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2017年04月15日



Special

特集

みる・よむ・きく




共謀罪の原型「治安維持法」の権力犯罪を描く 映画『横浜事件を生きて』(松原明 監督・ビデオプレス作品、1990年)
 国会で共謀罪の審議がはじまった。次代の歯車を戦前の治安維持法時代に後戻りさせる法律だ。そんな時代に警鐘を鳴らす映像がある。『横浜事件に生きて』(松原明 監督・ビデオプレス作品、1990年)。『横浜事件 半世紀の問い』(同、1999年)だ。平和と憲法の映画上映運動を続けている「憲法を考える映画の会」が2017年1月29日、東京・千駄ヶ谷区民会館で上映会を開き、大盛況だった。共謀罪に対する危機感がその背後にあった。(大野和興)(2017/04/21)


映画『娘よ』 「もの」として扱われることに抗う女性   笠原眞弓
 画面の真ん中に1本の黒い柱が立っている。それを挟んでこの家の主の男が座り、その従属品である女がかまどの前で立ち働いて食事を男に供する。ごくありふれた日常だが、柱が気になる。画然と男の社会と女の社会を分けている。(2017/04/19)


野村豊弘著「民事法入門」 (有斐閣アルマ)
有斐閣から出版された野村豊弘著「民事法入門」はちょっと感動ものだった。新書よりは少し幅が広いが全体に小ぶりな本の中に、民事法の基本が大変優しく解説されているからだ。民事法は民法や商法、そして民事訴訟法などのそれらの手続き法から構成されるのだが、筆者が法学部に在籍していた頃は民法も商法もそれぞれバラバラに学ぶだけで、全体を「民事法」という風に一望する勉強をしたことがなかった。卒業後に後悔しても仕方がないのだが、全貌をできるだけ初期につかむ、ということはその後の勉強にとってとても大切だ、と思う。(2017/04/17)


安部直文著「全図解 日本のしくみ 政治・経済・司法編」(講談社インターナショナル)
講談社インターナショナルから出版された対訳形式のバイリンガルブックスシリーズは書店で目にされたことがある方も少なくないだろう。 「英語で読む日本国憲法」という対訳本もこのシリーズで出版されており、憲法と英語を同時に学べる貴重な本だった。だが、ウィキペディアによると、講談社のこの子会社は1963年に設立され、2011年4月末で解散となっている。残念だ。思えば筆者が対訳という出版形式に初めて触れたのは30年前の学生時代にカナダを旅してケベックの古書店でジャック・プレヴェールの詩集「パロール」を手にした時だった。(2017/04/16)


シェイクスピア作「ジュリアス・シーザー」 〜独裁政権の誕生前夜を描いた激動の傑作〜
今、世界では近代の市民社会が壊れかけ、各地で独裁者が再び生まれ始めています。こんな時、英国人は何百年もの間、ある芝居を見てどう自分が振る舞うべきか、考えてきました。それがこの劇、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」です。英国では政治家や外交官を目指す若者は学生時代にシェイクスピアを暗唱できるくらい読むのが伝統でした。わが国でも筆者が学生の頃は政治演説の見本として中学の国語の教科書に掲載されていたものです。「ジュリアス・シーザー」は古代ローマ史に材を取っています。(2017/04/03)


岡沢憲芙編「演習ノート 政治学」(法学書院)
法学書院が出版した岡沢憲芙編「演習ノート 政治学」は大学生向けのテキストのようだが、一般の人にとっても使いやすい政治学の一問一答形式の入門書である。政治と言えば曖昧模糊としてつかみどころがない印象を持つ人が多いだろうが、政治学という学問があるように科学の対象である。アメリカでは「ポリティカル・サイエンス」というようにサイエンスという言葉が科目についているのだ。初版は1982年である。(2017/04/02)


映画「未来を花束にして」  現状を打破する女性の闘いに魅了される  木村結
  原題の「サフラジェット<Suffragett>」のことを知らなかった。女性参政権の闘いは日本では平塚らいてふという素晴らしい先人がおり、市川房枝さんもその後を引き継いだ。赤松良子さんはお元気でクオータ制を日本に導入する運動を永年続けられている。しかし日本の女性の地位は世界経済フォーラムの発表では144ケ国中111番目(2016年10月)という不名誉なことこの上ない。安倍政権になって毎年順位を落としているのが実態。(2017/03/31)


『国家と石綿 −ルポ・アスベスト被害者「息ほしき人々」の闘い−』を読んで  松原康彦
 先日、新聞の書評欄に『国家と石綿 −ルポ・アスベスト被害者「息ほしき人々」の闘い−』(永尾俊彦著 現代書館出版)という本が昨年末に出版されたのを見て、購入し、読んだ。アスベスト被害についてほとんど知識がなかった。ただ、阪神大震災で崩壊したビルなどから大量のアスベストが飛散した。(2017/03/27)


大下英治著 「安倍官邸『権力』の正体」   安倍政権の4年間を振り返る
大下英治著「安倍官邸『権力』の正体」(角川新書)は安倍首相を含めて安倍政権をべた褒めした本である。しかし、同時にそこには第二次安倍政権を支えた人間が誰で、それぞれがどういう風にチームワークを築いていたかがよく書かれていて大変興味深い。特に第二次安倍政権の知られざる特徴である「内閣人事局」を作って高官をわしづかみにできた経緯を書いていることも本書の功績だろう。(2017/03/26)


ヒマラヤの変わらない祈りにつつまれて  『世界でいちばん美しい村』  笠原眞弓
 報道写真家の石川梵さんは、空撮が得意だ。東日本大震災のとき、いち早く現地入りして、その惨状を空から伝えた。そして人々の話を聞き、寄り添うように撮ってきた。2015年4月、ネパールに大地震があった。彼はその経験を生かそうと、報道が誰も入っていなかった震源地近くの村ラプラックにいち早く入る。(2017/03/25)


黒沢久子氏のシナリオ 「お父さんと伊藤さん」  現代の名作
月刊誌シナリオ(2016年11月号)に掲載された黒沢久子氏の脚本「お父さんと伊藤さん」は身近な話ながら、骨太の骨格を持つ傑作だ。シナリオ誌の表紙には年齢は少し異なるもののいずれも中高年の二人の男にはさまれた若い女性の写真が掲載されている。男はリリー・フランキーと藤竜也で、女は上野樹里である。(2017/03/22)


詩人ランボーに魅せられた個性派映画監督の新作 “La DorMeuse Duval” (河で眠る人) マニュエル・サンチェス監督にインタビュー Interview : Manuel Sanchez (réalisateur )
フランスというとパリやマルセイユ、リヨンあたりがすぐに頭に浮かぶと思いますが、ベルギーとの国境地域に広がるアルデンヌ地方も素晴らしいところです。自然が残り、白鳥や鴨が浮かぶ美しいムーズ河が流れています。詩人ランボーの故郷もこの地域です。アルデンヌ地方に長年住み着いて活動しているフランス人の映画監督の夫婦がいます。マニュエル・サンチェス(Manuel Sanchez)監督とシナリオライターのミュリエル・サンチェス(Muriel Sanchez)さんです。二人はランボーの詩に着想を得た新作映画“La DorMeuse Duval”(河で眠る人)を作ったばかりです。いったい、どんな映画なのでしょうか?(2017/03/19)


ギュンター・グラス作 「ブリキの太鼓」
大阪の塚本幼稚園の児童が軍艦マーチを奏でている映像を見た。若い女性の先生が溌剌と指揮していた。ドラムを叩いている子供が前の方に立っていた。それを見ていると「ブリキの太鼓」という小説が思い出された。作者はドイツ人のギュンター・グラスだ。第二次大戦前夜のポーランドの港町ダンツィヒがナチズムに染まっていく時代をブリキの太鼓を叩く超能力使いの少年を主人公に描いた物語である。「ブリキの太鼓」は1959年に世に出た。同年、日本人として最初にグラスと対談し、記事を日本の文芸誌に寄稿した岩淵達治氏によると、この小説はドイツで戦後「最初の」小説、という風に受け取られたと言う。(2017/03/14)


「息が欲しい」といって死んでいった 永尾俊彦著『国家と石綿』  大野和興
 ぼくらは「いしわた」と呼んだ。四国山脈の真っただ中の山村で育った。小学生低学年だった。学校に自慢気にもってきて、これがいしわただとみせびらかしたやつがいた。奥の方の集落から通ってきているやつだったが、彼がそれをどこで手に入れたかはわからなかった。珍しくて、いじりまわした。いしわた、せきめん、アズベスト。様々な名前で呼ばれる。「富国強兵・殖産興業」にとってなくてはならない重要鉱物だと知ったのは、ずいぶん後のことだ。埃となって舞い、肺に取りついて、人を死に至らしめるということを知ったのは、それから更に後のことだった。(2017/03/12)


河合弘之監督 「日本と再生 光と風のギガワット作戦」
原子力産業の構造的な問題をドキュメンタリー映画「日本と原発」で描いた弁護士の河合弘之氏が再びメガホンを取った。その新作が現在、上映中の「日本と再生 光と風のギガワット作戦」だ。今回は風力や太陽光、地熱など自然のエネルギーを活用した新しいエネルギーに切り替えている自治体をドイツ、デンマーク、米国、中国、中東、日本など様々な場所に河合氏自ら足を運んで見つめていく。そして、環境エネルギーに詳しい飯田哲也氏が河合氏に同行している。テンポは非常によい。(2017/03/08)


『さよなら!福沢諭吉』 落合栄一郎
  これは、表記の題名の書(1)の紹介である。これは「1万円札から福沢諭吉の引退を求める三者合同講演会」の記録である。この書の副題は「日本の近代化」と「戦後民主主義」の問い直し」となっている。福沢諭吉は日本近代の民主主義・自由主義の先達と多くの人は思わされてきた(私自身も含めて)。実は、福沢はそれとは正反対の、帝国主義・人種差別主義の最たる人で、明治からの日本帝国誕生とそれを支え、間違った方向に日本を導き、太平洋戦争での敗北へと日本国を動かした原動力だったようです。(2017/02/28)


映画「太陽の蓋」と「シン・ゴジラ」が描く日本 木村結 
2016年7月に封切られた映画「太陽の蓋」に、私は1年ほど前から関わってきた。福島原発事故関連では、私も関わった「日本と原発」を始め数多くのドキュメンタリー映画が作られているのに、劇映画を作る人はいないのか、と残念に思っていたところだったから話をいただいた時は二つ返事で引き受けた。毎月制作会議に参加し、上がってくる脚本へのダメ出しを行った。一般の人に観てもらいたいという思いが強いためか、脚本はどうしても中立な立場を取ろうとしていた。朝日新聞の「吉田調書報道取り消し事件」でも明らかになった「イチエフからの撤退問題」そして安倍総理がデマを流した「官邸からの海水注入中止命令事件」が曖昧になる。私たちは常に第一次資料にこだわり、真実は何かを探り、劇映画で真実を語る壁を感じながら仕事を進めた。(2017/02/27)


加藤周一著 「日本文学史序説」
加藤周一について筆者が初めて知ったのは高校時代に国語の教師から加藤の代表作の1つである評論「雑種文化」について聞いたことでした。「雑種文化」の骨子は〜高校時代に読んだ時の記憶によりますが〜日本文化にはその起源より様々な多様な要素が詰め込まれているということでした。もともと無文字社会だった日本人が中国の文字を導入して書くことを始めた、という歴史の中に日本文学が日本語と中国語との間で長い歴史の中でその関係の中で物語を紡いできたことに他なりません。このことは事実であり、現在の中国共産党政権の良しあしとは無縁のことです。現在、英語が学校により初期から組み込まれようとしていますが、これが何をもたらすのか、そのヒントも日本の歴史の中にあるのではないでしょうか。(2017/02/26)


『SMAPと平成』『高齢者風俗嬢−女はいくつまで性を売れるのか』 芸能界と風俗の現場から「働く」ことの意味を問う  西沢江美子
 2016年というのは、奇妙な年であった。SMAP解散、「下流老人」に代表される老人の貧困化、日本を代表する文化資本電通での過労死―。年を超えてもなお深化している話題でもある。ひとくくりでいうと、最も見えにくい労働現場の人権を明るみに出したのが、これらの話題だった。身体を張って、丸ごと身体を商品にして働く人々のなかにこそ、いまの時代を読み解く知恵がある、そんなことを考えながら、いま書店で目につくSMAP関連本と高齢者本の中から新書版2冊を選んでみた。(2017/02/20)


本山美彦著 「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」  
本山美彦著 「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ」を初めて手にしたのは2007年の頃で、本書が出版されてまだ間がない頃だった。副題は「米国の対日改造プログラムと消える未来」。タイトルはセンセーショナルなものだ。岩波でも、成文堂でもなく、ビジネス社という出版社から出ている。バブル経済が崩壊した1990年代以後、長銀が消滅して外資に売却されたり、巨額の負債を負った日本企業がハゲタカファンドに買収されたり、規制緩和されたり、郵政が民営化されたりと様々な変化が起きた。その後、非正規雇用が当たり前になり、全労働者の40%にまで広がっている。(2017/02/19)


里中哲彦著 「英文法の魅力〜日本人の知っておきたい105のコツ」
里中哲彦著 「英文法の魅力〜日本人の知っておきたい105のコツ」は中公新書から出ている一冊です。里中氏は著者の紹介欄を読むと、河合塾の講師や翻訳の仕事などをしてきた人です。で、この105のコツを1つ1つ読んでいくと、とても面白い。どう考えてよいのか、もやもやする表現というのが常にあるものですが、それを文法的にどう考えればよいのかを1つ1つ説明しているのです。(2017/02/11)


ほとんど本邦初公開の現代戯曲7作に7人の演出家と俳優たちが挑む 「海外戯曲リーディング」(調布市せんがわ劇場) 
戯曲を舞台で上演する形式とは違って戯曲を俳優たちが観客を前にして読むのがドラマリーディングです。リーディングと言っても単なる朗読と違って第一線の演出家と俳優たちが舞台を作るだけに演劇の醍醐味はたっぷり味わえます。そしてこれは少ない予算で世界の優れた戯曲を紹介するには最も優れた方法でもあるのです。今回調布市せんがわ劇場で上演される今回の「海外戯曲リーディング」は世界7か国からほとんどが本邦未公開の作品7本をセレクトしたものです。それらに取り組む演出家と俳優たちも個性に富む実力派ぞろいです。上演は2月9日(木)から19日(日)まで。(2017/02/10)


クリスティン・ムンジウ 監督 『エリザのために』 社会主義体制というルーマニアの一つの真実  笠原真弓
 ルーマニアの何を知っているだろうか。体操選手のコマネチの他は、1989年の社会主義体制下の独裁者チャウシェスクの失脚と処刑くらいだ。その歴史的評価は、いろいろ言われているようだが、いまだに力による政治から完に全脱却していないようである。観た後に面白かった、よかったという言葉と共にたいして残らない映画がある中で、この作品は時間と共に各場面が思い出され、気になり、ぼそぼそと周りの人と話したくなった。「社会体制と、人が生きることとは」と考えさせられる。(2017/02/07)


池上嘉彦著 「<英文法>を考える」 
最近、英文法づいています。夏に高校生向けの英文法の参考書を10冊ぐらい、ブックオフで買い込んでざっと読んでみまして、10冊も読んでいたら意外と項目は限られているな〜と思ったんです。だんだんまたか・・・という感じですね、ネタが尽きてくるんです。でも、最近偶然手にした池上嘉彦著「<英文法>を考える」は既存の英文法の型を疑っている本で、「そうだそうだ・・」と今まで五文型などでひっかかってきた疑問点を実に鋭く追及しているではありませんか。(2017/02/05)


ラティノ 対 トランプ  ものものしい雰囲気だが軽くもある短編戦闘映画
メキシカンとトランプ大統領の「戦争」を風刺した短編映画。描かれるメキシカンたちの怒りはとてもビジュアルだ。(2017/02/03)


手塚治虫著 「マンガの描き方  〜似顔絵から長編まで〜 」
マンガの巨匠である手塚治虫が書き下ろした「マンガの描き方」という本を筆者が初めて手にしたのは小学校の5〜6年生の頃だった。この本には一冊の中に漫画を描く道具や起承転結を基本としたストーリーの作り方、絵を描くコツ、遠近法の基礎などの基本情報がつまっていた。そして、本書ならではの特徴は漫画家を目指す人だけでなく、親や教師などの生活者も漫画を描くことでコミュニケーションに役立てることができる、と訴えていたことだった。(2017/02/03)


リチャード・フロリダ著 「グレート・リセット」  アメリカの都市再生論 大不況の時代の中でこそ次代への飛躍が行われてきた・・・ ”The Great Reset " written by Richard Florida
アメリカの刺激的な都市再生論である。2008年のリーマンショックで大不況に陥ったアメリカだが、過去の1930年代の大不況の時代でも、1870年代の大不況の時代でも、実はこういう時にこそ、社会を変える大きな変革が行われ、次代を作ってきた、というのだ。つまり、大不況になると人々は何とかしようともがき、ある人たちは都市を移動することによって産業の重心も変わり、都市も変わっていく・・・今回のリセットは30年代の大恐慌の時よりはるかに大きな変化となる可能性があるという。本書は7年前の2010年に書かれたから、その後、本書で萌芽を描いていた社会現象はどうなったのだろうか。(村上良太)(2017/01/30)


西嶋真司監督『抗い 記録作家林えいだい』 底辺の視点が引きずり出す真実  笠原真弓   
 北九州に住む林えいだいは、コツコツとそのあたりを歩いている。そして自分の感性に触れる事実を、ひたすら当事者から聞きだし、記録していく。著書は北九州の公害や炭坑の労働災害、その中でもさらに弱者である朝鮮人労務者に関するもの、女性労務者、そして日本国軍兵士として召集された朝鮮人まつわる理不尽が並んでいる。彼の関心はあくまでも国家権力にしいたげられた物言えぬ者たちに向けられ、その代弁者として記録している。 (2017/01/28)


ノーラ・エフロン著 「首のたるみが気になるの」 (阿川佐和子訳) Nora Ephron's " I feel bad about my neck and other thoughts about being a woman " (2006)
アメリカの人気映画監督だったノーラ・エフロンが晩年に書いた「首のたるみが気になるの」が日本で翻訳されて世に出たのは2013年のことだった。エフロン氏は脚本家として「恋人たちの予感」、映画監督として「ユーガット・メール」などのラブコメと呼ばれる一連のヒット作を世に出し、アメリカの女性の映画監督の先駆けの一人となった。本書「首のたるみがきになるの」は老いについて、女性が自分の身辺のリアルな実情をため息まじりに書き綴ったもので、そこには彼女の回想も混じっている。基本姿勢としては諦観であり、老いに対して逆らうことができない、ということを認め、そうした自分をあえて隠さず書いている。(2017/01/26)


第31回憲法を考える映画の会 映画『横浜事件に生きて』1990年制作・58分  / 映画『横浜事件 半世紀の問い』1999年制作・35分  治安維持法 の再来、共謀罪法案を考える
第31回憲法を考える映画の会 / 日時:2017年1月29日(日)13:30〜16:30 / 会場:千駄ヶ谷区民会館 集会室(渋谷区神宮前1-1-10 原宿駅10分) / 映画『横浜事件に生きて』1990年制作・58分 / 映画『横浜事件 半世紀の問い』1999年制作・35分/ 松原 明 監督・ビデオプレス作品 / 参加費:一般1000円 学生600円(2017/01/26)


黒田龍之助著 「ロシア語の余白」(現代書館)
この30年ほどの間に日本におけるロシア語の学習者はかなり減ったのではないでしょうか。統計を調べたわけではありませんが、冷戦終結前はロシア(ソ連)はアメリカと世界を二分するくらいの影響力を持っており、その言語を学ぶことは鉄のカーテンの向こう側の人々にとっては出世のためでもあり、無視できない言語であっただけではなく、日本でも多くの人がロシア語を勉強していました。(2017/01/24)


イマニュエル・ウォーラーステイン著 「史的システムとしての資本主義」(川北稔訳)  〜半労働者と大富豪〜
世界システム論というのは学生だった80年代に講義を多少受けた記憶があり、テキストはカール・ポランニーの「大転換」という本でした。それはそれで面白かったのですが、不勉強もあって世界システム論の全貌はよくわからないまま卒業してしまって今日に至っています。偶然、最近用事が会って吉祥寺を訪ねた時に駅前の古書店の棚にこの本「史的システムとしての資本主義」がありました。手に取って見たら、どうしても読みたくなって買ってしまいました。世界システム論の大家がウォーラーステインです。なんとなく今までもやもやしていたものがはっきりするのでしょうか。(2017/01/22)


マルタン・パージュ作 「僕はどうやってバカになったか」 Martin Page "Comment je suis devenu stupide " フランス版バブル時代の青春の書
フランスの作家、マルタン・パージュの出世作が「僕はどうやってバカになったか」という人を食ったタイトルの小説だ。これは大学で非常勤講師をしている知的好奇心に囚われた25歳の若者が生活を変えようとして試行錯誤を始める小説である。何ゆえに生活スタイルを変えようと決意したかと言えば、まずは生活が困窮している上に、通俗的な社会生活からはみ出してしまう、ということにあった。「アントワーヌには、あまり友達がいなかった。ひじょうに寛容で物わかりがよすぎたことから社会に適応できず、辛い思いをしていたのである。彼の趣味は何物も排除せず、雑多だったので、嫌いなものを共有するということで成り立つ派閥から締め出されていた。・・・」(2017/01/15)


越境するアンダークラス──映画『バンコクナイツ』  小倉利丸
 空族の新作『バンコクナイツ』は、今年観た映画のなかで最も印象に残り、わたしがうかつにも忘れかけていた1970年代のタイの熱い民衆の闘争を思い起させてくれた。とはいえ、決して「政治的に正しい」行儀のいい映画ではない。そこが空族の最大の魅力だ。(以下、ネタばれは最低限に抑えたつもりだが、予断なしに映画を観たい方は読むのを控えてください)(2017/01/03)


『放射能は人類を滅ぼす』 落合栄一郎
  先にこの欄に「原発は地球上にあってはならないもの」という論を発表しました(1)。これは、今秋(10月)日本の数カ所で講演したものの要旨のようなものでした。そして、講演をさらに敷衍したものが、今回刊行された『放射能は人類を滅ぼす』(緑風出版)(2)という書です。どうしてそうなのか、どうして放射能は生命とは両立できないのか、にも拘らず原発を擁護する側は、放射能の安全をしきりに言いつのっているが、その安全神話は本当に正しいのか、そして、そうした放射能の生命への悪影響を隠蔽するような仕組み、企てがどうしてつくられてきたか、などについて簡潔に論じたものです。どうか、ご覧になって、現在問題になっている脱原発の本当の意義を理解し、日本の世論を脱原発のほうに向かわせるように力を貸していただきたく思います。(2016/12/30)


【ほん】『新しい日米外交を切り拓く−沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)が描く日米外交のゆがみ
いける本大賞(2013年)、石橋湛山賞(2014年)、角川財団学芸賞(2014年)を受賞した『永続敗戦論−戦後日本の核心』(太田出版)において、日本の保守支配層が自発的に“対米従属”を続ける原因を解説した、著者の白井聡さん(京都精華大学専任講師)が「私の本を“理論”編とすれば、この本は“実践”編と言える」と語ったのが本書である。(坂本正義)(2016/12/17)


刑務所を描いたアメリカ映画 「ロンゲストヤード」  多様性がアメリカの力の源泉であることを描いた傑作
先日、「刑務所法律ニュース」のアレックス・フリードマン氏のインタビュー記事を掲載したところ、予想以上に多くの方に読んでいただくことができました。フリードマン氏はかつて自身が囚人だったジャーナリストですが、いくら犯罪者だと言っても、今の刑務所のシステムは腐敗した差別と暴力の世界になっていてひどい人権侵害がまかり通っていると訴えていました。そんなことが作用してか、偶然書庫からアメリカの刑務所を舞台にした映画を見つけました。「ロンゲストヤード」というタイトルの映画で1974年に公開されています。刑務所の犯罪者たちがアメフトチームを結成して、暴力看守たちのチームをぶちのめす、という物語です。(2016/12/13)


ジェームズ・M・バーダマン著 「あいうえお順引き この言いまわし 英語でなんていう?」 (How do you say that in English ?)
こんな場合は英語でなんという?・・・こういう類の英語の参考書は日本でたくさん出版されてきまして、それぞれ特徴がありますが、その中で頭一つ抜けて優れているなぁと感じさせられたのが中経出版から出ているジェームズ・M・バーダマン著 「あいうえお順引き この言いまわし 英語でなんていう?」でした。・気のせいだよ  It's ( just ) your imagination ・しつこいよ   Stop pestering me ! ・すぐわかりますよ You can't miss it . ・決まり!   That settles it!  ・恐縮です   I feel obligated to you. など、ちょっとした言い回しが2100ほど掲載されています。(2016/12/13)


イタロ・カルヴィーノ作 「まっぷたつの子爵」 On Italo Calvino's " Il Visconte Dimezzato" ( The Cloven Viscount )
  イタリアの作家イタロ・カルヴィーノと言えば空想力のたくましい寓話作家としてのイメージが強い。そればかりではないのだけれど、やはりカルヴィーノの寓話は面白いな、と今更ながら感じさせられたのが晶文社から出された「まっぷたつの子爵」という小説だ。イタリアの寒村からトルコとの戦場に馳せ参じた若い跡継ぎの領主が重傷を負う。かろうじて一命をとりとめて郷里の村に帰ってきたのは半身だった。すっぽり頭から足先まで縦に真っ二つになっているのだ。この半身になった子爵は戦争で心がねじれてしまったせいか、周りの生き物も人間も植物も片腕で真っ二つに剣で切り裂くようになり、領民たちは恐れおののく。(2016/12/09)


映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』 息をする権利と生きる権利は同じ 性的少数者の生存権  笠原真弓
 ニュージャージー州でのこと、激しい路上での拳銃の打ち合いと逮捕。ローレルは敏腕の警察官である。相棒との仲もそこそこいい。夜を徹して逮捕に結びつく情報収集もする。だが、女性であるために出世にブレーキがかかっている。ある日、管轄から離れた地で自動車整備工の若い女性ステイシーと出会い、愛が育まれる。 (2016/12/01)


日本武器輸出大国化のリアル 池内了・古賀茂明・杉原浩司・望月衣塑子著『武器輸出大国ニッポンでいいのか』 大野和興
 武器輸出三原則の緩和を言い出したのは民主党(当時)の野田政権に時代だが、政権が自民党に移り、安倍政権になってから急速に進んでいる。中国、北朝鮮の脅威をいいたて、自衛隊の軍備増強を進め、それをてこに東アジア・東南アジアを武器市場とし、日本の経済成長戦略アベノミクスの中心軸に据えようとする思惑が透けて見える。防衛省と日本企業はイスラエルとの無人攻撃機ドローンの共同開発に乗り出そうとするなど、軍事産業国家をめざして官民挙げて動き出している。それは、経済も科学技術研究も、企業活動もメディアも文化も、すべてが軍事化に向けて、ある時はソフトに、ある場合はハードな手法で統合される過程でもある。(2016/11/01)


大山礼子著 「フランスの政治制度」(東信堂)   49−3とは何か
 今年のフランスの政治の動きをウォッチしている人々にとっては49-3という数字の意味するものが何かを知ることが絶対に不可欠でした。これを知らなくては春から夏にかけてのフランス議会の緊迫した動きが理解できなかったのです。そして、49−3を巡って議会の外でも、つまりフランス各地で抗議のデモが繰り返されました。49-3について、ご存じでしょうか?実は筆者も知りませんでした。(2016/10/31)


東谷 穎人 著 「はじめてのスペイン語」  (講談社現代新書)
電車に乗っていると時々、若者たちがスペイン語をやろうと思っているんだ、という会話をしているのを耳にします。大学の第二外国語の選択の相談でしょう。昔だったら、ロシア語、フランス語、中国語、ドイツ語の4か国が第二外国語の主だったものでしたが、統計を取ったわけではないので正確な数字はわかりませんが筆者の印象では最近はスペイン語が台頭しているようです。その理由はスペイン語がスペインだけでなく、中南米や米国でも幅広く使える言語であることと、さらにはロシア語やフランス語に注力した先行世代との差別化ができることも理由の1つかもしれません。同じところで競争するより、これから伸びていきそうな新しい領域で勝負する方がよい、ということでもあると思います。(2016/10/28)


鯉登潤著 「人物デッサンの基本」 (ナツメ社)  内部の骨格から把握する人物の作画法
最近、漫画の描き方の入門書を10数冊手にしてみました。漫画の入門書にはストーリー展開を軸にした台本の作り方の部類と、作画方法をメインにした部類と大別されるのですが、印象深かったのは後者の出版物がたくさん出ている印象であり、漫画と言っても相当に正確な描写力が今日求められているのだな、と思ったことです。子供の頃、手塚治虫の「漫画の描き方」を手にした頃と比べると、作画に関しては雲泥の差です。(2016/10/23)


象徴天皇とは何かに迫る  保阪正康著『天皇のイングリッシュ』   西沢江美子
 いま書店は皇室本ブームである。8月8日の天皇の生前退位の意向をにじませたビデオメッセージ以来、賛否両論本でにぎわっている。天皇制に批判的だった人がメッセージを支持し、無条件に天皇をあがめてきた右派言論界の多くが批判するという奇妙な展開をしているのも特徴だ。(2016/10/17)


数江譲治著 「フランス語のABC」(白水社) 〜初心者にわかりやすい定番の入門書 長年フランス語を勉強してきた人にとっても基本の復習に最適な一冊〜 
白水社と言えばフランス語の学習書やフランス文学書で知られている出版社ですが、それだけに優れた定番の文法の入門書があります。数江譲治著 「フランス語のABC」(白水社)です。筆者の持っているこの本の説明によると、1981年に初版が出て、のちにCDの吹き込みをつけたバージョン(CD付・新装版)が2002年に出ています。今でも書店の語学書コーナーに並んでいますから、1981年からなんと35年も販売され続けているロングセラーなのです。売れ続ける秘密は次の2点だと思います。(2016/10/08)


