2013年07月09日09時42分掲載  無料記事
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アフリカ

エジプトの政変をひきおこした経済事情〜米経済学者の分析では〜エジプト・ポンドの下落

  エジプトのムルシ大統領が軍から力づくで解任された件で現在もエジプトではムルシ派の市民がデモを行い軍と衝突、死傷者が続出する状況となっている。 
 
  米ジョンズホプキンス大学の経済学者スティーブ・ハンケ(Steve Hanke)教授はエジプト経済の近況をデータにして発表した。そのデータを見ればエジプトの政変の裏に、深刻な不況が進行していたことが想像される。 
http://www.cato.org/blog/muslim-brotherhoods-legacy-controls-shortages-inflation 
  ムルシ大統領が就任したのはムバラク政権の崩壊からおよそ1年後の昨年6月。それから半年後の2013年1月、エジプトで通貨の闇市場が急速に拡大したとされる。丁度その頃、通貨エジプト・ポンドの価値が下落し始めていた。ハンケ教授のデータによれば政府が発表している公定レートでは通貨価値(米ドルとの比較)は1米ドル=約6エジプト・ポンドに維持されていたが、昨年暮れから今年の6月にかけて1米ドル=約7エジプト・ポンドまで下降した。 
 
  一方、急速に広がってきた闇市場では交換レートは3月に米1ドル=約8.3エジプト・ポンドまで下落。その後、6月に1米ドル=7.3エジプト・ポンドまで持ちかえした。いずれにしても、昨年暮れから今年1月にかけてエジプト経済に「何か」が起きていたように見える。 
 
  ハンケ教授は昨年から今年にかけて、エジプトではGDP(国内総生産)が激減し、外貨保有高が減少し、失業率が上昇したと説明する。通貨価値の下落は物価高騰(年間インフレ率22%)につながる。つまり「悪かった」エジプト経済が「もっと悪くなった」というのだ。通貨価値が下落した理由をハンケ教授はムルシ政権が行った物価統制と外貨引出規制にあったと観る。 
 
  2008年にハイパーインフレを経験したジンバブエの場合、インフレに対処しようと政府が物価統制令を断行すると、スーパーの棚から食品も生活必需品も大半が消えることになった。それらの商品はもはや政府の統制を受けない闇市場で売買されるようになっていった。政府の価格統制とは裏腹に、モノ不足に悩まされていると闇売買の価格が高騰していく。やがては通貨の安定した米ドルがエジプトポンドに代わって流通することにつながっていく。 
 
  エジプトの場合、ハンケ教授によれば政府の経済統制によって国民経済の必需品であるガソリンなどの不足が目立ち始めたとされる。その結果、国民生活は深刻なモノ不足と物価高に見舞われることになった。 
 
  ハンケ教授は’bread is more important than ideas.’(パンは思想より重要)だという。ムルシ政権の経済運営のまずさに問題があったと教授は観ている。 
 
■Sankei Biz「闇市場でのドル需要減少 エジプト経済停止状態 購入や生産縮小」http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130705/mcb1307050502003-n1.htm 
  「エジプト・ポンドは年初来で9.5%下落。中東ではシリアの通貨に次いで2番目に大幅な下げとなった。」 
 
■日経(昨年12月30日付の記事)「エジプト外貨準備高「危機的水準」 破綻回避課題に 」 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM3000M_Q2A231C1FF2000/ 
  「30日の外国為替市場では一時、通貨エジプト・ポンドが対ドルで史上最安値の1ドル=6.3ポンドに下落した。」 
 
■インターナショナルビジネスタイムズ記事(今年6月) 
  「手をこまねくムルシ政権:下落したエジプト・ポンドがエジプト人を苦しめる」(’Devalued Pound Hurts Egyptians While Morsi Government Dithers ’) 
http://www.ibtimes.com/devalued-pound-hurts-egyptians-while-morsi-government-dithers-1312363 
  ’In the first four months of 2013, food prices jumped by 10 percent, primarily driven by the pound’s devaluation and rising energy prices’ 
 
  「2013年の最初の4か月で、食品価格が10%高騰した。その主な理由はエジプト・ポンドの下落と、エネルギー価格の高騰である」 
 
  不況が進み、失業者が増える中での食品価格の1割の高騰である。 


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