2014年05月22日08時02分掲載  無料記事
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みる・よむ・きく

中山元著「思考の用語辞典」 〜引ける哲学辞典〜

  哲学者・翻訳家の中山元氏が書いた「思考の用語辞典」(ちくま学芸文庫)は引ける哲学辞典として本棚に一冊あると刺激になる。 
 
  哲学関係の本を少しひもといてみようと思ったとき、障害になるのが独特の用語である。たとえば「文節」という言葉。たとえば「還元」という言葉。あるいは「超越」とか「超越論的」という言葉。本書はこれらの用語について、その語源までさかのぼりながら、その後近代あるいは現代になってどのような意味で捉えられているか、その歴史的変遷をたどりつつ用語の生き物のような歩みをひもといてくれる。 
 
  これらの言葉は初心者にはすぐに頭に入るわけではないだろうけれども、自分が何を知らないか、何が難しいところか、どこがポイントなのかを知っていて本を読むのと、知らずに白紙状態で本を読むのとでは吸収力が大きく異なってくる。それは掃除機が内部に真空状態を持っていないと吸塵できないのと同じ原理で、本を読んで面白いのは本を読む前に、その知識に渇望していることを自覚できるだけの真空状態が出来上がっているからなのである。本書はすでに真空状態にある人向けに書かれたのかもしれないが、白紙から真空状態をまず持ってみたいと思うすべてのビギナーに対して優しく、有益でありうる1冊だと思う。 


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