やわらかくしなやかな闘争宣言   原ミナ汰・土井いつき編著『にじ色の本棚−LGBTブックガイド』   大野和興
 ぼくが好きな歌の一つに、島倉千代子の『人生いろいろ』があります。昭和もそろそろも終わりかけの昭和62年(1987年)、この歌の登場は衝撃的でした。寺山修司はすでになく、紅テントも黒テントも昔語りになって、戦後労働運動の最後の牙城国労が中曽根改革で最期を迎えていました。空前のバブル時代の予兆に人びとが心をざわつかせ、反体制的なるものが終焉を迎えていた時代でした。 「人生いろいろ/男もいろいろ/女だっていろいろ咲き乱れるの」と歌うこの歌に、社会のらん熟とともに生の多様性を肯定する時代の空気が感じとれたものです。でも、まだ性は男と女の二分法のままでした。(2016/10/05)


小林敏彦著 「ニュース英語 パワーボキャビル4000語」(語研)
英単語の学習本を手にしたのは学生時代の「試験に出る英単語」=通称「シケ単」以来になりますが、小林敏彦著 「ニュース英語 パワーボキャビル4000語」(語研)でまとめられているテーマ別の単語集はニュースを読んだり、また日本から英語で発信するときにとても役に立ちそうな一冊です。(2016/10/02)


戦後とは何だったのか 江古田で「わたしの沖縄 あなたの沖縄」をみる  笠原真弓
 9月24日から10月2日まで都内・江古田で「わたしの沖縄 あなたの沖縄」という連続上映会があった。ゲストが貴重なお話をしてくださる。24日の映画を観に行った。 『ひめゆり戦史 いま問う国家と教育』と『空白の戦史 沖縄住民虐殺35年』。森口豁(かつ)さんの日本テレビ時代の昭和54年(1979年。森さんは、普段は西暦派だが「どの天皇がこれをしたか」を特定したいときは、元号を使う)と55年に作った作品である。(2016/10/02)


りんひろこ著「NYスタイルのジャーサラダレシピ」(世界文化社」)
サラダと言えばレタスとトマトに既存のドレッシング、という定番以外のサラダがなかなか頭に浮かばない・・・そんな人に目から鱗が落ちるがりんひろこ著「NYスタイルのジャーサラダレシピ」でしょう。タイトルにあるように本書は縦長のガラスの瓶(ジャー)に何層にも分けてドレッシングと様々な野菜を詰め込むスタイルを取っています。ジャーに入れる理由は職場などに持ち込むためです。(2016/09/19)


寺田直子著 「ホテルブランド物語 〜人材を育てる一流の仕事とは?〜」(カラー版)
角川oneテーマ21という新書から出ている寺田直子著 「ホテルブランド物語 〜人材を育てる一流の仕事とは?〜」は2006年の出版と10年前のものですが、今読んでも興味深く読める本です。この本が書かれたのはその頃、外資系の高級ホテルが日本に進出していたからかと推察しますが、その時事性に限定されず、もっと一般的なホテル論として読むことができるからです。(2016/09/15)


マーティン・ファクラー著 「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」  地方紙の可能性と沈下する全国紙
ニューヨークタイムズ東京支局長(当時)のマーティン・ファクラー氏が書き下ろした日本メディア論「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」は2012年7月に出版されました。2012年7月と言えば民主党の野田政権の時代で、東日本大震災から1年ほど経過した頃です。出版された当時は記者クラブのこととか、大手メディアの給料のことなどに目が行きましたが、今、再び手にしてみると、興味のポイントが変わっているのを感じました。(2016/09/12)


吉田正俊著 「理解しやすい英文法」(文英堂)  大学受験だけでなく、英語をもう一度おさらいしたい時に便利な参考書
何十年ぶりかで英語の文法のおさらいをしようと思い、新刊書店や大手の古書店で大学受験生向けの英文法書を10冊くらい買って、夏休みに読み比べてみました。それぞれ良さや個性がありますが、自分が読んでみて一押しと思ったのが、吉田正俊著 「理解しやすい英文法」(文英堂)です。シグマベストというシリーズから出ています。「理解しやすい英文法」は、非常によく整理されていて、英文を分解したら、どのようになり、それらの単語がどのように結合していくのか、基本的に1トピックが1ページで、わかりやすくまとめられています。この見せ方は編集者の力でもあるのでしょうが、基本的には吉田氏の教育方法が優れていたんじゃないか、と思いました。(2016/09/11)


パレスチナの演劇人と共同制作の舞台 「ミラー」 9月9日から上演
パレスチナで演劇活動を続けてきた演出家と俳優が来日して、日本の劇団とともにいま、公演の準備を行っています。演出家のイハーブ・ザーハダ(Ihab Zahdeh)さんと俳優のムハンマド・ティティ(Mohammad Titi)さんです。ともに1977年生まれ。パレスチナの一線で活躍している国際的な演劇人です。二人が2008年にヘブロンに立ち上げた劇団がイエスシアターです。占領下で傷ついた青少年や女性たちに向けて演劇を通した教育活動を行ってきたそうです。彼らはブラジルの演出家、アウグスト・ボアール(Augusto Boal,1931−2009)が構築した「被抑圧者の演劇」という理論など世界とパレスチナの双方の文化をベースにしており、演劇を通して状況を理解し、それを乗り越える契機をつかむことを狙っているのです。(2016/09/03)


武藤一羊著 『戦後レジームと憲法平和主義』 大日本帝国継承に向け暴走する安倍政権への根底からの批判  大野和興
 戦後一貫して左翼の理論戦線の一翼を担ってきた武藤一羊さんの最新刊である。原水禁運動、べ平連、アジア太平洋資料センター、そして現在はピープルズプラン研究所を拠点に、旺盛な理論活動を繰り広げている。本書の狙いは、戦後日本国家のありようを規定する諸要因を追いながら、欧米のスタンダードで見れば極右に位置づけられる安倍政権が登場した背景を解き明かし、安倍政権とは何者なのかを明らかにすることにある。(2016/08/29)


米原万里著 「必笑小咄のテクニック」   読み手をミスリードする情報の海の中で
ゴルバチョフ大統領の通訳で知られ、ロシア語の通訳者でエッセイストでもあった米原万里氏が亡くなる少し前に書き下ろした本が集英社新書の「必笑小咄のテクニック」で2005年に出版されています。本書の中で米原さんは小咄(ジョーク)の核心は「詐欺の手口にソックリ」と言っています。つまり、落ちに至るまでに、聞き手をミスリードする(誤った方向に誘導する)ことがジョークの核心である、ということになるそうです。(2016/08/24)


細部の記憶を掘り起こすための努力   クロード・ランズマン監督のドキュメンタリー「生者が通る」(Un vivant qui passe ) 
クロード・ランズマン監督のドキュメンタリー「生者が通る」(Un vivant qui passe )は医師とインタビュアーのランズマン監督の二人の質疑応答が作品の核になっていて文字通り、インタビューが作品そのものになっています。ランズマン氏がインタビューしたスイス人の医師は第二次大戦末期の1944年にチェコのテレジエンシュタット強制収容所を赤十字国際委員会の視察団団長として訪れました。また、その前の年は飛び込みで独力でポーランドのアウシュビッツ強制収容所を訪ねています。このインタビューが撮影されたのは1979年ですから、35〜36年の歳月を隔てています。(2016/08/23)


アルベール・カミュ作 「客」  (短編集「追放と王国」から) アルジェリア戦争とフランス人入植者
去年、アルベール・カミュの原作の映画「涙するまで、生きる」が公開されました。舞台はフランスからの独立戦争が始まったばかりの1954年のアルジェリア。この映画が今、作られた理由はイスラム世界と西欧がどう関係を築いていくか動揺している時代だからだと思われます。しかし、映画は現在ではなく、60年近い前の時代に題材をとりました。なぜ今の時代を描くのに、アルジェリア独立戦争を題材にするのでしょうか。(2016/08/22)


日本人として考える「被害者」「加害者」としての反戦 「いしぶみ』『クワイ河に虹をかけた男』  笠原 眞弓
 8月、反戦、平和を守ることを再認識する刻である。日本人の戦争加害と被害という視点で、自分の来し方を振り返らざるを得ない。しかも安倍のおかげで、日本もきな臭くなっている。この、2つの映画「いしぶみ」と「クワイ河に虹をかけた男」は、それぞれをテーマにした映画だ。(2016/08/22)


「重要な任務 」としての虐殺   「生者が通る」(Un vivant qui passe ) クロード・ランズマンのインタビューから
排外主義は1930年代からドイツを中心として欧州に蔓延し、それはペストのように一部の極端な政治家だけでなく、多くの市民も巻き込んでいきました。自分たちは欧州の盟主であり、欧州を守るためにはユダヤ人を始末しなくてはならない、という風にナチスは提唱し、それがドイツの標準となってしまったことは恐るべき歴史です。フランスのドキュメンタリー作家クロード・ランズマンはホロコースを記録した映画「ショアー」で知られていますが、その映画を製作していた時にスイスの医師にインタビューしていました。このインタビューは独立したドキュメンタリー作品として公開され、さらには活字として書店にも並ぶことになりました。「生者が通る」(Un vivant qui passe )というタイトルです。ランズマン氏がインタビューしたスイス人の医師は第二次大戦末期の1944年にチェコのテレジエンシュタット強制収容所を赤十字国際委員会の視察団団長として訪れました。実は、この医師(モーリス・ロスル氏)はその前年に一人でアウシュビッツ強制収容所も訪問していました。(2016/08/18)


ナチスの徹底した偽装工作に医師はだまされた  「生者が通る」(Un vivant qui passe ) クロード・ランズマンのインタビューから
排外主義の特徴の1つがある特定の民族をゲットーなどに押し込めてしまうことです。これは南アフリカでもアパルトヘイト政策として行われていました。その隔離された施設でいったい何が起きていたのか。1944年、チェコスロバキア(当時)にあったナチスのテレージエンシュタット強制収容所に赤十字国際委員会の視察団が訪れます。ところが、彼らはナチスの偽装工作に騙されてしまったのでした。(2016/08/18)


強制収容所の眼差し 「生者が通る」(Un vivant qui passe ) クロード・ランズマンのインタビューから
フランスのドキュメンタリー作家クロード・ランズマンはホロコースを記録した映画「ショアー」で知られていますが、その映画を製作していた時にスイスの医師にインタビューしていました。このインタビューは独立したドキュメンタリー作品として公開され、さらには活字として書店にも並ぶことになりました。「生者が通る」(Un vivant qui passe )というタイトルです。ランズマン氏がインタビューしたスイス人の医師は第二次大戦末期にチェコのテレジエンシュタット強制収容所を赤十字国際委員会の視察団団長として訪れました。このドキュメンタリーは様々な問いかけを含んでいますが、忘れられないやりとりの1つに収容されていたユダヤ人の眼差しの強さがあります。(2016/08/17)


ガブリエル・ズックマン著「失われた国家の富 〜タックス・ヘイブンの経済学〜」 トマ・ピケティ教授の協力者・弟子が書き下ろしたタックス・ヘイブンの分析と対策
ガブリエル・ズックマン著「失われた国家の富 〜タックス・ヘイブンの経済学〜」が日本で翻訳されたのは去年の3月。それからおそよ1年後の今春、「パナマ文書」が暴露された。課税を逃れるためにいわゆるタックス・ヘイブンという課税がゼロだったり課税率が低かったりする場所に法人を設立したり、そこへ資産を移していたりした企業や個人の名前が公開され、世界をゆすぶったことは記憶に新しい。本書の著者ガブリエル・ズックマン氏は「21世紀の資本」で著名なフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の弟子であり、同時にピケティ教授が資料を集める時に欠かせない若手研究者である。(2016/08/14)


ド二・ディドロ著 「絵画について」   マニエールという悪習
フランス近代啓蒙主義のリーダーの一人、ド二・ディドロ(Denis Diderot ,1713 - 1784)は百科全書以外にも、数々の対話体の作品を書いていますが、芸術にも造詣が深く、「絵画について」という絵画論も著しています。ディドロが活躍したのはフランス革命の少し前にあたる18世紀後半です。翻訳の佐々木健一氏の解説によると、1648年にフランスの威信をかけた絵画彫刻アカデミーが結成され、その会員たちによる作品の展覧会が始まったのは1660年代からでした。そして、ディドロが筆をふるった18世紀半ばにはルーブル宮の一間を使ったサロン展が定期的に行われ、多くの人々が詰めかけ、人気を博していたそうです。そして、その模様を伝えるジャーナリズムもまた盛んになった時代でした。(2016/08/10)


やわらかくしなやかな闘争宣言――原ミナ汰・土井いつき編著『にじ色の本棚−LGBTブックガイド』 大野和興
 ぼくが好きな歌の一つに、島倉千代子の『人生いろいろ』があります。昭和もそろそろも終わりかけの昭和62年(1987年)、この歌の登場は衝撃的でした。寺山修司はすでになく、紅テントも黒テントも昔語りになって、戦後労働運動の最後の牙城国労が中曽根改革で最期を迎えていました。空前のバブル時代の予兆に人びとが心をざわつかせ、反体制的なるものが終焉を迎えていた時代でした。(2016/08/09)


経済自立の原理と方向性を見据える ――屋嘉宗彦著『沖縄自立の経済学』  大野和興
 辺野古新基地阻止を掲げる米軍基地をめぐる沖縄の島ぐるみの闘いは、個別課題を超えて沖縄の戦前・戦後史を包みこむ全体的総合的な運動へと進んでいる。それは政治的自立、さらには沖縄独立ということまでも射程に置いた議論として、いま沖縄の人々の心をとらえつつある。本書冒頭の「はじめに」で、著者は次のように記す。(2016/08/08)


赤狩り時代を生き抜いたハリウッドの名脚本家の闘いを描く 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
アメリカの赤狩り時代に立ち向かった一人の映画脚本家の闘いを描く「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」が公開されています。赤狩り時代に本名で脚本を発表できなかったために他人の名前で作品を発表するしかなく、アカデミー賞の授賞式にも立ち会えなかった伝説の人物として知られていました。多数の傑作を残していますが、この映画では「ローマの休日」を執筆した時のエピソードなどが盛り込まれています。(2016/08/08)


王様の風格  復刻してほしいオットー・ソグロー作「とっても優雅なリトルキング」(Oh! Such free-born LITTLE KING!)
上に立つ人が気が短かったり、神経過敏だったり、思いやりの薄い人だったりして、部下が鬱病になったり、退職したりといったケースが増えているようです。そういう意味で、今、もう一度見直してもいいのでは、と思うのがアメリカの漫画家、オットー・ソグローによる「とっても優雅なリトルキング」(Oh! Such free-born LITTLE KING!)シリーズです。原題を見ると、free-bornと書かれていますが、辞書を引くと「自由民」とか「自由の身の上に生まれた」と書かれています。言い換えると、奴隷ではない、ということのようです。(2016/08/07)


ジャン=フィリップ・トゥーサン著 「衝動と我慢」 (L' URGENCE ET LA PATIENCE) その2 
ベルギー生まれの作家ジャン=フィリップ・トゥーサン氏が自己の文学の歩みをそのデビュー当時から振り返ってつづったのが本書,’L' URGENCE ET LA PATIENCE’というタイトルの本で、ミニュイ社から出版されています。デビューしたのもこの出版社で、その経緯も書かれています。まだ日本語訳が出ていないと思われるため、前回、仮に「衝動と我慢」という風にタイトルを訳してみましたが、urgenceを衝動と訳してよいのか、本書の中でurgenceについて語った節を読むと我ながら、考えさせられてしまいます。ここでトゥーサン氏が説いているのは作家にとって必要なurgenceとは、いわゆるインスピレーションのことではない、と言っているからです。(2016/08/07)


ドキュメンタリー映画 「メルシー、パトロン!」(ありがとう、経営者さま) 「ファッション界の法王」に迫る、今年フランスで大ヒット中の反貧困映画
 今年、フランスで大ヒットしたドキュメンタリー映画が「メルシー、パトロン!」(ありがとう、経営者さま)です。映画館は爆笑の渦です。監督は左翼新聞「Fakir」の創刊者で編集長のフランソワ・リュファン氏、40歳くらいの精力的なジャーナリストで、映画を作ったのは今回が初めて。活字の世界の人がなぜ映画を作ったかと言えば、アメリカのドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーアに大いに刺激されたからだと言います。「メルシー、パトロン!」はフランスのある服飾関連の工場が労賃の安い東欧に移転したため、労働者たちは失業して町も疲弊している、そんな地方の町を舞台にしています。(2016/08/03)


中野好夫著 「シェイクスピアの面白さ」  シェイクスピア没後400周年  近代演劇とは何だったのか  
 今年は英国の劇作家ウイリアム・シェイクスピアが亡くなって400年目。1616年に亡くなっているから、日本の歴史で見ると江戸時代が始まったばかりの頃になる。そんな古い作家でありながら、今日でもシェイクスピアは世界各地の劇場で上演され、観客を魅了している。しかし、日本のシェイクスピア劇についてみると、最近は今一つ低調になっている気がする。そこで日本のシェイクピアの研究者の1人として知られる中野好夫氏の「シェイクスピアの面白さ」を手にしてみた。(2016/07/31)


オルハン・パムクの文学  西欧近代主義とイスラム主義の狭間で
クーデター未遂の後、トルコではイスラム主義政党「公正発展党(AKP)」を率いるエルドアン大統領が世俗派に対する弾圧を強めており、時々刻々とその報道が入って来る日々です。トルコはもともとイスラム国家の盟主だったオスマン帝国が第一次大戦で敗れ、領土が縮小し、国も政教分離を原則として近代化に邁進してきましたが、時々にイスラム主義への揺り戻しがあり、時計の振り子のようにオスマン帝国への復古主義と、政教分離の近代主義に揺れてきたとされ、今はエルドアン大統領のもとで激しく再び復古の側に動きつつあります。こうしたトルコの政治を背景に、ノーベル文学賞を受賞した作家のオルハン・パムクはその受賞記念講演に際して「父のスーツケース」という文章を発表しました。(2016/07/24)


ド二・ディドロ作 「ラモーの甥」  格差社会に生きる太鼓持ちの哲学を辛辣に描く戯曲
 フランスの啓蒙思想家で、作家でもあったディドロの代表作が「ラモーの甥」です。主人公は18世紀の著名な音楽家ラモーを叔父に持つ、「ラモーの甥」という中年男です。ラモーの甥は物まねやお世辞、貴族の子弟のための恋の助っ人などが得意で、そういう太鼓持ちの才能をいかんなく発揮して貴族に飯を食わせてもらってきた男。寄食している関係で、食にありつけるのが不定期なのか、食べられるときにはガツガツ食べることに専心するようです。そのため、時々で肥満したり、痩せていたりと体形が変化すると書かれています。(2016/07/24)


戦災傷害者の無念を描く  ドキュメンタリー映画「おみすてになるのですか〜傷痕の民〜」  村上良太
  林雅行監督のドキュメンタリー映画「おみすてになるのですか 傷痕の民」について書いたのは今から6年前になります。この映画は戦争で被災した民間人の戦後の苦しみを描いた傑作です。戦争法制ともいわれる「安保法制」が国会で可決した去年は戦後70年を飾る年でした。戦後70年に、戦争を容認する法律が強行採決されたことの意味を考えていると、そのことは戦争を直接に体験した人々の多くが死に絶えてしまったことなのだな、という事実につきあたります。そこでもう一度、この映画の紹介文を掲載したいと思います。(2016/07/11)


林健太郎著「ワイマル共和国 ヒトラーを出現させたもの」(中公新書)   ヒトラーを頂点に押し上げた大工業資本家たち
 今度の日曜日の参議院選挙は自民・公明が日本国憲法を改正できるかどうか、参院で改憲を発議するための3分の2の議席を狙う、戦後最も注目される選挙になっています。安倍政権の幹部である麻生太郎氏は以前、憲法改正はナチスに倣って国民が気が付かないように静かにやるべきである、という意味の発言をして国際社会から批判を浴びたことがありました。安倍政権を支える日本会議のイデオローグである憲法学者・百地章氏も、あるインタビュー記事でワイマール共和国を研究したと語っています。そこで、世界一民主的と言われたワイマル共和国をナチスが解体していくプロセスを検証した林健太郎著「ワイマル共和国 ヒトラーを出現させたもの」を読みました。(2016/07/08)


マーティン・ファクラー著 「安倍政権にひれ伏す日本のメディア」  ニューヨークタイムズ前東京支局長が「日本の世論調査は誘導尋問のような『世論操作』だ」
ニューヨークタイムズ前東京支局長のマーティン・ファクラー氏が書き下ろした「安倍政権にひれ伏す日本のメディア」は今年2月に出版された本です。今の日本の新聞やテレビメディアに対する厳しい評価が下されています。特に第二次安倍政権になってから、官邸のメディア対策が第一次安倍政権時代から格段に進化して高校野球からプロ野球になり、メジャーリーグを目指しているのに対して、日本のメディアは未だに高校野球レベルを出ていない、としています。(2016/07/06)


アジアの女性の実像を探る意欲的な試み 「Rethinking Representations of Asian Women」(アジアの女性の表象を再考する) 10人の社会学者・文化人類学者が研究を持ち寄り編纂
 今年出版された意欲的な本の1つが「Rethinking Representations of Asian Women」(アジアの女性の表象を再考する) です。アジアの女性の実像を探る意欲的な試みで、10人のアジアの社会学者・文化人類学者がそれぞれの研究を持ち寄り、伊地知紀子氏、加藤敦典氏、櫻田涼子氏の3人の日本の研究者が最終的に1冊の本にまとめ上げました。特筆されることはこの本が英文で外国の出版社から出版されたことです。そのことによって、日本人だけでなく、英語を理解するアジアの人々、あるいは世界の人々がこれらの研究にアクセスできるようになりました。具体的なテキストはバリエーションに富んでいます。■台湾の女性の水子供養を研究したもの、■食肉関連の仕事を割り振られてきたネパールの社会の下層カーストに位置する女性たちの生活向上のための互助的な取り組み、・・・(2016/06/30)


子安宣邦著 「『大正』を読み直す」(藤原書店) 戦後70年の原型としての大正時代 
近世日本思想史が専門の子安宣邦教授の話題の最新刊が「『大正』を読み直す」(藤原書店)です。話題の、と書いたのは様々な新聞で書評が書かれ、注目を集めているからに他なりません。なぜ今、「大正」時代に注目するのかと言えば、大正時代が明治と昭和の狭間の15年ばかりの短い時代(1912−1926)だったにも関わらず、日本で戦前の軍国主義・全体主義が揺籃された決定的な時代だったからであり、これが子安氏が本書を書いた動機にもなっています。(2016/06/29)


ジャン・ビヤンボーム著 「宗教に対する沈黙 〜ジハーディズムに直面した左翼〜」
フランスのパリでは昨年1月に風刺新聞のシャーリー・エブドに対するテロが起き、風刺漫画家ら12人以上が殺されました。フランスでは「私はシャーリーだ」というプラカードを掲げて市民が多数抗議に参加しましたが、この時、日本では<異国の宗教を風刺する漫画を描くのはけしからん><シャーリー・エブドはヘイト団体だ>と言ったようにむしろ、殺された風刺漫画家たちへの非難の渦が起きました。さらに<イスラム国とイスラム教は関係ない>というメッセージも国境を越えて飛び交いました。11月に今度はパリのカフェテラスにいた普通の人々や劇場でコンサートを楽しんでいた人々がテロに会い100人以上が殺されました。(2016/06/28)


西平重喜『統計でみた選挙のしくみ』を読む 根本行雄
 安倍晋三首相は、消費税の再延期を打ち出し、同日選実施を見送ったことによって、衆議院での3分の2以上の議席を維持することを選択した。7月10日に投開票がおこなわれる参議院選挙では、18、19歳の約240万人が新たに有権者に加わる。20歳以上の男女に選挙権が認められた1946年の衆議院選挙以来、70年ぶりの制度改正である。そして、今度の参院選は明文改憲に向かって暴走している自民党・安倍政権に3分の2超の議席を与えるかどうか、日本を戦争をする国にするかどうか、私たちは重要な選択を迫られている。こういう時期だからこそ、私たちには、選挙について、まだまだ、学ばなければならないこと、知っておかなければならないことがある。(2016/06/26)


ひたすら記録することの意味  『圧殺の海 第2章 辺野古』を観る  笠原眞弓
 藤本幸久・影山あさ子監督の「圧殺の海 第2章 辺野古」を観に行った。前作『圧殺の海 −沖縄・辺野古』は1時間40分のほとんどが、闘争というか、キャンプシュワブのゲート前の座り込みと、大浦湾の埋め立て現場のカヌー隊行動の場面だった。たぶん今作もそうだろうと、分かっていた。だから、どんなふうに上映されるのかと、とても楽しみだった。私も、今年の2月には、遅まきながらゲート前に行って、監督の藤本幸久さんにもお会いしているし、山城博治さんの参加者を守ろうとの配慮にも接していた。工事資材の搬入などなかったものの、ゲート前では日の出前からの座り込み、歌を唄った。この映画を観ていて警官の動きなど、その分以前よりリアルに感じられたのは、当然かもしれない(2016/06/21)


福島第一原発事故から緊迫の5日間を描く映画「太陽の蓋」  7月16日から劇場公開
この夏、7月16日から映画館で公開が行われる映画「太陽の蓋」。2011年3月11日、東日本大震災による福島第一原発事故の発生から緊迫の5日間を、新聞記者を主人公に設定し、事故の対応に追われた菅直人首相や枝野幸男内閣官房長官、さらにその周辺で活動していた実際の担当者たちを実名で登場させ、あの時、何が起きていたのかを追体験できるように作られた映画のようです。(2016/06/17)


「誤報じゃないのになぜ取り消したの?〜原発『吉田調書』報道をめぐる朝日新聞の矛盾〜」(彩流社ブックレット)
昨今、新聞は政治や経済、社会の動きを本気で伝えているのだろうか?それとも、噂の通り、首相との会食に象徴されるような政権との関係に縛られて、書きたいことも書けなくなっているのだろうか・・・。4月に出版されたばかりのブックレット「誤報じゃないのになぜ取り消したの?〜原発『吉田調書』報道をめぐる朝日新聞の矛盾〜」(彩流社)はそんな疑問を感じる読者に1つの手がかりを提供しています。朝日新聞と言えば東京新聞や毎日新聞などとともに、政府批判を比較的行ってきた新聞ですが、その朝日新聞に激震が走ったのがこのブックレットのテーマになっている「吉田調書」問題でした。(2016/06/17)


ジュンパ・ラヒリ著「べつの言葉で」 インド系アメリカ人の作家がイタリア語で本を書き始めた理由
 アメリカで活躍しているインド系の女性作家ジュンパ・ラヒリ氏が、このたび、英語を捨ててイタリア語であえて書いたのがエッセイ集「べつの言葉で」(新潮社)である。ラヒリさんのこの本を読み、彼女が生まれたのはロンドンで、その後、インド系の両親とともに渡米していたのを知った。そのアメリカで育った彼女はO・ヘンリ賞やピュリッツァー賞などを総なめにするような活躍をした。ところが、なぜかイタリアに渡って、イタリア語で本を一から書き始めたのである。本書で彼女はなぜ自分がイタリア語で本を書くのか、それがどんな意味を自分に与えるかを執拗に掘り下げる努力をしている。英語に比べたら、イタリア語の読者は圧倒的に少ない。大海の1滴にも等しい。それでも彼女はイタリア語に挑戦したのだ。(2016/06/06)


【書評】『孤立し漂流する社会を生きる私』(日本消費者連盟/消費者・生活者9条の会 編) 評者:大野和興
 「自分の経験も含めて話しますと、仕事がないと人前に出る必要がなくなりますわね。身だしなみを整える、家を片づけるというのは人前に出るからこそ。そもそも朝起きる必要がないから昼間も布団で過ごし、結果、夜眠れなくなる。で、夜には不安が襲ってくる。俺はこのまま人生を食いつぶしてしまうのか。そんな想念がぐるぐる回って、余計眠れなくなる・・・」(2016/05/28)


森川友義著『若者は、選挙に・・・』を読む 根本行雄
 今年7月には参議院選挙がある。安倍自民党政権は、すっかり、選挙対策で、自分にとって都合の悪い、改憲問題や、自衛隊の任務拡大や、核兵器保持や、さまざまな問題にだんまりを決め込んでいる。なにがなんでも、改憲をするための3分の2超の議席、85議席以上を確保したいのだ。安倍首相にとっては熊本地震も、サミットも、選挙運動のつもりのようだ。参議院選挙では、自民党を中心とする改憲勢力には、どのようなことがあっても85議席を与えてはならない。私たちには、森川の本を読んで、選挙について、学ばなければならないこと、知っておかなければならないことがある。(2016/05/22)


彼は「凡庸な役人」ではなかった 映画『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』 笠原眞弓
 元ナチス親衛隊(SS)将校アドルフ・アイヒマンの裁判を描いた映画だ。『ハンナ・アーレント』でも、実写のアイヒマンの裁判映像がドラマ映像の中に巧みに挿入されていたが、この作品ではさらに大胆に使われている。そのせいか、アイヒマンの人間性が浮かび上がってくる。1960年にアルゼンチンでアイヒマンが拘束され、61年にイスラエルで裁判にかけられることになり、4カ月にわたる、裁判の様子を逐一TVに流した。この映画は、その映像を撮った人たちの物語なのだ。(2016/05/20)


早乙女愛・足立力也共著『平和をつくる教育』を読む 根本行雄
 戦後70年の大半は、「自由民主党」が政府与党として政権を担当してきている。この政党は、党の綱領に「改憲」を掲げており、「解釈改憲」という政治手法を用いて、実質的に、「戦争放棄」という3大原則の1つを、一貫して、なし崩しにしてきた。その結果、とうとう、「安保法制」を施行し、実質的に、「自衛隊」が常備軍となり、日本は軍隊を持つ国、戦争のできる国となった。憲法に「軍隊を持たない」と明記している国は、わずかに2ヶ国。その1つが日本であり、もう1つがコスタリカである。今こそ、私たちにとって、コスタリカについて学ぶことは少なくないはずだ。(2016/04/30)


行田稔彦著『摩文仁の丘に立ち』を読む 根本行雄
 暴走を続ける安倍自民党政権は、夏の参議院選挙で勝利をおさめようと、ずる賢くたちまわっている。辺野古の問題を一時的に棚上げをして、沖縄の問題をごまかそうとしている。民進党や共産党など野党4党が国会に提出している安全保障関連法廃止法案ついては国会での審議をしようとしない。自衛隊についても、安保法制施行によって拡大した自衛隊の主要任務が実際に始まるのは参院選後になる。中谷元(げん)防衛相は3月22日の記者会見で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で離れた場所にいる他国軍部隊らを救助する「駆け付け警護」について、5-6月の交代要員の派遣時には実施しないことを明言した。安保法制が施行された今、沖縄戦の実態、戦争の実態とはどのようなものであるのか、その実態をしっかりと確認しておこう。(2016/04/20)


