2014年03月23日11時52分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201403231152080

欧州

今日のフランス地方選2 〜フランス第二の都市マルセイユの場合〜 7000人収容のフランス最大のモスク建設計画が進行中

   今日はフランスの地方議員選挙である。フランス全土には様々な自治体がある。フランス語ではコミューンと呼んでいるが日本語では市町村に相当し、コミューンには100人未満の自治体もあれば人口100万人を超える自治体もある。 
 
  さて、今回の選挙で注目されているのが右派政党・国民戦線であることはパート1で書いた通りだ。国民戦線が今回の選挙選で力を入れているのが前回2012年の大統領選の第一回投票でマリーヌ・ルペン候補に多くの投票を行った地域、そして同年行われた国会議員選挙(下院議員選挙)の第一回投票で多くの票数が得られた地域とだとルモンドで報じられていた。 
 
  そして、注目の選挙区がマルセイユなのである。地中海に面する港湾都市マルセイユはパリに次ぐフランス第二の大都市だ。魚介類をふんだんに使った料理ブイヤベースの本場である。移民が多く、しかも様々な地域からの移民が共生している。フランスは第一次大戦、そして第二次大戦で失われた労働力の欠損を埋めるべく、かつての植民地であった北アフリカのマグレブ地方やイタリア、スペインなどの周辺国から多くの移民を受け入れた。戦後の復興期に工場や炭鉱の労働力が不足していたからである。 
 
  しかし、オイルショック後、フランスが低成長期に入った1970年代以後は移民の大量受け入れは中止し、すでに入国して定住した移民の家族と、年ごとに必要に応じた労働力だけを受け入れる政策に変更した。こうしたフランスの移民政策のもとで、地中海に面したマルセイユは多様な人種が混在する都市になった。近年はイスラム系の住民が増え、ムスリムコミュニティは人口80数万人のうち、30万人を超えると見られている。 
 
  このマルセイユに完成すればフランス第一となる巨大なモスクが建てられようとしているのだ。収容人数は7000人を超えるという。国民戦線や地元非イスラム系住民らの反対運動で一度は計画が差し止めになったものの、裁判で建築許可が与えられた。マルセイユにはアルジェリア独立を機に、アルジェリアから引き揚げてきたフランス人も居住しており、彼らはピエ・ノワールと呼ばれているのだが、右翼政党を支持する人が少なくないと言われている。国民戦線のジャン=マリー・ルペン名誉党首はアルジェリアの独立に反対した右派の闘士であり、アルジェリア独立反対派の闘士たちはアルジェリア独立後も離合集散しながら、愛国主義・排外主義の路線を模索していた。彼らはマルセイユにフランス一の巨大モスクができたら、モスクがマルセイユのランドマークとなり、地中海の「ムスリムタウン」と見られることを警戒している。 
 
  マルセイユ市を大きく北部と南部に分けると国民運動連合が南部で、社会党が北部で勢力を握っている。この移民の町に国民戦線が勢力を広げようとしている。注目の選挙区はマルセイユ第七連合区(secteur)である。マルセイユ北部に位置し、ムスリム系住民が多い。そして治安が悪化している地域だ。昔からマルセイユと言えば映画「フレンチコネクション」でおなじみのように麻薬密売の町。しかし、近年強盗も増えているという。国民戦線はこの選挙区にイケ面のステファン・ラビエ候補を擁立している。ラビエ候補はマリーヌ・ルペン党首が熱いまなざしを注ぐ注目の候補者で、国民戦線マルセイユ支部の支部長でもある。ラビエ候補は町の警察力強化と犯罪撲滅を掲げて高い人気を集めているようだ。 
 
  一方、同じ第七連合区の社会党の候補者はギャロ・ホブセピアン氏で、アルメニア移民である。マルセイユの社会党候補者には移民やその二代目、三代目が少なくない。社会党のマルセイユ市議会議員候補の筆頭はパトリック・メヌッチ候補(第一連合区)で、イタリア系。二位のサミア・ガリ候補(第八連合区)はアルジェリア系である。メヌッチ候補もガリ候補も今回地方選を闘っているがいずれも国会議員を兼職している。 
 
  「フランス文化を尊重せよ」と愛国主義を掲げる国民戦線に対して、このように移民とその子弟を抱える社会党がどう戦うかは注目されるところだ。何しろ、今、フランスの失業率は平均で10%超、移民の失業率になると20%、中でもムスリムの若者の失業率は30%という風に生きることが厳しい時代だ。ギリシア通貨危機をきっかけに、欧州連合の未来にも疑問が生まれてきた。こうした中、反欧州連合を掲げる国民戦線に入党する人が増えている。 
 
 
■マルセイユの巨大モスク建設のウェブサイト 
 
  マルセイユ市長のゴダン氏(UMP)が後押ししていると言われる。予定地は北部の第八連合区。マルセイユ市内には小さな礼拝所が70近く点在するが、スペースが小さいため、路上にはみ出して祈る姿もあった。こうしたこともモスク計画の背景にあると見られている。しかし、建設許可は下りたものの、資金が十分でなく、カタールやアルジェリアなどのイスラム諸国に寄付を呼びかけている模様だ。 
http://lamosqueedemarseille.com/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。