2013年12月04日11時29分掲載  無料記事
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沖縄/日米安保

普天間飛行場の辺野古移設問題とケネディー米大使の姿勢 池田龍夫

  普天間飛行場(沖縄宜野湾市)の辺野古(名護市)移設問題が、にわかに慌しくなってきた。仲井真弘多知事に政府が要請した「辺野古沖埋め立て」の回答が今月末か来春に迫っている。また1月18日には名護市長選挙が実施されるが、保革一騎打ちの様相である。 
 
▽衆参多数を占めた自民党政権の驕り 
 このため政府自民党幹部が沖縄に出向き、「県外移設」を主張する沖縄県自民党が翻意するよう説得に乗り出した。その結果、自民国会議員5人に続き、県議団(議員15人)も県外移設の公約をあっさり撤回した。報道によると、保守系の2人が立候補を表明、三つどもえの様相。自民党は保守系候補の一本化を目指している。この裏切りに怒った自民那覇1区市議団支部役員14人が辞任するなど、再び騒然となってきた。 
 
 東京新聞11月28日付社説は、「自民沖縄県連が普天間飛行場の『県内移設』容認に転換するとは、どうしたことか。『県外移設』を独自に掲げていたが、撤回を求める首相官邸や自民党本部の圧力に屈したもので、有権者への裏切り行為だ。……沖縄県には在日米軍基地の約74%が集中している。(池田注=日本全土のわずか6%の沖縄に肩代わりされっ放し)基地負担を負う県民は、これ以上の負担を望んでいない。普天間は県外へ、という県民多数の願いを、政府や党中央がねじ伏せるのはいかがなものか。衆参両院で多数を制した安倍自民党の『数の驕り』だ」と一連の暴挙を糾弾している。 
 
▽米大使が沖縄の現状を見て、代替案を提示できるか? 
 新任のキャロリン・ケネディー駐日米大使は11月27日、東京の大使公邸で沖縄県知事と初の会談を行った。まず県知事が「米軍基地の過剰な負担が県内にある。きちんと汲みとって解決に向け頑張ってもらいたい」と要請。大使は「解決に努力したい」と語ったのみで、普天間飛行場移設問題については、双方とも何も語らなかった。沖縄早期訪問の問いに「県民の声を聞きたい」と応じた米大使の姿勢が問われる。 
 
 かつてブッシュ政権時代、ラムルフェルド国防長官が普天間を視察した際「世界一危険な飛行場」と述べたが、その後も普天間は米軍機墜落や騒音に悩み続けている。米国には海兵隊のグアム移転、オーストラリア基地拡大、統合して太平洋の安定の計画が報じられており、米国も「県外移出」に腐心しているようだ。 
 
 ケネディー大使が普天間や県民の訴えを聞き、踏み込んだ打開策を提示できるだろうか。1月の名護市長選が大きな辺野古代替案の是非を問う重大な局面になってきた。 
 
 
☆「自民市議団の決断 1区役員辞任は英断だ」11月29日琉球新報社説 
 
 沖縄1区選出の国場幸之助衆院議員が米軍普天間飛行場の県外移設公約を事実上撤回したことを受け、同党那覇市議団14人が1区支部役員を辞任した。 
 市議団の行動は民意、公約の重みを自覚した筋の通った英断であり、新しい政治潮流が根付こうとしていることを示している。 
 今回の政府、自民党本部による国会議員や県議団に対する圧力は、単に所属議員への圧力ではなく、日本の近現代政治史上、例のない特定地域に対する弾圧事件である。 
 これは沖縄だけの問題ではなく、九州から北海道までどの地域であれ、国策に異を唱えれば国が強権を発動し、弾圧の対象になり得ることを暗示している。 
 こうした大事な局面で、自民党那覇市議団がとった行動は県益に合致するだけではない。この国の民主主義と国民の自由と権利、平穏な暮らしを守るのが政党、政治家の使命だということを内外に示した。その意味で、真の国益にかなう行動ではないか。 
 安倍政権の強硬路線は、半世紀前に絶大な権力を握り「沖縄の帝王」と呼ばれたキャラウェイ高等弁務官時代をほうふつとさせる。キャラウェイは都合のいいように布令を乱発したため、瀬長浩副主席が「自治は後退した」と嘆いた。 
 当時の大田政作主席と与党自民党はキャラウェイに追随し住民の反発を招いた。同党刷新派の立法院議員11人と西銘順治那覇市長、翁長助裕氏(後の副知事)ら若手党員は、「主権在米」を放置し住民との一体意識が欠けると批判して脱党、野党革新勢力と共闘した。 
 刷新派の行動は、不公正の犠牲になっている民族や集団の利益を代弁して行うアイデンティティー・ポリティクス(政治)だろう。 
 沖縄が日本に返還された後、政党の系列下が進み、東京の決定に沖縄が従う仕組みが出来上がった。県民の主権が無視され、沖縄に基地を押し付ける「構造的差別」が露骨に実行されている今こそ、アイデンティティー・ポリティクスの出番ではないか。自民党那覇市議団の行動はかつての同党刷新派に通底する。 
 今回の政権与党の圧力が、かつてない地方への大弾圧という認識に立つのであれば、この不条理をはね返すために沖縄の政治家や政党は、既成政党の枠組みにとらわれず、県民党的立場で結束する気概を示してほしい。 


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