2014年02月22日12時06分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】原発を「重要なベース電源」とする主張は誤り(その3) 山崎久隆

 2013年9月に原発が全部止まったのは、原発そのものの欠陥が原因だ。地震や津波に耐えられない「安全基準」を作り、度重なる警告(人間からも自然からも)を無視し続けた結果、福島原発震災を引き起こしたから止まった。「原子力の欠陥」が原発を止めている。これを解消しなければ動かせないわけだが、新規制基準でも原発の構造欠陥を解決できていない。 
 
 原子炉水位や温度や圧力が正確に分からないまま、手探りで冷却を試みていた福島第一の教訓を生かすならば、いかなる事態でも正確に原子炉水位や温度などを捉えられる機器類の開発がまず取り組まれるべきであるが、そんな気配さえない。原理的に不可能だからだ。 
 原子炉内部の状態も分からず対応せよとのシビアアクシデント対策は、福島以前は対策とは名ばかりの対処方法が書かれていないマニュアルだった。 
 
 いまもシビアアクシデント対策は電源車を追加して冷却材用の水を入れる入口を作った程度のものだ。例えば地震に対する制御棒駆動系のシステムや配管の脆弱性は、そのままである。 
 
 福島原発事故が停止の失敗では無かったので考慮する必要が無いとの判断であろう。だが地震による制御機能の喪失が次の原発震災かもしれない。そのような危機感をみじんも感じない。 
 
 また、使用済燃料プールの安全対策が十分ではないことも問題だ。単に注水方法を多重化したのではダメである。冷却水を失う事態になっても燃料崩壊を防ぐ対策を取らねばならない。極めて困難であるため、そんな対策は放棄されているが、シビアアクシデント時には燃料プールが必ず冷却できる補償などは無いと考えるべきである。 
 原発が原理的に稼働できない欠陥を有し、日本は地震津波火山大国であるために、その欠陥がさらに増幅される。原発が重要なベース電源どころか、原発こそが電力供給を阻害してきたことを認識すべきだ。 
 
○原発・電力供給を阻害 
 
 東電は発電量の2割ほどが原発だったが、関電は4割を超えていた。設備容量も東電が2割程度なのに関電は3割近かった。(全国では2010年度で設備容量は2割、7割弱の設備利用率で3割の発電量) 
 この結果、原発が全部停止した直後には電力供給に問題が生じた。それは事実である。東電の場合は夏のピーク時ではなく震災直後のことだ。東京では計画停電が実施された。ただし時期が3月中・下旬で年間を通じて電力需要の少ない時期だったから、計画停電をしなくても大停電にはならなかったと考えられる。 
 
 夏のピーク時であれば広域停電に至った可能性もあった。 
 関電は、その年の夏に広域停電の恐れが生じた。大飯をはじめいくつもの原発は動いていた。この時の危惧は、電力需要がピークを迎えているときに若狭湾周辺で地震が発生し、原発が全部停止する事態を想定してのことだ。東北地方太平洋沖地震の発生により、日本各地で地震が起きやすい状態になっていた。若狭湾も例外ではない。その結果、大地震ではなくても原発を止める震度5程度の地震が起きていただけで、関西広域停電が起こりえたのである。 
 
 電力需要の多くを原発に依存していれば、この程度で広域停電になる危険性は全電力会社にある。 
 
 結局、原発をベース電源として位置づけ、それに依存し続ければ、原発停止がただちに広域大停電の引き金になってしまうことを認識すらしていない主張を何時までもし続ける人たちの意見は聞くべきものは何もない。 
<次号へつづく> 


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