畑で哲学する農民詩人 映画『無音の叫び声』 笠原眞弓
 ある日、百姓と自称する人に出会いました。20年くらい前のことです。それから次々出会う農家の方々に、大きな刺激を受けてきました。(2016/04/14)


子安宣邦著「帝国か民主か 〜中国と東アジア問題〜」
 近世日本思想史を専門とする学者の子安宣邦氏による「帝国か民主か 〜中国と東アジア問題〜」が出版されたのは去年の今時分のこと。去年の今頃から秋にかけてといえば安保法制の問題が大きく浮上し、憲法解釈の問題とともに今年に至るまで政局の中心的課題となった起点とも言える頃でした。「帝国か民主か〜中国と東アジア問題〜」が投げかけている中心的テーマは中国を東アジアの中でどうとらえ、どう関わっていくかというもの。古来から中国を中心として発展した儒教文化圏というものがあり、それは華夷秩序とも言われ、中国を本家とする一元的な価値体系を強いていたものであると子安氏は見ています。それに対して子安氏が理想とするのは日中韓あるいは台湾や沖縄、香港なども含めて多元的な儒教解釈を容認する、旧来の華夷秩序の同心円的なヒエラルキーから解放された東アジア世界です。(2016/04/12)


ドキュメンタリー映画「無音の叫び声」(122分)全国上映に向けて 原村政樹(ドキュメンタリー映画監督)
5年間かけて完成させたドキュメンタリー映画「無音の叫び声」(122分)の初上映は去年10月、山形国際ドキュメンタリー映画祭で1000人の大ホールに立ち見が出るといった一回の上映では映画祭はじまって以来の大勢の人たちが来場する嬉しいスタートでした。この映画は山形県在住の農民詩人、木村迪夫さんの文学と人生を通じて、小さな村から反戦平和と戦後日本を見つめた作品です。(2016/04/09)


川口由彦著「日本近代法制史」 戦前の法制度を明治維新まで遡って一望する
 この夏の参院選で自民党が勝利した場合に憲法改正の試みが行われる予定ですが、自民党の改憲案では個人の尊重という戦後憲法の核がそがれ、「人として尊重される」という風に個が欠落していくことが象徴的です。一方で天皇は国の元首となります。一見、戦後憲法の体裁をある程度残している改憲案ですが、核となるところどころはしっかりと自民党の思想でおさえられているのが特徴です。改憲を悲願としてきた安倍首相は戦後レジームからの脱却を政治家としての目標に掲げてきました。つまりは戦前に国を戻すために、憲法をはじめ、法体系を抜本的に変えていく復古運動が今、日本で展開されています。そうした昨今、戦前までの法体系とはどうだったのか。そのことを明治維新に遡って記載した本が川口由彦著「日本近代法制史」(新世社)です。(2016/04/07)


呉善花著「韓国併合への道 完全版」
 日本の植民地政策を書いた本を何冊か続けて読む中で、呉善花著「韓国併合への道 完全版」を手にすることになりました。この本にはそれまでに読んだ歴史観とは違ったテイストがありました。趙景達氏の「近代朝鮮と日本」の場合は全編、一貫した厳しい日本の植民地政策に対する批判的な視点に貫かれていますが、呉善花氏の本書の場合は日本批判だけではなく、結果的に植民地支配を招いてしまった朝鮮の為政者の問題点を描くことと、日本の植民地政策が結果的に残した成果を描いていること、この2点にあります。(2016/04/06)


広瀬隆著『クラウゼヴィッツの暗号文』を読む 根本行雄
 安倍自民党政権の暴走が続いている。アベノミクスという彼の経済政策は失敗しているが、まだ、それが明々白々とはなっていないので、依然として暴走を続けている。広瀬隆は、『東京に原発を!』(集英社文庫)、『眠れない話』(新潮文庫)など、反原発関連の著書でよく知られているノンフィクション作家である。彼には、『クラウゼヴィッツの暗号文』(新潮文庫)というユニークな反戦平和論の著書がある。戦争とアベノミクスとの関連について考えてみたい。(2016/04/05)


なぜ、映画「無音の叫び声」を創ったのか 記録映画監督 原村政樹
 このドキュメンタリー映画の制作を思い立ってから5年、そして、2013年2月、撮影を開始して3年、今年(2015年4月)、ようやく長編ドキュメンタリー映画「無音の叫び声」を完成させることができた。紆余曲折、様々な壁に直面しながらも、途中で断念することなく、作品として世に出せるまでになったことで、今までの6本の長編ドキュメンタリ映画の完成時に比べものにならない程、苦労が報われたとの深い想いが去来している。 (2016/04/04)


趙景達著「近代朝鮮と日本」
趙景達著「近代朝鮮と日本」では韓国併合まで、日本軍が朝鮮半島とどう関わってきたかが検証されています。江戸から明治に代わり、日本は近代化を急ピッチで行いました。欧米列強に強いられた不平等条約を改正することを目指していた半面、隣国・朝鮮に対しては逆に武力をつきつけて不平等条約を締結します。日本が欧米列強からこうされたくないと思っていたことを逆に隣国の朝鮮に対して行って行くのです。本書を読むと、そのプロセスがよく理解できます。1910年に突然、日本が韓国を併合したわけではもちろんなく、明治以後、こつこつこつこつと隣国支配のために関与を深めていきます。本書によれば、大まかな流れの要素として以下のようなものがあります。(2016/04/03)


ダニー・ラフェリエール著「帰還の謎」(小倉和子訳)
ダニー・ラフェリエールの「帰還の謎」を読んでいる。この本はハイチの黒人作家ダニー・ラフェリエールがジャーナリストだった青年時代に自国の政治的迫害を恐れてカナダに移住した後、作家として国際的な名声をあげ、のちに故郷に帰省する物語である。ハイチという国の人びとの生がわかると同時に、面白いのは人が行き来することによって、ハイチだけでなく、カナダとハイチとの違いが見えてくることだ。人は2つの世界を旅することで1国にいるだけでは見えない関係性に気がつく。(2016/03/24)


小林茂監督『風の波紋』 「ああ、おれは狐に化かされていたんだなあ」 大野和興
 映画の舞台は越後妻有の里。ご多分にもれず人口減少と高齢化の波が押し寄せ、耕作放棄地と空家ばかりが増える。しかし一方で、田舎暮らしを望んで移住してくる人もいる。(本文から)(2016/03/23)


前田朗著『軍隊のない国家(27の国々と人びと)』を読む 根本行雄
 憲法を改正したいと考えている人々の大半は、なによりも、憲法9条の「戦争放棄」をなくしたいと考えている。それを安倍自民党政権は、「解釈改憲」の手法を悪用し、国会で3分の2の議席をもっているあいだに実現しようとしている。前田朗は世界中の「軍隊のない国家」を約3年かけて歴訪した。そして、「軍隊をもたない国家」は27カ国あるという事実と、『国家は必ず軍隊を持っている』という通念が誤りであるということを明らかにした。(2016/03/22)


本邦初演 エデン・フォン・ホルヴァート作「最後の審判の日」 東京演劇アンサンブルによる公演
 エデン・フォン・ホルヴァート作「最後の審判の日」を東京演劇アンサンブルが上演していた。本邦初演だそうだ。ホルヴァートという劇作家について、一般の人にはなじみがない名前かもしれない。しかし、この戯曲が1936年に書かれた、ということから推察されるようにファシズムの時代のドイツの人間模様を浮き彫りにしていて、非常に面白い。いったいなぜ今まで上演されてこなかったのだろうか。この舞台には男女間の情念と犯罪が描かれており、まずサスペンス劇として面白く見れる舞台だからだ。(2016/03/22)


≪気になる映画≫『バナナの逆襲』 バナナのしっぺ返しでドールは墓穴を掘る
  『バナナの逆襲』の試写を観た。妙な既視感が漂う。「あったこと」を「なかったこと」にしようと画策する多国籍企業ドールの姿は、近くは『美味しんぼ』の「鼻血騒動」に重なる。それはまた、キャスター降板が相次ぐ日本のマスコミの姿とも重なる。「なかったこと」したい勢力は、場所や時代を超えて跋扈している。しかし、あきらめずに戦い、勝利を得た弁護士や監督に希望を見る。(有機農業ニュースクリップ)(2016/03/17)


文京洙著「韓国現代史」
 立命館大学教授の文京洙氏が書いた「韓国現代史」(岩波新書)を通読。最近の朝鮮半島の情勢がメディアで大々的に報じられている今、「現在」という1つの点でなく、長い歴史を通してパースペクティブを持ちたいと思ったのです。本書は近代以後、特に第二次大戦後の韓国の歴史の大きな流れが一通り述べられていて、座右に置いておきたい一冊です。本書が書かれたのは約10年前、第二次大戦終結から60周年の年でした。そして最近、文京洙氏は本書を「新・韓国現代史」にリニューアルしました。(2016/03/09)


ダグラス・ラミス著「最後のタヌキ 英語で考え、日本語で考える」
アメリカ人の政治学者、ダグラス・ラミス氏が書き下ろした英語と日本語の対訳になっているテキスト集。翻訳は中村直子氏によるもの。1988年に刊行されたこの本の売りは300語の平易な英単語だけで1つのテキストが書かれている、ということでした。それまで英文を書くことは限りなく不可能に近い、と思っていた日本の人々にそうではないことを実証的に見せようとする試みです。しかもそれらのテキストは平和の構築について考えるものでもありました。(2016/03/07)


ドミニク・コルビ著「フランス料理13章〜日本で究めるモダン・クラシック」 Dominique Corby 'Les 13 chapitres - La cuisine française au japon'
1965年にパリで生まれ、「ラ・トゥールダルジャン」などの著名な店を経て、来日したフランス料理シェフ、ドミニク・コルビ氏が書き下ろしたフランス料理のレシピの本が「フランス料理13章〜日本で究めるモダン・クラシック」(柴田書店)です。フランス料理の本は多数出版されており、またフランス語を解説したフランス料理関連本も多数出ていますが、この本はレシピが日仏対訳になっているところがその他の多くの本との大きな違いです。(2016/03/04)


坂本素行著「糖尿病S氏の豊かな食卓」 陶芸家が病を機に豊かな食生活について真摯に考えた
  以前、「料理王国」というグルメの食の雑誌に連載されたコラムをもとに執筆されたのが「糖尿病S氏の豊かな食卓」(料理王国社)です。著者の坂本素行氏は日本橋などの著名なギャラリーで展示を行ってきた陶芸家。で、糖尿病S氏とは坂本氏に他なりません。本書は食というシーンに深く関わる器を作ってきた坂本氏が、自分の病気をきっかけに、食のあり方を見直し、自前で料理を作ってきた記録と言って過言ではありません。(2016/02/24)


「資本論」を読む試み 21世紀の恐慌と資本主義
  2008年に顕在化したアメリカ発の金融恐慌。不健全なアメリカの不動産市場に端を発し、物理学者や数学者を動員して構築した複雑な金融テクノロジーを通して、恐慌はアメリカばかりか、欧州に飛び火し、欧州連合の危機と右翼政党の台頭を各国で生み、さらにその火は新興国をも襲い始めています。こうした世界最新の金融恐慌について世界でもっとも引用されているという米国の経済地理学者のデビッド・ハーヴェイ教授は「資本の「謎」〜世界金融恐慌と21世紀資本主義〜」の中で分析しています。この恐慌の問題はカール・マルクスがその著書「資本」(日本では論という言葉をつけて「資本論」と訳されている)の中で分析している資本主義に内在する問題であり、ハーヴェイ教授はニューヨークで「資本」の読み直しを行っています。(2016/02/21)


パトリック・モディアノ著「ドラ・ブリュデール」(邦訳タイトル「1941年。パリの尋ね人」)
1年で一番寒い2月半ば、フランスの作家パトリック・モディアノの「ドラ・ブリュデール」(邦訳タイトル「1941年。パリの尋ね人」)を読んだ。この小説、というよりノンフィクションの重要な事件がちょうどこの厳しい季節に起きるのだ。1942年1月から2月のパリは極寒だったことが記録されているらしい。パトリック・モディアノは死んでいった人々を哀悼し、過去に想像力の糸を下ろしていく作家であることで知られていて、ノーベル文学賞の受賞理由もそうだった。「ドラ・ブリュデール」の場合はたまさか目にした第二次大戦中の古い新聞〜過去の史実をライブラリーでひもといていたのだろうか〜で、ドラ・ブリュデールという名前の15歳の少女の行方を探す尋ね人の広告をモディアノが目に留めたことに端を発する。広告を出したのは少女の両親である。それは1941年12月31日のパリ・ソワール紙の欄だった。(2016/02/18)


「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」 熊沢誠(甲南大学名誉教授・労使関係論)
 安倍政権の政治も金融市場に翻弄される経済も憂鬱なニュースばかりで心が沈むけれど、最近テレビの連ドラのいくつかはなかなか見応えがある。「私を離さないで」、「ナオミとカナコ」、そして「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」。とくに、通称「いつ恋」では、貧しい生活の恋人たちが失なうことのない優しさと、背景としての介護職場や引っ越し会社の過酷な労働環境、上司やバスの乗客たちといった周囲の人びとの鈍感な酷薄さとが、鋭い緊張をはらんでいて薄氷を歩む思いがする。(2016/02/12)


堀江敏幸著「子午線を求めて」
 仏文学者で作家の堀江敏幸氏によるフランス文学界のコラム集「子午線を求めて」が出版されたのは2000年のことでした。その頃、筆者はフランス語の勉強を再開した頃で、よき読書ガイドと思いハードカバーで買って読んだことを記憶しています。堀江氏はサルトルとか、ジッドとか、モーリアックのような文豪ではなく、ロマンノワールなどのフランス文学史にどこまで残るか未知数の作家群に惹かれるとして、本書の中でもそうした作家が中心的に紹介されています。とくに郊外に焦点が絞られているため、移民だったり、貧困層だったりといった庶民の暮らしがそこで書き込まれているのです。(2016/02/07)


フィリップ・ラゴートリエールの世界 どこか懐かしい漫画的なキャラクター満載 Philippe Lagautrière
どこか懐かしい漫画的なキャラクターが無数に絵の中に存在して、あちこちでいろいろな事件が起きている。解釈の仕方はさまざま。ただ言えるのは理屈や物語の解読はさておき、純粋に色と形の集まり、つまり絵画として非常に目を楽しませてくれる、そんな作品群に出会いました。作者はフィリップ・ラゴートリエールさん。現在、パリ14区のコリーヌ・ボネ画廊でラゴートリエールさんが企画の中心となった共同展示会「世界の源を見る16人の眼差し」を開催中です。期間は2月27日まで。パリで活躍している美術家フィリップ・ラゴートリエールさんに話をうかがいました。(2016/02/05)


池内恵著「イスラーム国の衝撃」
 文春新書から1年前の2015年1月に出版された池内恵氏の「イスラーム国の衝撃」は情報が満載された好著である。アラブ世界の思想を研究してきた池内氏が本書を書きあげた動機はイスラーム国の存在がクローズアップされた2014年6月のイラクへの勢力拡大を経て、2015年1月の日本人2人の人質殺害まで、日本国内におけるイスラム国への関心が急速に拡大していたことだった。本書で池内氏が探求したことは2つの事柄からなる。(2016/02/01)


丹羽宇一郎著「中国の大問題」 〜民間出身の中国大使として各地を足で回って中国をどう分析したか 2012年の尖閣をめぐる確執で何が政府に起きたのか〜
 伊藤忠商事会長だった丹羽宇一郎氏は2010年に民間人として中国大使に就任した。アメリカやフランスでは珍しくないことだが、日本においては民間人が大使に就任することは非常に希な事態だった。財界人として中国とのパイプを持っていることから、民主党の菅直人政権によって任命された。だが2012年に起きた尖閣諸島をめぐる日中間の確執がもとで、更迭される。時の首相は野田佳彦氏だった。本書は丹羽氏が2014年に書き下ろした新書であり、本書の中には中国大使時代の経験が色濃く反映している。とくに注意深いのは言うまでもなく、尖閣諸島をめぐる2012年のトラブルの際の日本政府の行動だろう。(2016/01/31)


独断と偏見の読書ガイド 10日間・国民投票までに読みたい7冊
 今からちょうど2年前の1月、日刊ベリタに以下の読書ガイドを書きました。普段は1週間限定の読書ガイドにしていたのを、3日間増やして10日間にしたのは恒例の独断と偏見によって必要だと考えた本を読み切るには1週間では足らない、と考えたからでした。(2016/01/28)


若林正丈著「台湾の政治 〜中華民国台湾化の戦後史〜」(東京大学出版会)
1月16日に台湾で行われた選挙で、野党・民進党から出馬した蔡英文候補が大統領にあたる総統に選出された。同時に行われた立法院議員選挙でも民進党が過半数の68議席(全113議席中)を獲得して、行政・議会ともに舵を取ることになった。台湾の政治の変化を考えるためには台湾の歴史の流れを無視することは不可能である。若林正丈著「台湾の政治」はそれを考えるときに参照できる貴重な資料だと思う。この本には「中華民国台湾化の戦後史」と副題が添えられている。このことを400ページもの記述で考察したのが本書である。(2016/01/21)


草むらをかき分け、山に分け入り掘り越した日本の戦争責任 野添憲治編著『秋田県の朝鮮人強制連行−52ヶ所の現場・写真・地図』
 日韓両政権の間で慰安婦問題をめぐって手打ちが成立した。脚本・演出は米国オバマ政権。安倍・朴という二人の迷優が振付師オバマの指示で迷演技を披露したが、下心が見えすぎてしらけるばかりだった。アジアに対する日本の戦争責任を政治的道具にしてしまったのが今回の手打ちだが、鉱山や建設現場に中国大陸や朝鮮半島から多数の労働者の強制連行して過酷な労働に従事させ、多くの死者を出したことなど、手つかずの戦後処理問題はたくさんある。その一端を掘り起こしたのが野添憲治さんがまとめたブックレット『秋田県の朝鮮人強制連行−52ヶ所の現場・写真・地図』である。(大野和興)(2015/12/30)


田邊貞之助著「ふらんすの故事と諺」
  仏文学者、田邊貞之助著「ふらんすの故事と諺」は1959年(昭和34年)の出版である。今から56年も昔の諺の本が今日、どのような価値を持っているのだろうか?一読して感じたことは少なからず、今日ではあまりインパクトがなくなってきていることだ。「Argent comptant porte medecine = 現金は薬をもたらす」という諺もその1つで、「金の威力をたたえた諺」と解説されている。けれども、今日、そんなことは言わずもがな、と思える。逆に昭和34年、つまり1960年の安保闘争の1年前は金の威力の諺に「なるほどな〜そうかもな〜」と思う日本人がまだたくさんいた、ということなのだろうか。金の力は今よりも一般通念になっていなかったということだろうか。(2015/12/20)


アート・バックウォルド傑作選1 「だれがコロンブスを発見したか」
現代日本においては政治が迷走し、多くの有権者は政治に対して、既存の政党に対して絶望を深めつつある、ということである。絶望を深めつつも、どうすることもできない無力感に襲われる人は少なくないだろう。そのような事態を招いているものは、人間存在そのものなのであり、つまるところ、そうした人間存在を笑う、ということは一種の健康さでもある。でなけれやりきれないからでもある。(2015/12/15)


ナギブ・マフフーズ作「泥棒と犬」
エジプトの作家の本を初めて読んだ。作家はノーベル賞作家のナギブ・マフフーズで、タイトルは「泥棒と犬」。代表作とは言えないけれども、「中期の佳作」であると本の帯に書かれている。一読して驚いたのはマフフーズが最初の1ページから、ページをくり続けさせるエンターテイナーだということだ。日本ならこの小説は純文学というジャンルに位置するのかもしれないが、映画を見ているようなスピード感と同時に心の闇を深く描き出している。(2015/12/12)


柯隆著「中国が普通の大国になる日」
 富士通総研の主席研究員である柯隆氏が書いた「中国が普通の大国になる日」は興味深い中国分析である。本書の骨子は中国が抱える課題を指摘していることである。2013年、最高指導者が習近平国家主席に代わって以後、中国はいろんな形で改革を行っていると報じられている。しかし、柯氏によると、本来、改革に着手すべきだったのは前任者の胡錦涛国家主席と温家宝首相の時代だった。なぜなら、この10年間こそ中国にとって経済成長が加速した時期であり、政治改革は景気が良い時ほど、やりやすいというのが柯氏の骨子となっている。(2015/12/10)


ジャン=フィリップ・トゥーサン著 「衝動と我慢」(L' URGENCE ET LA PATIENCE)
  紀伊国屋書店でジャン=フィリップ・トゥーサンのエッセイ集「衝動と我慢」(L' URGENCE ET LA PATIENCE) を買いました。これはミニュイ社から出ている新書判です。ですから、タイトルをこう訳すべきなのか、もっと別のよい訳語があるのか、確信が持てずにとりあえず、僕の理解のままにこう訳しておいたものです。もしかすると、「衝動と忍耐」とする方が、あるいは「急迫と辛抱」とか、「切迫と辛抱」とかにする方がよいのかもしれません。いずれにしてもトゥーサン氏の持ち味である軽さを維持していながら、同時に誠実かつ率直に自分の創作について語っている本です。その意味で読み始めると、面白くページが次々とめくれていく体験をしました。(2015/12/07)


末廣昭著 「タイ 開発と民主主義」
  末廣昭著「タイ 開発と民主主義」(岩波新書)は「タイ 中進国の模索」(岩波新書)と並んで、1000円未満の廉価でクオリティの高いまとまった情報が入手できる書籍です。近年、新書と言っても中身の薄い、あるいはボリューム自体が少ない本が増えていますが、末廣氏の書き下ろしたこの2冊は中身が詰まっています。タイではしばしば軍事クーデターが起きており、昨年も起きて現在も軍事政権の統制下にあります。タイではなぜこれほど軍事クーデターが常態化しているのか?その謎を解き明かそうと思うと、タイの近代史、あるいは現代史をひもとかなくてはなりません。(2015/12/04)


「老兵挽歌」〜3つの戦いを生き抜いた兵士たちの記憶〜 若くして兵士になり、戦いに敗れ、異郷で60余年 台湾史の真実に切り込むドキュメンタリー映画
台湾の歴史を見つめてきた林雅行監督の新作が近日ユーロスペースなどの映画館で公開される。今回のテーマは大陸から逃げて台湾に渡航した蒋介石率いる国民党兵士たちの物語だ。1949年、中国大陸での内戦に破れた蒋介石と国民党軍、政府要人、その家族たち約200万人が人口600万人の台湾に渡ってきた。彼らは台湾の政官界を掌中にし、それ以前から住んでいた人々(本省人)の上に君臨した。彼らは外省人といわれた。その200万人のうち60万人が国民党一般兵士だった。(2015/12/03)


「トマ・ピケティの新・資本論」(村井章子訳 日経BP社) 斬新な切り口の新・欧州論
「21世紀の資本」で今春、日本のメディアでひっぱりだこになった経済学者のトマ・ピケティ教授による新聞コラムを集めたものが本書、「トマ・ピケティの新・資本論」(村井章子訳 日経BP社)である。数年に渡り、ピケティ教授が連載していた新聞はリベラシオン紙である。本書の中で大きく2つの論点があり、1つは広がりを見せる格差問題と税金について、1つは欧州経済危機への対応策について。もともと原書のタイトルは’Peut-on sauver L'Europe ?'(われわれは欧州を救えるか?)なのである。つまり本書は最新の型破りな欧州論とも言えよう。(2015/11/29)


『平和をとわに心に刻む三〇五人詩集』−夏蝉のように平和の精神となって沁み通っていくことを願うアンソロジーを読む 山崎芳彦
 一冊のアンソロジー詩集が、詩界を超えて多くの人の共感を呼び、広がっている。コールサック社が去る8月15日付で出版した『平和をとわに心に刻む三〇五人詩集―十五年戦争終結から戦後七十年』を2カ月以上をかけて、ようやく全篇を読み終えた。大きな感動を覚えている。305人の345篇の詩篇を収めたこの詩集の一篇一篇を、幾度か行きつ戻りつしながら読み、心に刻み、最後の二人の編者による解説、「詩の心で受けとめる悲しみは切実な願いのかたち」(佐相憲一)、「夏蝉のように『平和とは何か』を問い続ける」(鈴木比佐雄)を読み終えるまでに、結局60日余を要したことになる。(2015/10/22)


大治朋子著「アメリカ・メディア・ウォーズ 〜ジャーナリズムの現在地〜」
  毎日新聞記者の大治朋子氏が書き下ろした「アメリカ・メディア・ウォーズ〜ジャーナリズムの現在地〜」(講談社現代新書)は経営的に苦境に立たされ、四苦八苦ししているジャーナリズムの試行錯誤をルポしながらも、希望をも感じさせてくれた一冊。(2015/09/30)


「西洋政治思想史」(佐々木毅、鷲見誠一、杉田敦 共著) 知の蛸壺から出て、政治学の歴史を一望できる好著
  北樹出版から出ている「西洋政治思想史」は東大を中心とする主流派の政治学者が書き下ろした政治学史です。通説の政治学の概略が本書を一読すると得られます。著者は佐々木毅、鷲見誠一、杉田敦の3人の政治学者。著者が前書きに書いているとおり、本書はプラトンやアリストテレスなどの古代ギリシアの政治思想から、中世、近代を経て、さらにハバーマスやアドルノ、ホルクハイマー、アレントなど現代の政治哲学者や社会学者まで、広く対象にして俯瞰しており、その説明も簡潔ながら、非常にわかりやすく、読者が噛めば噛むほど含蓄がある本です。(2015/09/26)


世界的作家ヤスミナ・カドラの新作小説はカダフィの最期の日を描く
 ヤスミナ・カドラと言えばアルジェリアの作家で、世界的に読まれているベストセラー作家である。日本でも何冊か翻訳がある。アルジェリア軍の元指揮官で、妻の名前で変名で小説を書いていたことでも著名だ。そのカドラの新作小説は’La derniere nuit du Rais’(ライスの最期の夜)という小説で、カダフィの最期の日を描いたものらしい。(2015/09/23)


吉田秀和著 「ヨーロッパの響、ヨーロッパの姿」
  音楽評論で著名な吉田秀和氏が1967年から1968年の欧州旅行の際の見聞をまとめたのが本書、「ヨーロッパの響、ヨーロッパの姿」(中公文庫)である。吉田氏はクラシック音楽がメインだったが、セザンヌなどフランス近代美術などの評論もあり、広い視野をもつ人物だった。そして、この頃、欧州でもっとも大きな話題となっていたのがチェコで起きた「プラハの春」とその夏の終わりに起きた、旧ソ連によるチェコ侵攻だった。(2015/09/22)


小阪修平著「イラスト西洋哲学史」(挿画:ひさうちみちお) 西洋哲学の流れがよくわかってひける入門書 立憲主義や民主主義を生んだ欧州哲学をやさしく解説
  宝島社から文庫版で2冊組で出ている「イラスト西洋哲学史」(小阪修平著)は普通の哲学の学術書とは違ったスタイルの本ですが、中身は本格的です。この本の特徴は古代ギリシアから、現代に至る西洋哲学の流れを骨太に枝葉を切り落として、肝要と著者が考える哲学者に重点配分している点です。(2015/09/09)


繭に小さな穴を穿って・・・夏をゆく人々 笠原眞弓
 エンドロールがはじまって、ポカーンとしている私。不思議!! が最初の感想。時間が経つにつ れ、既視感が湧き上がってくる。14、15歳の頃の私が混沌の海から立ち上がってくる。あの頃の私は、少年少女文庫に夢中だった。同年輩の人たちと、毎日物語の中で生きていた。何が起きても不思議のない世界で、夕日の中にアポロンを見た。(2015/09/07)


『私の労働研究』−著者自身による広告 熊沢誠(甲南大学名誉教授・労使関係論)
このたび、新著『私の労働研究』が発刊されることになりました。そのなかで私が語り綴る内容はヴァラエティに富み、私の半世紀にわたる労働研究の軌跡──そのテーマ、問題意識、著作の概要、それにこれまでの研究作業を支えてきたプライヴェートな生活史ばかりでなく、現時点での日本の労働の多角的な分析、社会の諸問題や個人の体験をめぐる近年のエッセイ、いくつかの書評、感銘を受けた映画への思い入れ・・・に及んでいます。研究者としての私個人にかがみ込む、このような著作を刊行できることは、私にとって思いがけない幸せですが、それは堀之内出版の女性編集者の思いきった企画の賜物です。アカデミックな意義はともあれ、これはどの章からでも気軽に読める、拙著としては抜群におもしろい本としておきましょう。文末に目次を掲げました。(2015/09/03)


『家族という病』の耐えられない軽さ 熊沢誠(甲南大学名誉教授 労使関係論)
子離れができない親は見苦しい/ (2015/09/01)


ヒューム著「人性論」 ‘A treatise on Human Nature’ ヒュームは面白いが本気でやると難しい。でもヒュームを読んでおくとカントが楽になる
  イギリス経験論の哲学者、デビッド・ヒュームは「人性論」(「人間本性論」というタイトルの邦題もある)の冒頭で、人間の知覚には印象と観念しかない、と言う。そして、人間は様々な印象を外界から受け、その結果、観念を抱くようになるとしている。最初に観念があって、その結果、印象が生まれるのではないと言いたいのである。(2015/08/23)


堀江湛・岡沢憲芙編 「現代政治学」(法学書院) 早稲田・慶応出身の学者が集結 二党制の神話にメスを入れる
  最近の大学生はどんな政治学のテキストで勉強しているのだろう。そう思って手にした一冊、法学書院から出ている堀江湛・岡沢憲芙 編「現代政治学」。著者を見ると、早稲田出身と慶應出身がまるで東京六大学の野球で早慶戦を繰り広げるかのように並んでいた。その取りまとめ役が年長でもある堀江湛、岡沢憲芙の両教授のようだ。政治の危機が深まっている今、どの章を読んでも興味深い。しかし、一番知りたかったことは第四章の「政党システム」というタイトルの説明だ。今のような時代はどのようにして生み出されていったのか。執筆者は早大出身の岡沢憲芙教授で、二大政党制が批判的に書かれているのが目を引く。(2015/08/17)


