2013年07月26日11時55分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】東電管内で大規模停電続く どうも、電力会社の送電系統の維持に異常が起きている  山崎久隆

 「原発が止まっているから広域停電が心配」などという停電パニックを誘発しそうな7月1日の読売新聞社説。こんな記事を載せたのは原発再稼働を後押しするためか。2011,12年と二年続きで多くの原発が止まっているのに広域停電も起きなかったことに推進側がいらだっていることがよく分かる。これに対して、週刊朝日の掲載した記事は「驚愕! 東電幹部 原発再稼働へ向けて猛暑を念じ、経産省幹部へメール(dot. 週刊朝日 7月19日号より)」という、猛暑を原発再稼働の後押しにするというとんでもない内輪メールの曝露だった。これでは「停電テロ」さえ起きるのではないかと恐れていたら、東電管内でよく分からない「連続停電事故」が連休中に発生した。 
 
 電力消費量が低いはずの7月15日海の日に、神奈川県川崎市を中心として実に8万2千世帯が最大3時間半も停電する騒ぎになった。気温は折しも35.1度(東京大手町)、まさに酷暑の最中に大規模停電である。 
 
 もちろん電力不足などではない。この日は最高で4185万kwの最大電力。用意した供給設備は5003万kwで、利用率は83.65%でしかない。危険域は97%を超えるあたりだから、まったくの「余裕」だった。 
 
 この四日前の酷暑日、11日から12日は週末で3連休前でもあり、最大電力は増加、今年始めて5000万kwを超える5024万kw(11日)と4955万kw(12日)、それに対して設備は5392万kw(11日)と5392万kw(12日)、率は92.33%(11日)と93.18%(12日)といずれも90%越えを今年始めて記録した。 
 
 ただしこの数値、11年と12年の使用水準から見てもほとんど増加していな 
い。昨年の実績から割り出すと、11日と12日の気温その他のデータをもとに算出した想定最大電力は4950.465万w(11日)と4927.522万kw(12日)である。とても停電など起きる供給状況ではない。 
 
 では何が原因なのか。東電によれば「変電所のトラブル」という。もちろん原発とは関係がないから、東電からは原発の停止と関連づけたような発表は何もない。 
 これまでに発生した広域停電でも近年大きなものは、1987年7月23日午後1時19分に発生した大停電である。280万戸が最大3時間20分停電した。原因は急激な気温上昇。この日12時には35.5度(東京大手町)を記録しており、毎分40万キロワットずつ電力使用が増大した。なお、翌日は37.3度になっている。ただし、使用の増大で負荷オーバーになったというわけではない。 
 この停電の原因には、クーラーのインバーター普及があったという。 
 
 そのため東電は電力供給システムなどを改善し、その後は広域停電を起こす可能性は減ったとされている。 
 しかし7月15日は千葉県市川市と松戸市周辺でも大規模停電が発生していた。 
17000戸以上で0時頃から最大2時間余りの規模だった。こんな時間ではまして電力消費と関連づけることは出来ない。 
 
 どうも、電力会社の送電系統の維持に異常が起きていると考えられる。それは大変怖いことだ。 
 数ヶ月前に、関西電力管内でわざと停電を起こした事件があった。現場の人数が足らず、仕事が忙しいことに腹を立てた電力社員による「サボタージュ」であった。 
 
 電力社員の間に「劣化」が進んでいるのではないか。巨大組織東電の中で、現状への不満と不安が、仕事の精度の低下につながっているのではないか。 
 
 原発事故で強い批判に晒された東電社員の間に大きな不満が蓄積されているのは想像に難くない。退職者も多いと聞く。現場のベテラン職員が減り、技術水準が維持できなくなっているとしたら、危険なことだ。このことのほうが、遙かに電力供給に危機的である。何しろ現に大規模停電が起きている。 
 
 ありもしない「原発が止まったから停電」などとする空騒ぎをして原発への提灯記事を書いている暇があるのならば、電力供給現場がどうなっているのか取材をして報道をしたらどうか。 


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