2013年12月22日12時19分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

秘密保護法なんてなくても十分威圧的 国会靴投げ込み事件の勾留理由開示公判を傍聴して 上林裕子

 12月6日、「特定秘密保護法案」を審議していた参議院本会議場に、傍聴していたAさんが靴を投げ込み議事の進行を妨害したとして現行犯逮捕された。12月16日に10日間の勾留延長がついた。Aさんは勾留理由開示請求を行い、19日に開示公判が行われたので傍聴した。被疑者のAさんだけでなく傍聴人も含めて、国家に楯突くと見なされたものはこれほどまでに威圧されるのか…。 
 
 米国で強者が弱者を訴える「スラップ裁判」を「裁判テロ」と呼ぶのだそうだ。高額の損害賠償を請求し、相手を威圧し委縮させ、黙らせるためだ。Aさんの場合はスラップ裁判ではないが、現行犯逮捕であり、本人も靴の投げ込みを認めているのに「証拠隠滅と逃亡の恐れがある」として勾留期限が延長された。罪状は「威力業務妨害」である。 
 
 この日はAさんを支援し、釈放を求める人たちが30名ほど傍聴した。傍聴者は有無を言わせずかばん類を預けさせられ、入念なボディチェックを受けて傍聴席へ。狭い傍聴席の左右に3人ずつ職員が待機している。法廷のドアの外にはさらに15人ほどの職員が待機していた。傍聴人が騒ぎだしたら直ちに鎮圧するため?なのか…。 
 
 公判が始まり、弁護士が裁判官として憲法をどのように考えているかについてたずねると裁判官は言下に「本件とは関係がないので答えません。次に行ってください」とにべもない。あまりの言いように思わず「エーッ」と声を漏らした傍聴者2人があっという間に退廷させられた。 
 
 左右の職員は誰が声を発したか、傍聴者の口元を見張っている。一言でも発しようものなら裁判官が耳ざとく聞きつけて退廷を命じ、職員が数人がかりで引きずり出す。 
 
 弁護人が「本人が靴を投げ込んだことを認めており、家宅捜査も実施している。証拠隠滅と逃亡の恐れがあると判断した理由を示せ」と言っても、理由は明らかにされなかった。また、「靴を投げ込んだことにより議事の進行が妨害された事実があったのか」との問いにも答えなかった。 
 
 最後にAさんが「子どもや孫、次の世代のために秘密保護法は決してつくってはならない」「私が一番驚いたのは溝口裁判官、あなたの態度です。思わず声が出てしまった傍聴人を有無を言わせず退廷させた。こうしたやり方は民主主義の否定ではないか」と自分の思いを語った。 
 
 Aさんの釈放を求めて現在1万人近い署名が集まっているという。 


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