時代が要請する本がある −メディアは戦争をどう報じたか− 永井浩『戦争報道論 平和をめざすメディアリテラシー』 大野和興
 時代が要請する本、時代がつくる本がある。本書を手にとってまず思ったのはそのことだった。刊行されたのは二〇一四年一二月。この年の七月一日に集団的自衛権行使容認が閣議決定され、一二月一六日に行われた総選挙で安倍自民党が多数を制してした。「戦争をする国」への足取りが現実の問題をして目前に迫っていたときであった。毎日新聞記者としてアジア各地を歩き、開発と紛争に揺れ動くアジアを「報道される側」から凝視しつづけてきた著者は、改めて「報道者とは何か」を突き詰めたとき、戦争に行きあたった。「戦争」ということをはずして報道の意味を問うことなどできない時代状況を、正面から受け止めて誕生したのが本書である。(2015/08/12)


映画「日本と原発」はもうご覧になりましたか? 木村結
  昨年11月、六本木の劇場で上映が開始されてから10ヶ月。野火のように全国に上映運動が広がり、現在600箇所以上で上映され、この後も約110箇所から予約が入っている映画です。 (2015/08/11)


ハン・ヨンスの写真2 Photographs of Han Youngsoo 2 〜懐かしさの理由 Why do I feel nostalgia? 〜
  ハン・ヨンス(Han Youngsoo)の写真を見て、懐かしさを感じたのはなぜなのでしょうか。日本人が韓国人と外見的に似ているからなのでしょうか。あるいは東アジアという自然や風土の類似でしょうか。いや、そういうことより、もっと本質的なもののような気がします。 Why I felt nostalgia when I saw photographs taken by Han Youngsoo? Is this because of the physical similarity between Japanese and Korean ? Or the similarity of natural environment ? But I think these answers are superficial.(2015/08/07)


映画『“記憶”と生きる』 真実とはその人の中にある 笠原真弓
 記憶とは曖昧なものでもあり、鮮明なものでもある。私の最初の記憶は、真っ暗闇の中の一点の光。触ったらロウソクの火だった。しかしそれは、覚えているはずのない年齢のもので、またあり得ない光景であった。けっして楽しいシーンではなかった。韓国のナヌム(分かち合い)の家に暮らした6人の元慰安婦たちの半生を記録した映画『“記憶”と生きる』を観た。(2015/08/06)


服は生き方あり、肌である 笠原真弓
服は生き方あり、肌である――『アドバンスト・スタイル―そのファッションが、人生』(リナ・プライオプライト監督)。『フリーダ・カーロの遺品―石内都 織るように』(小谷忠典監督)。(2015/08/05)


「英語類義語活用辞典」 インターネット時代に活用できる参考書
Japan Timesで映画評を担当していた記者の最所フミ氏が編纂し、書き記した「英語類義語活用辞典」はインターネットで日本からも情報発信できる時代になった今、ますます貴重さを増している一冊です。(2015/06/13)


ボードリヤール著「消費社会の神話と構造」 出版から45年
   ボードリヤールの「消費社会の神話と構造」(直訳は「消費社会」)が日本で翻訳出版されたのは1979年のことで、フランスで本書が刊行されてから10年のタイムラグがあります。精神分析に詳しいフランスの作家、ジル・アゾパルディさんにボードリヤールの「消費社会」について簡単に見立てをお願いしました。日本では80年代から90年代にかけて一世を風靡した社会学の本です。(2015/06/11)


カミュ原作の映画「涙するまで、生きる」 〜アルジェリアとフランス、日本とコリア〜
  渋谷のイメージフォーラムにて「涙するまで、生きる」を見た。原作はアルベール・カミュの短編集「追放と王国」収録の短編「客」。舞台はアルジェリア独立闘争が始まった1954年のアルジェリアの山村。独立軍とフランス軍のはざまに立たされたフランス系(もともとはスペイン系だが)の男とアラブ系の男の旅。二人は国と国の確執を越えることができるか。なるほど、今の時代に生かせる物語。上映後、上智大学イスラーム研究センター所長の私市正年教授と研究者の中村遥さんがステージで解説してくれた。アルジェリアは1830年から1962年まで約132年間、フランスの植民地だった。日本が朝鮮を植民した期間が1910年から1945年だから、その4倍の期間に渡る。(2015/06/01)


160年前からアメリカに占領さていた沖縄 70年の現代史を問う映画『沖縄 うりずんの雨』 笠原眞弓
 ちょうど沖縄が「うりずん」の季節だというころ、ジャン・ユンカーマン監督の映画「沖縄 うりずんの雨」を観た。冬が終わって大地が潤い芽吹き始めるころを、沖縄ではうりずんというそうだ。(2015/05/31)


あなたのとなりの「アラヤシキの住人たち」 笠原真弓
 こんな空間が40年も続いていたなんて!!! のっけからみんなバラバラ。勝手な振り付けで、自分のリズムでラジオ体操をしている人たち。冬の間、里に降ろしていたヤギとともに、若い女性が3人大学を休んで1年間ともに過ごすために上がってくる。春が里から上がってくる。車の通らない、昨年秋の地震で壊れた道を上がってくる。大きな屋根の、大きな窓のあるアラヤシキ・新屋敷に。信州小谷村の真木集落の、共働学舎と呼ばれる空間の物語がはじまる。(2015/05/27)


自律した反乱に敗北はない 映画『泥の花―名護市民・辺野古の記録』 笠原真弓
 抑えたトーンでの始まりに、最初は戸惑ったものの、見ているうちにいま辺野古で行われている抗議行動の「息の長さ」がわかってくる。2、3年前に同じ輿石監督の「シバサシ」を観た。世界的に石油が高騰した石油危機の反省を踏まえて、石油備蓄基地を金武湾に作る計画が三菱石油主導で持ち上がった(今考えると、この備蓄基地は、米軍のためのような気がする)。その映画を見たとき、市民運動とは、こういうことだと思った。(2015/05/22)


自然と共にあることを選ぶ 映画「赤浜ロックンロール」 笠原真弓
 今日から始まった「赤浜ロックンロール」を見た。漁師って、みんなかっこいい。筋の通り方が違う。三陸海岸に、巨大防潮堤が出来る。高さは12〜14m。幅も半端ではない。万里の長城のように切れ目なく続くと聞いていた。その堤防を拒否して、以前のままでいいと言っている町があると聞いていた。ひょっこりひょうたん島のモデルと言われている島のある町、岩手県の大槌町。チラシと題名から、防潮堤「問題」はどう描いているのかな? 相当弾けた若者向き映画かな? と、期待と不安でスクリーンに向かったのに、すべてが杞憂だった。(2015/05/12)


映画『みんなの学校』 大人も子どもも真剣に向き合うことから 笠原真弓
 大阪市立大空小学校は7年前に開校した、だれでも入れる普通の公立小学校だ。でも違うのは、特別支援を必要とする生徒もみんなと同じ教室にいること。当然混乱することもあるが、子どもたちは大騒ぎするでもなく、自然に手助けをしている。これこそが「教育」なのだろう。(2015/04/26)


今年、いやこれまでで一番の映画かもしれません そう、『パレードへようこそ』 原題:PRIDE 稲垣豊
 先月観た『ジミー 野を駆ける伝説』では冒頭5分ほどで涙がでましたが、『パレードへようこそ』は映画開始1秒で涙。ピートシガーが歌うSolidarity ForeverのBGMが流れるスクリーンに映し出されるストでたたかう炭労を襲撃する警官隊の映像。これは実際のフィルムで下記公式サイトの予告編でも見られます。(2015/04/10)


【たんぽぽ舎発】再稼働元年に立ちはだかる小泉純一郎 週刊朝日で、細川−小泉の脱原発の動き報道
  細川護煕元首相と代表理事を務める一般社団法人「自然エネルギー推進会議」の発起人に名を連ねた小泉純一郎元首相が再始動する。原発再稼働元年とされる今年、地方から“乱”を起こすという。(2015/03/18)


核災をうたう詩人の強靭な精神 ―詩集『わが大地よ、ああ』若松丈太郎― 大野和興
 南相馬の詩人若松丈郎さんが、3・11以後折にふれ書いてきた詩をまとめました。待ちに待った一冊です。どきどきしながらページを開きました。3・11からまだ間もない二〇一一年五月、若松さんは『福島原発難民』と題する詩集を上梓しました。若いとき東京で編集者として働き、福島に帰郷して評論や小説を書いていた友人に勧められ、一読して詩人の直感力と想像力に驚嘆し、戦慄さえ覚えたのを鮮明に記憶しています。若松さんの詩は、3・11以前に3・11後を細部まで予言していたのでした。(2015/03/16)


ブレヒト作「第三帝国の恐怖と貧困」 東京演劇アンサンブル60周年記念公演
  今、東京演劇アンサンブルという老舗の劇団がベルトルト・ブレヒト作「第三帝国の恐怖と貧困」を上演している。1954年に結成された同劇団は昨年、創立60周年を迎えた。今回の舞台も記念公演シリーズの一環だ。創設メンバーでカリスマ的リーダーだった広渡常敏氏が亡くなった今、新たに中堅世代の演出家3人が一連の記念公演を担当している。ブレヒト劇団が今後、いったいどのような方向に向かうのか、興味深い。さて、昨日幕を上げたばかりの「第三世界の恐怖と貧困」はそのタイトルにあるように、1933年のナチス・ドイツの誕生から第二次大戦前夜までのファシズムが進行するドイツを描いている。劇はオムニバス形式で、年代記的に様々な場所で出来事が進行し、それらが全体のテーマを構成する。演出の松下重人は14の場を構成して演出しているのだが、劇全体を見て感じたことはドキュメンタリー番組を見るような、アクチュアルな印象だった。(2015/03/14)


エドワード・サイード著 「オリエンタリズム」
  私は今、日刊ベリタで「アラブの眼」というペンネームを持った日本の方の寄稿した「Charlie Hebdo」に関する文章の中の事実関係について、自分なりにリサーチした文章をいくつか書いてきた。その動機は自分がフランスに関心を持っており、日刊ベリタにもフランスのことをしばしば書いてきたということによる。その作業をしていて思い出されてきた本がある。20代の半ばに読んだエドワード・サイード著「オリエンタリズム」である。(2015/02/16)


アラン・マバンクウ著 「ジミーへの手紙」 〜黒人作家の生〜
  コンゴ出身でパリでの生活を経て、現在、カリフォルニア大学で教鞭をとる作家のアラン・マバンクウ(Alain Mabanckou)氏の「ジミーへの手紙」。これは米黒人作家、ジェームズ・ボールドウィンに宛てた長い手紙を本にしたものだという。とはいえ、ボールドウィンはすでにこの世の人ではない。マバンクウ氏の独自性はアフリカ大陸、欧州大陸、そして米大陸と動きながら、黒人の生を考えているところにある。ジェームズ・ボールドウィンもアメリカの作家だが、のちにパリに渡って作家活動を行ったことでも知られる。ゲイでもあった。(2015/02/05)


女性自爆テロリストを妻に持った男の旅路 ヤスミナ・カドラの小説「テロル」
   テロリズムはイラクであれ、アフガニスタンであれ、パキスタンであれ、毎日のように起きている。かつて19世紀のロシアでもテロが頻発したが、作家のドストエフスキーは「悪霊」という小説でテロリストの人間像を描こうとした。今日でもテロリストの内面に迫ろうとする小説に真摯に取り組んでいるイスラム教世界の作家がいる。アルジェリアのヤスミナ・カドラもその一人だ。カドラには3部作と呼ばれる小説群がある。(2015/02/03)


「戦争報道」の在り方を問う力作 池田龍夫
 「戦争報道論 平和をめざすメディアリテラシー」と題する大著が明石書店から刊行された(定価4000円+税)。著者は、毎日新聞外信部を経て、神田外語大学で教鞭をとった永井浩氏。ベトナム戦争、イラク戦争を中心に650呂鯆兇肱作で、既存メディアの問題点を実証的に分析している。(2015/02/02)


『圧殺の海―沖縄・辺野古』 世界一生き物の多い海で…… 笠原真弓
 「圧殺の海」、それは全編闘争現場といっても過言ではない。 (2015/02/02)


メドヴェジェフ著「チェルノブイリの遺産」(みすず書房)
  チェルノブイリ原発事故を調査検証したメドヴェジェフ著「チェルノブイリの遺産」は1990年に出版された古い本だが、今読むと身近な話に思えてくる。当時はチェルノブイリ原発事故は遠い他人事に思えていたのだったが。チェルノブイリ原発事故では炉心溶融の後、爆発し、放射性降下物がウクライナ、白ロシア、ロシアなどを汚染した。(2014/12/20)


フランス人が福島を歌う 「福島 わが愛」
  フランス人のギタリスト、クリーフ・エルベ氏が原発事故に苛まれる福島の人々への思いを1つの歌にした。題は「福島 わが愛」。(2014/11/20)


本谷有希子作 「生きてるだけで、愛。」  巧みな語りを通して露わになる現代日本
   本谷有希子氏の小説「生きてるだけで、愛。」を読んだ。あまりに面白かったために外国の友人にも教えたいと思い、タイトルを英語にしようとして、立ち止まってしまった。「生きてるだけで、愛」。これをどう訳したものだろう。愛して欲しい、ということか。人によって解釈は違うかもしれない。本谷氏のこの小説の面白さは若い女性の主人公のキャラクターにあると言っても過言ではない。(2014/11/20)


ミハイール・バフチーン著「フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化」
  現代では季節の祝祭は衰退の一途をたどっている。しかし、ミハイール・バフチーンは「フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化」の中で、祝祭の持っていた意味についてラブレーの作品をもとに触れている。(2014/11/16)


映画「日本国憲法」(ジャン・ユンカーマン監督)
  (昨年)6月15日、代々木の婦選会館で「憲法を考える映画の会」という集まりがあり、そこでジャン・ユンカーマン(John Junkerman)監督によるドキュメンタリー映画「日本国憲法」が上映された。ユンカーマン監督は憲法第9条に焦点を当てながら、戦後にこの憲法を作った人々がいかなる考えで作ったのか、またこの憲法が後にアジアや世界の人々にどう受け止められたのかを丹念に各地を訪問して取材している。証言者は歴史学者のジョン・ダワー、社会学者の日高六郎、政治学者のダグラス・ラミス、憲法を作成した一人のベアテ・シロタ・ゴードン、そして中国の班忠義と韓国のシン・ヘス、ハン・ホング、ベイルートのジョゼーフ・サマーハなど実に多岐にわたる。(2014/11/14)


クロード・ランズマン著 「Un vivant qui passe(生者が通る)」 記憶を掘り起こすファシズムとの戦い
  ナチスがユダヤ人を絶滅させようとしたホロコーストの証言を厖大に集め、9時間を超えるドキュメンタリー映画「ショア」を監督したクロード・ランズマンにはそれと対照的なほどの小品「Un vivant qui passe (生者が通る)」と題された作品がある。これもホロコーストに関係したドキュメンタリー映画のインタビューを本に起こしたものだ。日本ではほとんど知られていないが、一読すると非常に興味深いノンフィクション作品なのである。ではどのような作品なのか。(2014/11/13)


戦争はなぜ起こるのか 1959年制作『汝 多くの戦友たち』 笠原真弓
 宅配便が届いた。『汝 多くの戦友たち』のDVDだ。1959年に製作し、60年に輸入されたが、国内に入るまでも大変だった。映倫に引っかかってずたずたにされるところを裁判に持ち込んでなんとか救い出し(時の連合が尽力)、何ヶ所か手を入れて上映できたというもの。(2014/11/12)


ドキュメンタリー映画「日本と原発」
  監督が河合弘之、構成が海渡雄一という二人の弁護士がメガホンを取って作ったドキュメンタリー映画「日本と原発」が公開されました。さっそく六本木の映画館「シネマート六本木」に見に行きました。いったいどんな映画だろう、と。仕上がりは非常に面白く、理詰めでありながらも原発をめぐる今の状況が的確に押さえられていくため、1500円の価値は十分にあったな、というのが本音でした。(2014/11/09)


雨宮処凛著 「ロスジェネはこう生きてきた」
  最近、雨宮処凛著「ロスジェネはこう生きてきた」(平凡社新書)を読んだ。雨宮氏はこのいわゆるロスジェネ世代ではメディアに最も頻繁に登場する人の一人だろう。だからだろうか雨宮氏の対談や著書をこれまで読んだことがなかった。自分が年代的にはいわゆる「バブル世代」に位置するということが関係しているかもしれない。バブル世代はロスジェネ世代から責められる立場にあるのではないか・・・そんな気がしていたのである。しかし、今、日本がどんな国になっているのか、もう一度考えようと思い、自分と異なる世代の人々がどんな暮らしをしてきたのか、上の世代も、下の世代も、双方含めてじっくり話を聞いてみようと思い始めた。(2014/11/09)


写真が訴える「遺伝子組み換えの犠牲者たち」
  『DAYS JAPAN』11月号(10月20日発売)が「遺伝子組み (2014/11/01)


対談集 「佐藤可士和×トップランナー31人」
   集英社から出された対談集「佐藤可士和×トップランナー31人」は一流のデザイナーである佐藤氏がインタビュアーとしても非常に素晴らしい資質の人であることがわかる好著だ。何年か前に出版された本だが、中身は今読んでも決して遜色ないだろう。佐藤氏は自分のデザインは芸術家が個を押し付けるようなものではなく、クライアントの話にじっくり耳を傾けることから始まると語っている。そうした普段のデザインの基本作業がインタビューで十分に生かされたようであり、また佐藤氏が普段からよい聞き手であるだろうことをうかがわせる。(2014/10/11)


ネット時代の使える英語参考書 「英語類義語 活用辞典」(最所フミ編著)
  インターネット時代となり、またソーシャルメディアが発達したため、簡単に世界中の人と知り合い、交流できるようになった。そこでコミュニケーションに使われる言語も様々だが、英語はやはり大きな位置を占めている。しかし、英語で発信しようとして、単語につまってインターネットで英単語を検索する。すると、同じ日本語でもいくつも英単語が出てくる。どの英単語を使うべきか・・・。英語を日常的に使う方はこんな経験をすることがあるのではなかろうか。(2014/09/25)


菅原一剛著 「写真がもっと好きになる」
  写真家の菅原一剛氏が書いた「写真がもっと好きになる。」は本当に写真が好きになる本だ。表紙がオレンジで、上質な紙を使い、文章の中にはたくさんの菅原氏による写真が掲載されている。このリアルな紙の本の質感がたまらなくよい。このことは菅原氏が本書の中で説いている写真を紙焼きしてみることが大切だ、という言葉と通底している気がする。(2014/09/17)


赤狩り経験者が集結して作った映画「フロント」
  1950年代初頭、冷戦勃発を期に、アメリカでは共産党員ばかりでなく、そのシンパをも摘発する「赤狩り」というものが始まっていた。この時代を描いたハリウッド関係者や劇作家による作品は少なくない。リリアン・ヘルマンの回想録「眠れない時代」や、魔女狩りを描いたアーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」(The Crucible)などである。多くの作家や劇作家がこの苦渋に満ちたテーマを作品化しようと取り組んだ。映画でも様々な作品が作られたが、特筆に値するのは「フロント」という映画だろう。邦題は主演俳優の名前を冠して「ウディ・アレンのザ・フロント」というタイトルである。監督は社会派のマーチン・リットであり、脚本家は自ら赤狩りを体験したウォルター・バーンスタイン。俳優にもゼロ・モステルなどの体験者を起用して鬼気迫る作品となっている。(2014/09/14)


ロンドン五輪の輝きをすくいとった専属画家に聞く −9月28日まで博物館で作品展示中
 2012年の夏に開催されたロンドン五輪とパラリンピック大会。当時、ロンドンを中心として英国内に独特のお祭りムードが発生した。大会の様子を記録するために、ロンドン市長からじきじきに「五輪専属画家」の仕事を依頼されたのが、新聞の政治風刺画家として長い経験を持つ、ニコラス・ガーランド氏(79歳)だ。その作品群が9月28日まで、「ロンドン博物館」(ミュージアム・オブ・ロンドン)で展示中だ。同氏の自宅で制作過程を聞いた。(ロンドン=小林恭子)(2014/09/09)


アリストパネス作 「女の平和」
  今年の1月ころ、日本で女性の集団が都知事選に立候補したある候補者に投票した男とはセックスをしない、という運動を繰り広げていた。結果として、その候補者が圧勝となってしまったのだが、いったい女性たちによるセックスストライキは効果があったのだろうか。(2014/08/26)


内田樹著 「寝ながら学べる構造主義」
  内田樹氏によるフランス構造主義の解説書「寝ながら学べる構造主義」が文春新書から出たのは2002年のことで、はや12年がたつ。この本は画期的な本だったのだが、その理由はそれまでの哲学の入門書と非常に異なっていたからだ。内田氏はタイトルにあるように「寝ながら学べる」ような平易な表現によって、奥の深い構造主義の哲学へ読者をいざなってくれたのである。その姿勢は本書のまえがきにもきちんと宣言されている。(2014/08/21)


タラ・ハント著 「ツイッターノミクス」
  タラ・ハント著「ツイッターノミクス」はツイッターの特徴を解説した本だ。著者はカナダ生まれで、ウェブを使ったマーケティングの第一人者だそうだ。彼女によると、ツイッターの特徴は究極のところ、「ウッフィー」なるものを増やすことにあると言う。(2014/08/16)


映画『グレート デイズ 夢に挑んだ父と子』を見る 「人間捨てたもんじゃない」 笠原真弓
 私はもう40年くらい、障害児(者)の水泳指導のボランティアをしている。それで、そういうテーマの映画は、なんとなく見に行っている。この映画、『グレート デイズ 夢に挑んだ父と子』も、障害者の映画なのだ。もうすぐ18歳になる車椅子の息子と、息子に正面から向き合おうとしない父、仕事にも、息子にも懸命に取り組む健気な母と優しい姉や友人たちの醸し出す空気を捉えた、最高のホームドラマだ。(2014/07/09)


映画評を超えた映画評『〈いのち〉を食う 3.11後の映画と現実』木下昌明著を読む 笠原真弓
 表題の本は、一応映画評である。“一応”といったのには、ワケがある。つまり、映画を通して、木下さん自身の人生が語られているからだ。実は、彼とは活動仲間である。普段から彼の映画評は読んでいる。にもかかわらず、1冊にまとまったこの本の、1ページ目から刺激的だった。しかも、あろうことか、この本には著者の撮影した数篇のDVDが添付されている。映画評論家が映像アクティビストとしても、デビューしたのである。(2014/07/07)


松本晃一著「アマゾンの秘密」 アマゾン日本進出の記録 〜出版・流通業界の退廃をついたアマゾン〜 日本の書店はアマゾンから学べる
  フランスでインターネット通販「アマゾン」の本の無料配送を禁止する法案が可決された。ユーザーの視点からすると、「なんてことするんだ」と思うかもしれないが、パリに行ってみると、地域に密着している小さな書店主たちは口をそろえてアマゾンを非難する。その理由はアマゾンが無料配送や様々なサービスによって実質的な本の値引きをしていることだ。しかも、家賃を払わない巨大なオンラインビジネス企業と小さな書店が戦うのは相当厳しいことであり、実際にパリの書店はどんどん減っている。(2014/06/28)


「平和憲法」の理念を崩してはならない 幣原回顧録とマッカーサー回顧録を読んで 池田龍夫
  70年前の憲法制定時に平和憲法の理念を掲げたのは、幣原喜重郎首相(1945年10月から約半年間)だった。ダグラス・マッカーサー司令官率いる進駐軍の下での新憲法づくりは大変だった。安倍晋三内閣になってから「進駐軍の押し付け憲法は改正すべきだ」との声が高まり、世情は騒然としている。6月22日の今国会会期切れまでに集団的自衛権成立に至らなかったものの、間違った歴史観を容認するわけにはいかない。そこで幣原、マッカーサー両氏の回顧録を精読したので、その重要部分を抜き出して参考に供したい。(2014/06/27)


アントニオ・タブッキ著「供述によるとぺレイラは・・・」
   2年前に亡くなったイタリアの作家アントニオ・タブッキはポルトガル文学者でもあり、「インド夜想曲」のような旅愁・郷愁に満ちた幻想的かつ寓話的な小説を書き続けた。そのタブッキの最高作とも言われているのが「供述によるとぺレイラは・・・」である。この小説の舞台はファシズムの影が日増しに濃くなる1938年のリスボンである。(2014/06/27)


映画「SAYAMA」 金聖雄(監督)
   獄中32年、仮出獄19年。身に覚えのない逮捕から実に51年、今も無実を訴えつづける人がいます。石川一雄 75歳。はじめて取材で石川さんに会った時、少し緊張していたのを思い出します。“殺人犯”という法律的には、そうレッテルを貼られている人が、いったいどんな人なのだろうか。きっと私のなかに少しの偏見もあったのだと思います。見事に肩すかしをくらいました。きちんとしていて、朗らかで、そして温かい感じ…。狭山事件を扱った映画「SAYAMA」は5月31日からポレポレ東中野でロードショーが始まりました(7月18日まで)。ツキイチ劇場は7/5(土)映画「SAYAMA」とテルミン(トリ音さん)とギター(前原孝紀さん)ライブです。(2014/06/20)


まだ「対米従属」を続けるのか? 対談『転換期の日本へ』を読んで 安原和雄
  対談『転換期の日本へ』の著者が日本の読者に語りかけるものは何か。それは<まだ「対米従属」を続けるのか?>である。この核心をつく問いかけから逃げるわけにはゆかない。今後も「対米従属」を続けることになれば、日本はどうなるのか。その一つは、沖縄の軍備を増強し、日米による中国封じ込め策の要塞とする動きが強まることである。もう一つは、安倍首相の唱える「積極的平和主義」とは、日本に平和をもたらすのかである(2014/06/11)


岩淵達治著「ブレヒトと戦後演劇〜私の60年〜」 この30年で忘却されたもの
  戦後日本が世界から吸収してきた文化の中で今日最も忘却甚だしいものがドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが提唱した叙事的演劇という方法論だと思う。叙事的演劇は演劇の中にカタルシス(感動)を求めるのではなく、むしろ舞台で起きていることを一歩引いて観客が批判的に考えることができるものを目指していた。カタルシスを求める方法というのは古典以来演劇の常道となっているが、主人公に感情移入させ、主人公が涙するとともに涙するようなタイプのドラマである。(2014/06/01)


レオポルト・マウラーの漫画「ミラーさんとピンチョンさん」 〜下降時代の‘地球の歩き方’〜
  オーストリア人の漫画家レオポルト・マウラーによる「ミラーさんとピンチョンさん」はその日本語訳のタイトル自体がどこか間が抜けた脱力感に溢れている。オーストリア人も漫画を描くのか、と最初は思ったが、その仕上がりは抜群にユニークで、とぼけた味わいに富んでいる。(2014/05/30)


ギュンター・グラス作「ブリキの太鼓」 〜戦争に向かうドイツの田舎町を描いた奇想天外な名作〜
  最初の本格的なドイツ戦後文学と言われたのがギュンター・グラスの小説「ブリキの太鼓」である。出版されたのは1959年。敗戦から14年も後のことだ。「ブリキの太鼓」以前にも小説はいくつも出版されていた。それなのに「ブリキの太鼓」をして初めてのドイツの戦後小説が出たと人々に言わしめたものは何だったのだろうか。(2014/05/25)


中山元著「思考の用語辞典」 〜引ける哲学辞典〜
  哲学者・翻訳家の中山元氏が書いた「思考の用語辞典」(ちくま学芸文庫)は引ける哲学辞典として本棚に一冊あると刺激になる。哲学関係の本を少しひもといてみようと思ったとき、障害になるのが独特の用語である。たとえば「文節」という言葉。たとえば「還元」という言葉。あるいは「超越」とか「超越論的」という言葉。(2014/05/22)


哲学者ジャンケレヴィッチを舞台にのせた戯曲 「人生は見事な即興曲」
  昨年秋、パリの劇場ポスターでジャンケレヴィッチを主人公にする舞台があることを知った。そうだ、これを見たかったんだ、とその時筆者は直感した。しかしながら、舞台を見に行く機会を失ってしまった。というのも日本語訳で読んでも理解が追いつかない文体を、舞台でフランス語で見て理解できるのか、という疑問があったからだ。しかしながら、翻訳つきの録画があれば見てみたいと思う。もしかすると、ジャンケレヴィッチを理解するヒントになったかもしれないからだ。(2014/05/21)


新日本風土記・川崎
  桜映画社の原村です。5月23日(金)夜9時から、NHK・BSプレミアムにて新日本風土記・川崎が放送されます。(2014/05/18)


ニコル・ぺシュキン作 コラージュ写真展 「デモをする人々」(Gen en marche)
  パリで活動しているアーチストのニコル・ぺシュキンさんが14区にあるギャラリーL'entrepotでコラージュ写真展を開催している。ぺシュキンさんの特徴はデモをしている人々を対象にしていることだ。(2014/05/13)

中国の資本主義化が生んだ都市化を労働者化の影 『チャイナズ・スーパーバンク 中国を動かす謎の巨大銀行』 ヘンリー・サンダーソン、マイケル・フォーサイス/築地正登訳
『チャイナズ・スーパーバンク 中国を動かす謎の巨大銀行』(ヘンリー・サンダーソン、マイケル・フォーサイス/築地正登訳/四六判/304頁/本体価格2800円+悪税)を買いました。著者はブルームバーグの記者。奥付は2014年4月3日第一刷ですから、出たばかりですね。(稲垣豊)(2014/04/09)


「基本がわかる はじめての中国語」 王ていてい著
  中国語の基礎を勉強しようと何度かトライして、何冊か参考書を買ったことがあったものの手が回らず毎回挫折を繰り返ししてきた。漢字文化なのだから、そう遠くない、と思いながら。それが今回、中国語がわかるかも・・・と初めてそういう思いを起こさせてくれた参考書に出会うことができた。成美堂出版の「基本がわかる はじめての中国語〜文法をしっかり学びたい人へ〜」である。(2014/03/30)


落合栄一郎『放射能と人体—細胞・分子レベルからみた放射線被曝』(講談社)
  東日本大震災とそれに伴う東電福島第1原発の事故から3年、原子力推進側は、国民を、放射能(したがって原発)と共存することを許容するように、様々な仕方で、洗脳しようと、懸命なようです。そうした側は、カネも権力もあり、「低線量は安全、安全、安全。。。。」を繰り返し、そうした声しか国民の耳に届かなければ、国民自身が、真実を知ろうと努力しない限り、洗脳されてしまいます。そこで、真実を知らせようとして書いたのが、拙著です。(落合栄一郎)(2014/03/16)


