2014年07月20日23時23分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201407202323350

核・原子力

原子力規制委の「川内原発・規制基準適合」に抗議する共同声明を7市民団体が発表 山崎芳彦

 「安全とは言わないし、再稼働の判断にはかかわらない」(田中俊一原子力規制委員会委員長)と言いながらが、実質的に九州電力の川内原発1、2号機の再稼働にゴーサインとなる「新規制基準に適合する」とする審査書案を示した原子力規制委員会に対して、「原子力規制を監視する市民の会」など鹿児島・佐賀・関西・首都圏の7市民団体が抗議と審査書案撤回を求める共同声明を発表した。 
 
 共同声明は、原子力規制を監視する市民の会・反原発かごしまネット・玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会・グリーンアクション・美浜、大飯、高浜原発に反対する大阪の会・国際環境NGO FoE Japan・福島老朽原発を考える会の連名によるもの。 
 
 共同声明の全文は次の通り。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 本日、原子力規制委員会は、九州電力川内原発の新規制基準適合審査に関し、合格通知にあたる審査書案を提示した。これに強く抗議する。 
 川内原発の新規制基準の適合性審査については、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえたものにはなっておらず、以下の理由からも、とても合格通知案が出せる状況にはない。 
 
1.火山影響評価では噴火の予測はできないとの専門家の警告を認めながらも審査では無視し、自ら定めた火山影響評価ガイドにも違反している。 
  仝業の運用期間中に巨大噴火(カルデラ噴火)が生じる可能性について、これが十分に小さいとする九州電力が、十分な根拠を示していないにも関わらず、規制委・規制庁は火山の専門家が一人もいない状況で、専門家に意見を聞くこともせず、ほとんど議論もなしに素通りさせてしまった。 
 ◆_仍海寮賁膕箸、巨大噴火(カルデラ噴火)の予測が難しいことを訴える中、政府も、噴火の規模や時期をあらかじめ予測することは困難であることを認めている。火砕流に対しては、事前に核燃料を搬出する必要があり、これに何年もかかることから、噴火の規模と時期の予測は必須である。にもかかわらず、これを中長期的な課題として放り投げ、モニタリングの実施だけで素通りさせてしまった。 
 
2.重大事故時に生じる汚染水が海などへ流出することを防止する対策が全くとられていない。 
 新規制基準は、重大事故時に、格納容器が破損した場合でも、放射能の拡散を抑制する対策をとるよう要求している。また、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえるとしているが、現在福島第一原発において深刻な事態を引き起こしている汚染水流出の事実が適合性審査の過程で完全に無視され、川内原発に対しても流出防止対策が要求されていない。 
 さらに、川内原発では一日300トンの地下水をくみ上げているが、重大事故時にくみ上げるポンプが止まると、地下水が建屋内に流入し、格納容器の下部から漏れた冷却水である汚染水と混ざり、大量の汚染水となるおそれがあるが、こうした事態を防止する対策もとられていない。 
 
3.重大事故時の格納容器破損や水素爆発の可能性について、解析コードの信頼性を確認するためのクロスチェック解析が行われておらず、防止対策が十分でない。 
 
 冷却水喪失と電源喪失が重なるような重大事故時に、九州電力は、原子力圧力容器の冷却を放棄し、格納容器下部に水を張って溶融燃料をそこに落とすという驚くべき対応を行うとしている。その場合でも、格納容器の破損や水素爆発に至らないとの根拠に用いられているのが、コンピュータを使った解析である。 
 しかし、九州電力による解析では、信頼性に疑問が出ている解析コードが用いられており、これに対し、規制委・規制庁側で、通常は行われているはずの、別の解析コードを用いた「クロスチェック解析」は行われていない。 
 
4.地震動の想定が過小評価になっている。 
 
 耐震安全性評価で用いる地震動の想定において、津波評価では用いられている日本の特性を考慮した武村方式を用いた評価を行っていない。武村式を用いた場合、地震の規模は約2倍となる。 
 
 また、審査の過程で、火山影響評価などで新規制基準の不備が明らかになっているが、田中俊一委員長も認めるように、新規制基準は原発の安全を担保するものではない。さらに田中俊一委員長が、新規制基準と並んで車の両輪と例えた避難計画については、 
  〕弃膰郤圓糧鯑餬弉茲砲弔い董⊆児島県が原発から10キロ以遠について、計画の立案を放棄し、福祉施設や病院に立案と責任を押し付けている状況の中で、全く目途が立っていない。避難弱者を見殺しにするものとなっている。 
 
 ◆^貳未糧鯑餬弉茲砲弔い討癲避難先が狭すぎて居住できる環境ではない、避難先が風下になる可能性がある、原発事故と地震や津波などとの複合災害について考慮されていない、スクリーニングポイント(避難の途中で計測と除染を行う地点)が決まらず目途が立っていない、三十キロ以遠でも避難が必要となる可能性について考慮されていない、等々 
 
課題山積である。実効性ある避難計画は立案されておらず、計画を具体化すればするほど、避難の困難さが浮き彫りになるだけである。 
 
 こうした状況で、川内原発の再稼働手続きが進むことは許されない。原子力規制委員会は審査書案を撤回すべきである。川内原発を再稼働させてはならない。                     以上 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
 「安全を担保するものではない。」、「再稼働の判断にはかかわらない」、「ゼロリスクとは申し上げられない。」などと言いながら、原子力規制委員会は川内原発について「規制基準に適合する。」との審査結果を提示し、安倍政権は「世界一厳しいレベルの安全規制基準審査に合格すれば再稼働を進める。」と言いながら、「原発再稼働の当事者は政府ではなく電力会社と地元自治体だ」とも言う。電力各社と経済界は「待ちに待った大きなステップが進んだ。再稼働は経済成長のために不可欠。」として、川内原発の「審査合格」で審査申請中の原発再稼働への突破口ができたと規制委員会の審査結果を歓迎している。 
 とうてい、福島原発事故の教訓、現実を踏まえた動きとは言えないし、さきの福井地裁の大飯原発差し止め命令判決を受け止め、さらには函館市の大間原発建設差し止めを求める裁判所への提訴理由書を検討したとは考えられないし、先般の滋賀県知事選挙における県民の審判を考慮していない、つまり国民的な原発に対する不安、危惧、廃止要求などを視野の外においた原発再稼働、国民の「人格権」を無視した事態が差し迫っているということだろう。 
 原子力規制委員会の委員を差し替え、厳しく正当に審査にあたる委員を排除することが行われようとしている。安倍首相の、また「原子力ムラ」の得意技がさまざまな形で発揮され、原発列島の復活稼働、さらに海外輸出大型商品としての原発プラント売り込みがすすみ、さらには集団的自衛権行使容認、武器の拡充・高度化の先に核兵器開発にまで結びつくと考えるのは杞憂とばかりは言えないだろう。 
 原子力規制委員会の川内原発の規制基準適合審査書が持つ意味は、間違いなく危険極まりないものである。抗議し、撤回を求め、さらに再稼働を許さない取り組み、全国的な運動が求められる。なお、原子力市民委員会は7月9日「見解 川内原発再稼働をむき凍結すべきである」を発表した。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。