2013年08月06日11時39分掲載  無料記事
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コラム

コンテンツを「単発で見せてくれ」〜放送局・映画館以外の第三の道は可能か〜

   日刊ベリタはかつて月間1050円の講読料だったのを今年から月400円に大幅値下げした。従来から、もっと下げた方がいいという声を外部の人から聞いていた。中には年間3000円が限度かな、という声も複数耳にした。しかし、何事も試行錯誤のインターネット媒体にとって大きな賭けなので実現に時間がかかった。それでも私の知る放送業界人からはこんな声も聞いた。 
 
  「1本記事を読んだらその都度50円とか、100円払うというような単発の料金システムが欲しい」 
 
  月間・年間購読というグロスの講読とは別に、バーで1杯ハイボールを飲むたびに300円とか、500円を払うようなシステムも同時にあったらいいのに、というのだ。いずれこうした少額の取引も可能になるかもしれないが、現在はまだ月400円に値下げしたばかりである。 
 
  こうした声は活字に限らず、映像にも当てはまるかもしれない。筆者は放送や映画館での興行を決して否定するものではないが、時にはさまざまな制約から放送や映画館での上映が難しいテーマのものもある。あるいは放送できても放送時間の枠とか、番組のスタイルによって視聴者がわかるまで十分に映像をお伝えすることが難しいことも多々ある。また映画館では一定数の席を埋められなかったら赤字になりうる。観客が入っても入らなくても上映自体に一定額の補償金を求められることがあるし、上映のためのパブリシティも制作者で自費で負担してくれ、と言われる。また、映画館の上映枠自体が何か月も先まで埋まってしまって、臨機応変にその時起きた出来事を報じる即効性のあるドキュメンタリーを上映する体制がまだ普及していない。 
 
 そんなときに、2時間でも3時間でも1つのテーマで特集を自由に速攻で組んで、インターネットを使ったり、町の喫茶店や集会場を利用して伝える、という方法は今後もっともっと増えていくような気がする。というのは、視聴する人々がもっとストレートに1つのテーマを知りたい、という風に感じることが増えているのではないかと思うからだ。 
 
  そうした場合に、衛星放送とか、インターネット媒体にグロスで年間契約を結ぶ、というやり方もあるだろうが、そういうのとは違ってショットバーのように、知りたいネタを1つ300円とか、500円、あるいは100円払うからそれだけ見せてくれ、という単発方式の視聴形式もありうると思う。すでにそういう先駆的な試みもあるかもしれないが、視聴者の希望を考えると、もっともっと普通になっていく気がする。課題はその場合の支払い方法だろう。 
 
  しかし、何事も「こういうのが欲しい」という欲望が明確になったら、実現は間近だ。視聴する側からこういうテーマでいついつまでにコンテンツを作ってくれたら100円送金する、という声がたまってくれば制作する側も動き出すだろう。また、制作する側がこういうテーマで何日に「公開する」、という見込みを掲げて、必要な予算を掲示して拠金する、という方式も出てくるのではなかろうか。これら双方向からの制作意志を、上下のヒエラルキーなしに実現していくための、一種の証券取引所のような映像制作センターが今後生まれるかもしれない。 
 
  しかし、放送業界でコンテンツを作っている人間はこうしたシステム構築にあまり強くない、というか全然強くない。だから、これにたけた人間との出会いが新しいものを作るきっかけになるかもしれないと思う。このシステムを可能にするのは近年高性能のデジタル機器が安価で市場に出てきたことだ。地上波やBSのテレビ番組なら1本の製作費が数百万円とか1千万円とかの単位だが、少数で短期間に情報をかき集めてDVDを制作する場合はテーマや取材範囲にもよるだろうが、最も安いものでは1本数十万円からでも可能となってくるだろう。この金額はすでに少額寄付でも制作可能な金額帯になってきているのだ。 
 
  もちろん、この製作費では(恐らく)制作者が暮らしていくには十分ではないだろうが、取材者たちが既存のテレビや映画の仕事と補完しながら(あるいはそれ以外の分野の職業生活を送りながら・または主婦・主夫業と並立しながら)、彼らの取材生活の中に臨機応変に組み込んでいく、というあり方はあるのではないだろうか。取材者に専門分野があるのなら、それをアピールできる機会になりうるはずである。さらに今までとは違った系統のこれらの作品群も適切に評価したり、報じたり、記録したり、保管したりするシステムも必要だろう。そのことで質の向上にもつなげていけるのである。 
 
  以下は最近始まった「クラウドファンディング」と呼ばれる拠金方法についての記事。世界中からの少額寄付による制作だ。 
 
■エイミー・ジョー・ジョンソンの映画作り 
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