【たんぽぽ舎発】東電に翻弄された家族の70年 新作映画『あいときぼう』が公開 山崎久隆
 福島に生き、日本の原子力政策、そして東京電力にその人生を翻弄(ほんろう)されたある家族の、4世代70年間にわたる物語をつづった劇映画『あいときぼうのまち』が、6月21日より全国で順次公開されることが決定した。本作は福島県出身で脚本家の菅乃廣が企画。1945年、1966年、2011年、そして2012年という4つの時勢を交差させ、戦時中のウラン採掘、原子力発電所建設への反対運動、そして東日本大震災と福島第一原発の事故という、原子力エネルギーをめぐる数々の出来事に傷つき、多くを失い、絶望しながらも生きていこうとする、ある一家の姿を描く。(「シネマトゥデイ映画ニュース」より)(2014/03/14)


時を超えてさまざまな人の手で植え継がれ、伝え継がれた「李さんの綿」を追ったドキュメンタリー
 新作映画「李さんの綿」(43分)のご紹介をさせていただきます。この映画の主人公は、奈良県天理市立夜間中学校の生徒、李福順(イポクスンさん、2010年逝去、享年90歳)です。李さんは、1944年に25歳で渡日し、戦後は失業対策事業(肉体労働)に従事し、5人の子どもを育てました。(湯本雅典)(2014/03/08)


アーネスト・メイ著「歴史の教訓」 〜外交政策立案者は歴史を誤用する〜 失敗の分析と情報公開の大切さ
  小さな犯罪1つとっても失敗の可能性は無数に潜んでいる。まして外交である。ハーバーバード大学教授で米外交史家のアーネスト・メイは「歴史の教訓〜アメリカ外交はどう作られたか〜」で米外交政策の失敗について書いている。本書の中でメイは3つの命題を示す。(2014/02/09)


デカルト著「方法序説」 〜近代を考える〜
   西欧近代哲学の始祖としてよく引き合いに出されるのがフランスのルネ・デカルト(Rene Descartes 1596-1650)である。そのもっとも知られた本が「方法序説」だ。批評家の小林秀雄がどこかで<「方法序説」という訳はいかめしい。本来は「方法について」くらいの平易なタイトルだ>と言った意味合いのことを書いていたように思う。実際に元のタイトルは'Discours de la methode'であり、直訳すると「方法についての論」なのである。デカルトが「方法序説」でかかげたその方法とは簡単に言えば以下の4つ。(2014/02/03)


ミハイル・ブルガーコフ作 「巨匠とマルガリータ」
  ロシアで知り合った友達から一番に推薦された小説が「巨匠とマルガリータ」と題する長編小説だった。作者のミハイル・ブルガーコフは20世紀の作家で、ソ連時代に多くの作品が禁書に指定されている。「巨匠とマリガリータ」もまた作家の存命中は日の目を見ることがなかった作品である。(2014/01/31)


アップリンクが『100,000年後の安全』無料ネット配信 都知事選「脱原発」を考えるために
 都知事選の焦点が「脱原発」ということで、日本での配給元であ (2014/01/28)


『関西生コン産業60年の歩み 1953〜2013』 労働者と中小零細業者はいかに独占と闘ったか
 歴史を書くということは未来に責任を持つことだ。問われるのは、そこで描かれる歴史はいったい誰に何を伝えるのかという視点と立場性、そしてその視点・立場性を支える実証性である。本書はこの二つを踏まえ、未来への見事な伝言となっている。本書を通読してまず感じたのは、このことだ。(大野和興)(2014/01/28)


戦後史証言「山形 高畠」 〜日本一の米作りを目指して〜 原村政樹
原村です。30年間、撮影でお付き合いしてきた山形県高畠町の米作りを通じて、戦後の日本の農業の歩みを描く番組を作りました。戦後史証言「山形 高畠」〜日本一の米作りを目指して〜NHK・Eテレ(チャンネル2)。今週土曜日(25日)夜11時〜12時半(2014/01/23)


10日間で完読! 独断と偏見で選んだ近代政治思想書 〜日本国憲法の源流をたどる〜
  近代政治思想の流れをたどる独断と偏見の10日間読書ガイド。これは日本国憲法の思想的源流をたどる旅でもある。(2014/01/21)


ハンナ・アレント著 「革命について」 〜アメリカ革命を考える〜
  革命というと、恐ろしい。それが多くの人にとってのイメージだろう。また革命と言うと、共産主義のイメージもある。それらのイメージの源はルイ16世をギロチンにかけたフランス革命であり、ロマノフ王朝を倒したロシア革命である。しかし、ドイツ出身の政治哲学者ハンナ・アレントはその著書「革命について」の中心を<アメリカ革命>に置いているのである。アメリカ、資本主義のチャンピオンを生んだ政変をアレントは世界で唯一の成功した「革命」と見ているのである。独立というだけでなく、革命だったのだ、と。(2014/01/20)


開高健著 「名著ゼミナール 今夜も眠れない」
  開高健著「名著ゼミナール〜今夜も眠れない」(角川書店)は味わい深い読書ガイドだが、そこには仕掛けが施されている。開高健が教授になり、助手と本について対談する形式になっていることだ。そこで教授と助手の珍談が繰り広げられていくのである。(2014/01/18)


本山美彦著 「金融権力 〜グローバル経済とリスク・ビジネス〜」
  京大名誉教授の本山美彦氏が岩波新書から「金融権力」を世に出したのはまさにリーマンショックが起こり、それが欧州に飛び火しようとしていた時だった。「金融権力」で本山教授は冒頭のあたりでこう筆を起こしている。「経済のグローバル化を推進した起動力は金融であった。」(2014/01/17)


「独立宣言と米憲法」(The Declaration of Independence and The Constitution of the United States)
   アメリカを旅すると、空港の書店に「独立宣言と米憲法(The Declaration of Independence and The Constitution of the United States)」というペイパーバックの本が置いてあった。どの空港で買ったのかは覚えていない。あちこちの空港に置いてあるのだ。2.95ドルで比較的薄っぺらい本、というより冊子に近い。表題の通り、1776年に発表された独立宣言と、1787年に生まれた米憲法、さらに1791年に発表された修正米憲法が収録されている。(2014/01/10)


米小説家デイブ・エガーズの話題作「サークル(The Circle)」 〜ソーシャルメディア時代の生を問う〜 とうとうプライバシーがなくなって・・・
  デイブ・エガーズ(Dave Eggers)の最新作は「The Circle(サークル)」と題する小説である。書評によると、今度はフィクションで、悪夢的な近未来小説のようだ。今全盛期を誇る検索エンジンとソーシャルメディアを売りにする<サークル>というIT企業に就職した若者たち。彼らは四六時中、端末に短いメッセ―ジを打ち続ける。会社にいる間だけでなく、家に帰ってもどこにいても。彼らにとってアクセス数を増やすことと、サムズアップ!(いいね!)マークをたくさんゲットすることは仕事なのである。こうして最早プライベートと仕事との境界線はなくなっていく。(2014/01/05)


ジャン=ジャック・ルソー著「社会契約論」(中山元訳) 〜主権者とは誰か〜
    ホッブズ、ロックと英国の先行する社会契約論者がいたにも関わらず、日本で社会契約論と言えばジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacues Rousseau、1712-1778)が圧倒的に有名である。ルソーの「社会契約論」(Du Contrat Social)はどこか違っていたのか。冒頭、ルソーは有名な文句を書いている。「人は自由なものとして生まれたのに、いたるところで鎖につながれている。」(2014/01/01)


ユルゲン・ハーバーマス著 「人間の将来とバイオエシックス」
   ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスは今世紀中に人類の類概念が変わる可能性があると指摘している。人類が2種類に分裂してしまうかもしれないと言っているのである。それは遺伝子操作を受けた人類と、遺伝子操作を受けていない生の人類である。(2013/12/30)


トマス・ホッブズ著 「リヴァイアサン (国家論)」 〜人殺しはいけないのか?〜
  ひところ、若者が「人殺しをしたらなぜいけないのか?」という質問をして、年長者が驚き呆れていたと報じられた。かつてなら、ありえない質問だ、というのである。しかし、英国の政治哲学者トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes)は人殺しをしても不正ではない、と記している。その本は1651年にロンドンで出版された「リヴァイアサン」(Leviathan)と題する本である。(2013/12/29)


モンテスキュー著「法の精神」 〜「権力分立」は日本でなぜ実現できないか〜
  モンテスキュー(Montesquieu)著「法の精神」(DE L'ESPRIT DES LOIS,1748)は岩波文庫で上中下の三分冊になっている。一見、いかめしそうな印象だった。「法の精神」と言えば「三権分立」というのが学生時代の暗記のキーワードだったが、「法の精神」はその説をどう展開しているのだろうか。(2013/12/26)


ジョン・ロック著 「統治二論」〜政治学屈指の古典〜
  将来、思想統制が行われ、本の選抜と焼却が行われる日が来るとしたら、まず最初に失われる本の中に、英国の近代政治思想家ジョン・ロックの「統治二論」があるのではなかろうか。思想統制と言えば戦前・戦中のイメージでマルクス主義や社会主義のことが頭に浮かぶだろうが、今問われているのは近代政治思想なのである。1690年に出版された「統治二論」はアメリカの独立宣言やフランス革命に影響を与えたとされる。その思想的な根拠は以下の3点である。(2013/12/22)


元農相がTPP反対本を出版、山田正彦著『TPP秘密交渉の正体』 上林裕子
 「TPP阻止国民会議」副代表で、元農林水産大臣の山田正彦氏がTPPの実態について書き下ろした。民主党内閣で閣僚を務めながらもTPP参加には断固反対を貫き、民主党政権下でのTPP参加に歯止めをかけた。(2013/12/21)


山口定著「ファシズム」2 〜全権授与法(全権委任法)と国家総動員法〜
  岩波現代新書から出ている山口定著「ファシズム」ではドイツ、イタリア、日本が第二次大戦において、それぞれどのようにファシズム化していったかが比較分析されている。このところ、日本の特定秘密保護法案に危惧を感じる人々が、現行の憲法を骨抜きにする政権党の手法はナチの「全権授与法」を手本にしたものだと指摘している。それはどういうことなのか?そこで「ファシズム」から、そのくだりを読んでみたい。(2013/12/03)


「現代政治学の基礎知識」(有斐閣) 〜政治の再構築に向けて〜
    有斐閣から1975年に出された「現代政治学の基礎知識〜基礎概念・理論の整理と検証〜」という本がある。当時、政治学の教鞭を取っていた53人の教授・准教授が310の問題に対して、それぞれ担当した問いの模範解答を記している。世界政治から国内政治、地方自治まで様々なレベルの事項が問題・解答形式で読める本である。編集代表は内田満、内山秀夫、河中二講、武者小路公秀。この1冊を読むだけでも、政治を考えるためのかなりの基本的な視点が得られるはずである。だが、本書の価値は試験や就職のために限定されない。むしろ、労働者や市民が、この本で政治学の概略図をつかんで、原典に触れるためのものだ。(2013/12/02)


次の戦争をどこで起こすか〜ボリス・ヴィアン作「将軍たちのおやつ」〜  
  話題は次の戦争をどこで起こすか、だ。なぜ戦争をしなければならないか、といえば、政治家たちが失政を挽回し、国民の関心をそらすためである。さらに軍需産業からの要請でもある。そこで戦争しても必ず勝てる国を将軍たちは探し始める。間違ってもロシアとか、中国とか、アメリカのような核兵器を保有する大国とは戦争することができない。(2013/11/27)


パスカル・バレジカ著「フランスからの手紙」(No1〜No28) 〜仏語の原文をつけ日仏対訳にしました〜村上良太
  パリの著述家・翻訳家のパスカル・バレジカさんに2010年から2012年にかけて寄稿していただいた「フランスからの手紙」(No1〜No28)に、この度、バレジカさんによるフランス語のオリジナルテキストをつけました。(村上良太)(2013/11/23)


東海村・村長の脱原発論を読んで 今こそ「脱成長の社会」に向けて 安原和雄
  これまで何度も脱経済成長論に言及してきたが、またもや脱成長論に思いを馳せねばならない。しかもその脱成長論は脱原発と一心同体である。脱原発のための脱成長論と言い直すこともできる。村上達也、神保哲生共著『東海村・村長の「脱原発」論』(集英社新書、2013年8月刊)は、日本におけるこれまでの原発依存症を克服して、脱原発の新しい進路を模索するには不可欠の力作である。(2013/11/18)


ドキュメンタリー映画「天に栄える村」 上映情報  原村政樹 
  原発事故の後、福島で米作りに取り組む村を描いたドキュメンタリー映画「天に栄える村」が福島市でのロードショーに続き、11月16日から28日まで、東京・中野区のポレポレ東中野で上映(朝10時20分から)されることになりました。(ドキュメンタリー映画監督 原村政樹)(2013/11/09)


スリランカ映画『やさしい女』上映会&トークショー  12月16日
映画の上映と併せて活動報告を行うイベント『パルシック シネマカフェ』。開催. 第1回目となる今回は、スリランカ内戦に翻弄されたタミル人とシンハラ人の恋愛を描いた映画『やさしい女』を上映します。(2013/11/08)


「忍耐と我慢」は今も続いている 21世紀版映画「おしん」を観て 安原和雄
  最近(2013年10月下旬)、21世紀版映画「おしん」を観る機会があった。どこにこれほどの涙が隠れていたのかと思えるほど涙が止まらなかった。私にとって30年前の連続テレビドラマ「おしん」物語には断ちがたい想い出がある。「忍耐と我慢のシンボル」ともうたわれたこのドラマは、当時も涙なしには観ることができなかった。今指摘すべきことは、「おしん」は単なる昔話ではなく、現在進行形の「忍耐と我慢」の物語にほかならない(2013/11/02)


レイモン・ドゥパルドン写真集 「PPP」〜世界の政治家42人の素顔を写す〜
  レイモン・ドゥパルドン(Raymond Depardon)。日本でその名前を知っている人はどれくらいいるだろうか。パリのクリシー広場に面した大きな書店の写真集のコーナーに足を運ぶと、文庫版になったレイモン・ドゥパルドンの写真集が10冊くらいずらっと並んでいて他を圧倒しているのだった。(2013/11/02)


アラン・マバンクゥ著 「黒人のすすり泣き」('Le sanglot de l'homme noir' par Aain Mabanckou )
 フランスで「プレス」と書かれた看板のある店には新聞・雑誌が専門に置かれている。しかし、近くのプレスには小さな文庫本のコーナーがある。50冊もないだろう。その中にアラン・マバンクゥ(Aain Mabanckou)という名の著者の作品が3冊置かれていた。筆者はまったくもって知らない作家だ。しかし、プレスの女主人が「いい作家だ」というので読みやすそうなエッセイ集を試しに一冊買ってみた。(2013/10/29)


落合栄一郎『 Hiroshima to Fukushima: Biohazards of Radiation』
  日刊ベリタへの寄稿者落合栄一郎氏が、放射能というものの健康への負の影響を最新の科学研究の成果にもとづいて解明した新著を、ドイツのシュプリンガー社から出版した。動機は、東日本大震災に伴って起きた東京電力福島第1原子力発電所の事故,それに伴う放射能による様々な問題、特に健康への被害についての憂慮から発したものという。著者に本の内容を簡潔に紹介してもらった。(2013/10/22)


ルモンド紙が「ビッグブラザー」に宣戦布告 
  近年、フランスのルモンド紙は今ひとつ面白さを感じないフラットな新聞になっていた感があった。ここでは新聞の政治的な位置は度外視して、新聞記事が面白いかどうか、読みたいかどうか、読者としての感覚を書いている。ルモンド紙が成長志向にとりつかれ経営を誤ったとか、腕利きの記者・編集者が去っていったとか、様々な批判に触れることがあった。ルモンド紙ばかりでなく、フランスの新聞の多くが独立した新聞でなく、大企業グループの資本傘下にあって自由ではない、ということも指摘されていた。そのルモンド紙が最近、面白い。その理由かどうかは定かではないが、最近編集長が女性に変わったということが1つある。(2013/10/22)


生誕300周年 今も絶大な人気があるドニ・ディドロ 〜啓蒙思想家にして、風刺漫談作家〜
  フランスの啓蒙思想家と言えばルソーやヴォルテールがすぐに浮かんでくる。しかしフランスに来ると、ルソーやヴォルテールと同等か、時にはそれ以上に町の書店で存在感があるのがディドロである。(2013/10/20)


「わるいやつら、わるい政治」を告発 貧困と格差を解消する政治めざして 安原和雄
  善人もいれば悪人もいる。双方が混在しているのがこの世の常でもあるだろう。しかし日本という国の政治、経済、社会に大きな影響力を行使する政権の座に、仮にも悪人が居座っているとしたら、「現実はそんなものだ」と笑って済ますことができるだろうか。国民1人ひとりは血もあれば、ときに涙も流すいのちある存在である。宇都宮健児著『わるいやつら』(集英社新書・2013年9月刊)が話題を呼んでいる。(2013/09/30)


カトリーヌ・グラシエ著「サルコジとカダフィ〜機密の裏切りの物語〜」
 今、パリで売り出し中の本が「サルコジとカダフィ」と題する本だ。筆者は未読だが、2007年のフランス大統領選と、2011年のカダフィ殺害が何か関係しているらしい。著者のカトリーヌ・グラシエ氏はジャーナリスト。「モロッコがイスラム原理主義になる日」「略奪者の王」などの著書がある。(2013/09/20)


新自由主義科学者の実態を描く、'Merchants of DOUBT'〜市場原理主義の米科学者がエコロジー研究を敵視〜
  筆者が未読の本だが、注目されている本と聞いたのでここで紹介。今日、企業が科学の研究データを金にものを言わせて改変していることがすでに世界で報告されており、科学の最大の問題となっている。「マーチャント・オブ・ダウト」(懐疑論の商人)はアメリカの科学史家、ナオミ・オレスケス(Naomi Oreskes)と、エリック・コンウェイ(Erik Conway)が共同で書き下ろしたもの。(2013/09/16)


ロジェ・グルニエ著「ユリシーズの涙」
  パリを歩いていると、犬を連れた人々が多いことを感じる。日本でも犬を連れて歩いている人が多いが、パリも多い。野良犬はいない。10年前に比べたら、歩道に落ちている犬の糞もまったく見かけなくなった。犬もさまざま。日本であまりみかけないタイプの色や形の犬も少なくない。(村上良太)(2013/09/10)


エラスムス著「平和の訴え」  〜人類は500年間進歩なし〜
   最近、本でこんな一節を読んだ。「遠い昔のことはほとんど思い浮かべられないとしても、なんでしたら、過去12年の間に交わされてきた戦争を、この辺で一度考え直してごらんになったらどうでしょうか。その原因を掘り下げて調べてごらんになったらいかがでしょう。そうすれば、ありとあらゆる戦争が産業界の利益のために企てられ、戦争とは全然何の関係もない民衆の被害の上に遂行されたことがお判りになるでしょう。」この言葉は2001年から次々と戦争に余念がない米国のオバマ大統領に寄せられたもののように思えるが、書かれたのは1517年。(2013/08/29)


モリエール作「守銭奴」  〜現代の英雄〜
  最近若い人がこんなことを話していた。「多国籍企業は税金が高くなるのなら外国に拠点を移すと言って政府を脅していますが、貧乏人ならともかく、巨額の利益を出している企業なのにやっていることが貧乏くさい。いったい、なんでそうなるんでしょうね?」それを聞いて僕はある舞台を思い出した。(2013/08/27)


ベルクソン著 「時間と自由」  〜人間は自由なのか、決定されているのか?〜ベルクソンの青春の試論
  この夏、フランスの哲学者、アンリ・ベルクソン(Henri Bergson, 1859-1941)の「時間と自由」にトライした。かれこれ20年来、興味を持ちながらもなかなか読めないでいた本だ。興味を持ったのは本書の中に、ミミズのようなうねった線分が挿絵で描かれていたことだ。そしてM,O,X,Yという4つのアルファベットが線の脇に書き込まれている。このミミズのような線とアルファベットの説明図に僕は惹きつけられたのだ。人間は自由なのか、自由でないのか、それを論じている箇所である。(村上良太)(2013/08/24)


死刑囚の絵画展―囚われているのは彼らだけではない―
 アムネスティ日本は、9月28日と29日の二日間、東京渋谷の「ギャラリー大和田」にて、『死刑囚の絵画展』を開催します。現在、日本には130人を超える死刑確定者がいます。死刑が確定すると、彼らの交通権(面会や文通等の権利)は極端に制限されます。 (2013/08/23)


天皇の短歌の政治的メッセージ性を論究する『天皇の短歌は何を語るのか―現代短歌と天皇制』(内野光子著)  山崎芳彦
 『天皇の短歌は何を語るのか―現代短歌と天皇制』(内野光子著)が出版された 天皇の短歌の政治的メッセージ性、政治権力との呼応などを論究した歌人の労作に注目したい(2013/08/18)


クロエ作 「ジャンヌの季節」〜現代フランス女性のトホホな独白録〜
   フランスの漫画屋で「ジャンヌの季節」(Les saisons de Jeanne)という風変わりな作品に出会った。漫画では鳥のような顔の若い娘、ジャンヌの見た世界、感じた世界が描かれていく。絵は極めてシンプルで学生時代にノートに描きつけたいたづら描きのようだ。登場人物はみな同じような鳥顔である。けれども、眼差しが微妙に変わるので、気持ちは細やかに表現されている。著者はクロエ(Chloe)という名前の女性である。(村上良太)(2013/08/18)


ドキュメンタリー映画「天に栄える村」(1時間46分)の上映会
  福島県で原発事故に立ち向かう天栄村の農家の人達を原発事故の2年前から4年間撮影をして今年2月に完成したドキュメンタリー映画「天に栄える村」(1時間46分)の上映会のお知らせです。日時:8月24日(土)上映14時から(会場:13時半)場所:東京ウィメンズプラザホール  (原村政樹)(2013/08/17)


「赤ずきん」
 「赤ずきん」と言えばシャルル・ペローのコント集や、グリム童話でおなじみの童話の定番だ。狼が森で出会った赤い被り物をした少女に<食欲>を感じ、少女が訪ねる病気のおばぁさんの家を先回りする。まずベッドのおばぁさんを食べ、そのおばぁさんに化けて、赤ずきんを待ち伏せして、だまして食べてしまう。この話には別バージョンもある。(2013/08/11)


ドキュメンタリー映画「呉さんの包丁〜戦場からの贈り物〜」(監督:林雅行)
  民間の空襲被災者の人生や、日本の植民地だった台湾の人々の人生を濃密に描いてきた林雅行監督の最新作「呉さんの包丁〜戦場からの贈り物〜」が今月から、渋谷のユーロスペースを始め全国各地で上映される予定だ。ドキュメンタリー映画「呉さんの包丁」の舞台は金門島。だが、そう言われて金門島がどこにあるか正確な位置を示せる人は果たして何%いるだろうか。(2013/08/10)


再放送「ETV特集 焼け跡から生まれた憲法草案」
 参議院議員選挙を終えて、なお熱い夏ですね。第4回「憲法を考える映画の会」で見た『日本国憲法誕生』を作られたプロデューサーの方から下記の様な案内をいただきました。NHK・ETVセレクション 8月11日(日)00時00分〜(10日土曜日の深夜)「ETV特集 焼け跡から生まれた憲法草案」(戦争を考える映画の会 花崎哲)(2013/08/09)


難民がやって来た。受け入れか、排除か?シリア難民でエーゲ海の島が揺れた!「難民に揺れる島 ギリシャ・レスボス」(NHK/BS1)
  オリーブ畑が広がるエーゲ海の風光明媚なレスボス島。この島に最近、異変が。浜辺に打ち上げられる何体もの遺体。巡回パトロールの警備隊が発見した密入国のボート。そこには見馴れない風貌の人々がいた。シリアの難民だ。彼らはトルコ沿岸から小さなゴムボートに乗ってギリシャ領になっているエーゲ海の島々を目指す。最短距離のところでおよそ10キロ。(村上良太)(2013/07/31)


「ザ・ノンフィクション」<おじいちゃんの遺言〜あんたとボクの人生最後の3ヶ月〜> 井上秀明(映像編集)
28日(日)午後2時00分よりフジテレビ「ザ・ノンフィクション」 (2013/07/27)


山田文比古著「フランスの外交力〜自主独立の伝統と戦略〜」(集英社新書)
  山田文比古著「フランスの外交力〜自主独立の伝統と戦略〜」は冒頭にずばんとテーマを1行で語っている。「なぜ、フランスは米国に「ノン」と言えるのか。これが本書のモチーフである」(2013/07/27)


木村尚三郎著「都市文明の源流」「欧米は文化」で「日本は野蛮」という興味深いテーマを扱って  飛田正夫
 木村尚三郎著「都市文明の源流」(1977年11月7日初版)という非常に魅力ある題名の本が私の本箱にあった。パラパラとページをめくると何箇所かに、「781020」という日付けの入ったふしんばさみが挟まっていて、本にはあちこちに赤線が引かれ書き込みがしてあった。勿論のこと私の関心はその頃とは異なっている。(2013/07/26)


横塚眞己人著「ゾウの森とポテトチップス」(そうえん社)
  子供たちの夏休みも本番を迎えている。そんな今、町の書店で面白い本に出会った。そうえん社の「ゾウの森とポテトチップス」という本だ。これは課題図書にも指定されており、夏の読書にお薦めということにもなっている。この本の特徴はいくつかある。まずボルネオ島に生息するゾウの生態がよくカメラで撮影されていることだ。(2013/07/26)


ドキュメンタリー映画「天に栄える村」(監督:原村政樹)
  原村政樹氏によるドキュメンタリー映画「天に栄える村」が完成し、上映が始まった。映画の舞台は全国的に知られるうまい米の産地・福島県「天栄村」。映画は天栄村の水田が福島第一原発事故による放射性物資で汚染されてから、農民たちがどのような運命をたどったかを地に這うような地道な取材で活写している。放射能はどうすれば減らせるのか、どうすればゼロにできるのか。村をあげた全身全霊の戦いが始まる。この映画を見た福島県在住の作家・住職の玄侑宗久氏がこんな一文を寄せた。(2013/07/13)


柳澤恭雄著「戦後放送私見〜ポツダム宣言・放送スト・ベトナム戦争報道〜」   
  けやき出版から出ている柳澤恭雄著「戦後放送私見」は独自の道を歩んだテレビマンが書き下ろした個性的なテレビ史の証言記録である。柳澤氏は「日本のいちばん長い日」でもそのエピソードが描かれているのだが、天皇の玉音放送を守ったNHKの幹部だった。戦時中、NHKが戦争協力をしてきた歴史を反省し、戦後は左翼的立場からジャーナリズムを始めようとしたがレッドパージで追放されてしまう。そこで自ら起こしたニュース映像の配信会社が日本電波ニュース社である。それは安保闘争たけなわの1960年のことだった。(2013/07/12)


門天ことばの交差点プロジェクト〜(第一回)講談の悟道軒圓玉師〜
皆様へ 新装開店《両国門天ホール》のシリーズ企画「ことばの交差点」のご案内です。このシリーズは芸のことば、音楽のことば、身体のことば・・・さまざまの分野で《いま光る言葉》を探って行こうというプロジェクトです。その第一回にご登場頂くのは講談の悟道軒圓玉(ごどうけん えんぎょく) 師。 昭和40年代、当時は火の消えたようと言われた講談界に彗星のように現れ二つ目時代に谷崎潤一郎の『刺青』などを講談化し、二度の芸術祭賞を得るなど注目されたが平成元年、脂の乗り切った47歳の時交通事故に遭遇。自転車ごと跳ね飛ばされ全ての記憶、言葉を失った。(伊東喜雄)(2013/07/08)


クロード・レヴィ=ストロース著  「野生の思考」
   経済的に豊かになること、効率化すること、進歩することに人類は弱い。それは経済成長の思想でもある。今、「民主化」と「市場主義」が手を携えて世界を席巻しつつある。これに対して人類は抵抗しがたい。これに抵抗しているか、あるいは条件をつけて全面受け入れを渋っているイスラム世界を西欧は遅れた社会と見なし、改革すべきだと考えている。デジタル機器が、そして銃が送り込まれている。我が国もそうした西欧の価値観に漬かっている。アフリカや中東の国々の人々を無条件に「遅れた人びと」と見る目線を持っているし、その自分の眼差しを当たり前のこととして疑うことがなくなってしまっている。そんな今、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが書いた「野生の思考」を読んでみた。(村上良太)(2013/07/07)


「かえる物語〜帰村宣言騒動記〜」 井上秀明(映像編集)
7月7日 七夕の日曜日.午後2時00分より、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」にて「かえる物語〜帰村宣言騒動記〜」を放送致します。(井上秀明)(2013/07/05)


「日本国憲法誕生」(NHKスペシャルをDVD化)
  「夏の参議院選挙までに」を合い言葉にして来ましたが、その参議院選挙も目前に迫っています。第4回「憲法を考える映画の会」■7月6日(土)14時〜17時■婦選会館1階多目的ホール(渋谷区代々木2-21-11) TEL 03-3370-0239 プログラム 1、「日本国憲法誕生」(74分) 2、「STOP戦争への道」(30分)(2013/07/03)


長谷川まり子著「ゴビンダの「補償金と生活」」(新潮45)
  ノンフィクション作家の長谷川まり子氏が今月発売の「新潮45」に「ゴビンダの「補償金と生活」」というレポートを書いている。ゴビンダ氏と言えば東電OL殺人事件で冤罪で投獄されていたゴビンダ・プラサド・マイナリ氏。ネパール人である。昨年暮れ、無罪が確定し、獄中生活に対する補償額およそ6800万円が支払われることになったとされる。そんなゴビンダ氏の帰国後の日々を追っている。(村上良太)(2013/06/23)


ジョン・スチュアート・ミル著「自由論」    
  英国の哲学者ジョン・スチュアート・ミル著「自由論」が光文社古典新訳文庫から翻訳されて出ている。近年、「自由」という言葉が最も頻度をもって使われるのは新自由主義という言葉だから、この本も何かそれに関係があるのか、と思う人もいるかもしれない。すでに「自由」という言葉が私たちの生活の中で、ほとんどその本来の力を失ってしまったからだ。(村上良太)(2013/06/17)


