論理がはびこっている。 
 そして、政府の規制に対して、銀行業界は、猛然と反撃する。例えば、政府が「不動産抵当法」の規制を強めようとして、サブプライム融資について銀行を召還しようとした時、ニューヨークの銀行19社が、対抗訴訟を行った。この「サブプライム融資」は今日のグローバルな金融危機のきっかけとなった。 
 
 そして、米国では、Mary Jo Whiteが、「SEC(証券取引委員会)」の委員長に就任した。彼女の法律事務所は、これまで10年以上も、JP Morganなどの大銀行を弁護してきた。そして、米下院は31対14でBail Out をデリバティブにも拡大する3つの法案を立て続けに採択した。 
 
7.金融危機を自力で克服したアイスランド 
 
(1)アイスランド 
 今年1月末、スイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム」に出席したアイスランドのOlafur Regnar Grimmson大統領は、MANの金融レポーターに「今、ヨーロッパが解決法を見いだせないで苦しんでいる時、アイスランドは、08年の大規模な金融危機をどのようにして克服したのか」と聞かれた。これに対して、Grimmson は、のちに有名になった返答をした。 
 
 彼は、「アイスランドは、賢明にも、これまでの30年間、西側の金融が広く採ってきた伝統的な解決法を採択しなかった」、その代わり、「 ‘伴の通貨と中央銀行を有し、それを規制した。◆ゞ箙圓鯒忙困気擦拭 貧困層を援助した。ぁ〆、ヨーロッパ中で行われている緊縮政策を採らなかった」と答えた。 
 更に、「アイスランドが採った銀行の破産という政策は、ヨーロッパにとって普遍的に有効であるか」と聞かれると、大統領は、「なぜ、今日、銀行は神聖な教会と見なされているのか?」、「なぜ銀行だけが、他の航空会社や通信会社のように、無責任な経営をした時、破産させないのか?」、「銀行をBail Out しなければならないという説は、経営者たちの利益を優先して、そのつけを一般の市民に課税や緊縮政策という形で負わせることになる。長期的には、民主主義に目覚めた市民は、そのような説を受け入れないであろう」と答えた。 
 
 アイスランドは、人口31万人、キプロスやマルタと同じく、極小国である。見るべき産業がないので、「金融センター」の道を選んだ。 
 08年までに、アイスランドの銀行は外国から大量の預金を集めた。その中で、英国人とオランダ人の預金が多かった。英国からの預金は23億ポンドに上った。 
 銀行は預金の運用に失敗し、返済不履行に陥った。当然のことながら、英国とオランダはアイスランド政府に返済を求めた。しかし国民投票では、アイスランドの有権者の93%が英国とオランダの返済要求に「No」と答えた。そればかりでなく、アイスランドの首相と蔵相が「銀行の監督を怠った罪」で裁判にかけられた。英国とオランダは、「ヨーロッパ自由貿易協会(EFTA)」の法廷に、アイスランド政府を訴えた。しかし、3月末、アイスランドが勝訴した。 
 
 3大銀行の預金総額はGDPの10倍に達した。政府にはこの銀行の損失を補う力はない。そこで、銀行を破産させることにした。 
アイスランドはユーロ圏に入っていないので、独自の通貨と中央銀行を持っていた。金融危機が起こると、自国通貨のクローナは、暴落した。これは、極端なインフレを引き起こし、一時的に生活は苦しくなった。しかし、輸出産業と観光には有利で、GDPはプラスに転じ、失業率も半減した。 
 
 今日、EU内で、反EU、反緊縮の勢力が台頭している。11年、ギリシャの金融危機が起こった時、トリオにBail Out を求めて、緊縮政策を受け入れるのではなくて、「EUから脱退して、独自の通貨と中央銀行を持って、観光業と輸出産業の回復をはかり、経済を復興させる、という案が出た。しかし、現在「反EU」を唱えるのは、右翼のレッテルを貼られる。 
 
 しかし、アイスランドの金融危機からの回復プロセスを見ると、Grimmson大統領の言葉通り、EU内の周辺国(ギリシャやスペインなど南方諸国と、キプロスやマルタのような極小国)が、トリオにBail Out を願い出て、緊縮政策を受け入れることは、不況を深化させるだけだ。 
 
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国際問題評論家 
Yoko Kitazawa 
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