2013年08月19日13時18分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201308191318051

アフリカ

【西サハラ最新情報】 振り向かない世界のメデイア  平田伊都子

 2013年8月12日から一週間にわたってアルジェリアのブマーデスで、西サハラ問題夏期大学が開催されました。 西サハラ難民政府からバシール・ムハンマド政治部門委員長、ヤヒヤ・ブビニ西サハラ赤新月社総裁、マリアム・ハマダ教育大臣などの幹部が多数参加しました。 西サハラ難民ジャーナリストやモロッコ占領地からきた西サハラ住民たちが、現状報告をしました。 ヨーロッパの支援団体やアルジェリア・西サハラ友好国民委員会などの講演もありました。 約400人の参加者たちが、中断している国連主催の<西サハラ・モロッコ両当事者の和平交渉>の再開などを討論しました。 が、世界の大手メデイアはこのセミナーを取り上げなかったのです。 代わってSJJAが以下に、セミナーの要点を報告します。 
 
(1)8月13日、「モロッコ占領地・西サハラに住む西サハラ住民は、モロッコ占領当局の妨害と逮捕に屈することなく平和デモを続けている。だが、世界のメデイアはこのおぞましい人権侵害に目を向けない。確かに世界中では反抗する住民が大蜂起し、メデイアはこぞってその地域に突進する。しかし血の量だけが問題ではない。何のために西サハラ民族が40年間も血を流し続けているのか?世界のメデイアが国連を容認するのなら、その国連が放置している西サハラ紛争に目を向けるべきだ」と、ブラヒム・バージズ西サハラ・ジャーナリストは世界のメデイアを非難した。 
 
(2)8月14日、ヨーロッパで最大の西サハラ支援団体EUCOCO(European Conference of Coodination and support for the Saharawi People)のピエール・ガラン代表は、「国連決議に基ずく西サハラ民族自決権を国連が行使せず、沈黙を決め込んでいるのは許しがたい。西サハラの元宗主国・スペインがきっちりと西サハラ植民地問題に決着を付けていないのは、無責任きわまりない。2012年にフランス大統領になった社会党のフランソワ・オランドはモロッコとの経済的利権にしがみつき、国際正義に呼応しないのは欺瞞だ。国連、スペイン、フランスは西サハラの人々を裏切っている」と、糾弾した。 
 
(3)8月14日、西サハラ・アルジェリア友好国民委員会CNASPS(Algerian National Committee for Solidarity with the Saharawi People)のメへレス・ラマリ会長は、「今こそ国際社会、特に国連は、モロッコ占領地・西サハラで毎日繰り返されているモロッコ占領当局の西サハラ住民に対する暴力や非人道的行為に歯止めをかけるべきだ。アルジェリアは国連決議に従って、西サハラ民族自決権と西サハラの脱植民地化を支持する」と、アルジェリアの独立運動を引き合いに出して、アフリカ最後の植民地・西サハラの早期解決を促した。 
 
(4)8月18日、西サハラ赤新月社(=日本赤十字)のヤヒヤ・ブビニ総裁は、「モロッコは、西サハラ難民キャンプは危険だというデマを流して、外国人支援者の訪問や援助物資の搬入を妨害している。モロッコのデマが、難民キャンプを潰し西サハラ民族の独立運動を抹殺しようとする捏造であることは、国際社会がよく知っている。西サハラ難民政府は難民キャンプを訪れる人々の安全を第一義とし、これからも楽しいおもてなしを続けていきたい」と語った。 
 
 8月18日のBBC英国TVが、「治安部隊との衝突で殺された市民は、7月27日にカイロのラッバ・アルアダウィヤで70人以上、8月14日にカイロの二か所で638人、8月16日にカイロのラムセス広場で173人、8月17日にカイロのアルファス・モスクで79人、8月18日にカイロ近郊のアブーザアバル刑務所から逃亡を図ったムスリム同胞団の36人、計996人以上」と、報道しています。 エジプト市民の血は大量に流れ続けています。 8月18日、NHKは「トルコのイスタンブールで4、000人、コンヤでも一万人と、治安部隊に反発するデモが広がっている」と報じました。 さらに東京でも在日する約200のエジプト人がエジプト大使館前で、暫定政府の暴力制圧に抗議しました。 メデイアの目は当分、エジプトに吸いつけられています。 アフリカ最後の植民地・西サハラに世界のメデイアが振り向くのは、いつになるのでしょうか? 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2013年8月19日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。