2013年11月04日21時19分掲載  無料記事
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文化

パリの芸術家〜子供と親が遊べる文化の場を作る彫刻家ヴァンサン・ベルゴン〜

   パリで活躍している多彩な彫刻家、ヴァンサン・ベルゴン(Vincent Vergon)氏が今、取り組んでいるのは子供と親がともに遊べる場を作ること。それはアミューズメント産業が多額の投資をして建設するものとは性格を異にしていた。 
 
  パリの北に位置する郊外のオーベルヴィリエ。アフリカなどから渡ってきた移民が多く暮らす地域だ。また同時に家賃が高くなったパリからやってきた芸術家たちの新たなアトリエの拠点にもなっている。ベルゴン氏もここ、オーベルヴィリエにほかの芸術家たちと共同で大きな倉庫を借りてアトリエにしている。さらにまたオーベルヴィリエには違法のドラッグを街で売るドラッグディーラーもいると言われており、今、様々な意味で「ホットな地域」になっているのだ。 
 
  このオーベルヴィリエでベルゴン氏は町の文化行政担当者や幼稚園の保母たちと手を携え「文化の場」創りに取り組んでいる。名づけて「ミラビリア」(La Mirabilia)。オーベルヴィリエの文化会館で「ミラビリア」の準備が始まった。 
 
  美しい模様に染められた多くの布とたくさんの竹を使ってまずテントを作りあげる。無機質なコンクリート壁の四角な空間とは違う柔らかい空間だ。竹の内側には色とりどりの電灯を装填してある。この色彩豊かな電灯で幻想的な空間が生まれる。しかもちょっと暗い。ベルゴン氏はフランスでも翻訳されている谷崎潤一郎の名著「陰翳礼賛」に影響されたと言う。光と影があり、さらに白黒でなく、色とりどりの光がある。東洋と西洋がここでは響き合っている。 
 
  ベルゴン氏は長年の仲間たちと共に普段パリ市民が暮らしている空間とは違った空間をまず作り上げた。ベルゴン氏がコツコツと執念深く、信念を持って取り組んでいるのがわかる。ベルゴン氏は彫刻家で、ギャラリーで彫刻を売ってもいる。しかし、造形センスを違った風に使って、直接人々と触れ合いたいと思うようになった。それがこの「ミラビリア」に発展したという。ここでは芸術は人と人が触れ合うためのツールなのだ。 
 
  この空間には絵本が詰まった宝箱があり、インド人の詩集がある。ベルゴン氏自ら作った手作りの玩具があり、子供の関心を掻き立てる民族楽器がたくさんある。手作りブランコがある。編み物ができる台や、水牛の角を使った「電話」もある。そればかりでなく、ベルゴン氏自ら人形を使って子供たちと戯れ、またみんなを集めておとぎ話を聴かせる。音楽家を交えた民族楽器の熱いセッションもある。そして大切なことは子供たちや親もまた、「ミラビリア」に参加できるということだ。子供たちは目を爛々と輝かせ、興味の赴くままに動いていく。楽器を奏で、風船玉をパンチし、おとぎ話に耳を傾け、不思議な塔の模型で遊ぶ。子供たちも、また大人もごく自然に世界の様々な文化に触れているのだ。 
 
  そして鳩時計が時間の終りを知らせる。90分があっという間に過ぎ去った。子供たちは手を引かれて、名残惜しそうに帰っていった。「ミラビリア」の特徴はすべてが人間と人間のふれあいであることだ。文化は一部の人のものではない。みんなのものだ。そんな信念をベルゴン氏は持っている。 
 
 
■パリの散歩道9 世界最小のサーカス団を率いる幻灯師ベルゴン 
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