病む現代文明を超えて持続可能な文明へ 今こそ江戸期のモデル=自己抑制を 安原和雄
  21世紀の現代をどういう視点で捉え、変革していくか、このテーマは多様な論議を呼ぶに違いない。<病む現代文明を超えて、持続可能な文明へ>という視点は常識のように見えながら実は、新鮮そのものである。持続可能な文明への転換は果たしてどこまで可能なのか。転換のカギを握っているのが<日本の江戸期のモデル=自己抑制(知足)>の実践である。もう一つ、忘れてはならないのが日本国憲法の平和・反戦理念である。(2013/06/10)


落合栄一郎『病む現代文明を超えて持続可能な文明へ』
  著者が、過去数年、日刊ベリタに掲載したエッセーを纏めたものが、表題の書籍として本の泉社から出版された(292ページ、1800円)。安原和雄氏の別掲書評(みる・よむ・きく)と併せて読んでいただければさいわいである。落合氏は本書執筆の意図をつぎのように述べている。(2013/06/10)


『映画 日本国憲法』(監督ジャン・ユンカーマン)〜憲法を考える映画の会の第3回目〜花崎哲
  アジアの国の人々は日本が「戦争をしない国」だということ、戦争を放棄した日本国憲法をもっている国だと言うことを知っているのでしょうか?憲法を考える映画の会の第3回目は海外からの視点で日本国憲法をとらえた映画『映画 日本国憲法』をいっしょに見て、話し合い、わからないことに知恵を出し合って憲法を自分たちのものにしていきたいと考えています。第3回はアメリカ人のジャン・ユンカーマン監督の『映画日本国憲法』です。(花崎哲)(2013/06/10)


報道カメラマン山城博明による「激動のOKINAWA42年」〜琉球新報創刊120年企画展〜
  琉球新報写真映像部に所属して活躍している報道カメラマン、山城博明氏の写真展「激動のOKINAWA42年」展が横浜の日本新聞博物館で開かれる。開催期間は6月22日(土)〜8月18日(日)。(2013/06/04)


「フレンチコネクション」「エクソシスト」の映画監督ウイリアム・フリードキンが薦める映画本
  映画監督のウイリアム・フリードキン(1935-)という名前を知っている人は多分40代以上かもしれない。1971年に型破りな刑事ドラマ「フレンチコネクション」を、1973年にはホラー映画ブームを作った「エクソシスト」を監督してその名を馳せた。そのフリードキン監督が最近どうしているかまったく知らなかったが、アメリカで買ったウォールストリートジャーナルに顔を出していた。それは読書欄だった。「ウイリアム・フリードキンお薦めの映画監督に関する本」というタイトルで、彼が5冊の本をチョイスしているのだった。(村上良太)(2013/06/03)


ティナ・フェイ著 「Bossypants」
  最近、アメリカの空港で必ず目にする本がある。それが「ボッシーパンツ(Bossypants)」と題するペイパーバックだ。表紙はワイシャツにネクタイ姿の可憐な女性なのだが、腕だけが太くて毛むくじゃら。合成したものなのだが、一度見ると強烈で忘れがたい。この本、あちこちの書店で目にするもののそれがいったい何の本なのか、著者のティナ・フェイが何者かわからないままだった。(村上良太)(2013/05/24)


新日本風土記「川越」  原村政樹
私が暮らす町を紹介する番組、新日本風土記「川越」を作りました。埼玉県川越には東京では失われた江戸の文化が、街にも農村部にも残っています。その郷土の伝統文化を大切に守り続ける魅力的な市民をご紹介いたします。(ドキュメンタリー映画監督:原村政樹)(2013/05/19)


「ザ・ノンフィクション / オカン、ごめんな。〜京 涙の修業物語〜」 井上秀明(編集)
  5月19日(日)午後2時00分 フジテレビ「ザ・ノンフィクション / オカン、ごめんな。〜京 涙の修業物語〜」を放送します。努力しなければ、何とかしなけれれば、こんなはずではなかった、あ〜っ・・・。そう思いながらダメになって行く自分を感じるときってありますよね。(井上秀明:編集マン)(2013/05/17)


ミヒャエル・ハネケ監督「Amour(愛)」
  この春、オーストリアの映画監督ミヒャエル・ハネケによる映画「Amour (愛)」を見た。この映画はフランスの俳優を使ってフランスで撮影された(であろう)フランス語の映画ながら、やはりジャーマン的な、というかウィーン的なハネケ監督の感覚が強く感じられた。(村上良太)(2013/05/13)


『100年の谺 大逆事件は生きている』 100年前の国家的犯罪に挑む人々  笠原真弓
 昨日『100年の谺 大逆事件*は生きている』を観た**。これはすごかった。100年前の不正義を、遺族以外の多くの方たちが正そうとしていることに、不思議な強さを感じた。(2013/05/07)


映画『異国に生きる 日本の中のビルマ人』 人生をかけて守りたいものは……   笠原真弓
 土井敏邦監督自身が「こんなにいい映画なのに…」とおっしやった通りだった。そこに映し出されたのは、ビルマ青年(「ミャンマー」という国名は、独裁政権がつけたもので、民主化運動活動家らは承認していない)の生き方であり、家族愛であり、人間愛であった。(2013/04/25)


堀川惠子著「裁かれた命〜死刑囚から届いた手紙」 原村政樹(ドキュメンタリー映画監督)
 近年、これほど胸を打たれる感動を受けた本はない。中学時代、ドストエフスキーの「罪と罰」を正月休みに読みとおした時の感動以来であった。著者の堀川惠子さんは私と同業のドキュメンタリーディレクターで、かつ、活字メディアでも活躍している。彼女と初めて会ったのはある番組の懇親会、その時、一度きりだったが、これほどまでに凄い創り手だとは想像もつかなかった。死刑囚とそれに関わる検察官、裁判官、家族などとの手紙を通して、死刑という非常にシビアなテーマで、人間の深さを、事実を丹念に取材して...、私情を表に出すことなく、真実を伝えている。(2013/04/22)


レーモン・クノー作「文体練習」 
  言語の実験に果敢に取り組んだフランスの作家レーモン・クノーの「Exercice de style」は日本で「文体練習」という題の邦訳で出版されている。これは短いひとつの話を99通りの表現で綴り集めたものである。その話とは次のようなものだ。(村上良太)(2013/04/14)


松本道弘著「giveとget〜発想から学ぶ英語〜」
  最近の書店で見かけなくなったいい本はたくさんある。松本道弘著「giveと get〜発想で学ぶ英語〜」もそんな一冊だ。英語をもう一度、やり直したい、という人が多いようだが、この本は刺激になるのではないか。というのも、松本氏はgiveと getの2つの動詞で相当多くのことが表現できるばかりでなく、この2語に英語の思考法が集約されていると説いているからだ。(村上良太)(2013/04/06)


土井敏邦「異国に生きる〜日本の中のビルマ人」
  今日からポレポレ東中野で公開が始まったドキュメンタリー映画「異国に生きる」。監督の土井敏邦さんからメールが届きました。「「異国に生きる―日本の中のビルマ人」は「ビルマ問題」を論じ伝える映画ではありません。“祖国の民主化”の実現のために、家族と別れ、日本政府の難民政策の厚い壁に阻まれながらも、遠い異国・日本で懸命に生きるビルマ人青年の“生き方”を通して「人にとっていちばん大切なものは何か?」「個人は社会とどう関わるのか?」「真の“愛国心”とは何か?」を私たち日本人自身に問う映画です。(2013/03/30)


NHK・BS1「ドキュメンタリーWAVE〜シリア ある家族の戦争〜」
  ドキュメンタリー番組のプロデューサー、熊谷均さんから番組案内が届きました。NHK・BS1「ドキュメンタリーWAVE〜シリア ある家族の戦争〜」放送: 3月30日(土)22:00−22:49 再放送:3月31日(日)12:00−12:49(2013/03/29)


「タンタンの冒険」シリーズ.愁咼┘畔圈コンゴ編  村上良太
  ガルーダ航空の帰国便の出発まで7時間あまりあったので、何か気楽に読めるものを・・・と思っていたら、「タンタンの冒険」シリーズを発見した。コレクター向けの編集で、1冊に2つから4つの物語が収録されている。中でも、最も興味深かったのはタンタンシリーズの原点である「ソビエト編(In the land of the Soviets)」だった。これはタンタンがシリーズ化される前の、読み切りの1本でシリーズでは唯一の白黒である。(2013/03/27)


チベット現代文学の曙 『ここにも激しく躍動する心臓がある』  トンドゥプジャ著 チベット文学研究会訳  
 中国支配に抗するチベットの人びとの焼身自殺があとを絶たない。2009年以降100人を超えたという数字もある。そんな人々の苦悩はどんな文学を生んでいるのだろう、そんな思いに引きずられるように本書を手にとった。著者トンドゥプジャは1953年に東北チベットで生まれ、1985年、32歳で自死している。副題に「チベット現代文学の曙」とある。(大野和興)(2013/03/16)


「恋文讃歌」  鬼塚忠
老人ホームに暮らす96歳になる私の祖母を、私が数十時間インタビューし、それを元に小説化し、ようやく今年三月に出版させていただくことになりました。タイトルは「恋文讃歌」。 (2013/03/05)


「皆のため」という大欲に生きること いただいた恩を返してバランスをとる 安原和雄
  2013年3月は、私にとって満78歳の誕生月である。気がついてみれば、この高齢に辿り着いているわけで、ここまで生きのびてきたのかという感慨も湧いてくる。最近、年齢相応に脚にしびれを感じるが、幸い歩行困難というほどではない。これからなお10年、いや20年程度は生き抜いてみようという意欲も捨てがたい。だからといって私利私欲に囚われていると、生きることの充実感は遠のいてゆくに違いない。これまでいただいた多くの恩を返してバランスをとること、さらに自分中心の「小欲」でなく、「皆のため」、「社会のため」という「大欲」に生きることはできないか。(2013/03/03)


拷問は正当化されるかをあなたに問う番組 −英チャンネル4のドラマ「Complicit」(共謀)
 今月17日、「もう1つの視点」を出すことを特徴とする英チャンネル4が、「Complicit(コンプリシット)」(共謀)と題するドラマを放映した。英国内でのみ視聴できるドラマなのだけれども、いつか日本で放映されることを願い、内容を紹介してみたい。 〈ロンドン=小林恭子)(2013/02/22)


米映画「ゼロ・ダーク・サーティ」を観て −「テロの戦争」を振り返る
 今月15日、2001年の米同時多発テロの首謀者オサマ・ビンラディンの捕獲・殺害(2011年5月)にいたるまでの経緯を描く米映画化「ゼロ・ダーク・サーティ」(軍事用語で午前0時30分)が、日本で公開される。どんな映画か?(ロンドン=小林恭子)(2013/02/13)


目の前にある故郷 帰れない故郷 戻れない故郷 それは福島   映画『故郷よ』を観る   笠原真弓
 故郷は、いつまでも変わらずにある、いつでも帰ることができる、と人は思っている。石もて追われた故郷でさえも、人は帰りたいと願う。しかし世の中には、失う故郷もある。(2013/02/12)


ガーディアンの写真家 ショーン・スミス  
  英紙ガーディアンに戦慄を感じさせる写真を撮り続ける戦争写真家、ショーン・スミス(Sean Smith)氏がいる。シリアの内戦、リビアの内戦、そして今、焦点になってきたマリの内戦を撮っている。しかも、報道写真というにとどまらず、情感あふれる色彩感覚を持っている。(村上良太)(2013/02/03)


日本再生めざして非暴力=平和力を 「いかされている」ことに学ぶとき 安原和雄
  他人様のお世話にならず、自力で生きたいと想っている人が案外多いのではないだろうか。健気(けなげ)な生き方ともいえるが、この発想には無理がある。人間は独りでは生きられない。自然環境や他人様のお陰で「ともにいきる」のであり、もう一歩進めて、「いかされている」と考えたい。出口を見失ったかにみえる日本の再生をどう図っていくか、安倍政権の軍事力中心の右傾化による打開策は正しくない。非暴力=平和力の思想を今こそ高く掲げて広め、実践していくときである。(2013/01/26)


金原瑞人氏によるMy Favorites ’Franz Kafka ・The Metamorphosis(わが愛するカフカの「変身」) '
 青灯社から、ちょっと面白い試みの本が出ている。翻訳家・金原瑞人氏による、My Favorites ’Franz Kafka ・The Metamorphosis 'なる本だ。これは有名なカフカの「変身」を原文のドイツ語から英訳したものに、金原氏が注をつけた一冊だ。英訳自体はスタンリー・アップルボーム(Stanley Applbaum)氏による。(村上良太)(2013/01/13)


私の乳がんドキュメンタリーの上映会&講演会 「乳がんが教えてくれたこと」   信友直子
 あけましておめでとうございます。今度私の乳がんドキュメンタリーの上映会&講演会をやります。今まで地方を回ってはいたのですが、東京でやるのは初めてなんです。★1月27日(日)14時〜16時★世田谷区玉川区民会館(東急大井町線「等々力」駅徒歩1分)にて。入場無料。(2013/01/06)


木田元著 「わたしの哲学入門」
  哲学者・木田元氏が書いた「わたしの哲学入門」は学生時代にその手の勉強を素通りしてきた私のような輩にはうれしい一冊だ。カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーの考えがわかりやすく説かれているからだ。木田氏はハイデガーの専門家として特に著名だが、「わたしの哲学入門」の中で、ハイデガーとの距離について語っている。そこがとても興味深いし、木田元という人間をよく物語っているように思われる。(村上良太)(2012/12/29)


若松丈太郎著『福島核災棄民―町がメルトダウンしてしまった』(コールサック社刊、2012年12月9日発行)を読んで   山崎芳彦
 福島・相馬市に在住して、福島第一原発の建設当時からその危険性。原発立地地域の深刻な問題に真正面から向かい合い、詩、評論、ルポルタージュなどで、危機を警告し続け、その身を動かして反原発の闘いに参加して来た詩人・若松丈太郎さんの最新の一冊が発行された。若松さんについては、昨年、『福島原発難民』(コールサック社刊)に接して以来、筆者は、その後のまことに優れた詩作、評論による詩人の動向を追ってきたが、今この著書で「核災」「核発電」という、物事の本質を的確に表現し、核加害者・勢力を人間の生きるその真実の根拠地から糾弾する詩人の魂に、改めて深い感銘を受けている。筆者は「あとがき」で次のようにことばを燃え立たせている。(2012/12/22)


『風力発電が世界を救う』を読んで エネルギー新時代とチャレンジ精神 安原和雄
  原子力発電が魅力も存在価値も失ったいま、頼りにすべきは、もはや再生可能エネルギー、すなわち風力、太陽光、小規模水力による発電、さらに農林畜産業の廃棄物によるバイオマス発電などである。なかでも著作『風力発電が世界を救う』は、エネルギー新時代の四番打者として「風力発電」をすすめている。再生可能エネルギーの新時代を築いていくことは、もはや避けることのできない歴史の必然ともいえる。だからこそチャレンジ精神で新時代に向き合う以外に選択の余地は残されていない。(2012/12/05)


何代も続く枯葉剤の悲劇を描く映画「花はどこへいった」  大野和興
 映画「花はどこへいった」をみながら、2009年に訪れたベトナム・ダナンの枯葉剤被害者サポートセンター(DA NANG Suport Center for Agent Orange Victimus)で遭遇したことを思いだした。ピースボートに水先案内人で乗船し、その旅の途中で立ち寄ったものだ。映画はベトナム戦争に従軍した米国人の夫が肝臓がんで死亡、その妻が枯葉剤の実態を追って、フィルムを回し制作したものだ。映画は12月16日に都内市ヶ谷の法政大学キャンパスで開催される国際有機農業映画祭で上映される。http://blog.yuki-eiga.com/(2012/11/28)


「ザ・フェデラリスト」(ハミルトン、ジェイ、マディソン)  アメリカ政治思想上の第一の古典
  岩波文庫から出ている「ザ・フェデラリスト」はアメリカ政治思想上の第一の古典と銘打たれている。アメリカ政治のテキストとしてはアメリカ合衆国憲法なども同じ岩波書店から出ている。しかし、「ザ・フェデラリスト」の面白さは米国の政治がどのように形成されたか、その歴史が刻まれており、その考え方が形成過程の議論から読めるところにある。それもそのはず、「ザ・フェデラリスト」はもともと3人の政治家による85の短い論文集であり、これらが書かれたのはアメリカ連邦政府をどう形成するか、特に合衆国憲法をどのようなものにすべきかを13の国家で検討していた時期だからである。(2012/11/25)


衆院選後の日本経済はどうなるか 脱「GDP主義」へ転換を求めて 安原和雄
  大方の予測を超えた衆院解散に政財界人に限らず、多くの国民が驚いた。関心を抱かざるを得ないのは混迷を深めている日本経済が衆院選後にどうなるのか、その行方である。論議の的となるべきは目先の短期的な景気動向ではなく、中長期的な日本経済の姿、構図である。このテーマは21世紀・日本の真の豊かさ、幸福とは何かを改めて問い直すことでもあるに違いない。日本経済の変革を視野に収めた最近の著作として今松英悦、渡辺精一(注)共著<そして「豊かさ神話」は崩壊した ― 日本経済は何を間違ったのか>(2012年10月、近代セールス社刊)が目に付く。(2012/11/19)


【燐光群公演】『星の息子』作・演出○坂手洋二  11月16日から座・高円寺1で
 「人は死んだら星になる」って言ったのは、誰だっけ ……。やんばるの空を飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ。『天皇と接吻』『沖縄ミルクプラントの最后』につづく、「戦後史」と「今」の集大成。出演・渡辺美佐子ほか。(大野和興)(2012/11/16)


輿石正監督 『シバサシー安里清信の残照―』  沖縄民衆思想の到達点としての生存権  大野和興
 沖縄戦後史の重要な出来事である反CTS闘争のリーダー安里清信の生涯を描いたドキュメンタリー映画である。監督は沖縄に根を張り、活動する輿石正さん。制作は輿石さんが代表をつとめるじんぶん企画。ドキュメンタリーというありきたりのジャンル分けではなく、評伝映画といった方が適切かもしれない。沖縄を体現する一人の人物の精神史が見事に切り取られ、映像に定着されている。日本の沖縄支配が生んだ強靭な個性の精神の旅は、いまオスプレイ配備に対し徹底した闘いを挑んでいる沖縄の人びとの思いの源流がどこにあるのかを教えてくれる。(2012/11/12)


デイブ・エガーズ著「ザイトゥーン」   村上良太
  エガーズは編集者としても知られており、今売出し中の「Then Best American Nonrequired Reading 2012」も編集している。この本は短編の佳作を集めたものだが、漫画も二編掲載されている。その一つは「Kamikaze」と題されたNora Krugの漫画である。(2012/11/12)


『縮小社会への道』が訴えること いのち尊重、脱原発、脱経済成長を 安原和雄
  経済は常に拡大・発展していくものだと思い込んでいる政・財界人や経済学者たちからみれば、21世紀は経済が縮小していくほかない時代だという問題提起は驚愕に値するかも知れない。しかし考えてみれば人間の一生も同じではないか。成長期を経て高齢化が進めば、身体も衰え、しぼんでいく。「縮小社会への道」は必然の成り行きというべきである。大切なことは、この冷厳な現実を認め、新しい世界を築くためにどういう手を打っていくかである。(2012/11/03)


カダフィの死を描いた3枚の絵画     
  カダフィの死体を描いた3つの絵画がエル・パイスで紹介されている。いずれもいたいたしい最期である。1つは「ユビュ王〜カダフィの頭〜」と銘打たれている。ユビュ王とはフランス世紀末に活躍した前衛作家アルフレッド・ジャリの戯曲の主人公である。(2012/10/15)


山形県の農民詩人・木村迪夫さんの映画実現に向けて   原村政樹
3年前から映画化を構想して参りました、山形県の農民詩人・木村迪夫さんの映画実現に向けて、山形国際ドキュメンタリー映画祭の関係者の方々が支援会を立ち上げてくださり、明日、10月13日に山形市で総会を開いてくださることになりました。(2012/10/12)


ジェームズ・サーバーの復刻を望む   村上良太
  最近書店でジェームズ・サーバー(James Thurber,1894−1961)の短篇集「傍迷惑な人々」(光文社)を見かけた。サーバーは雑誌ニューヨーカーで活躍したユーモア作家であり、漫画家でもある。サーバーが光文社から改めて出版されたことは嬉しいニュースである。(2012/10/11)


「ワーク・シフト」 ーひっそりと自分で未来のことを考える本
 ふと、世の中の物事の風向きが、あるいは自分の気の持ちようが変わっているのを感じとるときがないだろうか?まるで木の葉っぱが緑からいつしか黄色、そして赤に変わってきたことに、突然気づいたときのように。一つ一つの変わったことは他人に言うまでもなく、自分の心の中でそっとひそかに感じ取るだけだ。動いていく雲の端をとりあえず手につかんで溜めて置くだけー。(ロンドン=小林恭子)(2012/10/08)


瀬川正仁著「教育の豊かさ 学校のチカラ」(岩波書店)
  ドキュメンタリー番組のディレクター、瀬川正仁さんが岩波書店の「世界」に1年間連載した「教育のチカラ」がこの夏、まとめられて一冊の本になった。書名は「教育の豊かさ 学校のチカラ〜分かち合いの教室へ〜」だ。瀬川さんは映像の専門学校で学生に教える傍ら、興味を持った各地の学校に出かけてこのルポを書き続けた。日刊ベリタにも、連載が始まる直前に寄稿していただいたことがあった。(2012/10/07)


マーティン・シャーマン作「ローズ」公演 
  米劇作家マーティン・シャーマンによる一人芝居「ローズ」が来月東京で上演される。女性ローズを演じるのは東京演劇アンサンブルの女優、志賀澤子氏。今回は同劇団ではなく、プライベートユニットを結成しての舞台となる。80歳の女性、ローズが木製のベンチに座って激動の人生を回顧する。(村上良太)(2012/10/06)


NHKBSプレミアム「邦画を彩った女優たち〜闘う女優 寺島しのぶの告白〜」
  「日本の女優として35年ぶりにベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した寺島しのぶさんに、そこに至るまでの話を、プライベートも含めてうかがった。」(上田未生 プロデューサー)(2012/10/03)


郡史郎著「はじめてのイタリア語」(講談社現代新書)
  講談社現代新書の語学シリーズは電車の中で繰り返し読むのに最適だといつも感じさせられる。適度にくだけて読みやすくできているが、その傍ら文法の基本をしっかりおさえている。郡史郎著「はじめてのイタリア語」も肩の力を抜いて気楽にひもとくことができる。本書で特に面白かったのは終わりの方に、豆知識として「こんなことば、あんな由来」という章が設けているところだ。(村上良太)(2012/10/03)


詩集『脱原発・自然エネルギー218人詩集』(コールサック社刊)を読む  山崎芳彦  
 アンソロジー詩集『脱原発・自然エネルギー218人詩集』(日本語・英語合体版 コールサック社、8月11日刊)を読んでいる。鈴木比佐雄・若松丈太郎・矢口以文・鈴木文子・御庄博実・佐相憲一の各氏によって編まれた、内外の詩人による、原発をテーマにした多くの詩篇を読み、心が揺さぶられ、あるいは研ぎ澄まされる。原子力の本質と、それがもたらす生きている人間、生物、自然に対する苦患と向かい合うのは、それぞれの詩篇によって、人間である自分について、生きている世界について思いを広げ、深め、希望につなげていることの実感を、確かめる営為である。(2012/09/28)


チェーホフ作「かもめ」(沼野充義訳)
  集英社文庫から沼野充義訳「かもめ」(アントン・チェーホフ作)が出た。長年、「かもめ」と言えば神西清(1903-1957) (2012/09/23)


「私を脱がせて」ジュリエット・グレコとアンリ・サルバドール
 ジュリエット・グレコとアンリ・サルバドールによる掛け合い「私を脱がせて」。二人の息の合った芸が楽しめる。(2012/09/12)


『NAKED FASHION -ファッションで世界を変える- おしゃれなエコのハローワーク』
  ファッションを軸に世界の貧困問題を解決しようとフェアトレードを行っている ピープル・ツリー。その代表サフィア・ミニー氏が書き下ろした最新著書『NAKED FASHION -ファッションで世界を変える- おしゃれなエコのハローワーク』が10月1日(月)に発売となる。内容はこれまでのファッション界のビジネスモデルの検証と改革のようだ。(2012/09/10)


辻井喬の「入亜脱従属」論を読んで カギは平和憲法理念の活用にこそ 安原和雄
  詩人、作家の辻井 喬の「入亜脱従属」論が示唆に富む。アジアの大国・中国と日米安保体制下の同盟国・アメリカ、この両大国と日本は今後どう付き合っていくのが望ましいかがテーマとなっている。「入亜脱従属」論が示唆するところは、日本の進むべき道として、中国との交流を深めながら、一方、日米安保体制からどう離脱を図っていくかである。実現のカギとなるのがわが国平和憲法の理念をどう活用するかである。そのためには「日米安保体制があるから安心という時代は終わり、わが国は独立国としてどのような判断と政策を持つべきか」が重要と問いかけている。(2012/09/09)


桜井啓子著「シーア派」(中公新書)  村上良太
  今、世界の新聞を読んでいるとシーア派という言葉が頻出している。シーア派はイスラム教の二大勢力の1つで、今シーア派が扱われるのは主流派を占めるスンニ派(スンナ派)との確執においてである。具体的にはシリア情勢を巡ってだ。シリアはアラウィ派が政権を握っている。アラウィ派はシーア派に近いとされる。中東でシーア派が多数派を占める国にはたとえばイランとイラクがある。著者の桜井啓子氏はイランの専門家である。(2012/09/08)


映画「米の放射能汚染ゼロへの挑戦」〜明日須賀川で先行試写〜
  原発事故後、農業再生に全力をあげる福島の農民を取材中の原村政樹監督から。明日9月2日(日)16時20分より、福島県須賀川市の須賀川市文化センターで開催される「すかがわ国際短編映画祭」で「米の放射能汚染ゼロへの挑戦」が上映されます。(2012/09/01)


「90億人の食糧問題」(ジュリアン・クリブ著 シーエムシー出版)
   人口は70億人を突破した。10年強で10億人ずつ増えている。私が小学生の頃は約40億人だった。2050年には93億人になると国連人口基金は予測している。だがその一方で農地の拡大はすでに頭打ちになりつつある。だから今安価でいつでも入手できると思っている海外からの輸入食糧もいずれは入手が困難になるだろう。オーストラリアの科学ジャーナリスト、ジュリアン・クリブ著’The Coming Famine'(飢饉がやってくる)は邦題「90億人の食糧問題」として出版されている。副題は「世界的飢饉を回避するために」。本書の中でクリブ氏は90億人時代を賢く生きのびるための「食事」を提案している。(村上良太)(2012/09/01)


『シグロ・ドキュメンタリー映画特集』  9月8日(土)〜14日(金) オーディトリウム渋谷で
 2011年秋、パリのシネマテーク・フランセーズで22日間にわたってシグロ特集上映が開催され、23本のシグロ作品が上映された。主催者であるシネマテークからは、シグロ作品を包括するモチーフとして、『レジスタンス=抵抗』という言葉が提示された。その凱旋上映会が、9月東京・渋谷で開催される。パリで上映された作品の中からシグロがこの26年間に製作・配給したドキュメンタリーの代表作・話題作7作品が上映される。(大野和興)(2012/09/01)


「アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く」
  アフガニスタンで取材活動を続ける谷津賢二さんから。ペシャワール会の中村哲医師らが取り組んできた用水路敷設事業を新たにDVDにまとめたという。タイトルは「アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く」。副題には「治水事業 7年の記録」とある。武力頼みの米国のオバマ政権とは違った日本人ならではの取り組みと言えよう。(村上良太)(2012/08/31)


映画「ハリー・ポッター」はどうやって作られた? 英スタジオ・ツアー
 世界中にファンを持つ、英作家JKローリングが書いたファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズ。 今年3月、英国に「ザ・メイキング・オブ・ハリー・ポッター」という博物館ができた。ここには実際の映画撮影で使われた衣装や小道具がたくさん置かれている。ハリー・ポッターのファンばかりか、本を読んでいない人、映画も見ていない人にも「楽しめる内容になっている」―という話を実際に行った人から聞いた。(ロンドン=小林恭子)(2012/08/31)


伊藤太吾著「フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる単語集」
  伊藤太吾著「フランス語・イタリア語・スペイン語が<同時に>学べる単語集」(ナツメ社)を買った。これは「フランス語・イタリア語・スペイン語が<同時に>学べる本」の姉妹編に当たるものだ。「・・・<同時に>学べる本」が最初に出た時、帯に書かれた「一石三鳥は語学では可能です」というフレーズを見て、強いインパクトを感じないではいられなかった。その姉妹編が出版されたということは一定部数売れたからだろう。(村上良太)(2012/08/31)


エマニュエル・トッド著「自由貿易は民主主義を滅ぼす」
  欧州はユーロ危機で新車の販売も落ち込み、世界の自動車メーカーの欧州事業は打撃を受けている。失業率も高まり、失業手当で食いつないでいる人たちには新車を買う余裕はなかろう。そして欧州需要の落ち込みが中国など途上国の製造業や日米など先進国の製造業にも暗雲を投げかけている。こうして先進国での需要の落ち込みがやがては途上国にとってもダメージとなっていく。(村上良太)(2012/08/28)


エマニュエル・トッド著「アラブ革命はなぜ起きたか〜デモグラフィーとデモクラシー〜」
  フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)著「アラブ革命はなぜ起きたか」は「アラブの春」に対するクールな視点を提供している。トッド氏はジャーナリストや政治学者とは違った視点で事態を見ているが、それは人口動態から見ることである。どの社会も識字率が50%を超える頃、社会変動が起きる確率が高いという。(2012/08/26)


「我は勇みて行かん」〜松本幸四郎「ラ・マンチャの男」に夢を追って〜 
テレビディレクターの李憲彦さんから。「ドキュメンタリー番組のお知らせです。歌舞伎とミュージカルの両方に取り組む松本幸四郎さんの人生をミュージカル「ラ・マンチャの男」の制作過程と共に描きました。ご高覧いただければ幸いです。」(2012/08/25)


