2013年08月17日13時15分掲載  無料記事
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反戦・平和

松江市教委の『はだしのゲン』閲覧制限の背後に執拗なネトウヨの働きかけがあった

 松江市の教育委員会が原爆の悲惨さとその中で生きていく子どもたちのたくましさを描いた『はだしのゲン』を閉架措置にして閲覧制限をした事件が17日メディアで一斉に報じられた。各紙の報道には、一切触れられていないことがある。市教委がこの措置を取った背景に「市民」から市議会に学校図書室から撤去を求める陳情があったということはふれられているが、その「市民」は松江市民ではなく高知在住の「市民」。問題はこうした一人の特異な人物の言動に振り回される松江市教育委員会そのものにあるといえそうだ。(大野和興) 
 
 高知から松江市議会に陳情した人物のブログがある。 
中島康治と高知市から日本を考える会 
http://ameblo.jp/tinmiena/entry-11593746203.html 
 
 
 これをみると、在日朝鮮・韓国に人たちに「殺せ」「吊るせ」なとどいったヘイトスピーチをぶつけ、さらには原発再稼働や核武装を声高に主張している在特会(在日特権を許さない市民の会)系のレイシスト集団に近い人物だということが分かる。ご本人のプロフィールで近しい人の人物を見ると、その中に在特会会長桜井誠の名前もある。 
 
 まずメディアの報道の一部を紹介する。 
 
 松江市では昨年8月、市民の一部から「間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に出された。同12月、不採択とさ れたが市教委が内容を改めて確認。「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだ け貸し出さないよう口頭で求めた。(毎日8・16) 
 
 市教委によると、描写が残虐と判断したのは、旧日本軍がアジアの人々の首を切り落としたり、銃剣術の的にしたりする場面。子どもたちが自由に見られる状態で図書館に置くのは不適切として、昨年12月の校長会で全巻を書庫などに納める閉架図書にするよう指示したという。 
 現在は作品の貸し出しはしておらず、教員が校内で教材として使うことはできる。市の調査では市立小学校35校、中学校17校のうち、約8割の図書館がはだしのゲンを置いている。 
 はだしのゲンをめぐっては昨年8月、「ありもしない日本軍の蛮行が描かれており、子どもたちに間違った歴史認識を植え付ける」として、小中学校からの作品の撤去を求める陳情が市民から市議会にあった。 (朝日デジタル版8月17日) 
 
 松江市議会教育民生委員会はこの陳情を全会一致で不採択としたが、一部の教育委員から「大変過激な文章や絵があり、教育委員会の判断で適切な処置をするべきだ」との意見が出たため、市教委があらためて協議し、閉架を決めたと、と朝日デジタル版は報じている。 
 
 こうした市教委の対応については、twitterなどで批判が高まっている。そのいくつかを紹介する。 
 
広島での被爆体験を描いた「 はだしのゲン」(中沢啓治著)を、島根県松江市が「過激な描写」を理由に市内の全小中学校に閉架させ、子ども達が自由に読めなくしていた件、強い憤りを感 じる。私も小学生の頃、学校でよく読んでいた。学校が教えてくれなかった近現代史の闇、戦争の怖さを教えてくれた。 
 
はだしのゲンの件は、書店も他人事ではない話だと思いますよ。圧力ではないですが、俺も店頭で「原発問題のコーナーに反対の本しかないのはなぜですか。賛成の本を置かないのはなぜですか」と幸福の科学の本を買われた方に問われたことありますし。 
 
ごく少数のネトウヨが騒ぎたてたからと言って、39校の子ども達の知る権利を奪った時点で、内藤富夫委員長はじめ松江市教育委員会は全員辞任するべき。こうしたことがあると、ますますネトウヨを便乗させることになるし。 
 
はだしのゲンの件でこれが思い浮かんだ。 1.図書館は資料収集の自由を有する 2.図書館は資料提供の自由を有する 3.図書館は利用者の秘密を守る 4.図書館はすべての検閲に反対する 【図書館戦争】にも出てくる「図書館の自由に関する宣言」。実際に全国の図書館に掲げられているものです 
 
京都精華大マンガ学部・吉村和真教授「ゲンは図書館や学校で初めて手にした人が多い。機会が失われる影響を考えてほしい。代わりにどんな方法で戦争や原爆の記憶を継承していくというのか。」 


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