2013年08月11日09時22分掲載  無料記事
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みる・よむ・きく

「赤ずきん」

 「赤ずきん」と言えばシャルル・ペローのコント集や、グリム童話でおなじみの童話の定番だ。狼が森で出会った赤い被り物をした少女に<食欲>を感じ、少女が訪ねる病気のおばぁさんの家を先回りする。まずベッドのおばぁさんを食べ、そのおばぁさんに化けて、赤ずきんを待ち伏せして、だまして食べてしまう。この話にはいくつかの別バージョンがある。 
 
  現代アメリカのユーモア作家・漫画家のジェームズ・サーバー(James Thurber,1894-1961)も「赤ずきん」を改作している。「少女と狼」と題されたその別バージョンでは赤ずきんがベッドでおばぁさんのふりをしている狼の正体に気がつく。そしてバスケットの中から護身用の銃を取り出し、ただちに狼を射殺するのである。 
 
  「いくらナイトキャップをかぶってナイトガウンを着ても狼が化けられるものはカルビン・クーリッジ大統領によく似たメトロゴールドウィン・メイヤー映画のライオンがせいぜいだろう」とつづっている。 
 
  サーバーは狼が人間の言葉を話すところまでは認めても、おばぁさんに化けて少女を騙す、というところに無理を感じたのだ。少女もそこまで愚かではない。サーバーのこの改作が雑誌ニューヨーカーに掲載されたのは1939年1月、ヒトラーがポーランドに侵攻し、第二次大戦を始める8か月前だ。その頃にはヒトラーの正体も明らかになりつつあった。 
 
 
■' The Girl and the Wolf'  (少女と狼) 
 
  ユーチューブにサーバー版をアニメ化した4分30秒ほどの短編映像がUPされている。こちらでは少女はナイフを使う。「今日では少女を騙すのは昔ほど簡単ではない」という締めの言葉が引用される。サーバーの作品はユーモア作品になっているが、こちらはもっと怖い。 
http://www.youtube.com/watch?v=sXTmdWcfXUw 
 
■ジェームズ・サーバーの復刻を望む 
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