瀬川正仁著「アジアの辺境に学ぶ幸福の質」(亜紀書房)
  瀬川正仁著「アジアの辺境に学ぶ幸福の質」はテレビドキュメンタリーディレクターの瀬川氏がこれまでアジアの辺境を数多く旅して報じてきた経験から、日本人の幸福を考えた本である。瀬川氏がこれまで旅した地はタイ、インド、ミャンマー、パレスチナ、インドネシアなど。圧倒的に途上国が多い。本書ではそれらが地域別に記述されるのではなく、テーマ別に書かれている。〇間について△金について仕事についてゅについてヌ燭砲弔い董最後に「辺境の民とは私達のことだった」と気づくことになる。(2012/07/08)


「ソーラー地球経済」をめざして 脱原発後の新しい国造りへ転換を 安原和雄
  脱原発をめざすのか、それとも原発再稼働なのか、その二者択一が問題なのではない。原発再稼働は時代錯誤もはなはだしい所業で、脱原発はもはや自明の理である。日本が今考え、めざすべきことは脱原発後の新しい国造りにどういうイメージを描くかである。それは太陽エネルギーを活用する「ソーラー地球経済」の一翼を率先して担っていくことであるだろう。石油など化石燃料はやがて枯渇することを視野に収めれば、不滅の太陽エネルギーの活用以外に選択肢はあり得ない。(2012/06/16)


浜田正晴著「オリンパスの闇と闘い続けて」(光文社)
今回紹介する浜田正晴氏によるノンフィクション「オリンパスの闇と闘い続けて」は、オリンパスが舞台となっているものの、損失隠し事件とは直接関係がない。2007年にオリンパス社員の浜田正晴氏が上司の行動に疑問を持ち、社内のコンプライアンス(法令順守)部門に内部告発したところ、経験のない部署に3回も異動させられるなど組織ぐるみで報復を受け、2008年、浜田氏がついに裁判に訴えた事件である。(村上良太)(2012/06/10)


ニューヨーカーが激論「オンラインデーティングについて」  恋愛ドラマの流入で自殺が増える村も・・?
  雑誌ニューヨーカーのサイトで、インターネットによる男女のマッチングを巡って討論している。いまどき、男女はどこで知り合うのか、論客たちが話し合っている。かつてなら、町のバーで出会ったらしいのだが昨今は事情が変わりつつあるようだ。パネリストは「恋愛科学」の第一人者で人類学者のヘレン・フィッシャー博士などの顔ぶれ。(2012/06/10)


原爆と原発は人類の過ちである 全廃に向けて猶予は許されない! 安原 和雄
  「反原発」の運動や著作は最近増えてきた。このことは歓迎したいが、どこか物足りない印象も拭えない。なぜなのか。それは「原爆と原発」を一体として捉え、論じなければならないという視点が弱いからだろう。その点、最近の著作『原爆と原発』が「原爆・原発は人類の過ち、全廃に向けて猶予は許されない!」として「共に全廃すべきだ」と力説しているところを大いに買いたい。原発推進派の原発への執着ぶりも目に余るが、その執拗さを打破するためにも「共に全廃」という視点が不可欠とは言えないか。(2012/06/06)


写真家フリオ・アダムス氏、骨を折る
 メキシコの写真家、フリオ・アダムス(Julio Adams)氏から「事故って手の骨を折ってしまったんだ」とのメールが届いた。(2012/06/01)


野坂昭如の「田植え」を読んで 農業を棄てた自分の「今」を想う 安原和雄
  田植えの季節がめぐってきた。野坂昭如の田植え観、さらに農業・製造業論、反原発論はなかなかユニークである。日本は農業を軽視し、棄てたからこそ、製造業も衰退へ向かっているという主張には納得できる。私自身、農家の生まれでありながら、田舎での農業を棄てて、東京暮らしを続けている一人である。この選択が間違っていたとは思わない。しかし農業を棄てた、その埋め合わせを、「今」の自分として成し遂げつつあるのかと自問すれば、「さて」と心底揺らぐほかない。(2012/05/25)


『原爆と原発―放射能は生命と相容れない』
  表題の小冊子(表紙は下に)が出版された(落合栄一郎著、鹿砦社,2012年5月、762円)。これは、著者が、昨年バンクーバーで行った講演に基づいている。聴衆は日本人ばかりでなく、大部分はカナダ人であったので、日本で常識になっているような事柄も、概要を説明したので、これ1冊で、「原爆と原発」問題の概要が掴めるように配慮されている。しかし、この本の主題は、「放射線というものが、いかに危険なものか、どうして危険なのか」という点に関して、科学的・原理的に考えてみるということにあり、現在様々な仕方で行われている放射線による人体の健康への影響を根本的に見直してみた。そして導かれた結論が、「放射線は本来生命とは相容れない」ということである。(落合栄一郎)(2012/05/17)


目を見開かせ思考を開放してくれた『TOKYO 0円ハウス 0円生活』
  1冊の書によりぱかっと目を見開かされ思考が開放される。この本によって久しぶりにそんな体験をした。それが『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(坂口恭平著、河出文庫)という本で、5月26日から日本全国で公開される映画『MY HOUSE』(堤幸彦監督)の原作にもなっている。(和田等)(2012/05/14)


信友直子ディレクターの新作 「アイドルの家〜涙の数だけ抱きしめて」
  ニューヨークフェスティバルで銀賞に輝いたドキュメント番組「おっぱいと東京タワー」の信友直子ディレクターの新作が放送される。5月20日(日)14時〜14時55分 フジテレビ <ザ・ノンフィクション>「アイドルの家〜涙の数だけ抱きしめて」(2012/05/14)


作家スヴェン・リンドクヴィストとは?
 「現代の遊牧民〜モダン・ノマドの日記〜」を寄稿していただいているスロベニア人の作家、アンドレイ・モロビッチ氏はサハラを放浪しながら文章を書き続けている。モロビッチ氏の「日記」が興味深いのは主人公がアフリカの名もない民、その一人一人であることだ。そこがこれまでしばしば描かれてきたアフリカ人の肖像と大きく違っているように思う。そんなモロビッチ氏の愛読書にアフリカにやってきた欧州人を描いたジョーゼフ・コンラッドの「闇の奥」がある。「もう一人、僕が強く薦める作家はスヴェン・リンドクヴィストです」(村上良太)(2012/05/12)


ジェリー・ロスウェル監督「名も知らぬ精子ドナー(Donor Unknown)」 〜生物学上の父を訪ねて〜
  数日間、コペンハーゲンで過ごした。コペンハーゲンはこの季節、夜の9時頃まで日が照っている。そこで、夕飯を食べた後、ホテルでビールを飲みながら遅い夕暮れを待つ。北欧は鳥の鳴き声も違っているが、鳥は明るさに惑わされないのだろう、午後6時ころには夕暮れの鳴き声がこだまする。それから日が落ちるまで、物憂い時間を持て余す。テレビをつけると、フランス映画にロシア語の字幕がついていたり、ビリヤードの実況中継がノーカットで放送されていたりと随分日本と雰囲気が違う。ビリヤードの王座決定戦らしい対決を見に、多くの観客がスタジアムにつめかけて見守っている。一番印象深かったのはDR(デンマーク放送協会)が放送していた親子の劇的再開を描くドキュメンタリー番組だ。(村上良太)(2012/05/10)


エリック・カール作「小さな雲(Little cloud)」   村上良太
  絵本作家エリック・カールの代表作は「はらぺこあおむし」と言われている。青虫が毎日、葉っぱから、果実さらにはお菓子の類まで食べてお腹をこわしたりするが、たくさん食べることでさなぎになり、蝶になる。それだけのシンプルな話だが、エリック・カールの絵には独特のユーモアと技巧があり、読者を魅了せずにはいられない。だが、今、ここで書きたいのはもっと地味な作品である。題は「小さな雲(Little Cloud)」である。(2012/05/06)


ジョーゼフ・コンラッド作「闇の奥」(岩波文庫)
  ジョーゼフ・コンラッド作「闇の奥」は優れた小説であるという話こそ耳にしていたけれども、フランシス・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」の原作であることの方が僕の中では意識されていた。1979年に公開された映画「地獄の黙示録」はベトナム戦争を舞台にしている。「地獄の黙示録」は徴兵された若い米兵たちがベトナムに戦いに行く話だが、話の焦点になっているのはクルツという士官が米軍から離れ、勝手に現地で独立国のようなものを築いているため、そのクルツを抹殺して来いと若者が指令を受ける話である。クルツを演じたのがマーロン・ブランドで、暗殺指令を米軍から受けた若者がマーティン・シーンだった。今回、初めて原作小説を読んでみると、映画「地獄の黙示録」が原作小説の話の流れをかなり生かしていると感じさせられた。(村上良太)(2012/05/04)


「英国メディア史」の書評・レビュー
 昨年11月、中央公論新社の選書シリーズから、筆者が住む英国のメディアの歴史をまとめた「英国メディア史」を出版する機会を得た。書店に平積みになるような本ではなく、目に付きにくい書籍ではないかと思う。読まれた方がどんな感想をもたれたのかをまとめてみた。(ロンドン=小林恭子)(2012/04/23)


「日本」の良さは、こんなにも 対談『日本を、信じる』を読んで 安原和雄
  瀬戸内寂聴さんとドナルド・キーンさんの対談集『日本を、信じる』は、「読めば元気の出る対談集!」と銘打ってあるだけに含蓄に富む発言、指摘が少なくない。例えば仏教の無常(同じ状態は続かないで変化すること)観である。日本人の多くは無常をマイナス志向で捉えやすいが、本来は積極的、肯定的なプラス志向の意味も含んでいる。悲劇をもたらした東日本大震災から復興・再生への変化はプラス志向の具体例である。(2012/04/16)


NHKBS1「企業が国を訴える〜エルサルバドル 自由貿易協定を巡る攻防〜」 多国籍企業と国の紛争
  TPPに日本も参加するべきかどうかで昨年来揺れている。自由貿易協定が世界的な広がりをみせる中、急増しているのが多国籍企業と現地国の間の法律紛争だ。自由貿易協定には「ISD条項」が書き入れられることが多い。このISD条項はグローバル企業が現地国の恣意的な規制などで損害を被った場合に国際的な調停機関に損害賠償や救済措置を求めて訴えることができる条項である。4月21日にNHKBS1で放送する「企業が国を訴える〜エルサルバドル 自由貿易協定を巡る攻防〜」はまさに多国籍企業と国家とのぶつかりあいを描いている。放送: 4月21日(土)22:00〜22:49、再放送: 4月22日(日)20:00〜20:49(2012/04/15)


今夜放送「嘆きのギリシア〜700ユーロ世代の真実〜」NHKBS1
  11年前、EUの共通通貨ユーロ導入を機に、外国から大量の資金が流れこみバブル経済に突入していったギリシャに、多額の債務が発覚したのは3年前のことだ。その債務の多くは、使途不明金。「僕らが返済する借金は、いったい誰が何に使ったものなのか!」700ユーロ世代が、債務の開示を求めて、立ち上がった。 (2012/04/14)


ミュージカル「カルテット!」  鬼塚忠
  この一年間、奇跡に奇跡が重なりました。名もない私の書いた小説「カルテット!」(河出書房新社)が、音楽劇になり、映画になり、ついには、なんとミュージカルになりました。小さな作品でも大切に育てればこのようになると証明できたようで嬉しいです。(2012/04/13)


ザ・ノンフィクション「花嫁のれん物語3」 井上秀明(編集)
  お元気でしょうか?風が強く、空気が冷たい日々ですが、景色はすっかり春です。市ヶ谷の桜も今週が見頃と言ったところでしょうか。さて、明日ですが、私が編集を担当致しました番組が放送されます。フジテレビ、午後2時から。ザ・ノンフィクション「花嫁のれん物語3」です。(2012/04/07)


行き詰まった資本主義の変革へ 『資本主義以後の世界』を読んで 安原和雄
  中谷巌著『資本主義以後の世界 日本は「文明の転換」を主導できるか』(徳間書店・2012年2月刊)が話題を呼んでいる。行き詰まった資本主義の変革は不可避と問いかけているからである。資本主義の行方をめぐる論議は日本に限らない。欧米でも資本主義そのものへの不信が広がりつつあり、資本主義をどう変革するかに関心が寄せられている。(2012/04/05)


西サハラを撮影したメキシコの写真家、フリオ・アダムス
  昨年暮れ、平田伊都子氏ら日本の取材班が西サハラに入った。その模様は日刊ベリタの平田氏のレポートにくわしく記されているが、モロッコが占領したために国を追われた西サハラの難民やモロッコの占領下に生きる人々が4年に一度集まり、4年間の総括と新たな大統領などの選挙を行うのである。もともと西サハラの宗主国だったスペインはもちろんのこと、フランスやロシア、メキシコ、東欧など世界中から記者や写真家が集まってきた。メキシコの写真家、フリオ・アダムス(Julio Adams)氏もその一人である。(村上良太)(2012/03/29)


「American Teacher( アメリカの教師)」  公教育をテーマにした米ドキュメンタリー
  日本で教師が心を病んだり、燃え尽きたりしているという話を聞くようになってかなりの時間が経った。それは日本特有の現象かと思っていたが、アメリカでも同様の事態があるようだ。2011年に完成されたドキュメンタリー映画「American Teacher(アメリカの教師)」は公教育の場で本来やる気もあり、優れた資質を持つ教師たちがいかに疲弊しているか、その実情を描いたものらしい。(2012/03/25)


肥田舜太郎著『内部被曝』 (扶桑社新書)  解説・竹野内真理
 じわじわと命を蝕む、低線量・内部被曝の恐怖。67年にわたって原爆被ばく者6000人以上を診察、「低線量・内部被曝」の恐怖を訴え続けてきた医師が警告する、福島第一原発事故後初の著書。(2012/03/20)


「アメリカ・ジャーナリズム」(下山進著 丸善ライブラリー)
  文藝春秋社で雑誌の記者をしていた下山進氏は1992年、モービルフェローの奨学生となり、ニューヨークのコロンビア大学ジャーナリズム科に学んだ。現役ジャーナリストとしてある研究テーマを追いかけるための資金を得たのである。下山氏が選んだテーマは3つ。.▲瓮螢のメディアの経営的な基盤 ▲Εーターゲート報道以降のアメリカの調査報道 真実と人権のバランスをどうとっているか。アメリカの報道がどう変化していたか。米社会全体がどう変貌しつつあったかがこの本から見えてくる。(2012/03/18)


特集・小川伸介と小川プロダクション
今日、東京・御茶ノ水のアテネフランセ文化センターにて、小川プロの「三里塚・辺田部落」を観てきました。ずーっと観たいと想いつつ、今まで観られなかった作品です。今、同センターでは「特集・小川伸介と小川プロダクション」を3月31日まで上映しています。(原村政樹)(2012/03/17)


ハフィントンポストのフランス語版 ロシアの反体制アーチストを紹介
  最近、ルモンドと提携してフランス語版をウェブで立ち上げたばかりのハフィントンポストに反プーチンのストリートアーチストが取り上げられている。男の名前はP183だ。(2012/03/05)


監督のマイケル・マンがドキュメンタリー番組シリーズ制作へ(ケーブルテレビのHBO) 〜テーマは若き戦場カメラマン〜
  「ヒート」や「インサイダー」などのハリウッド映画の名匠、マイケル・マン監督がケーブルテレビ局HBOで新しいドキュメンタリーシリーズ制作に乗り出す。テーマは戦場カメラマンだ。(2012/03/04)


「原発ゼロ」を求めて行動するとき あの「3.11」を境にして想うこと 安原和雄
  あの「3.11」から丸一年となる。どういう想いで迎えたらいいのか。僧侶・瀬戸内寂聴と作家・さだまさしの対談を読んで感じるのは、日本再生のためにはやはり「原発ゼロ」を求めて行動するほかないということだ。二人の対談は、日本人はなぜ辛いときに笑うのか、身代わりに命を捧げてくれた犠牲者たちに感謝すること、命や心など目に見えないものこそ大切であること、反対なら声を上げて行動するとき―など望ましい日本人論のすすめともなっている(2012/03/04)


ニューヨークの娼婦たち ’Through a Lens, Views of Bronx Streets’〜ニューヨークタイムズが映像配信〜
  ニューヨークタイムズがウェブで映像をUPしている。ニューヨークのブロンクスの街娼を撮影したものがこの映像だ。(2012/02/23)


『死刑を免れた男たち〜無期懲役囚の実態』
  桜映画社の原村です。先日、ドキュメンタリー映画「牛山純一」を観に行った折、上映後のトークで出演された秋山さんと知り合い、さっそく番組のお知らせがありました。とても興味深い内容に思え、お知らせ致します。(ディレクター 原村政樹)(2012/02/18)


ドキュメンタリー映画「テレビに挑戦した男 牛山純一」 原村政樹
  桜映画社の原村です。ドキュメンタリー映画「テレビに挑戦した男 牛山純一」のご紹介です。(2012/02/15)


NNNドキュメント’12 「放射線を浴びたX年後 ビキニ水爆実験、そして・・・」が放送されて
   1月29日(日)24:50〜日本テレビ系NNNドキュメント’12で、「放射線を浴びたX年後 ビキニ水爆実験、そして・・・」(制作:南海放送)が放送された。このドキュメンタリーは何十年もの歳月が積み重なって生まれた重みが感じられた。それは高知県で高校教師をつとめていた山下正寿さんが被曝の実態を突き止めようとする足取りからくるものだった。放送によれば1954年、米軍は南太平洋のマーシャル諸島で水爆実験を繰り返した。第五福竜丸が被曝したのは最初の「ブラボー」(3月1日)である。続いて「ロメオ」(3月27日)も爆発した。ところが、考えてみると当たり前のことだが、この頃、ほかにも南太平洋にマグロ漁に出かけていた日本の漁船は数多くあった。(2012/01/30)


お茶の時間  
  旅人を迎える時、お茶をわかす。北アフリカのマグレブ地方でも同じである。違うのは大地に近いことだろう。お茶を入れてくれる手さばきは見事である。この歌はトゥアレグ族のバンド「ティナリウェン」(Tinariwen)による。(2012/01/28)


小谷賢著「インテリジェンス」(ちくま学芸文庫)
  小谷賢著「インテリジェンス〜国家・組織は情報をいかに扱うべきか〜」は現代のインテリジェンス組織について包括的にレポートした本です。’インテリジェンス’という言葉は最近、巷に出てくるようになりましたが、細かい断片的なエピソードが多く、その全体像について書かれた本はあまりなかったと思います。そういう意味で貴重な1冊です。構成は以下のようになっています。(2012/01/28)


ハイビジョン特集『1/24秒に命を吹き込む 人形アニメーション作家川本喜八郎の世界』
  世界的な人形アニメーション作家、川本喜八郎の遺作となった折口信夫の映画「死者の書」制作過程を追った番組で、普通には見られない、特殊な人形アニメーションの世界、とても興味深い内容です。2回の放送です。ご覧いただければ幸いです。(ドキュメンタリー映画監督・原村政樹)(2012/01/26)


「保険化する社会福祉」への対抗構想を示す
 『保険化する社会福祉と対抗構想〈オルタナティブ〉―「改正」された障害者・高齢者の法と社会保障・税一体改革』。「社会保障と税の一体改革」という言葉が、野田政権の進める増税路線に乗って広がっている。そこには肝心のあるべき社会保障の姿は見当たらない。本書は、福祉サービスから排除される障害者や高齢者の視点から、あるべき社会保障のあり方などの対抗構想をまとめたものである。著者は伊藤周平(いとう・しゅうへい)鹿児島大学法科大学院教授。(日刊ベリタ編集部)(2012/01/26)


Eテレ「日本人は何を考えてきたのか  第3回 森と水と共に生きる 〜田中正造と南方熊楠〜」
  「原発事故に立ち向かうコメ農家」の原村政樹ディレクターから。今週末の番組のご案内です。「原発事故と重ね合わせて見たいと思っております」NHK・Eテレ「日本人は何を考えてきたのか」第3回 森と水と共に生きる 〜田中正造と南方熊楠〜1月22日(日)Eテレ22時〜23時30分(2012/01/21)


ドキュメンタリー映画「’’私’’を生きる」 教育現場の言論と思想の統制を描く
  ドキュメンタリー映画監督・原村政樹氏のツイッターから。「長年パレスチナを取材し、映画『沈黙を破る』(2009)でキネマ旬報文化映画部門で第1位になった土井敏邦監督の最新作。 タイトルは『”私”を生きる』。」(2012/01/18)


五木寛之著『下山の思想』を読んで 変革を迫られる「登頂」後の生き方 安原和雄
  『下山の思想』に次の指摘がある。私たちは、すでにこの国が、そして世界が病んでおり、急激に崩壊へと向かいつつあることを肌で感じている。それでいて、知らないふりをして暮らしている、と。この認識は大部分は真実と認めないわけにはゆかない。ではこの現実にどう立ち向かうのか。登山にたとえれば、21世紀のこの時代は従来の登山重視の時代から下山重視の時代へと大転換を遂げつつある。(2012/01/14)


対談「ひとり女子旅のススメ」 〜原点は旅にあり〜
   ノンフィクション作家の長谷川まり子氏はネパールからインドの売春宿に売り飛ばされた少女たちの人身売買被害と彼女たちが救出された後の人生を長期間にわたってルポしてきた。また、彼女たちを支援するNGO「ラリグラス・ジャパン」を日本で立ち上げ、その活動も活発に行っている。そんな長谷川さんは今月27日、女性の一人旅をテーマに対談を行う。長谷川さんの原点は旅にあるという。(2012/01/12)


韓国現代戯曲「荷(チム)」(作:鄭福根)を上演 演出は坂手洋二氏 
  東京・練馬に拠点を持つ東京演劇アンサンブルでは今年2月24日から3月4日まで韓国の現代戯曲「荷」を上演する。演出は坂手洋二氏。以下は同劇団のニュースレターから。「東京演劇アンサンブル2012年のスタートは、韓国演劇界のベテラン女性作家・鄭福根さんが書いた『荷』を日本初上演します。彼女との出会いは、2009年3月。シアタートラムで行われた日韓演劇交流センターによる「韓国現代戯曲ドラマリーディング」でのことです。」(2012/01/10)


「コルタサル短篇集」 (木村榮一訳 岩波文庫) 
  アルゼンチン出身で長くパリで暮らした作家フリオ・コルタサル(Julio Cortazar,1914-1984)には「石蹴り遊び」という何通りもの読み方を選択できる独創的な長編小説があるが、短編小説の名手でもある。コルタサルは現実と幻想が交錯する話をいくつも書いている。遠く離れた時代が交錯したり、夢と現実が交錯したり、静止しているはずの写真が動き出したりする。こうした小説は映画と親和性が高い。その延長線上に短編「南部高速道路」がある。この話はまさに3・11以後の日本を描いた作品のように読める。(村上良太)(2012/01/05)


スペインの漫画から 「去年4回笑ったのはなぜだ?」
  スペインの新聞エル・パイスにフォルヘス(Forges)がこんな一枚を描いている。(2012/01/03)


ベルベル人の心を歌うイディール(Idir) 〜昔話 A Vava Inouva〜
  ベルベル(Berber)人という名称は遠い昔、世界史の時間に一度か二度耳にしたくらいで、その実像はまったく未知の民族だった。ベルベル人は北アフリカに古来から住み、ベルベル語なる言語を話す。人種的にはコーカソイド、つまりは白人に属するようである。ベルベル人には何人もの優れた歌手が出ているが、その一人がイディール(Idir)である。僕が聞いたのはイディールがアコースティックギターを奏でながら弾き語る「アヴァヴァ・イヌーヴァ(A Vava Inouva)」というタイトルの歌だった。1976年に歌ったこの歌でイディールは一躍フランスをはじめ世界に名前が知られるようになったそうである。(2012/01/02)


アジアの時代を予感させる米パロディ短編映画監督フレディー・ワン  
   ユーチューブに2つのチャンネルを持つ中国系アメリカ人の映画監督フレディー・ワン(Freddie Wong)。その映像はハリウッド製の戦争アクション映画やカンフー映画をパロディにしたもので、20代のワン監督自身がコミカルな演技を繰り広げている。どこにでもいそうな東アジア人の風貌で、特段ハンサムと言うわけでもないが、どこか憎めないキャラクターである。その映像の多くが数百万アクセスを記録しているように、一定の人気を誇っているようだ。(村上良太)(2012/01/01)


リチャード・メラン・バーサム著「ノンフィクション映像史」 山谷哲夫・中野達司訳
 リチャード・メラン・バーサム(Richard Meran Barsam)著「ノンフィクション映像史(Nonfiction Film)」には冒頭、ドキュメンタリー映画の定義が出てくる。「(ドキュメンタリーとは)人間の知識と理解に対する欲求を刺激し、拡大させ、経済、文化、そして人間関係の分野の問題をありのままに提示することを目的として、理性に、あるいは感情に訴えるために、現実の実写、またはまじめで正当な再構成を持って、セルロイド上に記録するすべての方法を意味する。」これは1948年に「世界ドキュメンタリー映画連盟」によって定義されたものだそうだ。(2011/12/29)


今週放送「シリーズ・ソ連崩壊から20年〜光なき孤児・東欧の小国の悲劇」
  以前、日刊ベリタで紹介させていただきましたテレビ編集者の井上秀明さんから新作の案内が届きました。NHK-BS1 「ドキュメンタリーWAVE」〜シリーズ ソ連邦崩壊から20年〜 (2011/12/26)


ピエール・ブルデュー編 「世界の悲惨」(La misere du monde)
  フランスの哲学者・社会学者ピエール・ブルデュー(Peirre Bourdieu 1930-2002)が亡くなったのは今からおよそ10年前の2002年1月のことだ。2001年9月に同時多発テロが起きた直後から、小生はフランス語の勉強を始めたのだが、その頃、フランスの思想界ではブルデューがリーダーだった。しかし、2002年6月に初めてパリの地を踏んだ時、ブルデューはすでにこの世の人ではなかったことを書店の追悼ポスターで知った。「去る者は日々に疎し」ということわざがある通り、ブルデューの死は早すぎたのではないか、と思えてならない。フランスにとってばかりでなく、世界にとってもである。今、小生が個人的に最も興味を持っているのはブルデューが1993年に出版した「世界の悲惨」(La misere du monde)と題する<聞き書き>である。(村上良太)(2011/12/26)


この地に生きる百姓の思いを描いたテレビドキュメンタリー「原発事故に立ち向かうコメ農家」  大野和興
 なにかと批判の多い既成メディアだが、日曜夜10時の教育テレビという地味な時間帯で思いがけない掘り出しものにぶつかる。この映像は、既成メディアは信用できないとレッテルを張る脱原発運動のインターネット情報が持っているある種のゆがみを照らし出していると、テレビを見ながら感じた。そのゆがみとは、「おれだって逃げたいよ。だけど逃げられないよな」という、「その地に生きる」ことを選択した、あるいは選択せざるを得ない人たちの声や思いに対する無視あるいは見てみぬふりである。(本文から)(2011/12/25)


永井浩著「見えないアジアを報道する」(晶文社)   
  アジアとは何か、考えると難しい。ヨーロッパに比べると、アジアは一筋縄でいかないように思われる。80年代に「地球の歩き方」というガイドブックが出版され、円高を背景に海外旅行のブームが起きた時、発展途上国の、あるいはもっと直裁に言えば貧困だったアジア諸国を好んで旅する若者が少なくなかった。ところが僕にはそのような志向がまったくなかった。テレビの仕事に関係する人々の中で僕の知っている人々にもアジアにこだわってきた人が少なくない。(村上良太)(2011/12/07)


「巨大種子企業に立ち向かうカナダの一農民」 〜米報道番組「デモクラシー・ナウ!」から〜遺伝子組み換え種子を売る企業の恐るべき実態 
  遺伝子組み換え技術は世界の貧困を救うための素晴らしい夢の事業ではないのか?企業の宣伝を読めば誰しもそんな風に思えるだろう。しかし、そうした企業の人間の振る舞いを見ると、企業の本質が見えるものである。きれいごととは違った顔がそこに透けて見えることもある。米報道番組「デモクラシー・ナウ!」に米モンサント社と一人で戦ったカナダの農民が登場した。その農民は脅しにも屈せず戦い続け、ついに勝利を勝ち取った。(2011/12/03)


セックス依存症を描く映画「恥」  スティーブ・マックイーン監督の新作
  ニューヨークタイムズに映画「恥」(Shame)の紹介記事が出ている。「恥」のテーマはセックス依存症である。主演はマイケル・ファスベンダー(Michael Fassbender)だ。ポルノを見ながらオナニーしている貧困で寂しい男の役ではない。金持ちでハンサムな青年という設定になっている。(2011/12/03)


「AP記事が暴露 米原子力規制委員会が業界と共謀して安全基準の緩和に動く」〜デモクラシー・ナウ!から〜
  米報道番組「デモクラシー・ナウ!」でアメリカの原子力業界の問題点が報じられた。番組は次のような報道を行っている。「AP通信の連載企画記事“Aging Nukes”(老朽化する原子力発電所)(2011年6月20日から28日にかけて配信)は、業界となれ合い状態にある米国の原子力規制、放射性物質の漏出、漏出の実態調査の不備など、お寒い状況を明らかにしました。記事を執筆したジェフ・ドン記者が連載の渦中にデモクラシー・ナウ!に登場です。」(2011/12/02)


NHKスペシャル「証言記録 日本人の戦争」  3日(土)夜から二夜連続 
NHK総合・NHKスペシャル「証言記録 日本人の戦争」明日夜から二夜連続。「太平洋戦争開戦から70年。NHKは、戦争体験者の証言を4年にわたり収集してきた。その数は、元将兵や市民を合わせ、800人以上にのぼる。第1回は、常時数十万を超える大量の兵力が動員された“大陸”を舞台に、日本人が国を挙げて邁進した“昭和の戦争”の実像を証言で記録する。」(2011/12/02)


放送案内「原発事故に立ち向かう農家」 〜今度の日曜放送予定〜
  有機農業に取り組む人々を長年取材してきた原村政樹ディレクターから新作の案内です。NHK・ETV特集「原発事故に立ち向かう農家」今度の日曜夜の放送予定です。(2011/11/29)


