2013年08月23日12時49分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】建屋は地下水に浮いたコンクリートのハコ(中) 東電の後手・後手、資金ケチリが原因   山崎久隆

 建屋の周囲の地下水位が上昇すれば、容易に想像できるのは浸水被害である。東京駅並みに地下水位が上がっている福島第一原発でも、激しく浸水しているのは東電の公表でも明らかだ。 
 
 地下水位が一定以上高くなると、建屋にある配管や電線管の貫通口などから地下水が流入する。これを止める方法は水位のコントロール以外には無いが、最初は大量に流れ込んだ津波、次に原子炉圧力容器に崩落し、格納容器内部にも落ちてしまった核燃料を冷やすために投入している冷却水も建屋に流れ出し、地下水と混じり合っている。このため建屋周辺の地下水も汚染されてしまい、汲み出せばそのまま汚染水を汲み出す結果となる。当初東電は地下水を海に放流するつもりだったのだろうと思われるが2011年4月に起きた汚染水流出の影響で、海洋放出は汚染のない地下水でも不可能となっている。 
 
 早い段階でサブドレンを使って建屋周辺の汚染水分布を調べ、同時に汲み上げた水を処理ラインに流していれば事態は今より良かっただろうが、どういうわけか(おそらく資金面に問題があったため)地下水対策を放置した。 
 
 その結果、既に報道されているとおり、毎日65トン(推定)の地下水が汚染水となって海に流れ出していると見積もられている。 
 
◆遮水壁を作った東電の意図は−危機を演出するためだった 
 
 地下水は陸側に遮水壁がないまま、海への汚染水流出に驚いた規制委員による強い圧力で、海側遮水壁が急ピッチで作られたようだが、それをしたら「原発が水没する」ことは東電はよく知っていた。知っていて実行したのはどうしてか。 
 
 おそらく陸側に設けた遮水壁の上流側の30m地点に設けている「揚水井戸」から地下水を海に放流することと、トリチウム汚染水を海洋投棄することを地元に「受忍」させるための「背に腹はかえられぬ」危機を演出するためだったのではないかと疑われる。 
 
 東電が福島第一原発の地下水の経緯をよく知っていた根拠は、建設段階の工事経過を論文として発表した佐伯正治東電福島原子力建設所土木課長「福島原子力発電所土木工事の概要(土木技術22巻9号)」の記述である。それによれば建設段階で既に多くの出水があった。そのため地下水対策で1.2m間隔の井戸を約300本掘り、地下水を抜いている。工事では海抜33mを削って10mまで下げた。その途中で地下水の湧水線を切っている。その場面でも地上に地下水が溢水して、難工事になったという。 
 
 そこで7本素掘り側溝や1本の地中配管をつかって水を海に放出している。これは1号機建設時の論文であり、1基作る段階でも既に大量の地下水との闘いであったことが分かる。 
 
 原発の建屋周辺が建設当時から大量のサブドレンに取り囲まれていたのは、地形と地下水の挙動をよく知っていたからだ。 
 
 図面から読み取れるのは、タービン建屋海側が、旧汀線、今の4m板はもともと海だった場所を埋め立てて作ったところで、地下に入っているのは砕石と埋め戻しの土砂。その上をアスファルトやコンクリートスラブで覆っているだけ。地震によりタービン建屋と地下トレンチのつなぎ目に損傷が発生したかもしれないし、もともとトレンチが耐水性のない地盤の中にあるので、常に漏水しているのかも知れない。 
 
 そこに陸上部から大量の地下水が流下してくると、たちまち建屋の地下から漏れ出る汚染水を呑み込んで海に流れることになる。おそらく今までの汚染水の漏えいは、トレンチ内部に溜まっていたものが海側地下に漏えいしていたものであろう。最近、急激に汚染濃度が高くなったのは、トレンチと建屋の間から漏れ続けていた高濃度汚染水が2年あまりの時を経て、いよいよ海に到達してきたので 
はないかと思われる。その場合、汚染水の濃度は何桁も高くなる。 
 
 海側遮水壁の一列目は作ったものの、中途半端な高さで、地上から下1.8mまでは隙間がある。つまり地下水は遮水壁上部からあふれ出ている。 
 また、両側からも流れ出しているとみるべきだろう。その先には二段目の海側遮水壁が専用港内に建設中だ。しかし、こちらはあと2年ほど経たないと完成しないというから、間に合わない危険性が高まっている。 
 
〔つづく〕 


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