2014年05月17日11時53分掲載  無料記事
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コラム

集団的自衛権と「戦争終結」までの見通し

  集団的自衛権が正規の改憲手続きを無視して、安倍総理個人の政治的信念によって認められようとしている。集団的自衛権が認められれば他国の戦争に日本が巻き込まれることになる。その危険性は日本一国の領土に関わる自衛の戦争なら一定の歯止めがあるのに対して、領土を逸脱することが容認されれば歯止めもなくなってしまうところにある。 
 
  そのことは戦闘状態に突入してから、戦争終結までの期間の問題に直結する。自国の領土が侵略された場合は言うまでもないが敵国が撤退するまで戦闘は継続されるだろう。しかし、自国領ではない他国の領域での戦闘の場合はどこまで継続するか、その判断基準もあいまいである。 
 
  日本が戦争をする可能性が最も高い中国との場合を考えてみると、戦争終結までの期間は中国がいつまで戦争を継続するか、という中国側の事情に左右されることになる。戦争終結は当事者の双方の意思がなくては実現できないからだ。中国は前回の戦争の時もそうだったが、国土が広大なため、沿海部が侵略されても奥地に退避して戦略を練り直すことができる。そうして戦争を引き伸ばし、持久戦に持ち込んで日本が疲弊するのを待つことができる。緒戦で相手にかまして自国に有利に休戦に持ち込めると考えるのは甘いし、それは前回失敗済みである。対米戦においても、対中国戦においても失敗しているのだ。だから遠いアジアの海域上での小さな戦闘行為であったとしても、その先に総力戦が待ち受けているかもしれない。 
 
  69年の小休止を終えて、日中戦争が再開された場合、中国は日本に敗れることをよしとするだろうか。中国人のプライドを考えれば中国人は最後の勝利まで引き下がらない可能性が高い。そうした場合、中国人を最後の一人まで皆殺しにしなくては今度の戦争は終結しないかもしれない。極論だが、そういうことまで見据えなくては戦争にうかつに手を出すべきではない。13億人の国民を全滅させることを日本はよしとするのだろうか。そもそも、そこまで日本人は戦えるだろうか。当然ながら、その戦争で日本人が全滅に至る可能性もある。ミサイルも本土に飛んでくるだろう。だから、中国との戦争を想定するのであればどう戦争を終結させるかの計算がなくてはならない。69年前の前回の戦争の教訓はそこにある。そして今、中国は核兵器を保有している。こう考えれば今、焦点になっている集団的自衛権は日本に核武装を近い将来引き起こす可能性が高い。日本人がどこまで中国との戦争を遂行する決意を持ちうるだろうか。 
 
 戦後、日本は国際紛争を武力ではなく、平和に解決することを国の基本方針とした。それは武力による解決を国是とした場合、最終的な決着がつくまでに100万から1000万人単位の死者が出てしまうことにある。安倍政権は日本人が戦後守ってきたその基本方針を憲法改正の手続きも無視して首相の個人的な情念で変えようとしているのである。 
 
 
■「おみすてになるのですか」上映会〜空襲被災者の声〜 
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  前回の戦争で腕や足を失ったり、失明したりした日本の民間人の負傷者は50万人に上ると言われているが、国は未だに負傷者に対する補償を行っていない。 


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