リング・ラードナー著「アリバイ・アイク」(新潮文庫)
  アメリカの作家リング・ラードナー(Ring Lardner,1885-1933) は短編小説の名手として名高い。もともと新聞のスポーツ記者だったこともあって、野球をモチーフにした物語が冴えている。ラードナーの作品集は日本でも翻訳が出ていて、身近なところでは新潮文庫の「アリバイ・アイク」(加島祥造訳)がある。しかし、近年、町の小さな書店で棚に置かれているのを見たためしがないのを淋しく思う。ラードナーは消費期限が切れた御用済み作家とでも言うのだろうか。(2011/11/27)


貝塚茂樹訳注 「論語」(中公文庫)
  中国の古典「論語」については日本でも多数の翻訳書や解説書が出ている。それぞれ特色があるが、読者の好みも様々にあるのではないだろうか。しかし、一般に「論語」を手にする機会はそれほどない。若い世代にとっては小難しい説教集に思え、わざわざそれを手に取って読んでやろうという気になるのは難しいのではないだろうか。筆者もそもそも漢文に興味がなかったこともあって、「論語」は遠い書物でしかなかった。(2011/11/19)


渡辺一夫評論選  「狂気について」
 ラブレーの研究などで知られる渡辺一夫の評論集「狂気について」(岩波文庫)の中に、「寛容(トレランス)は不寛容(アントレランス)に対して不寛容(アントレラン)になるべきか」と題する評論が納められている。この寛容と不寛容の問題の重要性が世界でクローズアップされてきているように思われる。そこには宗教が関係している。(2011/11/17)


アリエル・ドーフマン作 「死と乙女」
  今年8月18日、チリでは1973年9月11日にピノチェト将軍が起こしたチリクーデターによって人権侵害を受けた人の報告書がピニエラ大統領に手渡された。これは1990年に調査が開始され、1991年2月に報告書がまとめられたレティグ委員会(真相と和解委員会)が作成したレティグ報告書とは別で、調査委員会のレーダーの名前をとってValech報告書と呼ばれている。ちなみに1991年のレティグ報告書では3550ケースの告発が寄せられ、そのうち2296ケースを調査した。その結果、2279人が殺害ないしは行方不明と認定された。(2011/11/13)


伊藤元重著「入門 経済学」(日本評論社)
  伊藤元重東大教授が書き下ろした経済学の入門書「入門 経済学」は画期的な本である。筆者は経済学が専門ではないが、そうした人間にとって非常にわかりやすい理論書だと感じさせられた。この本の魅力は現実の事例を豊富に紹介しながら、理論を説くところにある。それまでの数式や理論先行型の経済学のテキストにはない面白さがあったのである。最近ではそうした現実から説き起こすタイプの経済学のテキストも増えてきたが、本書が世に出たのは1988年であり、そうした試みの最初ではなかったろうか。伊藤氏はその意図をこう書いている。(2011/11/11)


アレッサンドロ・バリッコ著「イリアス〜トロイで戦った英雄たちの物語〜」
  「イリアス」はもともとは古代ギリシア時代にホメロスが語った詩から構成された戦争の物語である。近年、ブラッド・ピットが英雄アキレスを演じたハリウッド映画「トロイ」のもとになった物語と言った方が早いかもしれない。ギリシアの連合軍が難攻不落だったトロイアをついに陥落させる話である。しかし、攻めるギリシアの軍勢もアキレスをはじめとして英雄たちは次々と命を失っていく。この話を現代イタリアの作家アレッサンドロ・バリッコ(Alessandro Baricco)が脚色して現代に蘇らせようとした。劇場で全編朗読したら40時間もかかってしまう話をテンポアップし、普通の劇の長さまで刈り込んだのである。そして実際に2004年にローマとトリノで朗読劇として上演された。なぜ、そんなことをしたのか?バリッコはその動機をあとがきに付されている「もうひとつの美―戦争についての覚書」の中でこう記している。(2011/11/08)


高垣敏博著「食のスペイン語」(東洋書店)
  「食のスペイン語」は昨秋出版された本です。新刊というと、せいぜい1〜2カ月のスパンで考える人も多いでしょうが、ここではあえて過去30年分くらいは新刊と考えたいと思っております。著者の高垣敏博氏は東京外国語大学大学院教授です。取り上げられているスペイン語会話は食にに関するものばかりです。読んでいるうちに元気になってくる本です。(2011/11/02)


来週火曜夜放送 「野菜をどう選べばいいのか?〜見直され始めた八百屋の存在〜」
  日本の農業問題を長年取材してきた原村政樹氏(ディレクター、プロデューサー)から放送案内が届いた。番組はテレビ東京のドキュメンタリー「ガイアの夜明け」の特集「野菜をどう選べばいいのか? 〜見直され始めた八百屋の存在〜」で来週火曜夜10時からの放送となる。(2011/10/28)


パリの秋は文学賞の季節  漫画「ゴンクール賞への道」
  秋はフランスでは文学賞の季節。日本の芥川賞に匹敵する文学賞はゴンクール賞である。「1903年より毎年アカデミー・ゴンクールの10人の会員によってパリ2区にあるミシュラン一つ星レストラン「ドルアン」(Drouant)で11月に選考・発表が行われる。」(ウィキペディア)さて、文学賞の季節に合わせて、Cornelius出版から出るのが「ゴンクール賞への道」なる漫画。本日(10月27日)フランスの書店に並ぶ。まさに受賞発表の1週間前にあたる。(2011/10/27)


エフライム・カム(Ephraim Kam)著 「奇襲攻撃(Surprise Attack)〜攻撃された側から見る〜」    村上良太
  エフライム・カム(Ephraim Kam)著「奇襲攻撃(Surprise Attack 〜The Victim's Perspective〜」は第二次大戦から現代にかけて行われた奇襲攻撃について分析した戦略の本である。出版社はアメリカのHarvardだ。そして、著者はイスラエル軍の戦略シンクタンク,Jaffee Center for Strategic Studies に勤務する戦略家である。(2011/10/26)


ワレーリイ・フォーキン監督「変身」   村上良太
カフカの「変身」がロシアの監督ワレーリィ・フォーキンによって映画化されている。フォーキンは演劇界の演出家である。このDVDを手にした時、最初に思ったことはグレーゴルが何に変わったのか?ということだった。(2011/10/24)


イラク撤退とノーベル賞 エル・パイスの漫画から
   オバマ大統領が年内に米軍をイラクから完全に撤退させると発表した。駐留期限が今年いっぱいだからだ。現在、約4万人の米兵がイラクに存在している。スペインの新聞、エル・パイスにはオバマ大統領を皮肉った漫画が出ていた。(2011/10/22)


絵本作家エリック・カール 2  「頭から足指まで」
  エリック・カール(Eric Carle)には「頭から足指まで(From Head to Toe)」という風変わりな一冊がある。様々な動物たちが少年少女たちに「これ、できる?」と自分の特徴的なポーズをとって見せる。子供たちは「できるできる」と、同じポーズをとって見せる。(村上良太)(2011/10/20)


エリック・カール作 「小さな雲(Little Cloud)」
  絵本作家エリック・カール(Eric Carle)の代表作は「はらぺこあおむし」と言われている。青虫が毎日、葉っぱから、果実さらにはお菓子の類まで食べてお腹をこわしたりするが、たくさん食べることでさなぎになり、蝶になる。それだけのシンプルな話だが、エリック・カールの絵には独特のユーモアと技巧があり、読者を魅了せずにはいない。だが、今、ここで書きたいのはもっと地味な作品である。題は「小さな雲(Little Cloud)」だ。(村上良太)(2011/10/17)


アル・パチーノ監督の映画「リチャードを探して」   最良のシェイクスピア入門
  俳優のアル・パチーノ(1940-)は40代に干された長い時代があった。「ゴッドファーザー」や「スケアクロウ」で押しも押されぬスターになったにも関わらず、毎回今一歩のところでアカデミー賞が取れず、やがて賞狙いの大げさな演技という悪名を受けたことが干された理由だという。その後、1992年の「セント・オブ・ウーマン」で完全復活を遂げるまで、パチーノは舞台でシェイクスピア劇に取り組んでいた。後に彼はシェイクスピアの「リチャード三世」の上演に取り組むドキュメンタリー映画を監督する。これは最良のシェイクスピア入門になっている。(2011/10/02)


ロアルド・ダール作「予期せざる話」(Tales of the unexpected)
    英国の作家、ロアルド・ダールの短編小説は「奇妙な味」の物語としばしば言われる。意外な結末に味がある。しかし、そこに至る用意周到な話の運びもうまい。日本では田村隆一訳の短編集「あなたに似た人」や開高健訳「キス・キス」などがある。しかし、残念ながら近年、町の書店からロアルド・ダールの作品は姿を消しつつある。今回、およそ20年ぶりに原書を買って読み直してみた。(2011/09/29)


歴史紀行「都市ヴェネツィア」 ( F・ブローデル )
「シャイロック」という芝居について書いた時、その戯曲が「ヴェニスの商人」を翻案したものだったことがあって、ヴェニス(ヴェネツィア)という言葉に敏感になっていたのだろう。書店でフェルナン・ブローデルの「都市ヴェネツィア」(岩波書店)という本に出会った。この本はフランス・アナール派の泰斗による歴史紀行というだけでなく、フォルコ・クイリーチによる詩情あふれる写真が多数つけられており、それも魅力になっている。(村上良太)(2011/09/15)


東京演劇アンサンブル公演「シャイロック」(アーノルド・ウェスカー作)
  英国の劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた戯曲「シャイロック」が今週金曜から東京演劇アンサンブルによって上演される。シャイロックはシェイクスピアの戯曲「ヴェニスの商人」に登場するユダヤ人の金貸しの名前である。ご存じの方が多いだろうが、金の亡者の代名詞である。一方、「ヴェニスの商人」を改作したウェスカーはユダヤ系である。不愉快だったろう。そこで、ユダヤ人劇作家からこの芝居を見るとこう見える、というのがこの「シャイロック」である。だから、この劇はシェイクスピアとウェスカーの決闘という風にとらえたい。(2011/09/06)


水爆と深海の怪物 〜「それは海の底からやって来た」〜 村上良太
  核実験によって巨大な怪物が生み出される。これは日本が誇る怪獣映画「ゴジラ」のアイデアである。ゴジラが初めて上映されたのはウィキペディアによると、1954年11月3日だ。同年3月1日、米軍がマーシャル諸島のビキニ環礁で行った水爆実験で日本の第五福竜丸が被曝している。この悲惨な事件から8か月後に「ゴジラ」が上映されているのだから、当時の日本の映画製作者たちの感性とパワーに驚かざるを得ない。「ゴジラ」のようなメジャーにこそならなかったが、アメリカでも水爆実験の恐怖をモチーフにした怪獣映画が作られている。1955年に公開された「It came from beneath the sea」である。(2011/09/06)


フアン・ルルフォ著 「ペドロ・パラモ」
1980年にスペイン語圏の作家と批評家100人あまりにアンケートが行われた。「ラテンアメリカ文学の最良の作品は何か?」という問いに、トップの座を分かち合ったのがメキシコの作家、フアン・ルルフォ(Juan Rulfo, 1918-1986)の「ペドロ・パラモ」とガルシア・マルケスの「百年の孤独」だった。「百年の孤独」についてはあまりにも有名で誰でも知っているだろうが、「ペドロ・パラモ」はどうか?(村上良太)(2011/08/31)


カンブリア宮殿「古材を使った家造り」〜原村政樹ディレクターの取材から〜
 日刊ベリタで取材させていただいたことのある原村政樹ディレクターから番組案内が届きました。9月1日(木)夜10時から、テレビ東京・カンブリア宮殿「古材を使った家造り」。番組では古材の活用を手がけている古材倉庫グループ、井上幸一代表が登場。愛媛の木材店の跡継ぎだった井上氏は貴重な材木を30年もたたないうちに使い捨てる戦後日本の住宅文化に疑問を持ったといいます。果たして井上氏の挑戦とは?(2011/08/28)


『脱「国際協力」―開発と平和構築を超えて』  藤岡美恵子・越田清和・中野憲志編
  本書は、既刊の「国際協力」本のほとんどが、各国政府やNGOがどんな「国際協力」を行い、そこにどんな問題があるかいついて書かれたものであるのに対し、「国際協力」そのものをもう一度きちんと考え直すという本です。あるべき「国際協力論」を論じるというより、「国際協力」の政策と実践が、どのような政治、思考、イデオロギー、言説に支えられ、生み出されているかに焦点をあてています。(越田清和)(2011/08/17)


【OCHLOS(オクロス)通信】高木仁三郎『プルトニュームの恐怖』を読んで  崔 勝久
  岩波新書のこの本は第一版が1981年で、2011年の5月には25版がでています。そんなに易しい本ではありませんが、プルトニュームにターゲットを絞りながら、巨大化した科学の実態を取り上げ、もはや専門家と一般の人の間どころか、専門家同士でも通じないくらい分野が拡がり、原子力は人間の手には負えなくなったことを静かなタッチで書いています。(2011/08/09)


語学に再挑戦 3    村上良太
  去年の8月半ば、「語学に再挑戦2」と題する文章でスペイン語の勉強を始めた経緯を書きました。2年間でスペイン語の新聞が読めるようになろうというのがわが目標。勉強を始めたのが一昨年ですから、丁度2年がたちました。さて、その成果は?(2011/08/07)


『山びこ学校』を読み返す  改めて「貧しさ」と「豊かさ」を考えてみた  大野和興
  暴走中の原発がある福島県浜通りの村々を語るとき、多くの人が「貧しさが原発を呼んだ」という。そうした言葉の背景には、成長や開発、モノとカネがあることが「豊か」なのだという価値観がある。その価値観を疑うことからしか、原発被災地を含む地域の再構成はありえないのではない、という問題意識にずっととらわれている。敗戦直後の東北のムラの「貧しさ」を子どもたちの目で記録した『山びこ学校』を改めて読みなおしてみた。(2011/08/06)


保守派のユニークな「脱原発」論 日本こそが世界に先駆けて全廃を 安原和雄
  脱原発論が急速に広がりつつあるが、保守派の脱原発論は稀少価値といえるのではないか。その人物が旧皇族出身となると、興味が湧いてくる。しかも「3.11」後に脱原発派に宗旨替えしたのではなく、若い高校生の頃からだというから、筋金入りである。脱原発の理由として<原発には「和」と「愛」がない>を強調しているところもなかなかユニークであり、並ではない。といっても精神論に終始しているわけではない。原発に関する五つの「嘘」を解明し、<日本こそが世界に先駆けて全廃を>と呼びかけ、原発全廃へのシナリオを具体的に描いている。(2011/07/24)


伊藤千尋著「反米大陸」 その2 チアパスの蜂起
  伊藤千尋氏は「反米大陸」の中で、1994年1月にメキシコで起きた先住民の武装蜂起について語っている。いわゆる「チアパスの蜂起」のことだ。チアパスはメキシコの南部でグアテマラとの国境に位置する。蜂起したのはスペインの植民地時代から虐げられてきたマヤ民族の末裔たちだった。その発端はアメリカが音頭を取って実現しようとした自由貿易地域構想にあった。(2011/07/22)


伊藤千尋著「反米大陸」から もうひとつの9・11 チリ・クーデター
  中南米で9・11と聞くと1973年9月11日のことだと考える人も多いという。この日、チリの大統領官邸がピノチェット将軍の率いるクーデター軍に攻撃され、以後、1990年まで軍事独裁時代が続くことになったからだ。伊藤千尋著「反米大陸」(集英社新書)によれば、左派人民連合のアジェンデ大統領は官邸からラジオ放送で「アジェンデは降伏しない。チリは降伏しない」と宣言し、大統領警護隊とともに機関銃を手に戦った。(2011/07/22)


【たんぽぽ舎原発情報】おかしな放射能関連本もベストセラーに  みんなでアマゾンに書評を書こう  竹野内真理(翻訳者・フリーライター)
  アマゾンを見ると様々な原発・放射能関連本が売れており、良書も多くありますが、中にはとても怪しい理論を振りかざした本が見受けられます。そして始末が悪いのが、そのような本も売れてしまっていることです。(たんぽぽ舎「地震と原発事故情報」その123から)(2011/07/20)


映画「光のほうへ」を観て
 デンマーク出身のトマス・ヴィンターベア監督が撮った「光のほうへ」を観て感じたことを記してみます。(川北かおり=ニューズマグ)(2011/07/15)


燐光群の芝居「推進派」を見て −浮かび上がる原発事故後の日本の現実
 燐光群の芝居「推進派」(作・演出 坂手洋二)を伊丹アイホールで見た。冒頭、二人の男女がお互いを知るために自己紹介が必要か?という「議論」によって、結果的に「互いを知る」というパラドックスが提示されることで、どこのだれか互いに知らなくとも、同じ土地に暮らし、同じ空気を吸うことだけで、そこで起こるあらゆることに「無関係ではいられない」という原発事故後の日本の現実が浮かびあがる。(川北かおり=ニューズマグ)(2011/07/07)


薪炭の里から犖業瓩悄 ゞ疇9男『貧しさからの解放』を読み返す  大野和興
  「昭和」で言うと20年代、アジア太平洋戦争でドイツやイタリアと組んで侵略国側を演じた日本が負け、民主化の熱気が社会の各層に残っていた時代、農村でも青年や女性が主役の「農村民主化運動」が広がっていた。主役は「家からの解放」と「貧困からの解放」であった。後者を掲げた歴史的な出版物が2冊、1950年代に刊行された。『山びこ学校』と『貧しさからの解放』。2冊とも、日本の戦後出版史を飾るベストセラーとなった。日本の出版メディアは「農村の貧困」をどう伝えたか、『貧しさからの解放』を読み返した。(2011/07/03)


「核時代を生きる」その2   原発が攻撃されたら
  高木仁三郎氏の「核時代を生きる〜生活思想としての反核〜」(講談社現代新書 1983年出版)の中に、原発が攻撃された場合の想定が描かれている。もっとも恐ろしいのは再処理工場の高レベル廃液タンクが攻撃を受けた場合である。風向き次第で核戦争と同じ惨状がもたらされることになる、と高木氏は指摘している。(2011/06/16)


アイドルグループが「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」   
  アイドルグループが歌う「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」がフィーバーしている。歌うのは、、“清く正しく美しく”をモットーにアイドルの王道を行く「制服向上委員会」。かわいく、しかも直球のメッセージを発信している。賞賛する声も多いが、いやがらせも多そうだ。8月15日にシングルC­Dとして発売が決定している。がんばれ! (2011/06/13)


映画「里山の学校」〜もう一度暮らしを考える〜
  日刊ベリタでも紹介したドキュメンタリー映画監督の原村政樹さんから。「7月30日から渋谷のアップリンクというミニシアターで「里山の学校」が一か月間ロードショーされることになりました」(2011/06/12)


欧州のクラシックジャズバンド  
  ディキシーランドジャズを演奏しながら欧州をいくバンド、「ディキシーランド・クラッカージャックス」(Dixieland Crackerjacks)。オランダのバンドだが、ドイツ、フランス、英国、ベルギー、ポルトガルなど欧州各地で演奏してきた。不況の欧州に明るいニューオーリンズジャズを届けている。(2011/06/12)


「力の論理を超えて ル・モンド・ディプロマティーク 1998−2002」
  過去10年で、印象深かった本を1冊あげるとすると、「力の論理を超えて ル・モンド・ディプロマティーク1998−2002」(NTT出版)である。出版されたのは2003年8月だ。この年の春、イラク戦争がはじまり、サダム・フセインの像が引き倒されて一応の終結は見たものの、むしろ米軍が泥沼に陥っていく頃である。僕はこの本を初めて読んだとき、新しい時代が幕をあけた気がした。(村上良太)(2011/06/01)


「世界をめぐる電子ごみ」  地デジ化目前!電子ごみの行方を追ったDVD完成
  地デジ化に対応するため購入されたテレビは2010 年末までに6700 万台。大量のアナログテレビがごみになった。捨てられた後、電子ごみはどこへ行くのか。その行方を追いかけ、国内の中古家電輸出商社、アジアやアフリカの中古家電市場、日本や中国、フィリピンのリサイクル現場などを取材。鉛や水銀などを含む電子ごみは、輸出された先で健康被害や環境汚染を引き起こしていた――。電子ごみの行方を追いかけながら、その背景を追ったDVD「世界をめぐる電子ごみ」の完成を記念し、上映会が開催される。(日刊ベリタ編集部)(2011/04/28)


マルク・デシモ著  「アール・ブリュットの庭」(Les jardins de l'art brut)    村上良太
  マルク・デシモ(Marc Decimo)氏はフランスの美術評論家である。フランスの前衛作家アルフレッド・ジャリの思想を信奉するコレージュ・ドパタフィジックに属し、風変わりな芸術や通念と異なる視点を尊ぶ。それがよく現れた1冊が美術書「アール・ブリュットの庭」である。デシモ氏はおきまりの美術館を後にし、欧州から北米まで庭や街路を歩きながら「fous(フー、狂人)の芸術」を探し求める。(2011/04/21)


ジョレス・メドヴェジェフ著 「チェルノブイリの遺産」 (みすず書房) 
  チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月26日。周辺農民たちにとっては春の作業の季節だった。今、福島第一原発事故を知った上でチェルノブイリの記録をひもとくと、数字の一致に意外な驚きを感じた。30キロ圏と、80キロ圏という避難エリアの数字である。メドヴェジェフ著「チェルノブイリの遺産」は1990年に出版された古い本だが、今読むと身近な話に思えてくる。当時はチェルノブイリ原発事故は遠い他人事に思えていたのだったが。チェルノブイリ原発事故では炉心溶融の後、爆発し、放射性降下物がウクライナ、白ロシア、ロシアなどを汚染した。(2011/04/07)


新聞を読む   鬼塚 忠
  日本の出版エージェントの草分け、鬼塚忠氏。「歌舞伎町裏案内人」の李小牧など多数のライターを発掘し、支援してきた。また「海峡を渡るバイオリン」(陳昌鉉、岡山徹と共著)、「ザ・エージェント」、「Little DJ〜小さな恋の物語」など自らも筆を執る。その情報収集には独特のものがある。今回の寄稿は鬼塚氏の会社「アップルシード・エージェンシー」が出しているメールマガジンから、世界の新聞について。(2011/02/22)


「もし おじいさんが猫になったら」  〜ジャンニ・ロダーリと子どもの話〜
  イタリアの児童文学者ジャンニ・ロダーリ(Gianni Rodari 1920-1980)は最近、再び注目度を上げている。2006年に光文社から「猫とともに去りぬ」(関口英子訳)が出版されたが、大人にも楽しめる愉快な短編集だった。表題作はローマのおじいさんが猫になる話である。最初は家族から相手にされなくなったおじいさんだったが、柵をくぐって猫になってからはローマの廃墟にたむろする人気猫になるという話だった。(村上良太)(2011/01/12)


長谷川まり子著 「がん患者のセックス」(光文社)  
  ノンフィクションライターの長谷川まり子氏が書き下ろした「がん患者のセックス」(光文社)は今まで光の当らなかったがん患者の性の世界に切り込んだ、優れたルポルタージュである。がんにかかったら、性生活も大きな影響を受ける。しかし、どうしたら問題を解決できるのかわからない。相談する相手もいない。これが今までの「がん患者のセックス」だったのだ。(村上良太)(2011/01/05)


「四重苦」を逆手に日本版も軌道に 佐野章二著『ビッグイシューの挑戦』
  ロンドンの小林恭子さんの記事「ホームレスが売るストリート・ペーパーが、世界中で部数増加」に触発されて、この本の紹介をさせていただく。本が発行されたのは6月で半年近く経っているが、多くの人に読んでほしい示唆に富む本である。たんなる挑戦物語ではなく、新雑誌立ち上げ活動を通して日本のホームレス事情の変化なども浮き彫りにされている。(マレーシア=和田等)(2010/11/29)

「パリ・ロンドン放浪記」(ジョージ・オーウェル)
  「1984」や「動物農場」などの傑作を残した英国の作家・批評家・ジャーナリスト、ジョージ・オーウェル(1903-1950)のデビュー作はパリとロンドンでの貧乏生活を描いた「パリ・ロンドン放浪記」である。これは窮乏生活を描いた傑作である。25歳のオーウェルは貧乏生活を断ち切ろうと本気で思えば断ち切ることもできただろう。しかし、偶然、パリで陥った経済的な窮地をネタにルポを書いて一旗挙げてやろう、という自負もあったのではなかろうか。(村上良太)(2010/11/25)


三ツ星シェフによる画期的な料理本 「フライパン1本でできるお手軽フレンチ」
  シェフのダニエル・マルタン氏(Daniel Martin 1952−)は三ツ星料理店だったマキシムの副料理長を勤め、来日後はフランスの名門の料理学校であるル・コルドン・ブルー東京校の校長となった。彼は日本の人々に向けて手軽に作れるフランス料理の本を執筆してくれた。日本では様々なフレンチ料理本が出版されているが、本書は最も実用性が高いものに入る。その最大の売りは「フライパン1本でできる」ところにある。(村上良太)(2010/10/25)


ドン・キホーテ 2  〜24時間朗読マラソン〜   村上良太
  5年前の2005年は「ドン・キホーテ」正編(第一部)の出版400周年だった。その年はスペインのみならず、世界中で様々な「ドン・キホーテ」の記念行事が行われた。中でも極めつけはアメリカ東部、ニュージャージー州のドリュー(Drew)大学で行われたマラソンリーディングだろう。「ドン・キホーテ」正編を10分または20分交代で、代わる代わる24時間ぶっ通しで朗読するのである。(2010/10/11)


映画「ANPO Art x War」 カナダの国際映画祭でも相つぎ上映
  日米安保条約改定から半世紀、安保体制がすっかり日本に根を下し、大多数の日本人はこれによって日本の安全が保障されているという「幻想」に陥っている。しかし、この改定安保が、岸政権の下で、異常な状況下で成立したことを覚えている人も大分少なくなったようである。(バンクーバー=落合栄一郎)(2010/10/07)


内田樹著 「街場のメディア論」(光文社新書)    村上良太
  最近、テレビドキュメンタリーを制作している知人のプロデュサーが内田樹氏に出演を依頼したところ、断られたそうです。「内田さんはテレビ出演は一切断っているんだそうだ」と残念がっていました。今月発売になったばかりの内田樹著「街場のメディア論」(光文社新書)に内田氏がテレビ出演を断るようになった経緯が書かれていました。(2010/08/19)


落合氏の記事が電子書籍に 『アメリカ文明の終焉から持続可能な文明へ』 
  日刊ベリタに落合栄一郎氏(カナダ・バンクーバー在住)が寄稿された記事が、『アメリカ文明の終焉から持続可能な文明へ』と題して電子書籍で出版された。購読は http://www.e-bookland.net/gateway_a/details.aspx?bookid=EBLS10071200&c=80でダウンロードサイトまで行ける。(日刊ベリタ編集部)(2010/08/15)


仏教小説『暴風地帯』(中村敦夫著) 風力発電派と原発派の抗争の果てに 安原和雄
  サスペンス・ミステリーでありながら、その実、読み応えのある仏教小説として描かれている作品が登場した。中村敦夫著『暴風地帯』である。原子力発電廃棄物処分場の誘致派と、再生可能な自然エネルギーの一つ、風力発電の推進派との抗争が作品の筋立てとなっており、突如発生した猟奇殺人事件の謎に主役の僧侶が挑んでいく。少欲知足などの仏教説法も随所に織り込まれており、これまでの多くのサスペンスものとは異質の作品に仕上がっているだけではない。最新の葬式スタイルである自然葬にも触れているところは、葬式仏教で不評を買う仏教界そのものへの警鐘ともなっている。(2010/04/03)


『発禁「中国農民調査」抹殺裁判』が発売へ 農民への武力弾圧の実態をリアルに再現
  中国国内の格差を如実に明らかにした『中国農民調査』(邦訳:文藝春秋)の続編、『発禁「中国農民調査」抹殺裁判』(陳桂棣、春桃著/納村公子、椙田雅美訳/朝日新聞出版)が近日発売されます。党の力を背景に、権力をふりかざす党幹部、腐敗しきった司法の実態、それに果敢に立ち向かう著者そして支援した弁護士たちやマスコミ関係者、上からの大きな力にひるむことのない最下層の弱者、農民。再び実名で描き出された人物は、今日の中国の実像を知るうえで代表的だと言えるだろう。(納村公子)(2009/10/15)


数万人の強制立ち退きと大規模環境破壊を懸念 『ビルマ軍政下のダム計画』 久保忠行
  民主化運動への弾圧をはじめ、ビルマ(ミャンマー)軍事政権による深刻な人権侵害は内外から強い批判を浴びているが、これまでほとんど知られていない人権侵害も少なくない。軍政とタイ政府との間で進められている、サルウィン川での複数の大型水力ダムの建設計画がそのひとつだ。外貨収入を目的としたこの開発によって、3万人の強制立ち退きや大規模な環境破壊などが懸念されている。その実態について、ビルマ情報ネットワークとメコン・ウォッチから『ビルマ軍政下のダム計画』が発行された。日本語訳と監修にあたった久保忠行さんに寄稿いただいた。(ベリタ編集部)(2009/08/21)


スーチーさんの連載への外務省の圧力をはねつける 木戸・元『毎日』主筆が回想録
  気骨ある1人のジャーナリストの存在がいかに大切であるか─。毎日新聞の木戸湊・元主筆の『記者たちよ ハンターになれ!』(新風書房)は、あらためてその事実を確認させてくれる。本書は、40年にわたる記者生活のなかから11のエピソードを取り上げた回想録である。いずれの話も臨場感と迫真力に満ち、胸を打つものが多いが、そのなかから私が毎日新聞記者としてかかわった、ビルマ(ミャンマー)の民主化運動指導者アウンサンスーチーさんの連載「ビルマからの手紙」をめぐる木戸さんの記者魂を紹介したい。(永井浩)(2009/07/26)


大規模近代化農業に未来はない 安田節子『自殺する種子』  安原和雄
  「自殺する種子」とはあまり聞き慣れないが、どういう種子かお分かりだろうか。世にも恐ろしい物語といえば、いささか夏の夜の怪談めくが、現実にそういう種子を武器に使って食の世界を支配しようという企みが進行しつつある。「食の安全」が危うくなってすでに久しいが、うっかりしていると、我が「いのち」がさらに危険にさらされるだけではない。いのちの源である「食」と「農」そのものが、その土台から掘り崩されるという到底容認できない現実に取り囲まれることにもなりかねない。ここで紹介する安田節子(注)著『自殺する種子 ― アグロバイオ企業が食を支配する』(平凡社新書、09年6月刊)はなかなか読み応えのある作品である。(2009/07/04)








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