2014年02月28日14時51分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】原発を「重要なベース電源」とする主張は誤り(その4) 山崎久隆

 話題は地層処分に移るのだが、驚いたことにフィンランドのオンカロの話に移った時、耳を疑う発言が山名教授から飛びだす。「地層処分は人間から放射性廃棄物を隔離するために行う」と思っていたら、そうではなく、人類がそのようなものを埋めたことを「忘れ去る」ためにあるという趣旨のことを言い出した。この考えの究極は、オンカロの正反対である。 
 
◆高レベル放射性廃棄物の地層処分 
 
 フィンランドのオンカロは、長期間にわたって管理できない高レベル放射性廃棄物を人間活動圏から隔離する方法が解決できないことを長年悩んできた。 
 
 宇宙に放たれた人工衛星「ボイジャー」に搭載された、未知の生命体に地球と人間が説明できるように搭載された黄金製のレコード盤と同様に、10万年以降の「未来人」に、言葉だけでなく様々な「サイン」を駆使して「危険な物体が埋まっている」ことを伝えようと真面目に検討している。 
 
 しかし山名教授は「そもそも知らせてはならない」と考えているようだ。なまじ伝えてしまうと、危険な核のゴミをわざわざ掘り出してしまいかねない、有用な金属、貴金属も含むし、プルトニウムも含む使用済燃料や高レベル廃棄物を「知られないように」隠しておく(そういえばオンカロにもそういう意味があるが)ことが重要なのだという。 
 
 しかし地上に暮らしている人々が地下にそのような危険物が埋まっていることを知らないまま過ごすことは、二重の意味でとてつもなく危険だ。 
 
◆地下利用の未来予測などは不可能なこと−山名元教授のまちがい 
 
 現在、都内で最も深い場所を利用しているのは大江戸線で42mだが、世界では、もっと遙かに深い地下が利用されている。 
 南アフリカの金鉱山では地下4,000mまで掘り進められていて、さらに4,800m地点の新たな鉱脈まで掘り進む計画があるという。 
 
 人間が掘った最も深い縦坑は、89年にロシアのコラ半島で行われた地質調査の際に1万2,000mとの記録があるという。 
 日本でも南海トラフなどプレート境界地震のメカニズムを探る目的で、地下1万mに到達する計画がある。 
 
 資源探査や科学調査の目的で、今でも大深度ボーリングの試みは日夜続けられている。 
 高レベル放射性廃棄物を、いわゆる「安定した地層」に埋設する計画は、未来のどこかで同じように「安定した地層」を求めて掘削する地下利用計画と衝突する危険性は高い。もともとあったウラン鉱山地帯への埋設を、と計画される岐阜県瑞浪市の東濃地科学センターは、旧動燃の東濃鉱山跡に作られたが、ウラン鉱山地帯には他にも金属資源が存在するので、未来のある時期に地下資源開発を行う可能性も高い。 
 
 そんな場所が「隠された処分場」だったとしたら如何に危険か、想像を絶することだ。 
 10万年どころか、数百年でさえ記録や記憶が残存するかどうか定かでは無い。その時に地下利用計画と放射性廃棄物処分場が「衝突」したら、恐ろしい汚染事故になる。 
つづく 


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