2014年02月19日11時00分掲載  無料記事
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ロシアン・カクテル

(43)ソチ五輪の声援「マラヂェーツ!マラッツイー!」 タチヤーナ・スニトコ

  ソチ・オリンピックでロシア人応援者たちは、選手を元気づけるために「マラヂェーツ!」か「マラッツイー!」と叫びます。「マラヂェーツ!」(Молодéц!単数形)、「マラッツイー!」(Молодцы!複数形)は「よくやった!」、「立派だ!」、「えらいぞ!」、「頑張ったね!」のような意味を表します。肉体と精神力の強靭さを讃える伝説のスラブ民族のシンボルなのです。 
 
 スラブ人は力強い、勇ましい、何ものも恐れない、何をしても成功する「ブィリーナ」(民族的叙事詩ブィリーナ)に登場する主人公・英雄たちを「モーラヂェツ」(Мoлодец)とか「ド−ブリイ・モーラヂェツ」(Добрый Мoлодец)とか「バガトィーリ」(Богатырь) と呼んでいます。 
 
 一番有名な3人のブィリーナの英雄たちであるドブルィニャ・ニキーティチ(Добрыня Никитич)とイリヤー・ムーラメツИлья Муромец)とアリョーシャ・パポーヴィチ(Алеша Попович)の3人はヴィクトル・ヴァスネツォフの「3人の勇士」という絵画に描かれています。 
 
 ドブルィニャ・ニキーティチ(Добрыня Никитич)(絵の左側の勇士)は心の優しい人で、強大な強さを持っているが、虫も殺さぬような善人です。ドブルィニャという名前は“心優しい人”を意味します。ドブルィニャは自分の力を国の乱す者と戦うためや弱い人々を助けるために使いました。 
 
 イリヤー・ムーラメツ(Илья Муромец)(中央の馬上の勇士)はブィリーナで最も有名で且つ愛されるボガトィリ・モーラヂェツです。イリヤー・ムーラメツは沢山のブィリーナに登場して、その中の一つの「イリヤー・ムーラメツとソロヴェイ・ラズボーイニク」というブィリーナでは100以上バリエーションで登場して知られています。 
 
 イリヤー・ムーラメツはソロヴェイ・ラズボーイニクという「ナイチンゲール・追い剥ぎ」と戦います。この「ナイチンゲール・追い剥ぎ」とは人であり同時に鳥なのです。彼の武器は“鳴き声”なのです。ソロヴェイ・ラズボーイニクは木の上に止まっていて、キエフ(現在のウクライナの首都))に向かって旅する人々を30年にわたって妨害し続けてきました。イリヤー・ムーロメツは弓で「ナイチンゲール・追い剥ぎ」の目を射って殺してしまいました。 
 
 イリヤー・ムーラメツは生涯沢山の勲功を立てました。最後には修道士となって人生を送りました。イリヤー・ムーラメツは歴史的な存在でもあったとういう考え方もあります。ウクライナの首都キエフにあるペチェルスカヤ・ローレル(南スラブ最大の修道院;11世紀の創立で、ロシア正教を代表する修道院;世界遺産;“ペチェラ”は“洞窟”という意味する)の地下の下層の墳墓には1188に亡くなった聖イリヤーの遺骨(聖骨)が眠っています。「ペチェラ」にあるイリヤーのお墓には「イリヤー、ムーラム市出身(Илья из града Мурома)」と刻んであります。 
 
 アリョーシャ・ポポーヴィチ(Алеша Попович)(右側の勇士)は戦上手でもあり又歌とグスリ(スラブ琴)上手でもありました。ブィリーナの英雄たちの中では一番若くてハンサムでイケメンでした。そのためしばしば過ちを犯しました。アリョーシャはスーパーマンではなく、少しずるくて自慢家で女たらしでした。女性関係での失敗も多い人でした。 
 
 ロシアの若者にとっては、マラッツイー・バガトィリー(Молодцы-богатыри)は肉体と精神力の強靭さのシンボルでした。伝説の勇者の中ではイリヤー・ムーラメツが一番人々から敬愛されている英雄です。 


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