2013年09月08日18時35分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201309081835130

人類の当面する基本問題

五輪開催地競合にみる現代の問題点 東京決定は人類の無知の結果 落合栄一郎

  9月7日アルゼンチン.ヴェノスアイレスで日本、スペイン、トルコ国民注視の下に行われた2020年オリンピック開催地の選択会議で、どこの候補地が勝利するか、日本では特に熱狂的に注目されたようである。もちろん各候補地は、その利点を強調して、IOC委員を説得するのに懸命であった。 
 
 しかし、候補地のそれぞれが抱えている負の問題は、はしなくも,現在の人類が当面する重要な問題点3つを代表していた。そして,もっとも難しい問題点が、軽視されて、東京が選ばれた。 
 
 マドリッドは、ユーロ危機に代表される経済・財政の問題を、イスタンブールは,シリアに代表される、そしておそらくイランへと拡大される可能性のある、米国・西欧諸国による中近東制覇の意図に基づくシリアの内紛を代表し、そして東京は原発による放射能汚染という非常に難しい問題を、人類に投げかけている。それぞれが、困難な問題であるが、最初の2つは人為によって解決可能な問題である。ところが、原発事故,その他の原因による放射性物質の環境への放出は、元に戻せない、そして長期にわたって、地球上の生命を脅かす。しかもその安全な管理法を人類はまだ編み出していないし、原理的に困難な問題である。 
 
 今回の会議では、福島原発事故による汚染水の問題に質問が集中したようであるが、空気中、土壌中の放射能が、東京を含む関東地方でも、かなり高い場所があることは、会議参加者(IOC委員)には、充分に知らされていない──日本国民にすら知らされていないのだから。放射能に起因すると思われる様々な健康傷害(甲状腺ガンはその顕著な1例)は、すでにかなり見られるが,報道関係も政府その他の原発推進側も、その事実を隠蔽している。甲状腺ガンが異常な率で発症しているにも拘らず、権威者側は、何らの根拠も示さずに、それは原発事故とは無関係と極め付けるのみである。おそらく、多くの国民はそれにすがって、安心を得ようとしているのだとは思うが。 
 
 今回の東京選出は、こうした人類の無知、すなわち、おそらくある種の人達が、自分達の利益の為にその危険性を隠蔽しているために知らされていないという無知の結果であり、人類にとって、非常に危険な状態を表明している。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。