2013年12月04日01時16分掲載  無料記事
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政治

クーリエ・アンテルナショナル 〜特定秘密保護法案は「検閲」〜 世界も日本の国会を注視

  特定秘密保護法案の危険性は米国だけでなく、フランスや世界でも認識されてきた。特に、放射能汚染の実態に強い関心を示しているフランスでは特定秘密保護法案で実態が覆い隠される可能性が高いとみる人が増えている。 
 
  ルモンド系列の国際誌クーリエ・アンテルナショナルでも特定秘密保護法案の本質を「検閲」(censure)であると伝えた。 
http://www.courrierinternational.com/article/2013/10/21/secrets-d-etat-une-censure-qui-ne-dit-pas-son-nom 
  ’Mais ceux-là pourraient être tentés d'abuser de leurs prérogatives en classifiant massivement les informations. Pour ne donner qu’un exemple, celles concernant la sécurité des installations nucléaires ainsi que la propagation de la contamination radioactive risqueraient d’être dissimulées sous prétexte qu’il faut les protéger des terroristes. On peut même craindre que certaines informations que le gouvernement ne souhaite pas révéler soient sciemment désignées comme secrets d’Etat. ’ 
 
  「官僚は大量の情報を特定秘密に指定して彼らの特権を欲しいがままにする可能性がある。1つだけ例を挙げよう。福島の放射能汚染水のダダ漏れのような原発施設がらみの情報はテロ予防の目的という口実で特定秘密とされる可能性がある。同様に、政府が国民に知らせたくないすべてのことが国家の秘密に指定されることが懸念されるのである」 
 
  フランスでは新聞各紙がすでに安倍首相の「汚染水は完全にブロックされている」という発言が嘘であることを報じている。それだけでなく、フクシマの実情は刻々と報じられてきた。福島の放射能汚染の実情はもはや日本一国の問題だけでなく、あのソ連のチェルノブイリ原発事故と同様に世界の関心事なのである。だから、日本の報道が実質的に「検閲」を受け、真実が報じられなくなることは日本人にとってだけでなく、世界の人々にとっても影響があることなのだ。 
 
  フランス人のこのような関心を「うざい」と思う人もいるかもしれないが、フランス人が放射能汚染に関心を持つ理由は1986年にソ連で起きたチェルノブイリ原発事故に端を発している。あのとき、放射能汚染はソ連の国境をはるかに超え、欧州各地に及び、フランスにおいても多くの市民が甲状腺機能障害などの健康被害にあった。しかし、当時、検閲が常態だったソ連はもとより、フランスにおいてもフランス政府が「大丈夫」と繰り返し、市民の健康への影響について正しい情報を国民に伝えなかった。この時の記憶がフランス人には根強く残っているのだ。原発情報はただでさえ、秘密にされる傾向があるときに、このような日本の法案の存在が重大な懸念を投げかけているのである。 
 
  世界70か国以上が参加し、国家の秘密と国民の知る権利の関係を論じ、その原則を定めたツワネ原則においては環境問題や大量破壊兵器に関する情報は国民が知る権利を持っており、国家は秘密にしてはならない、とする。そしてまた中国の大気汚染、たとえば有害物質PM2.5の濃度レベルが今日、日本人にとって他人事と言えないように、日本の放射能汚染は世界の人にとっても他人事ではない。だから、特定秘密保護法案は日本国民の知る権利を侵す意味で違憲であるだけでなく、世界の人々の願いに逆行する法案なのである。 
 
  クーリエ・アンテルナショナルはいみじくも特定秘密保護法案の本質を「検閲」と見た。実際、表現者あるいはマスメディアは「特定秘密」が何かわからにがゆえに、特定秘密に触れていないかどうか、出版・放送前に事前に政府・当局にお伺いを立てる、つまり検閲を自ら求めるようになるかもしれない。それこそ安倍首相の望むことだろう。こうなると、日本の報道を事実上、行政府が掌握することになる。これもまた改憲せずに憲法を骨抜きにするナチスの手口である。 
 
 
*検閲 =「日本では憲法第21条第2項で禁止されており、その憲法の言う「検閲」とは「行政権が、思想内容等の表現物の発表前にその内容を審査した上、不適当と認められるものの発表を禁止すること」(ウィキペディア) 
 
 
■フランスでのチェルノブイリ原発事故の影響 
http://linked222.free.fr/lien/tchernobyl_france/tchernobyl_france.html 
 
■ロシアから見る特定秘密保護法案 〜日本がソビエト化する日〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201311241930270 


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