2013年06月07日12時52分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201306071252485

国際

【北沢洋子の世界の底流】GMOが「世界の飢えを救う」という嘘 52カ国、200万人がモンサントにデモ

 今年5月26日(日)、全米、オーストラリア、南アフリカ、ドイツ、フランス、ベルギー、ロシアなど52カ国で、一斉に、世界最大のGMO種子生産会社モンサント社に対して抗議デモを行った。その参加者総数は200万人にのぼった。これは、モンサント社のスポークスパーソンが「今日、農業が当面している課題は、増加する世界人口をやしなうに十分な食糧を生産することであり、同時に、農業が環境に及ぼすダメージを最小限にとどめることである。我が社は、これらの課題について、個人の意見表明の権利を尊重するが、一方では、水やエネルギーといった天然資源を守りながら、農民が土地の生産力を高めるという農業の進歩に貢献していると信じる」と語ったことに抗議するデモであった。 
 
 「GMO技術は、作物の生産性を減少させる」というのが、米国の穀倉ベルトにあるカンサス大学での3年にわたる研究の結果である。これは「GMO技術に転換すれば収穫量が増える」というモンサント社の執拗な宣伝に対する答えである。 
 カンサス大農学部のBarney Gordon教授は、「GMO大豆は、伝統的農法での収穫量と比較すると、10%低い」という報告を学会誌『Better Crops』(年2回刊)に発表した。 
 
 これ以前に、ネブラスカ大学の研究グループが「モンサントのGMO大豆の生産性は、同時期の従来農法に比較して、6%低い」また「過去最大豊作の時に比べると11%低い」という結果を報告している。 
 
今年5月末、国連の「農業の知識、科学、技術の国際的評価パネル(AASTD)」が、このテーマの研究では最大規模となる研究結果を発表した。その結論は、「GMOは世界の飢えを救うことが出来ない」であった。同じく英国政府の環境・食糧・地方庁(DEFRA)の研究主任であるBob Watson教授も、「GMOが世界の飢えを救うことが出来るか」と聞かれて、「一口に言うとノーだ」と答えた。 
 
 米国の科学雑誌『Scientific American』の09年号に、「GMO推進派は、ますます増大する食糧、飼料、繊維、バイオ燃料を満たすことができるのは、GMO作物だと言っている」と述べているが、これに対して、当時ベトナム戦争に反対した米国の科学者たちが設立した「憂慮する科学者学会(UCS)」は、長年にわたって、「遺伝子技術産業は、世界人口を養えるのはGMO作物である」と宣伝してきたが、「この宣伝は、嘘だった」と報告した。 
 
 米国では、UCSが、GMO作物では最も普及しているとうもろこしと大豆について、13年間に24件の研究がなされた。その結論は、「除草剤に強いGMOとうもろこしや大豆は、生産量が全く増えていない。また 農薬が要らないGMOとうもろこしは僅かに増えている。過去13年間、収穫量が増えたのは、むしろ従来の農業と、技術によるものである。ワシントン州立大学のCharles Benbrook教授は、米国内での「GMO作物の除草剤と農薬の使用量が増えている」ことを証明した。 
 
 収穫量が増えないGMOを導入する意味はない。除草剤や農薬の使用を最小限に抑える有機農法は、コストがかからない上に、収穫量が大きい。これは途上国、特にサハラ以南のアフリカの貧しい農民にふさわしい。UCSは、連邦政府農業省、州政府、大学などが、農業改良に力を注ぐべきだと、提案している。 
 
------------- 
Yoko Kitazawa 
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。